2021年秋アニメ1話ほぼ全部観たので酒の肴みたいな感想書くよ

はじめに

 今期は特に特撮作品が目を引くクールという印象。そこらへんを中心に自分のペースでぼちぼち見ていたのだけれど、おもしれーおもしれー言いながら観ているうち、気づけばひとこと感想で片付けられないほど多彩な作品ばかりだったので、まとめて短い目録にしてみた。取りこぼしている作品もあるが、配信でのんびり追いかけているといつの間にか1話の配信が終了していることが原因だったりする。つら。
 また、一人でも多く沼に沈めることができればと思いそれぞれ1-3話程度の視聴後感をまとめているので、興味を持つきっかけになれば幸いだ。ちなみに3クール以上の長期シリーズは「1期1話を観てね」くらいしか書くことができないので基本的に端折っている。

配信情報まとめ

 私はTVでアニメを観ない(BS見れないし、TOKYOMXもAT-Xも受信できない)ので、配信情報はこれ以外の手段について書いている。
 なお、独占配信系タイトルは放送開始時点でのものであり、後に他の配信サイトでも配信が開始される場合がある。あくまで現時点での参考になれば。

独占タイトル一覧

アマプラ独占配信

王様ランキング(他サイトでも有料配信あり)

ネトフリ独占配信

古見さんは、コミュ症です。
ブルーピリオド

FOD独占配信

平家物語
海賊王女
マブラヴオルタネイティヴ
さんかく窓の外側は夜(他サイトでも有料配信あり)

d'アニメストア

真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました

AbemaTV

がんばれ同期ちゃん
月曜日のたわわ2

感想

王様ランキング

Amazon Prime Video独占見放題

 絵本で学ぶ帝王学
 Web漫画サイト『マンガハック』にて2017年から投稿されている、十日草輔による漫画が原作。2019年よりビームコミックスから単行本が刊行中。
 制作はWIT STUDIO。監督は『ブギーポップは笑わない』副監督等、よくマッドハウスのアニメで演出を担当している八田洋介。シリーズ構成は『歌舞伎町シャーロック』『フルーツバスケット』『憂国のモリアーティ』の岸本卓。本作を象徴するキャラクターデザインは、野崎あつこが担当。本作が初キャラデザかな。
 ひょんなことから父親の跡を継いで王様を目指すことになった少年のお話。可愛い絵だけどハードな内容系。ベースは主人公の親父が治めていた国の継承を巡って、よわよわな主人公が成長していく姿を描く作品。
 主人公は耳が聴こえず、言葉も話せないという非常にセンシティブなキャラクター。モノローグもないため、主人公の人間像は本人ではなく周囲の人間視点で「アイツはどういう人間なのか」が描かれているのが特徴的。「優しい子だけどアイツは王の器じゃねえな」みたいな。市民も、身内でさえそう思ってるんだけど、第1王子だから頑張らざるをえない可愛そうな子、という姿で描かれている。
 本人も実はそういう評価をだいたい把握していて、それでもなお決してめげないメンタルにすごくグッと来る。文句さえ言うことが出来ない、ではなく「決して弱みを見せない」という強さだったのね。一生懸命に頑張る主人公の姿はあまりに健気で、絵本みたいな雰囲気の絵なのも相まってすごく感情が揺さぶられる。一人で着替えてるシーンいいよね。
 また、主人公は手話なしに会話できる「影」と出会うんだけど、彼の視点からは特に主人公の内面が描かれている。「みんなの前では笑顔で振る舞っているけれど、内心は…」という感じで、主人公の内面が第三者の目線から多角的に描かれているのが印象的。その後も色んなキャラが登場するんけど、それぞれのキャラクターから見える王子の姿はちょっとずつ違うんだよね。話数が進むごとに王子がどんどん魅力的なキャラになっていく。
 で、その手話のアニメーションが結構すごい。その表現がすごく洗練されてて好き。「手話をしているような雰囲気を出しつつバストアップだけ映し、手元を映さないことで作画コスト削減」とか「手話だけだと視聴者に意味が伝わらないから、ちゃんと同じ内容をキャラに喋らせる」みたいな演出が無いガチの手話だけ会話がちょくちょくある。「この表現でも視聴者なら理解してくれるはず」っていう作り手の思いが嬉しいし、実際意味が分かるから凄いよね。
 また、みんなゆっくり丁寧に会話している様子から、王子に対する敬意が現れていて好きだし「楽しそうにしているときの手話→手が踊ってる」「困惑しているときの手話→手が恐る恐る」みたいな描写もあって、すごく研究してこのアニメを作ってるんだな、って。
 あと、戦闘シーンもすごすぎ。絵が可愛いし、子供の頭身も低いためリアリティを感じにくい作品なんだけど、大人同士の戦いはもうほんとそのまんまヴィンランド・サガ。2話の槍術使いと剣士の一騎打ちとかメッチャ好き。少なくとも「血が流れるシーン」に限っては、かなりリアル寄りの描写にこだわってるよね。
 この独特な作風をより強調している背景美術について。美術監督は星合の空、グレートプリテンダー、Vivyなんかで美術設定をしてた藤井一志。背景を担当するのはスタジオ青写真。最近でいうと「GREAT PRETENDER」(背景:Bamboo)というより「チート薬師のスローライフ」(背景:ムクオスタジオ)なんかに近い、優しい雰囲気の美術に仕上がっている。また、ハードな世界観ということで明るい背景と暗い背景がわりと交互に出てくるんだけど、そのコントラストが凄く良い。
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平家物語

