Sweet Lemon

2022年冬アニメ1話ほぼ全部観たのでいい感じの目録にするよ

はじめに

 漫画から、小説からアニメ化っていう作品も依然として多いけど、最近は特にオリジナルアニメを含め「舞台から」とか「昔の作品が」とか、以外なところからのアニメ化作品もすごく増えている印象を受ける。見たことも聞いたことも無いような新作のおおまかな経緯や関わっている人々を見ているだけでも結構面白かったので、そういった周辺情報も含めてざっくり目録にしてみた。
 また、一人でも多く沼に沈めることができればと思いそれぞれ1-3話程度の視聴後感をまとめているので、興味を持つきっかけになれば幸いだ。ちなみに2クール以上のシリーズ作品は「1期1話を観てね」くらいしか書くことができないので基本的に端折っているよ。

配信情報まとめ

 私はTVでアニメを観ない(BS見れないし、TOKYOMXもAT-Xも受信できない)ので、配信情報はこれ以外の手段について書いている。
 なお、独占配信系タイトルは放送開始時点でのものであり、後に他の配信サイトでも配信が開始される場合がある。あくまで現時点での参考になれば。

独占タイトル一覧

アマプラ独占配信

王様ランキング

ネトフリ独占配信

地球外少年少女
スーパー・クルックス
ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン

FOD独占配信

現実主義勇者の王国再建記 第二部

その他

永遠の831(WOWOW独占配信)
かなしきデブ猫ちゃん(NHK

感想

明日ちゃんのセーラー服

 陽キャの日常アニメ。 ☓あすかちゃん ☓あしたちゃん ○あけびちゃん
 主人公はひょんなことから田舎を離れて、遠い異国の地にある学校へ通うことになりました、という導入から始まるんだけど、「憧れの学校に入学できるの超楽しみ!」という描写だけでなく、妹との会話を通じて「周りとうまく馴染めるのかすごく不安な気持ち」「周りから変なやつって思われたくない」という等身大の女子中学生らしさが描かれていて、より「主人公にとって、いかにそのセーラー服が特別であるか」が際立っている。ここまで袖を通すのに覚悟が必要なセーラー服って、もはや戦闘服なのでは。
 周囲のキャラクターの心情描写まで非常に丁寧で、「残された妹の、心にできたささくれ」に共感しつつ優しく対話する姿を通じて、よりあけびちゃんを魅力的なキャラクターに仕上げているよね。非常に共感力の高いキャラクターなので、思い悩むキャラクターとの会話を通じてみんながどんどん笑顔になっていく幸せなお話だった。やさいせいかつ。2話の、「また明日!」を言える喜びを描いたお話があまりに幸せすぎて泣いてしまった。2話の絵コンテ・演出は『やがて君になる』『ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 {魔眼蒐集列車} Grace note』監督の加藤誠。やっぱりこの人の演出好き。
 セーラー服の作画ヤバすぎて草。「セーラー服が登場するシーン」や「新キャラが登場するシーン」等のタイミングで丁寧な一枚絵の差し込みが入るんだけど、服のシワやプリーツ、陰影、リボンの結び目に至るまで丁寧に描かれているので、ちょっと一時停止してみてよね。ちなみに原作でも同様に印象的なシーンを一枚絵で描くという演出のため、アニメと原作双方が画力で殴り合いをしている。とりあえず原作者のイラスト集買っちゃった。

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©博/集英社・「明日ちゃんのセーラー服」製作委員会

 キャラクターのお芝居がヤバすぎ。序盤の、入学までの期待と不安を描くパート(静かなお芝居が中心)でも髪の毛から足の指1本1本まで使って主人公の心情を描いていて、キャラクターのアニメーションだけでアニメが成立しちゃっている。また後半の、ついに初登校!から始まる一連のムービーが更に凄いことになっている。いや「うっかり口に入っちゃった髪を手で払いのけるお芝居」どうなってんのそれ。あと2話の「リップのCMのマネ」のやつも。魅入っちゃって一瞬時間が止まったかと思った。
 背景ヤバすぎ。田舎の描写から始まる本作はもう田舎の雰囲気や遠景の書き込みまですごく緻密な背景。あと毎回手前と奥に何らかのものを置いたり、主人公たちを画面の真ん中に設置しなかったり、奥行きの有りすぎる構図がずっと続くけど、描いてる人はパース狂わないように死ぬほど苦労してそう。特に「手前から奥に向かって歩くキャラクターのアニメーション作画」が何度も登場してて凄すぎる。
 家の中の作画も凄まじくて「生活感を演出するために小物をいっぱい設置した、TVドラマ撮影用のセット」みたい。窓の外の景色や光源処理もめっちゃ丁寧で、特に「朝日が差し込んで徐々に明るくなっている学校の廊下と白い壁の反射、その反射が映り込む木製の廊下の床板」とか。写実的すぎて思わず見惚れてしまう。古い校舎なのか、壁やドア、柱に木材が使われていて、その木材の木目が全部緻密に描かれてるのが凄すぎる(乾燥によって生じるひび割れまで描いてあるし)。
 あと、『のんのんびより』のような田舎が舞台でありながら、主人公の自宅が日本家屋じゃなくて異国情緒あふれる外観だったり学校がなんかお城みたいになっているのも相まって、まるでハイファンタジー作品みたいな雰囲気だよね。

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©博/集英社・「明日ちゃんのセーラー服」製作委員会

第2弾PV、見どころを集めすぎて3分もの大作になっているのほんと草
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 2016年からウェブコミックサイト『となりのヤングジャンプ』にて連載中の、博による漫画が原作。
 制作は『ワンダーエッグ・プライオリティ』『シャドーハウス』『約束のネバーランド』のCloverWorks。監督は『アイドルマスター SideM』監督、『Fate/Grand Order 絶対魔獣戦線バビロニア』副監督等、A-1 Pictures作品で仕事をしている黒木美幸。シリーズ構成は、『ダーリン・イン・ザ・フランキス』『シャドーハウス』で一部脚本を担当していた山崎莉乃が初のシリーズ構成。全話の脚本やるんかな。キャラクターデザイン・総作監を『Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-』アクションディレクターの河野恵美、『Fate/Grand Order -終局特異点 冠位時間神殿ソロモン-』サブキャラクターデザインの川上大志、『スロウスタート』キャラクターデザイン・総作監の安野将人が担当しており、総じてアクション系作品に強いスタッフが集まっている。

平家物語

※FOD先行独占配信作品として21年10月クール枠で感想を書いたけど、22年1月に地上波で本放送開始+各種配信サイトで配信が開始したので僭越ながら再掲。

 新約「The Tale of the Heike」
 鎌倉時代の軍記物語「平家物語」が原作。古川日出男による現代語訳『日本文学全集09 平家物語』が本作のベースなんだって。

 お話としては、平家物語をモチーフにした歴史ファンタジー。琵琶法師(の女の子)というアニオリキャラクター視点で盛者必衰の理をあらは(わ)す。
 ちなみに、お話の殆どが「国を巻き込んだお家騒動」みたいな感じで、内容が非常にドロドロしている。なんせ一族滅亡の話ということもあり、どんどん登場人物が色んな理由とともに退場していくのが悲しい。牛尾憲輔による音楽がどんなに悲しいシーンでも穏やかなので、より諸行無常みが強くて悲しい。あの人ってBGMの付け方が独特だよね。
 平家物語と言えば琵琶による弾き語りだけど、本作でもちょくちょくそれが挿入されていて「このあとこういう出来事があったんですよ。かなしいね」みたいな、行間を補完するような役割を担っている(現代語訳とセットで確認する必要あり)。そういう意味で本作は「琵琶法師による弾き語りと、現在視点での過去回想」のみで構成された作品ということなのかな。
 弾き語りに付けられている節回しはすごく特徴的なので、アレが出来る声優っているのかな、アニメではプロの奏者による弾き語りを流すのかな、とか思っていたのだけれど、悠木碧マジやべえ。
 登場人物のキャラデザで言うと、毛の描き方がめっちゃ有機的。どうやってそれアニメーションさせてるの?っていう線の入れ方で、特にまつげ、眉毛がヤバい。特に本作は目元のお芝居にフォーカスしたカットが多いので、なおさら印象的に映っている。やっぱり山田監督による手腕なのかな、目元のお芝居の多彩さ。

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©️「平家物語」製作委員会

 背景美術はでほぎゃらりー。もともとサイエンスSARUのアニメ作品ってかなり手書き感のある作風なんだけど、背景美術のでほぎゃらりーもまた「アナログ美術を継承していこうぜ」みたいなスタンスのスタジオなので、それが組み合わさって異次元の作風に仕上がっている。ここまで突き詰めた絵作りになると、アニメと言うより「動くコンセプトアート」みたい。ほんとにTVアニメなのか?