FOD独占配信

 新約「The Tale of the Heike」
 鎌倉時代の軍記物語「平家物語」が原作。古川日出男による現代語訳『日本文学全集09 平家物語』が本作のベースなんだって。
 制作はサイエンスSARU。監督はいつもの湯浅政明・・・ではなく、京都アニメーション作品でおなじみ山田尚子。どういう繋がりなのか。シリーズ構成は同じく京都アニメーション作品『けいおん!』『たまこまーけっと』『聲の形』『リズと青い鳥』とかで監督とタッグを組んでいる吉田玲子。音楽は同じく『聲の形』『リズと青い鳥』より牛尾憲輔牛尾憲輔はサイエンスSARUの作品『DEVILMAN crybaby』『日本沈没2020』等でもおなじみ。
 また、歴史監修にNHK大河ドラマ平清盛』で時代考証を担当していた佐多芳彦が参加しているため、かなりガチの平家物語だったりする。
 余談だけど、NHKの『平清盛』が「大河ドラマを観たい人向けに作られた平家物語」だったのに対し、本作が放送されるのはフジテレビの+Ultra枠。この枠は海外展開を意識した作品を中心に制作されているらしいので、つまり本作は「クランチロールで配信されている海外アニメとして、海外のアニメファンが観る平家物語」という位置づけになるのでは。そういう意味でも、どう魅せ方が変わるのか結構気になっている。
 お話としては、平家物語をモチーフにした歴史ファンタジー。琵琶法師(の女の子)というアニオリキャラクター視点で盛者必衰の理をあらは(わ)す。
 ちなみに、お話の殆どが「国を巻き込んだお家騒動」みたいな感じで、内容が非常にドロドロしている。なんせ一族滅亡の話ということもあり、どんどん登場人物が色んな理由とともに退場していくのが悲しい。牛尾憲輔による音楽がどんなに悲しいシーンでも穏やかなので、より諸行無常みが強くて悲しい。あの人ってBGMの付け方が独特だよね。
 平家物語と言えば琵琶による弾き語りだけど、本作でもちょくちょくそれが挿入されていて「このあとこういう出来事があったんですよ。かなしいね」みたいな、行間を補完するような役割を担っている(現代語訳とセットで確認する必要あり)。そういう意味で本作は「琵琶法師による弾き語りと、現在視点での過去回想」のみで構成された作品ということなのかな。
 弾き語りに付けられている節回しはすごく特徴的なので、アレが出来る声優っているのかな、アニメではプロの奏者による弾き語りを流すのかな、とか思っていたのだけれど、悠木碧マジやべえ。
 登場人物のキャラデザで言うと、毛の描き方がめっちゃ有機的。どうやってそれアニメーションさせてるの?っていう線の入れ方で、特にまつげ、眉毛がヤバい。特に本作は目元のお芝居にフォーカスしたカットが多いので、なおさら印象的に映っている。やっぱり山田監督による手腕なのかな、目元のお芝居の多彩さ。

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©️「平家物語」製作委員会

 背景美術はでほぎゃらりー。もともとサイエンスSARUのアニメ作品ってかなり手書き感のある作風なんだけど、背景美術のでほぎゃらりーもまた「アナログ美術を継承していこうぜ」みたいなスタンスのスタジオなので、それが組み合わさって異次元の作風に仕上がっている。ここまで突き詰めた絵作りになると、アニメと言うより「動くコンセプトアート」みたい。ほんとにTVアニメなのか?