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©️「平家物語」製作委員会

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 制作はサイエンスSARU。監督はいつもの湯浅政明ではなく、京都アニメーション作品でおなじみ山田尚子。どういう繋がりなのか。シリーズ構成は同じく京都アニメーション作品『けいおん!』『たまこまーけっと』『聲の形』『リズと青い鳥』とかで監督とタッグを組んでいる吉田玲子。音楽は同じく『聲の形』『リズと青い鳥』より牛尾憲輔牛尾憲輔はサイエンスSARUの作品『DEVILMAN crybaby』『日本沈没2020』等でもおなじみ。
 また、歴史監修にNHK大河ドラマ平清盛』で時代考証を担当していた佐多芳彦が参加しているため、かなりガチの平家物語だったりする。
 余談だけど、NHKの『平清盛』が「大河ドラマを観たい人向けに作られた平家物語」だったのに対し、本作が放送されるのはフジテレビの+Ultra枠。この枠は海外展開を意識した作品を中心に制作されているらしいので、つまり本作は「クランチロールで配信されている海外アニメとして、海外のアニメファンが観る平家物語」という位置づけになるのでは。そういう意味でも、どう魅せ方が変わるのか結構気になっている。

東京24区

 目の死んでいない衛宮切嗣とトロッコ問題
 東京都内のとある自治区に住む活動家たちのお話。1話は1時間SPになっている。
 主人公は3人(以下青髪赤髪緑髪)。もうキャラデザがすごく好きです。1話の前半では、3人が冒頭の事件の1回忌で再会したことをキッカケに、それぞれが何を考えて、それを解決するために今まで何をしていたか、を示し合わせつつ和気あいあいとお好み焼きを食べるお話。体制側についた緑、アクティビストになった赤髪。そしてニートの青い髪。
 ちなみに1話は、特に3人の中で唯一前に進むことが出来ていない青髪視点を中心に描かれている。
 まず会話が面白い。本作は結構ゴリゴリに練られたハードな「近未来の東京を舞台にしたディストピアSF」という趣の作品なんだけど、その世界観説明に「説明しよう!」メソッドも「し、知っているのか雷電!」メソッドも使わず、露骨な説明セリフを抜きに日常会話だけで完結させようとするスタイルになっている。すごい。そしてよくわからない!
 例えば、本作では特高が街の治安を守っているんだけど「特高は未来予知が出来る」「特高は独自の判断基準で人の善悪を判断する」「監視社会である」くらいの要素しか描かれない(特高のことをよく知らない一般人と同じくらいの知識しか視聴者に与えない)という仕様で「どんな世界観なのかを知りたい」という欲求だけで最終話まで観れそうな勢い。
 後半では、ひょんなことから「幼馴染の女の子が列車に轢かれて死ぬ」という天啓を授かるんだけど、一切の示し合わせもなしに3人が同時に動き出す描写がすごく良かった。三者三様なキャラっていう印象付けから共闘への自然な流れにより、彼らが1話までに築き上げてきた信頼関係が端的に描かれてるし、ちんたら状況説明してる描写が省かれることで強烈な緩急の演出になってて惹き込まれる。
 今後はこの「不定期な天啓をキッカケにヒーロー活動をする3人」と「そもそもこの天啓は誰が何の目的で?」という部分がメインになっていくんだけど、ここもまた面白い。
 まず天啓。ヒーロー作品だと「総司令」みたいなポジションの人がヒーローに「状況、救出対象、敵」を伝え、ヒーローがそれを実行する~みたいなシナリオがあって、本作もそれに近い流れなんだけど、なぜか「救う相手を選ばせる」ということを強いてくるんだよね。作中でわざわざ「トロッコ問題」というワードを使ったり、暴走列車と分岐のモチーフを使ったお話になっていることから「3人がそれぞれ、未来を選ぶお話」という部分が本作の最も肝要な部分なのかな。
 そして、3人の答え。実は1話の事件で、3人の「救おうとした対象」が違うんだよね(事件解決後にそれぞれのモノローグで「何を救おうとし、何を諦めようとしていたのか」がバラバラであることがわかる)。言うなれば、トロッコ問題について「事故を起こした運行会社にとって最もダメージの大きい方法を選ぶ人」「列車の運行会社にとって最もダメージを小さくする方法を選ぶ人」「全員を救う方法を選ぶ人」くらい違う。
 特に、緑髪と赤髪がリアリストであるのに対し、青髪は「俺、みんな救っちゃうから!」というメサイアコンプレックスを抱いているという対比が強烈で、天啓に対しても「誰が何の目的で?」と冷静な二人をよそに「これは天啓だ!」と一人盛り上がる青髪。これが当の亡き友人の墓の前ってのがもうね。ヤバい。
 それぞれが発現した超能力も結構リンクしてて、リアリストの二人が「SF作品的に、ギリギリ「めっちゃすごい人」の範囲に収まりそうな能力」であるのに対し、青髪だけ「誰が見ても超人的で、非現実的な能力」になっているのが「ヒーローの夢を見ている主人公」には皮肉めいた暗喩になってるよね。
 何がすごいって、上記の3人の関係性が、1話の冒頭で既にバッチリ描かれているところ。1話の事件を通じて3人の関係性が急に変わってしまったのではなく「物語が始まる前からこういう人間だったことがわかるお話」だった。1話を観終わった後にもう一度見返すと、あまりの伏線の多さに驚くのでまだ1回しか見ていない人はぜひ見返してみてね。シナリオ書いた人マジですごい。
 作画めっちゃすごい。特に青髪のアクションシーン。彼は平時より街中をパルクールで移動する習性があるんだけど、動きがもうほんとパルクール。覚醒後の超人的な身体能力を発現するシーンも「わざわざビルの屋上にあるフェンスやパイプを使って、超高速パルクールのアクションシーンを描く」ということをしており、しかもそれがストーリーとあんまり関係ないのである(物語的には「速く移動できる」で十分のはず)。観てたら『ミラーズエッジ』やりたくなってきた。
 OPめっちゃかっこいい。絵コンテ・演出は先のアニメ『ホリミヤ』監督の石浜真史。クレジットの出し方までこだわってアニメーションさせるのほんと好きよね。あと、後半のキャラ紹介パートも、キャラの視線の動きがリンクしながら「→←↙↓↘→↗」って変化していく演出がすごい。
 あと、一番最初に出てくるメインスタッフのクレジットが「原作・脚本 下倉バイオ」なのも印象的。そこを推してるのね。

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 CloverWorks制作によるオリジナルアニメ。今期どんだけアニメ作ってんねん。監督はジョジョの奇妙な冒険シリーズでおなじみ津田尚克。副監督は『はるかなレシーブ』副監督、『織田シナモン信長』の髙橋英俊。シリーズ構成は、あのニトロプラスから下倉バイオが参加している。キャラクターデザインはジョジョ5部でキャラデザを担当していた岸田隆宏。首筋のシュッとした感じがすき。

その着せ替え人形は恋をする

 ☓オタクに優しいギャル ○ギャルが優しいオタク。「着せ替え人形」と書いて「ビスクドール」と読む。
 「〇〇(キャラクター)が大好きなので、自分もそのキャラになりたくてコスプレをしたい」という趣向がよくわからない人生だったので、折角だしこのタイミングで知りたい。ひょんなことから同級生のギャルと一緒にコスプレ衣装の研究をすることになったお話。
 内向的な主人公と、外交的なギャルの対比が印象的。特に、思ったことがあっても人にそれを言わない主人公の性格が描かれている放課後に教室を片付けているシーンが二人の性格を端的に描いてて結構好き。ギャルはみんなの代弁者だったんや。そんな彼女のかっこよさに惚れた主人公が、2話にして既に「はい!姐さん!」とか言い出しそうな舎弟ムーブしてて可愛かった。
 ギャルこと喜多川海夢の作画がずっと凄い。いや、服を脱ぐときの作画の枚数どんだけだよ。特に2話の採寸回(最初から最後まで採寸の話で草)では、二人の色んな表情、海夢ちゃんのつま先から髪の毛まで丁寧に描かれた作画アニメーション、二人のパワーバランス、あと彼女のヤバさみたいなものがてんこ盛りでとてもおもしろかった。表情の落差でいうと「ガチ照れしてる表情から、雑念を捨てて真剣に向き合っている表情にシフトする瞬間」が、モノローグと綺麗にシンクロしててめっちゃ好き。

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ここすき ©福田晋一/SQUARE ENIX・「着せ恋」製作委員会

 海夢ちゃんも「こっちは真剣なのに、ずっとそうやってふざけてるならお前を殺す」という具合のすごく真面目な表情をするので、単なるラブコメよりも緊張感があるよね。同じく服飾をテーマにした作品『ランウェイで笑って』のワンシーンをふと思い出した。あっちはもうちょっと地獄だけど。

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ここすき ©福田晋一/SQUARE ENIX・「着せ恋」製作委員会

 上記のシーンに限らず「相手を(自分とは異なる分野のオタクとして)尊敬しているからこそ出来る、親密なコミュニケーション(意味深)」と、「それを受けてめちゃくちゃ照れているんだけど、同じく相手を(自分とは異なる分野のオタクとして)尊敬しているからこそ、それを顔に出すまいと葛藤するさま」というやりとりが非常にほほえま。二人の関係が親密になるほどこの相互一方通行なやりとりが増えていくんだけど、1期のうちに相手の好意に気づく瞬間は訪れるのだろうか。お互いにノールックパスを顔面キャッチしながら試合を続けるラブコメも観たいけども。
 あとEDがめっちゃ可愛い。アニメーションを担当したのは、ふたた氏。スタジオコロリドに所属しているアニメーターの人で、監督のラブコールによって実現したんだって。へー。
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 あと、公式ラジオが非常に面白い。パーソナリティは主人公を演じる石毛翔弥、ギャルを演じる 直田姫奈。特に直田さんの「えー!石毛さんアイドルのライブ行ったこと無いんスかー!?じゃあ今度一緒に行きましょうよー!メッチャ楽しいッスよーww」みたいなノリがめちゃくちゃギャルで毎回笑ってしまうので、いっそずっと続けてほしい。第1回はまだ30分くらいの尺だったのに、第4回で既に1時間くらいまで尺のびてて草。どんだけ仲いいんだ。
www.youtube.com

 『ヤングガンガン』にて2018年から連載中の、福田晋一による漫画が原作。制作はいつものCloverWorks。監督は『A3!』監督で、CloverWorks作品では『ワンダーエッグ・プライオリティ』にて6話の絵コンテ(クソマズすき焼きの回)を担当していた篠原啓輔。監督に限らず、ワンダーエッグ・プライオリティで演出を担当した小室裕一郎が本作の4話絵コンテを担当していたり色々と縁がある作品なので、ぜひワンエグも観てね。面白いよ!
シリーズ構成は『ベルゼブブ嬢のお気に召すまま。』『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』『BUILD DIVIDE -#000000-(CODE:BLACK)』の富田頼子。

リーマンズクラブ

 実業団所属スポーツ選手のお仕事アニメ。
 スポーツ選手って、ライフステージが変わるごとに抱える問題が異なるっていう要素はもっとたくさんの作品で描かれていいと思うの。最近だと、オリジナルアニメ『体操ザムライ』はもうちょっと先のステージのお話で、「育てなきゃいけない子供がいるお父さんなんだし、さっさと現役引退して働くべきでしょ」から始まる作品。『ユーリ!!! on ICE』はもうちょっと手前のステージで、「現役を続けられるギリギリの年齢で、かつ大きな大会で成果を出せなかったんだから、流石にもう見切りをつけるべきだよね」から始まるお話、みたいな。本作は「実業団で結果が出せなかったせいで会社クビになったし、流石にスポーツ選手としては店じまいかな」から始まるお話。
 序盤は「実業団に所属するスポーツ選手の日常」がメイン。サラリーマンとして仕事もこなしつつメンバーとともに練習に励む姿が描かれるんだけど、これが新鮮。
 社会経験の少ない主人公が営業職として先輩にあれこれ指導を受けながら仕事を学んでいく様はお仕事アニメ感があって好きなんだけど、夕方になるとみんなで同じジャージ着て体育館に集まって練習して、っていう様はまんま高校生の青春部活モノで、この2つのパートを行き来しながら「生活感のあるスポーツ選手の日常」を丁寧に描いている。

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OPより、部活感と社会人感を同時に感じるシーン ©Team RMC/サンライトビバレッジ広報部

 多くの作品では、(特に若年の)スポーツ選手自身の将来について「スポーツを続けるか、もしくは辞めて社会人になるかの二者択一を迫られるお話」という描き方をしていて「働きながらスポーツ選手を続ける」というステージはスルーされがちなんだけど、そうじゃねえだろっていう当たり前のことを本作で描いてるのがすごく良いなって。
 人間関係の描き方も好きで、例えば青春部活モノだと「方向性の違いで衝突した部員が次の日から部活に顔を出さなくなる」とか「一人でコソ練してる奴がいる」みたいな、「部活=自主的に参加するもの」っていう性質の描写があるんだけど、実業団に所属している主人公はおちんぎんをもらってスポーツをしているので、いくら先輩が気に入らなかろうが、シングルスで出たいって直談判しているのに無理やりダブルスを組まされて怒り心頭であろうが、次の日には当の先輩の後ろにくっついて営業の仕事を教わってるし、その日の練習にはちゃんと参加するし、意見があるならちゃんと言うし、っていう「社会人として、大人としての最低限」を踏まえた関わり方なのがすごく良いよね。中学、高校の部活じゃこういう描き方は出来ないから「大人のスポ根アニメ」ならではなのかも。
 やっぱバドの作画やべえ。バドミントン特有の構え等、細かい仕草まで完璧すぎる。強烈な緩急とスピード感のある試合展開、相変わらず目で追えない速度で飛翔するシャトル。それでいて、お互いの一手一手がまるで将棋みたいに「読み合いで変化する盤面」を演出しているのがほんとすごい。まるで将棋だな!(言いたかった)
 1話の練習試合だけでもうめちゃくちゃすごいので、視聴継続しないことがわかってる人でもとりあえず1話の試合だけ観てみてよね。
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 またライデンフィルムが京都のアニメ作ってる。制作はライデンフィルムによる、オリジナルアニメ。「バドミントンは楽しいスポーツ」という固定概念を覆した作品『はねバド!』を制作した会社としておなじみ。監督は同スタジオの作品で各話演出を担当してたりする山内愛弥。初監督かな。シリーズ構成は『さらざんまい』で全話脚本を書いている内海照子。
 特に首元がシュッとしたキャラクターのデザインは『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』『DIVE!!』でおなじみヤスダスズヒトが原案を務めている。アニメーションキャラクターデザインは『カブキブ!』『マクロスΔ』『千銃士』でキャラデザを担当した、まじろ。

スローループ

 ゆるフィッシュ🎣
 フライフィッシングを軸にした、やさしいヒューマンドラマ。再婚相手の連れ子と云々っていう恋愛マンガではありがちな展開ながら、序盤はむしろ「仲が良かった肉親を、幼くして亡くした女の子の話」の部分がフィーチャーされた物語になっており、親子関係がうまく行っていない子供たちが思い悩む姿は結構心に来るものがある。

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父親の部屋の変化だけで、ひよりちゃんの心境が伝わってくるシーン ©うちのまいこ・芳文社/スローループ製作委員会

 主人公を通じて描かれる「家族を失ったことで生じる漠然とした喪失感のようなもの」が丁寧で好き。本作の主人公は決して暗い性格ではないのだけれど、自分の力だけではうまく笑顔になることが出来ない感じについ共感してしまうし、周りの人と釣りを通じてコミュニケーションをしている間だけは笑顔になっている描写や、本人がそのことに気づいている様子が無い(無自覚である)ところが「ひよりちゃんが、こはると出会ったことで徐々に何かを取り戻していくさま」を何気なく描いてて好き。平和な話なのに泣いてしまう。

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「他人に釣りを教える」ことが、最初の表情変化のキッカケになっている ©うちのまいこ・芳文社/スローループ製作委員会

 私の場合はもう15年以上前なのでうろ覚えだけれど、「体の半分が無くなったような感覚」とか「面白いときに面白いと感じる力を失う」とか「一緒にハマっていた趣味を惰性で続けているけど、何が面白いのかを忘れてしまう」とかそんな感じだった気がする。そういう経験上、ひよりちゃんがフライフィッシングを続けている事自体がわりと救いのあるお話だなぁ、って。
 もうひとりの主人公・こはるを含め、みんなひよりちゃん対して優しい。特にこはるは心情を察する能力が高いので、考えなしに飛びついてしまう突拍子もないキャラでありながら、常に周りの人の気持ちに対してアンテナを立てているところが好き。また、彼女が何に気づいて、何を想って、その結果どう行動するのかという思考の流れをあえて描かず「ひより視点では、いつも笑顔で接してくるアホの子に見えている」という描写になっているのがすごくエモい。いつもひよりを振り回しているようで、こっそり歩幅を合わせてくるじゃん。

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ここすき ©うちのまいこ・芳文社/スローループ製作委員会

 コミカルな表現が多く、総じてややシリアス気味なお話でありながらテンポよく明るいテイストに仕上がっている一方で、海を中心とした写実的な背景やオケ中心の音楽によって、本作がコミカルな日常だけではなくヒューマンドラマのウェイトも大事にされていることを感じる。きらら作品の中ではかなり重めのストーリーな分、主人公たちが成長していくことで穏やかな日常パートが増えていくさまは、「きらら作品になっていく過程を描くアニメ」という趣がある。
youtu.be

 『まんがタイムきららフォワード』にて2018年から連載中の、うちのまいこによる漫画が原作。
 制作はSILVER LINK.の子会社であるCONNECT。『俺を好きなのはお前だけかよ』『魔法科高校の優等生』でおなじみ。監督、副監督の秋田谷典昭、守田芸成を含む多くのスタッフが『俺を好きなのはお前だけかよ』から引き続き参加している。
 シリーズ構成は『私に天使が舞い降りた』『恋する小惑星』の山田由香。音楽も、両作の劇伴を担当した伊賀拓郎が本作に参加している。

薔薇王の葬列

 イングランド時代劇
 王権をめぐる、血で血を洗う争い。原作はシェイクスピアの戯曲なので、史実に基づいた歴史モノというより脚色が多めのファンタジー要素が強い作風になっている。原作が少女漫画ということもあり『ベルサイユのばら』を連想する人がいるかもしれないけれど、本作の舞台は100年戦争の後に起きたイングランドの内乱(15世紀)が舞台なので、フランス革命(18世紀)がテーマのベルばらとはあんまり関係ない。
 主人公を中心に戦いの歴史が描かれる軍機モノというわけではなく、むしろ「内乱に翻弄されながら闇に落ちていく主人公の心情描写」が中心になっている。父親への愛情をこじらせた主人公の黒い感情を、陰鬱とした背景描写、おどろおどろしいシルエット描写を多用して描いているため、ずーっと暗いアニメーション映像に仕上がっている。今放送されている国家存亡劇『平家物語』『王様ランキング』と比べると、本作の色彩的な異質さがよく分かる。
 軍記物である平家物語は、物語の顛末を「ビワ」というキャラクターを通じて描く作品なのに対し、本作は主人公の「内的宇宙」を主人公目線で描いた作品なので、そもそも描写されているものが全然違うんだよね。特に「主人公にしか見えない、別人格との会話シーン」は、主人公の認知の歪みを端的に描いていてすごく印象的。