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©️「平家物語」製作委員会

1話は無料で視聴可能。ところで最近、FODのUIが大幅に改善されたのでかなり利用しやすくなった。
https://fod.fujitv.co.jp/title/5h19/5h19110001

86-エイティシックス-(第2期)

 戦争は子供の顔をしていない。
 1期はこれから積み重ねる死についてのお話。レーナの物語が動き出すまで。
 2期はこれまで積み重ねてきた死についてのお話から。ようやくシンの物語が動き出す。
 「死」についての会話が多いアニメって、最近だと『呪術廻戦』が思い浮かぶのだけれど、本作はもっと「抗うことのできない不条理」みたいな部分が強く、戦争をテーマに扱った作品の中でも特に「死」についての会話量が圧倒的に多い作品。
 人が死ぬときの描写も基本的に容赦ない。さっきまで笑顔だった推しキャラが、次のカットでひき肉になっていたとしても耐えられる人向け。
 また、本作はとにかくアニメーション演出に秀でた作品。構図や小道具による比喩表現を積極的に織り込んだ作風で、最近だと『イエスタデイをうたって』並に考察が捗る。
 戦闘描写の演出も凄く良くて、特に1期で兄弟喧嘩する回の、レーナビンタ~迫撃砲着弾のアクションと心情の映像的なつなぎ方が超好き。あそこやばいよね。
 ちなみに公式ラジオ番組はパーソナリティの二人(レーナの中の人とシンの中の人)がゴリゴリのアニオタなので、毎回「このシーンのこの構図は1期1話のこのシーンと対比になっていて、次のシーンに映るこのアイテムはこのキャラのこういう心情の暗喩になってて・・・」みたいな考察に花を咲かせている。最近では更に考察ガチ勢からファンメールが大量に届き、とても楽しい空間になっているので、興味がある人はぜひアーカイブを漁ってみてね。
 OPはamazarashi。これはシンの中の人も言ってたけど、ほんと歌詞のパワーが強い。普段はあまり歌詞を気にしない不届き者の私も本作のOPは1話から聴き入っちゃう。
youtu.be

古見さんは、コミュ症です。

Netflix独占配信

 青春ドラマとコメディ、もっとアンビバレンスな一人ぼっちの〇〇生活。タイトルの誤字に注意。☓コミュ障◯コミュ症
 週刊少年サンデーにて、2016年から連載中のオダトモヒトによる漫画が原作。
 制作は、小学館御用達ことOLM。総監督は『海獣の子供』『漁港の肉子ちゃん』等、最近はスタジオ4℃の作品でおなじみ渡辺歩。監督は『ベイブレードバースト』『恋する小惑星』『文豪とアルケミスト 〜審判ノ歯車〜』とかで演出として参加している川越一生。シリーズ構成は渡辺総監督と『恋は雨上がりのように』でタッグを組んだ赤尾でこ。キャラクターデザインは『薄桜鬼』『サンリオ男子』『胡蝶綺 〜若き信長〜』『文豪とアルケミスト 〜審判ノ歯車〜』の中嶋敦子。男性キャラが多い作品を担当しているイメージだけど、本作はわりと女性キャラのほうが多い。あと、本作はデフォルメ顔の割に頭身が高いところがポイント。
 音楽は橋本由香利。『さらざんまい』『かくしごと』『魔王城でおやすみ』等、コメディとシリアスを行ったり来たりする作品でおなじみ。
 コミュニケーションが苦手な女子高生が友達100人作るお話。主人公(男子)は彼女の保護者となって、あの手この手で引っ込み思案克服に向け2人三脚でがんばるコメディ作品。こう見えてラブコメっぽさは薄めだったりする。
 1話の古見さんはコミュニケーション能力が底打ちのため、ほぼ筆談で喋っている。2話以降も基本的に喋らず固まっている事が多いので、逆説的に心情描写が豊かなアニメ作品に仕上がっているのが印象的。
 特に1話の二人きりの会話シーンは、本当に何でもないありきたりな内容なのだけれど、あえて何の脚色もせず古見さんの速さで一文字一文字書いていくっていう引き算の演出が「今、古見さんはどんな気持ちでその文字を書いているのだろう」という想像の余地を大きく広げていて、声のお芝居抜きでも古見さんの心情が十分伝わってくる。あとパラパラおちるチョークの粉が、筆圧から溢れ出る古見さんの想いを暗喩してるみたいで超好き。
 2話以降は『一人ぼっちの〇〇生活』よろしく、癖の強い友人が次々増えていく。というか、みんな癖が強すぎて「スタンド能力が使えない世界線杜王町」みたいな感じに。古見さんがんばれー。
 あと、本作の特徴的なキャラデザ(丸い頭とスラッとした体)、アニメだとめっちゃ良いよね。テイストとしてギャグとドラマがこまめにスイッチするので、表情はすぐコミカルになるし、全体的にギャグっぽい演出も多いので、首から上は思いっきりコメディ。
 で、リアル寄りの頭身(てか8頭身以上ある?)は繊細な心理描写に長けていて、チョークを持つ細長い指だけで心情描写できちゃうのがめっちゃ凄い。教室に佇んでいる二人の引きの絵も、表情の見えない後ろ姿や横顔っていうのが凄くエモい。
 頭身の低いデザインと高いデザインは一長一短だけど、本作のデザインは両方のいいとこ取りなのね。
 OPすき。絵コンテは『ポケットモンスター XY』監督の矢嶋哲生。同じく渡辺監督が関わった作品としては『恋は雨上がりのように』のOPっぽいよね。疾走感と爽快感が動きから色彩から迸っててもう色々ヤバい。
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無職転生異世界行ったら本気だす~ 第2クール