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©菅野文(秋田書店)/薔薇王の葬列製作委員会

 心理描写が多いのと、演出のクセが強い挿絵を多用しながら声優のお芝居で魅せていくという手法をとっているため、アニメと言うよりも音楽朗読劇に近い作品かも。そういう意味では大本の作品であるシェイクスピアの戯曲っぽさを敢えて意識しているのだろうか。

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©菅野文(秋田書店)/薔薇王の葬列製作委員会

 セクシャルマイノリティの主人公を演じるのは斎賀みつき。元々中性的な声の人っていうのは把握していたのだけれど、本作で改めてその凄さを再認識した。公式ラジオ番組を聴いていても、作っていない素の声がもう男性っぽいのほんと凄いよね。
youtu.be

 『月刊プリンセス』にて2013年から連載されていた、菅野文による漫画が原作(完結済み)。ウィリアム・シェイクスピア作『ヘンリー六世』『リチャード三世』を原案とした作品なんだって。
 制作はJ.C.STAFF。監督は同じくJCの作品『殺戮の天使』で監督を務めた鈴木健太郎。シリーズ構成は『ゲーマーズ!』『メルクストーリア -癒術士と鈴のしらべ-』の内田裕基。今期の『失格紋の最強賢者』でもシリーズ構成を担当している。

錆喰いビスコ

 東京のドロヘドロ
 未来の日本は都心に大穴が空きがち問題。ひょんなことから東京が崩壊した日本を舞台にしたSF作品。未来の日本で蔓延する謎の病気と一緒に暮らしている人々のお話。
 1話~2話を通して指名手配犯の主人公と自警団の大立ち回りが描かれているんだけど、既に独自の世界観が発揮されまくっている。コンクリート製の雑居ビルで構成される町並み、郊外の砂漠、主人公の前近代的な移動手段と対照的な自警団の軍事車両、大砲を背負ったカバ、カニ、そしてきのこ。きのこの作画が『ドロヘドロ』のきのこ並にしっかりしてて好き。裏側のヒダヒダとか。

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©2021 瘤久保慎司/KADOKAWA/錆喰いビスコ製作委員会

 美術すげー。美術・クリーチャー設定は、『FREEDOM』の世界観設定、『甲鉄城のカバネリ』で美術デザインを担当している曽野由大。東京崩壊後の日本が舞台ということで、日本の町並み+錆び+謎の配管+水蒸気という、ちょっとしたスチームパンク風になっててめっちゃ好き。

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©2021 瘤久保慎司/KADOKAWA/錆喰いビスコ製作委員会

 また、クリーチャーも「人工物+生物」というコンセプトが強烈。特に2話のカタツムリが飛翔するシーン。緻密に描かれた人工物感がある飛行機の筐体とでっかいカタツムリの顔。時代の雰囲気に似つかわしくないミサイル攻撃も相まってめっちゃかっこいい。

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©2021 瘤久保慎司/KADOKAWA/錆喰いビスコ製作委員会

 また、カタツムリの登場シーンは背景がアニメーションする動画であり、そのフォルムから漠然と『風の谷のナウシカ』でバカガラスが飛翔するシーンを思い出す人も多かったと思うけれど、監督もあえてナウシカと同じ手法で制作したんだって。いやー良いもん見れたわ。ここらへんの裏話はYoutubeで配信しているので、興味のある人は是非。
youtu.be
 OPマジで好き。絵コンテを何故か『id:INVADED』シリーズ構成の舞城王太郎が担当していて、大量の「動く生物」をわざわざ作画で描写した疾走感のあるアニメーションに。風邪引いたときに見る夢かな。

 電撃文庫より2018年から刊行されている、瘤久保慎司によるライトノベルが原作(イラスト:赤岸K、世界観イラスト:mocha)。
 制作はOZ。初元請けかな。監督は『Fate/Zero』『はたらく魔王さま!』『id:INVADED』でキャラクターデザインを務めていた碇谷敦。副監督の又賀大介もまた『id:INVADED』でメインアニメーターを担当しており、他にもIDに参加したスタッフが多く本作にも参加している。特にキャラクターデザインがめちゃくちゃIDっぽく、陰影の少ない特徴的なデザインに。

トライブナイン

 ダンガンロンパ(物理)
 未来の東京を舞台に、ヤンキーたちがナワバリバトルを繰り広げるお話。各リージョンを統括しているギャング同士の抗争を収めるために国が導入したルールに従って野球で勝敗を決めていく。
 ルールにちゃんと従うギャングってどうなん?と思ったら、実際は割とルール無用の大乱闘で安心した。あの手この手で対戦相手を再起不能にしたほうが勝ちというバトルアクション作品で、エクストリーム化した『テニスの王子様』という趣向になっている。野球とは。
 1話では「言いたいことは自分で言えよ。ちゃんと自分の足でバッターボックスに立たないと何も始まらないぞ」というメッセージと、それに呼応する仲間とのやり取りが描かれている。自分のマイクを持て、というメッセージを発信している『ヒプノシスマイク』に通じるところは、スポーツ青春モノっていうよりヤンキー漫画っぽいかも。
 また、試合には重火器の持ち込みも制限されておらず、毎話登場する敵が強力な新兵器を使用してくる。1話の時点で既に超能力バトルになってて草。最後の方めちゃくちゃ敵の強さがインフレしそうなんだけど大丈夫だろうか。
 個人的に外野手の動きが好き。よくアニメ表現で「空の彼方に飛んでいくボール(ホームラン)」っていうのがあるけれど、そのボールを追いかけて外野手が街中を疾走したり空を飛んで捕球したりする描写がなんか斬新。それができちゃうとホームランはもはや存在しないので、なおさら「相手をうちのめす(物理)」という点にフォーカスを当てたルールになっているのね。
 音楽はダンロンでおなじみ高田雅史が担当。最初から最後まで低音がボンボン言ってるので、できればサブウーファー推奨。最初から音楽のテンションが高いのに、1話ラストの盛り上がりでもう一段テンションが上がるのめっちゃ好き。
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 『ダンガンロンパ』でおなじみ小高和剛が原案を務めるオリジナル作品。小高和剛が代表を務めるトーキョーゲームスがプロデュースするアニメ作品は『アクダマドライブ』に続き2作目となる。アクダマドライブよかったよね。
 制作は『セブンナイツ レボリューション -英雄の継承者-』『東京リベンジャーズ』『ビルディバイド -#000000-』のライデンフィルム。監督は『ポプテピピック』で一部演出を担当している青木悠。本作が初監督かな。シリーズ構成はいつもの横手美智子。キャラクター原案はダンロンに引き続き小松崎類が参加している。

殺し愛

 殺し屋の日常アニメ。
  死の商人のお話としては『博多豚骨ラーメンズ』に近いかも。殺し屋同士の群像劇が繰り広げられる、ハードボイルドな作品。
 スパイ・アクション的な側面もありつつ、主人公と主人公の前に現れた謎の男との関係を紐解いていくお話が本作のメインみたい。
 普通の恋愛モノと違って、登場人物(主にメインの二人)の目が死んでいるところが好き。デートに誘って断られて、っていうやり取りも常に殺意が溢れていて、ここまで警戒度が振り切っていると逆に清々しいよね。
 あと、血に染まっている日常風景(お互い電話しながら人をころころしていることが多い)とラブコメちっくなやりとりのアンバランスさが結構好き。

 『月刊コミックジーン』にて2015年より連載中の、Feによる漫画が原作。
 制作は『デビルズライン』『この音とまれ!』『怪病医ラムネ』のプラチナビジョン。監督は『この音とまれ!ディレクションアドバイザー、『怪病医ラムネ』監督の大庭秀昭。

天才王子の赤字国家再生術

 ヤケクソ城主のサクセスストーリー
 ひょんなことから国政を握ることになった青年のお話。すごく硬派な国盗り合戦のお話でありながら、主人公の軽薄なキャラクター性と原題にもある通り意識の低い志によって半ばコメディ作品になっている。
 主人公が毎話他国との衝突で難しい舵取りに四苦八苦するさまを「あーめんどくさ。売国してさっさと辞めてぇ」みたいなノリで描きつつも、合戦や国政(主に予算の部分)の描写はちゃんとしてて非常にとっつきやすいのが印象的。実はモンスターや魔法も登場しないので、見せたいものがシンプルなのも好き。
 合戦のシーン、モブ兵士をどれくらい描くか問題。それこそWITスタジオみたいにすごいスタジオであれば『ヴィンランド・サガ』よろしく全部描けるんだろうけれど。翻って本作では「チェスのコマ」に見立てた兵士のアニメーションによって動的に戦況を表現していてちょっと斬新。「司令官から見える俯瞰的な戦場の表現」としてすごく良いと思うし、視聴者的にもわかりやすい。やや情緒がなくなるけど、主人公の性格的に「あーこいつ兵士の一人一人の生き死ににそこまで執着してないんだなぁ」という、妙な納得感がある。

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©鳥羽徹SBクリエイティブ/天才王子製作委員会

 背景美術は禍つヴァールハイトに引き続き、鹿児島ラメカヒリムが担当。なんてこと無い民家が映るだけのカットとかでもめちゃくちゃ作画が綺麗なところが好き。家の汚れた感じとか経年劣化した感じとか、道がボコボコな感じとか、ちらっと映る背景の山脈とか。よく見ると窓ガラスも反射が一様ではないところも細かいよね。

 GA文庫より2018年から刊行されている、鳥羽徹によるライトノベル(イラスト:ファルまろ)が原作。原題は『天才王子の赤字国家再生術〜そうだ、売国しよう〜』で、アニメ版タイトルはヤケクソ感がちょっと減っている。
 制作は『Lapis Re:LiGHTs』『禍つヴァールハイト -ZUERST-』の横浜アニメーションラボ。監督の玉川真人は本作が初監督かな。シリーズ構成はいつもの赤尾でこ


 

ハコヅメ~交番女子の逆襲~

 交番に勤務する警察官の日常アニメ。
 警察のお仕事ってめっちゃ大変なんだね。本作はアニメの放送に先駆けてTVドラマが放送されているように、題材として「刑事モノ」がドラマの定番でありながら「刑事ドラマでは扱われないような、地味なお話」を中心とした作品になっているところが一番の特徴(作中で本人がそんなことを言っている)。そういう視点を持ったTVドラマとしては『踊る大捜査線』のTVシリーズをちょっと思い出した。あっちは刑事課のお話だけど。
 1話では主人公が交番に配属されてすぐのお話。事件が起きたときの事務的な流れと、「刑事課からやってくる刑事がめっちゃ怖い」という主観的な描き方が斬新で好き。よくよく考えると「面倒事に巻き込まれたくない」という心理と常に戦わないと仕事ができないってほんと大変だよね。一回でも「見て見ぬ振り」が許されないとかマジで辛い。あと基本的に市民からの当たりが強くてつらい。
 他にも地元の小学校に安全講習の講師として招かれるお話とか、警察の仕事ってほんと色々あるんやなぁ、って。刑事ドラマばかり観ていると「事件→犯人探し→逮捕→街が平穏を取り戻す→終わり」ってなるけど、そういう話は微塵も出てこない感じか。
 仕事を通じていろんな人たちの人生を垣間見るお話(ヘビーなやつ)、という意味では『ODD TAXI』に似た趣きがある。あ、でもミステリー作品ではない。
 演出がTVドラマっぽい。業務の説明が多く、主人公の感情描写も全部セリフで済ませてくれるので、会話のやり取りが警察コントみたい。会話のあるシーンでのみ時間が進む世界(会話のないシーンは時が止まっている)なのも、コント空間っぽさがあるよね。

 『モーニング』にて2017年から連載中の、泰三子による漫画が原作。
 制作はマッドハウス。監督は『逆境無頼カイジ』や『マーベル フューチャー・アベンジャーズ』で監督を務めた佐藤雄三。シリーズ構成は『はぐれ勇者の鬼畜美学』『ユリシーズ ジャンヌ・ダルクと錬金の騎士』シリーズ構成、また2021年以降の劇場版プリキュア作品で脚本を担当してる金月龍之介。キャラデザは『LAIDBACKERS』の土屋圭。
 ところで。マッドハウスはマーベル作品のアニメを永らく担当しているスタジオなんだけど、このマーベル作品、ディズニー資本のため一般的な動画配信サービスで視聴することができず、Disney+を契約しないといけない問題をどうにかしてほしいんだけど。最近で言えば『スター・ウォーズ:ビジョンズ』がDisney+でしか見れない件とかほんま。

佐々木と宮野

 しっとりしてる男子高校生の日常ハリネズミのジレンマ
 百合作品を引き合いに出すのは非常に申し訳ないけど『やがて君になる』を思い出す素敵な、というか詩的な作品。やが君は作者曰く「光の百合と闇の百合」がテーマで、翻って本作も「BL」が明確にテーマとして扱われている。宮野にとってのBLは「個人的な趣味として一部の友人にも知られている、比較的オープンな性的趣向(明部)」であるのに対し、佐々木は「宮野に対する個人的な感情で、BL作品のそれとは別物で、絶対オープンにできない性的指向(暗部)」みたいな対比になっているのが印象的。普段は内向的な宮野と外向的な佐々木という対照的な二人でありながら、佐々木のモノローグで彼の非常に臆病な性格が描写されているところも、より彼らの人間性に強い陰影が出ていて好き。演出もすごく巧みで、日中の明るいシーン、日が沈んでいくシーン、夜のシーンでそれぞれ描かれる感情の温度が一変するところがとても良い。
 あと、手のお芝居にめっちゃ力が入ってるよね。セリフやキャラの表情を使わずに、手のお芝居だけでバッチリ感情表現してんの。しかも頻繁に。最近あまり「手だけでお芝居をする男性キャラのアニメ」を観ていなかったので、ちょっとゴツい手の作画アニメーションが凄く新鮮。OPのスタッフクレジットに「ハンドアクトアニメーター 太田衣美」という表記があって、なんぞこれ?と思っていたのだけれど、本人曰く「手を描いています」とのこと。手のお芝居を担当する専属のアニメーター立ててるってすごない?

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©2022 春園ショウ/KADOKAWA/「佐々木と宮野」製作委員会

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 春園ショウによる漫画が原作。同氏がpixivに掲載を始め、2016年より『ジーピクシブ』で連載中。
 制作は『ログ・ホライズン』『魔術士オーフェンはぐれ旅』『厨病激発ボーイ』のスタジオディーン。監督は『ログ・ホライズン』『月が導く異世界道中』『EDENS ZERO』の石平信司。シリーズ構成は『世話やきキツネの仙狐さん』『魔王城でおやすみ』『がんばれ同期ちゃん』の中村能子。キャラクラーデザインは『いつだって僕らの恋は10センチだった。』キャラクラーデザインを担当していた藤井まきが参加している。

 中国版pet。中国でのタイトル『时光代理人』を直訳すると「タイムエージェント」になるのね。ちょっとかっこいい。
 不思議な力を使って諜報活動をするチームのお話。SFサスペンス?割とミステリー要素が強い。
 1人目は写真の中の世界で起きる出来事を把握できるため、オペレーターとして作用
 2人目は写真の中の世界における主人格に憑依することができるため、プレーヤーとして作用する
 文字で見るとわかりにくいけど、絵としては「過去の世界にツーマンセルで潜入調査する」という感じ。
 ゲームのセーブデータみたいに何度もリトライできるわけではなく「写真の中で起きた出来事はそのまま未来に反映される」という仕様のため、潜入調査に失敗するとペナルティによってリアルで詰む可能性があるという緊張感があり、毎話結構ハラハラしながら観ている。
 二人の思想信条の違いが、お話をより面白くしている。依頼人の利益を追求するオペレーターと、憑依した人格(たいてい、調査の依頼をした人物に親しい誰か)に感情移入しちゃうプレーヤーの衝突が描かれているんだけど、写真の中でいろんな人間ドラマを追体験していくうちに「もしここでこうしていれば、未来は変わったんじゃないだろうか。そしてそれが自分(プレーヤー)に出来るとしたら、リスクを負ってでもやるべきか」みたいな葛藤が結構エモい。「写真の中の人物にとっての幸せ」と「依頼人にとっての利益」が、必ずしも相反するものとは限らないよね、っていう2話のお話が結構好き。
 ノスタルジー。1話、2話、3話と「都会での暮らし、田舎での暮らし」という対比が登場するのが印象的。本作の舞台となる「とある写真館」もまたノスタルジーを象徴する外観だよね。中国は日本より更に地方と都会の格差が大きい国なので「格差社会」みたいなテーマの作品が特に好まれたりするのかな。
 お話の構成が日本のそれとちょっと違うな、って思ったのが、説明をどれくらいするか?のところ。例えば日本の作品だと「1話で世界観や舞台装置(本作で言うところの特殊能力)の説明をちゃんと入れる」とか「1話は説明抜きでまず盛り上がるお話を入れて、2話に前日譚とか説明シーンを入れる」みたいな構成が多いイメージなんだけど、本作では2話まで終わった時点で「3人はどういう馴れ初めなのか」「特殊能力はいつ発現したのか」「諜報活動を始めたきっかけは?」みたいな説明が一切なし。いらないっちゃいらないし、いるっちゃいるんだけど、ここまで説明無いのはちょっと新鮮。
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 中国発のオリジナルアニメ。2021年4月からbilibiliにて配信され、日本では2022年1月から日本語吹替版が放送。字幕版とか無いんかな。
 制作は瀾映画。どこ?ちなみに英語表記はStudio Lan。ツイッターの公式アカウントがあるので興味のある人はフォローしてみてね。
https://twitter.com/STUDIO_Lan_
 ちょっと面白いなって思ったスタッフィング。監督の李豪凌(『詩季織々』とか『天官賜福』とかでおなじみ)は、演出ではなく脚本を担当していて、演出のLAN氏はキャラデザと総作監を担当という采配になっている。監督が絵コンテを担当せず脚本を担当というのがまず日本だとあまり見ないし、演出の人が作監を担当するっていうのも見ない。どういう流れでアニメ作ってるんだろ。

怪人開発部の黒井津さん

 怪人創造デザイン部
 とある秘密結社で働く研究者のお話。日々ヴィランと戦う特撮ヒーローの裏で、別の戦いが繰り広げられている。
 ファンタジー系お仕事アニメとしては『天地創造デザイン部』っぽくて、架空の生物(怪人)の企画会議→通ったらデザイン案の予算提示→各部署との協議→トップの鶴の一声で全ボツ→…というプロセスを経て生まれるプロダクツ。怪人の半分は優しさで出来てるんやな、って。
 よく特撮作品で「絵前にこの怪人は倒せまい(ニヤニヤ)」みたいな三下ムーブをかます敵幹部が出てくるけど、テメーの部下たちがあれだけ頑張って生み出した怪人を、上司として誇りたくなる気持ちがちょっと分かる。
 主人公かわいい。声を担当するのは、ウマ娘ナイスネイチャ役でおなじみ前田佳織里。怪人を生み出す科学者といえば、鷹の爪団の博士よろしくやべーヤツというテンプレがあるけれど、本作の主人公は至って凡庸な研究者。むしろ勤務態度に優れ、上司からの信頼も厚く、後輩とのコミュニケーションも滞りなくこなす有能な人。
 以前にNHKの番組「100分De名著」の中でハンナ・アーレント著「全体主義の起源」を扱った回を観たことがあって、その中で解説の方が「悪の本質はその凡庸さにある」みたいな話をしていたことをふと思い出した。特撮作品に出てきそうな「脚色された悪役」ではないキャラクターだからこそ、逆にリアリティを伴う「悪」を帯びた魅力的なキャラクターなのかな、って。そういや表題の「くろいつさん」って、元ネタはハーケンクロイツなのかな。
 でも作品的には多数の愉快な仲間たちが登場する特撮パロディ作品なので、その「凡庸な悪」が「脚色された悪(勤め先)」にもみくちゃにされていく様が見てて面白いし、何気に平和なお話で草。ヒーローと戦うときにわざわざ「例の採石場」まで移動するのはどういう理屈なんだ。

 『COMIC メテオ』にて2020年から連載中の、水崎弘明による漫画が原作。COMICメテオの作品がアニメ化されるのは『邪神ちゃんドロップキック』『理系が恋に落ちたので証明してみた。』以来。みんな原作のクセが強いんじゃぁ~。
 制作はQuad。初元請けかな。監督は『新妹魔王の契約者』『そらのおとしもの』『メルヘン・メドヘン』の斎藤久。でも本作はそこまでエロ寄りじゃないみたい。シリーズ構成は『軒轅剣 蒼き曜』『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝 2nd SEASON -覚醒前夜-』『世界最高の暗殺者、異世界貴族に転生する』の高山カツヒコ。キャラクターデザインは、監督とよく一緒に仕事をしている森前和也。『デート・ア・ライブ』『新妹魔王の契約者』のメインアニメーターや『魔装学園HxH』の総作画監督なんかをしていた人のため、本作の女の子がやたら可愛く描かれている。
 キャラクターの話でいうと、本作では「ヒーローデザイン」として山根理宏(めっちゃすごい人)、ことぶきつかさ(めっちゃすごい人)、「怪人デザイン」として森木靖泰(めっちゃすごい人)、「レジェンド&ローカルヒーロープロデュース」として鈴村展弘(めっちゃすごい人)がクレジットされており、特撮ヒーロー(実在)が登場するシーンだけもはや別のアニメになってて草。どこに力入れてんねん。

異世界美少女受肉おじさんと

 異世界TSF冒険コメディ(BL)。
 幼馴染の男二人が、合コン帰りに異世界転生してしまうお話。「元々想いを寄せていた友人が異世界転生のついでに女性化してしまった」というシチュエーションなので、カテゴリとしては一応BLになるのかな。
 似たシチュとして、僧侶枠の作品『黒ギャルになったから親友としてみた。』では「友人がある日突然ギャルになってしまったので、とりあえず1発ヤッてみた」みたいな展開だったけれど、翻って本作は、なんと二人がセックスをしていないのだ。すごい!
 昔『らんま1/2』っていう作品を親の影響でよく読んでいて、あの作品の雰囲気を思い起こさせるようなノリ。エロネタが少ないところとか、登場人物がやけにみんな紳士なところとか、主人公が普段ヤカラなのに女性のふりをするときだけめっちゃあざとくなる感じとか。キャラ同士の軽快なドツキ合いも見ていて楽しい。
 アニメ化されたBL作品の中でも、二人の性生活を描く『抱かれたい男1位に脅されています。』や、青春群像劇の『ギヴン』『佐々木と宮野』とも違う、風変わりな作品という印象。
 主人公の二人組を演じるのは、M・A・O日野聡。なんせ百戦錬磨の二人ゆえ、掛け合いの緩急とか間のとり方が完璧すぎてずっと観ていられる。

 原作は、なろう小説はなく原作:津留崎優、作画:池澤真による漫画。『サイコミ』にて2019年から連載中。
 制作はOLM。監督は『かみさまみならい ヒミツのここたま』監督補佐の山井紗也香。同スタジオの作品『ODD TAXI』でも何話か演出を担当している人。シリーズ構成は『少年アシベ GO! GO! ゴマちゃん』『遊☆戯☆王SEVENS』の竹内利光

ニンジャラ

 アメリカの新しいニンジャヒーロー
 世間にはびこる悪いやつと戦う忍者の子孫のお話。もとがアクションゲームということもあり、アメコミヒーロー風のバトルアクション作品。
 子供向けの作品でありながら、アメリカが舞台の作品ということで「未知の高性能ドラッグ」「ドラッグの開発研究をする科学者」「それを狙うハッカー」「それを狙うマフィア」「いきなり裏切る味方」みたいな定番ネタが盛り込んであって、ポップなビジュアルやニンジャ要素を差し引いても純粋にドラマ部分の面白さが光っている印象。おまけに人も死なないし流血表現もベッドシーンも無いので気軽に見られるね!
 音楽が渋い。担当は『ボールルームへようこそ』『約束のネバーランド』の小畑貴裕。スポットでJAZZを流す作品はまだ多いけど、本作はほぼJAZZしか流れない珍しい作品。主人公がお尋ね者になって以降は特にアンダーグラウンドでのシーンが多く、そこにJAZZが流れているもんだからちょっとしたハードボイルド系作品の香りすら感じる。特に戦闘中の曲が好き。

 ガンホーによるNintendo Switchのゲームが原作。制作はOLM。監督は『すべてがFになる』『約束のネバーランド』でおなじみ神戸守。え、人死ぬやつなの?シリーズ構成は『フューチャーカードバディファイト』『パズドラ』『不滅のあなたへ』の藤田伸三

CUE!

 それがアイドル声優
 予てより、歌にダンスにミュージカルに、幅広く活躍している声優について「それってもう声優じゃなくてアイドルやんけ」みたいなことを思っている人は多いと思うけれど、今更である。
 とある新人声優事務所に所属している女性声優さんのお話。演者をテーマにした作品としては『A3!』『ゲキドル』等色々なアニメが最近でも放送されていたけれど、やっぱり声優という業種の特徴なところは「自力で役を勝ち取らないと何も始まらない」みたいなところだよね。自前で劇場を構えているわけでもないし、自分でキャラクターを生み出して声を当てて、みたいな事も(一部を覗いて)出来ないし。どなたか失念したけど、とある声優さんが「声優は場所を用意してもらわないと表現ができない」と言っていたことをふと思い出した。
 表現といえば、1話のレッスンのシーンが好き。所属して間もない声優たち(本作のメインメンバーは16人もいる)を紹介がてら「めちゃくちゃうまい、というわけでもないけど魅力的な個性を持っているキャラクター」として描いていくのだけれど、主人公が「急に誰よりも上手いスーパールーキー」ではなく「お芝居をすることが楽しくて楽しくて仕方がない人」という描き方になっているんだよね。お芝居が上手いから、人気の職業だから声優になりたい、ではなく、演じることが好きだから声優になりたいっていう。めっちゃエモかった。
 序盤は「アニメ作品の声優オーディションってどういう感じなん?」というお話。事務所に所属している新人全員が一緒にオーディションを受けるという展開によって「やばい、自分以外みんなめっちゃうまいし堂々と演技してるやん…」みたいな焦燥感がよく描かれていて、観ていてしんどい。誰かがのびのびと演技→他のキャラの表情が曇る・・・みたいな。横並びでスタートして、お互いに影響を与えながら成長していくお話の構成はアイドル作品らしさがあるけれど、一方で団体競技ではなく個人競技という性質上、「一緒に頂点目指そうね!」というわけでもない、ちょっと不思議な距離感。
 あと、OPEDでダンスレッスンのシーンが描かれているように、いわゆる「2.5次元コンテンツとしての活動」がもうちょっと先のほうで描かれるみたい。
 新人声優の日常を描く作品としては、声優である浅野真澄が原作を担当した作品『それが声優!』とテーマが近いけれど、あっちは「声優あるあるをテーマにしたコメディ作品」というニュアンスが強いのに対し、本作はもうちょっとファンタジー系。「それが声優!」では、1話で「動いても服が鳴らないか確認しがち」みたいなあるあるネタが披露されているけれど、本作はファンタジーなのでアクセサリーをつけたままでもOK、みたいな世界観の違いがある。でも本作のアフレコ風景は実際のアフレコ現場を見ながら絵コンテに起こしているらしく、本作に脇役で出演している種崎敦美さん曰く「だいたい合ってる」とのこと。特に、ブース内で指示を待っているときの放置プレイ感、孤独感がマジであんな感じなんだって。

 リベル・エンタテインメントによる2019年リリースのスマホゲームを原作とするメディアミックス作品(去年サービス休止。停止ではないらしい)。
 制作は『Re:ステージ! ドリームデイズ♪』『マブラヴ オルタネイティヴ』の、ゆめ太カンパニー×グラフィニカ。監督、シリーズ構成もまた『Re:ステージ! ドリームデイズ♪』の片貝慎、浦畑達彦が参加しており、かなり青春アイドル作品という趣がある。

失格紋の最強賢者

 魔族絶対殺すマンRTA
 あらすじ・・・世界最強の賢者が更に強くなるために転生しました。序盤では、転生後にもりもりパワーアップしていく自分の実力に喜ぶ主人公が描かれる。1話2話あたりを見ていて、イマイチ主人公の動機づけがよくわからなくてモヤモヤしていたんだけど、よく見たらサブタイに書いてあった。つまり、主人公がやたらトラブルに首を突っ込みたがるのは、「更に強くなるために」というところが本作の縦軸になっているため。そういう意味では、本作の主人公は概ね『ドラゴンボール』の孫悟空みたいな人間なのね。
 孫悟空は作中でいつも世界を救うために戦っているけど、それ以上に「強い敵と戦うのが楽しいから」という行動原理を持つ強烈なキャラクター。翻って本作の主人公もまた、「強くなるのが好き」という行動原理を持っており、戦闘シーンがすごく楽しそう。
 主人公の転生設定も、本作では主に「転生後のレベル上げや戦闘を有利にするチート装備の充実」「あらゆる魔族に対するメタを貼っておく」という意味合いで活かされており、登場する魔族が片っ端からメタを貼られてころころされていく。4話時点で、登場する魔族(ちらっと映るだけの「まだ見ぬ強敵みたいなヤツ」も含む)をほとんど全員虐殺しており、主人公の前のめりな姿勢、というか殺意の高さが溢れている。
 また、本作の戦闘シーンの特徴として、何か魔法を使うたびに「今の魔法は相手の〇〇な特性に干渉して△△な性質の魔法を使うことで、☓☓という現象を引き起こすことが出来るんだ!」みたいなクッソ長いモノローグを全部入れてくる説明タイプなんだけど、これってつまり「戦闘が大好きなオタク特有の早口」なのね。
 あと、ヤラレ役である魔族がすごい。ちゃんと(対人戦における)現環境を熟知した上で「一番強いと思われる戦法」を的確にチョイスする意識の高さと、絶妙な小物感あふれるお芝居の付け方。主人公にメタを貼られる度に「馬鹿な!?私の〇〇を破る魔法は存在しないはず・・・!」と、主人公ageの遺言を残して去っていく様は、時代劇における福本清三みたい。魔族役の声優も毎回めっちゃ豪華なので今後も楽しみ。

 「小説家になろう」にて2016年から連載されていた、進行諸島による小説が原作で、2017年からGAノベルにて書籍版が刊行中(イラスト:風花風花)。原題のサブタイトルは「〜世界最強の賢者が更に強くなるために転生しました〜」。
 制作はJ.C.STAFF。監督は『となりの吸血鬼さん』『俺を好きなのはお前だけかよ』の秋田谷典昭。シリーズ構成は『ゲーマーズ』『メルクストーリア -癒術士と鈴のしらべ-』の内田裕基。同氏は今期の作品『薔薇王の葬列』でもシリーズ構成を担当している。

オリエント

 ファンタジー世直し時代劇
 永い間鬼に支配されていた日本を舞台に、一念発起して鬼退治の旅をする少年たちのお話。って書くとまるで鬼滅の刃みたいになっちゃうんだけど、もちろんそうではない。本作は「鬼たちが、世界を統べて幾星霜」というお話なので、どっちかというと鬼より「人間と鬼が長い時間を使って築き上げた社会」の方がメインで描かれている。1話は主人公の住む街のお話で、
 ・150年前に人間を制圧
 ・反乱分子を殲滅
 ・鬼に代わって人間を監視する人間という特権階級を作る(アウシュビッツで見た)
 ・特権階級を中心に、人間社会にヒエラルキー(被差別階級含む)を構築
 ・情操教育により反乱分子が生まれにくい価値観(鬼=神様 鬼に刃向かうサムライ=穢れた身分)を構築
といった具合に、鬼がもたらしているものが「破壊と混沌」ではなく「秩序」なのがなんかリアル。
 そして、反旗を翻そうとする主人公の葛藤が面白くて、「鬼と戦うのが怖い」じゃなくて「周りのみんなは鬼に仕えることが出来て幸せって言ってるし、急に俺が『鬼は悪いやつだから懲らしめてやる!』とか言って引かれたらどうしよう…やっぱやめとこうかな」なんだよね。
 また主人公の友人で被差別階級出身の少年も、自身の経験から主人公の計画には否定的な立場で「やめとけやめとけ。お前差別されるのめっちゃしんどいの知らんやろ。余計なことすんな」と助言する。鬼による支配の本質が「萎縮効果による市民同士の監視や牽制」なのがリアル。
 この「群れからはぐれてしまう恐怖との戦い」に限らず、本作において鬼と対峙する行為が、必ず「自分の中の大切な何かを諦めようとする圧力との葛藤」とセットになって語られており、バトル漫画でありながら半ば政治や哲学のお話に足を突っ込んでいるのが印象的。
 主人公の住む地域を支配している鬼も、「人々を鬼の驚異から救うために倒す」派と「鬼の脅威から弱者を守るためにも、余計なことはせず従順に隷従しよう」派で言い争うシーンがあったり。このシーンにおける武田サムライ兄貴の「鬼に願いや生き方を縛られている」というセリフこそ本作における「鬼」を明確に表してるなーって。そういう意味では、鬼退治=「鬼に願いや生き方を縛られている人々を開放していく旅」なのね。
 生き方を縛っている側は必ずしも鬼だけではなく、それこそ主人公の友人よろしく「長年の鬼の影響により、巡り巡って生まれた社会構造そのもの」だったりするので、主人公の旅はある意味「人間社会と戦うお話」だよね。
 バトルモノなので当然鬼と戦うシーンがあるんだけど、鬼の特徴が「めっちゃでかい」「全容が不明瞭」「倒し方が不明」というふわふわした設定で、ある種「実像を持たない概念としての脅威」を暗示してるのかなーって。5話の鬼とかもはや自然災害だし。アレを倒すの?

 原作は『マギ』でおなじみ大高忍による漫画。「週刊少年マガジン」にて2018年から連載中(現在は別マガ)。ちなみに同氏はオリジナルアニメ作品『バック・アロウ』のキャラクター原案を務めており、アニメで大高さんの絵が動くのを見たい人はぜひバック・アロウもよろしくね。
 制作は『Dies irae』のA・C・G・T。監督は『ハイスクールDD』『健全ロボダイミダラー』『閃乱カグラ』の柳沢テツヤ。シリーズ構成は『本好きの下剋上』『宝石商リチャード氏の謎鑑定』の國澤真理子。

リアデイルの大地にて

 悠々自適のセカンドライフ
 悪い人が出てこない平和な世界を気ままに観光するお話。同スタジオの異世界転生作品は概ね「やさしいせかいのおはなし」という共通点があって、その中でも本作は「主人公と愉快な仲間たちによる日常系ギャグアニメ」というニュアンスが強い。
 あと、作品を重ねるごとにギャグ演出が多彩になってるのが好き。にしても古いギャグ演出にこだわっているのは監督の趣味なのだろうか。
 先のアニメ「スライム倒して300年」もそうだったけれど、異世界で満ち足りた日常生活を送る上で最も重要なファクターとして「家族がいること」という共通点を持っているのがちょっと面白い。異世界には異世界なりの幸せのカタチがあって云々、ではなく、現実世界と同じ終着点に収束していくところに(勝手に)造り手の体温を感じている。でもドワーフ(CV.杉田智和)の「おふくろ!」は流石に草。
 主人公の前世で寝たきりだったこともあり、「他者と関わりを持つことが純粋に楽しい」っていう心情がいつも表情に現れているアニメなので、異世界モノの中でも特に平和な気持ちで観ていられる。かつ、世界の住人も「主人公から一方的に施しを受けるNPCの人々」というありがちな展開だけでなく「よそ者の主人公を、同じコミュニティの住人として優しく受け入れてくれる人たち」
 ちなみに、アイキャッチのカオスさは監督の趣味で、「なんか面白いこと言って」という無茶振りに血反吐を吐きながら声優さんがひねり出した渾身のギャグ集となっている。個人的に、前作2話アイキャッチの「たつお!」が好き。
 「小説家になろう」にて2010年から連載されていた、Ceezによる小説が原作。書籍版がKDOKAWAより2019年1月から刊行中(イラスト:てんまそ)。

 制作は『うちの娘の為ならば、俺はもしかしたら魔王も倒せるかもしれない。』『神様に拾われた男』のMAHO FILM。監督の柳瀬雄之以下メインスタッフは概ね『異世界はスマートフォンとともに。』から引き続き続投している。シリーズ構成は『神様に拾われた男』で監督とタッグを組んでいた筆安一幸。

賢者の弟子を名乗る賢者

 元NPC相手にサブ垢で新人騙りのロールプレイ
 世界観とキャラクターの説明はそこそこに、本編が始まるのは17分頃から。「うっかりアバターが変更された」というシチュエーションって、普通の感覚だと「は?なんかアバター変わってるやん」で終わってしまうんだけど、「あれ、これもしかしてゲームじゃなくてリアル?」「このフィールド、ただのグラフィックじゃない!」という気づきを得るまでの流れを、一切のセリフなしに表現してるのが面白い。食べ物に対するリアクションを中心にコミカルな表現によって、主人公の心が動いている様を結構丁寧に描いてて好きだし、「プレイヤーたちが積極的にロールプレイしているゲームの中の出来事」だからこそ、ロールプレイじゃないリアルな反応であることがひと目で分かるところも上手いなぁ、って。
 その前フリがあるからこそ、ラストのサブタイトルを回収する「震えるほど自分の作ったアバターが可愛かった」というニュアンスのセリフに主人公の実感がちゃんと乗っかっててすごく良かった。
 studio A-CATといえば人工物、特にミリタリー系の3DCGアニメーションっていうイメージなんだけど、本作はファンタジー異世界ということで生物造形が多め。苦手分野なのか、敵のモンスターがなんかぬるっとしている。そしてモンスターより人工物(特に2話のジープ)がめっちゃ活き活きしてるのがなんか草。

 『小説家になろう』にて2012年から連載されていた、りゅうせんひろつぐ氏による小説が原作。2014年よりGCノベルズから書籍版が刊行中(イラスト:藤ちょこ)。
 制作は『超可動ガール1/6』『珠詠』『装甲娘戦機』のstudio A-CAT。監督は『超可動ガール1/6』『装甲娘戦機』から元永慶太郎が続投。シリーズ構成は『みなみけ ただいま』『アブソリュート・デュオ』『CHEATING CRAFT』の鴻野貴光。キャラクターデザインは『装甲娘戦機』の堀井久美が担当している。

幻想三國誌 -天元霊心記-

 中国の戦国ファンタジー冒険活劇
 戦国時代を舞台にしたゴーストバスターズたちのお話。「人の心につけこむ悪霊」みたいなモチーフは日本でも定番だけど、出てくる悪霊や、その悪霊を使役している黒幕の描写とか、どことなく『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』みを感じる。魔剣出てくるし。あと、「因果応報」で締めくくるストーリーの構成は日本の作品だと最近あんまり見ないよね(あったとしても、ニュアンスをぼやかす事が多い)。
 作画アニメーション的には割と顔のアップや止め絵が多め(ちなみにアクションシーンも全部作画アニメ)なんだけど、そのせいか「止め絵でも臨場感を出すために、画面全体を揺らして『動いてる感』を出す」っていう演出を敢えて多用しているんだよね。で、観ているとめっちゃ酔うので注意(特に2話)。
 あと背景美術がめっちゃ綺麗。担当しているのは『メイドインアビス』でおなじみインスパイアードで、地面に生えている草の解像度や木の陰影、石壁の汚れ感なんかがすごく良い。

 台湾のUserJoy Technology社によるゲームが原作らしい(日本で発売されたのは20年くらい前)。
 制作は『可愛ければ変態でも好きになってくれますか?』『プランダラ』のGEEKTOYS。監督は『planetarian~星の人~』にて共同でシリーズディレクターを担当していた町谷俊輔。副監督は『旦那が何を言っているかわからない件』『土下座で頼んでみた』の永居慎平、シリーズ構成は『sin 七つの大罪』『プランダラ』『女神寮の寮母くん。』の鈴木雅詞。キャラクターデザインも『新妹魔王の契約者 BURST』で総作監をやってた油井徹太郎が参加しているため、エロいアニメでも作ろうとしているのだろうか。

フットサルボーイズ!!!!!

 新しい2.5次元のカタチ
 フットサル(肉体言語)を舞台にしたスポ根アニメ。1話は「なんかスーパールーキーが入部してきたぞ」というお話から。ひょんなことから不良とナワバリバトルするんだけど、不良の方から「フットサルで白黒決めようぜ!」ってなるのは流石に草。トライブナインか。あと、本作は幾つかのフットサル強豪校の間で対抗する形でお話が展開されているんだけど、各校のキャラクター原案を専属のイラストレーターが担当というめっちゃ豪華な仕様になっている。全部で30キャラくらいいるので、キャラデザの人超大変そう。
 フットサルという題材について。アニメで観ていると、特に「コートが小さいため絵の密度が高く、展開が早い」という点が大きい。また、人数も少ないため腐る役職が少ないところもサッカーと比べてアニメ映えする競技だよね(サッカーは特に攻撃ポジションのキャラクターがメインになりがち)。
 ちなみに「どうしてサッカーではなくフットサルをチョイスしたのか」みたいな描写は特に無いので、マイナースポーツを扱うスキマ産業的な作品ではなく、もっとストレートなスポーツモノとして描かれている。既に100万回くらいこすられてるサッカー作品だと、ここまで王道のストーリーは描けないと思うので、そういう意味ではスキマ産業ならではかも。
 本作はメディアミックス企画として「演者がガチでフットサルの興行試合をする」という2.5次元俳優もびっくりの展開をしている。出演している人はみんなゴリゴリの新人さんで構成されており、今の肩書は「フットサル声優」ということになるのだろうか。
youtu.be

 バンダイナムコアーツ、バンダイナムコエンターテインメントディオメディア3社によるメディアミックス作品で、去年からスマホゲームが配信中。
 制作は『ドメスティックな彼女』『あひるの空』『聖女の魔力は万能です』のディオメディア。監督は『ひとりじめマイヒーロー』『夢王国と眠れる100人の王子様』の、ひいろゆきな。シリーズ構成に『ONE PIECE』『波よ聞いてくれ』『SHAMAN KING』の米村正二が参加している。

錆色のアーマ-黎明-

 戦国ファンタジー忍者アクション
 戦国時代を生き抜く戦争屋のお話。最初はキャラ紹介から、悪い奴らが登場するまでのお話。戦国時代といっても、主人公の使う武器や敵の兵装等ファンタジー要素がかなり強め。
また、壮大な世界観の割にネームドの登場人物はOPに登場する主要メンバーくらいしかいないので、彼らが戦って泣いて笑って、っていう様子を愛でることに主眼をおいた「主要キャラクターの魅力を描くためのアニメ」感が強い。ちなみに1~2話は主人公と木偶の「相棒感」があるお当番回で、3話は鶴首と蛍火の「兄弟感」があるお当番回。みたいな感じ。木偶くんいいな。
 主人公役を演じるのは佐藤大樹。あのEXILEに所属しているダンサーで、本作の舞台版を経てアニメの主人公に。EXILEとアニメって全く別の宇宙のコンテンツっていうイメージなだけに、すごく不思議な気持ち。
 主人公だけでなく、他の主要キャストもまた舞台俳優が中心の座組。そのためか、全体的に足し算が多めの芝居がすごく舞台っぽい(みんな全部のセリフをきっちり言い切る感じとか、毎回キメる感じとか)。芝居だけでなく、キャラクターの見せ方とかお話の転換の仕方とか、やたら展開が早い感じとかも。
 16:14の「三途の川の渡し賃」言えてなくて草。舞台先行の2.5次元コンテンツといえば『少女歌劇 レヴュースタァライト』が記憶に新しい(ちなみに両方ともネルケプランニング)。当時声優初挑戦だった露崎まひるの中の人が、何度やり直しても「か↑れんちゃん」を「かれ↑んちゃん」と発音してしまいリテイクを繰り返してたエピソードが結構好きで、未だに他のキャストがネタにしてるんだけど、本作もそんな感じのネタがいっぱい。「お前あのときのセリフさーww」みたいなやりとりをキャスト間でやってたりするんかな、って。
 アニメはほぼ3DCG。キャラクターの表情差分があんまり多くない(モブに至っては甲冑で顔を隠している)ので、その表情がどんな心情を表現しているのか多少の推古が必要だったりする。特に「涙が流れない」という仕様が「演出上は流れる予定だったけど、制作の都合で流してない」なのか「普通ならここでキャラが泣いててもおかしくないけど、そこで敢えて流さないことでキャラの性格を際立たせている演出」なのか区別がつかないところがネック。

 舞台を中心としたメディアミックス作品。舞台が先なんだって。へー。
 制作はKigumi。2016年設立の映像制作会社で、アニメの元請けは初。基本的に映画とかCMの製作(☓制作)がメインみたい。監督は『豆富小僧』(2011)の河原真明。シリーズ構成は『ようこそ実力至上主義の教室へ』『盾の勇者の成り上がり』にて一部脚本を担当していた江嵜大兄。

最後に

 新作1話全部視聴はおすすめしない。主な理由は「アニメが好きな人向けアニメ」より「アニメも好きな人向けアニメ」の存在。
 去年の作品『オッドタクシー』のような「新しくて面白いアニメ」が、それまでアニメと関わりのなかった界隈の人たちと合流する機会として機能していく様子をよく目にする。そういった作品の「新しい面白さ」ってたいてい、アニメ以外のコンテンツが元々持っていた既存のものをアニメにリブートしてみました、という試みによる成果だったりするんだよね。
 そういう作品の中の一部が商業的にも成功していくさまを見ていると、「アニメを好きな人が、アニメの面白さを理解するために培った教養が通じないアニメ」は今後どんどん増えていくのだろうな、とも感じている。オッドタクシーでいえば「あの芸人さんが声優に初挑戦!」というフックで「面白そう」と感じることができる教養を持つ人が、今後のアニメ市場におけるメインターゲットになるんじゃないか、みたいな。
 「アニメを片っ端から観ている人」より「TV番組やTVドラマを観てて、映画を観てて、漫画や小説を読んでて、たまに舞台を観に行ってて」っていう基礎を持つ人の方が面白い作品に出会える打率が高くなる未来は十分あり得る(というか既にそうなってるのかも)ので、打率を上げるためにアニメから少し距離を置くという選択はアリだと思う。そしてアニメ外のコンテンツに触れる時間を作るためにも、「とりあえず新作1話全部視聴するか」というのはおすすめしない。マジで可処分時間が無くなってしまう。
 そして、制作者へ感謝をば。今期もまたとても面白い作品を作っていただきありがとうございます。コロナ渦による影響がちっとも収まる気配のない日々が続いて久しい昨今ですが、お体に気をつけつつ制作頑張ってください。陰ながら応援しています。