 2期。主人公がちょっと成長している。
 制作のスタジオバインドは本作を作るために設立したスタジオらしく、割と本気で最後まで作るみたい。なろう原作アニメ初の完走なるか。
 ちなみに最初は、EGG FIRMのプロデューサーがWHITE FOXの社長に相談して同スタジオでの制作を計画していたんだけど、当時の制作スケジュールの関係で無理っぽかったので新スタジオ設立…みたいな流れだったらしい。
 異世界に転生した主人公が他人とどう向き合うのか試されるというお話は、純粋にドラマとして面白い。
 特に魔大陸のお話は、生きるか死ぬかの状況に置かれた主人公が、自身だけでなくエリスとルイジェルドを連れてどう困難を切り抜けていくか、という葛藤が丁寧に描かれていて好き。話数が進むほど主人公がすごく責任感のある人間に成長していくので、今後がとても楽しみ。
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結城友奈は勇者である-大満開の章-

 実は楠芽吹も勇者である。四国の日常アニメ。
 公式のゲームアプリ『結城友奈は勇者である 花結いのきらめき』フレンドリーな1話。
 2期を振り返って、監督いわく「もっと日常が描きたかった」とのことなので、本作1話はある意味でリベンジ達成みたいな部分もあったりするのかな。勇者部全員が5体満足で日常生活を送っている姿はかなり貴重なのでとても嬉しい。
 本編は2話から。時系列がややこしいので整理すると
1期→結城友奈のお話(地獄)
2期(前半)→1期から2年前の、前任の勇者のお話(地獄)
2期(後半)→1期からちょっと経った頃の、結城友奈のお話(地獄)
3期(前半)→前任の勇者が退任した直後から。1期から途中参加した勇者・三好夏凜の前日譚から始まる(地獄)
 神事に携わるお仕事=勇者と大赦のスタッフだけじゃないんだよ、というお話。勇者とかいう碌でもない仕事の裏で、防人とかいう碌でもない仕事をしている勇者がいたんだよね、というスピンオフ作品になっている。
 あと、観る順番について。1~3期すべて別々のお話からなので、どこから見始めてもいい作りになっている。3期は1~2期の内容を踏まえた上でのスピンオフではあるけれど、どうせ全部地獄みたいな話なので3期からでも全然大丈夫。
 防人を演じる中の人は、既にドラマCDおよびゲームアプリ(イベントがフルボイス仕様という拘りよう)で長く演じてきているだけに、2話の時点で既に「あーいつもの感じだわ」ってなる。それにしても、弥勒さんを演じている大空直美の不憫可愛い感じ、非常にクセになる。てかジャヒー様があまりにもハマり役すぎて、声の裏にうっすらジャヒー様が浮かんじゃう問題。
 余談。ゆゆゆいとは別に、ゆゆゆファン向けコンテンツとして「ゆゆゆ勇者部」が配信中。制作の裏話を含むコアなファン向けコンテンツにアクセスできるので、興味のある人は是非。以下はブラウザ版。
https://yuyuyu.c-rayon.app/entrance
 裏話といえば。以前岸さんと上江洲さんがTwitchで雑談配信をしていたことがあって、1期の制作当時を振り返って「ちょうど東日本大震災が起きた頃で、色々大変だったよねー」みたいな話をしていたのだけれど、本作のストーリーが「未曾有の大災害があって、人口がめっちゃ減って・・・」から始まる作品だったこともあり、あの震災の経験が本作の物語の方向性に多かれ少なかれ影響を与えている旨の話をしていたんだよね。
 本作は「勇者」の名を冠しておきながら、重点的に描かれているのは「英雄譚」よりも「不条理」の方なので、それこそ震災等で「希望を持ち続けることの難しさ」を実際に経験したことのある人ほど共感する部分は多いのかな、なんてことを思った。
 実際、私自身も震災の影響でメンタルデバフがかかっていた頃に本作に出会って、そこから立ち上がる力を貰えた特別な作品なので、実はこんな世の中だからこそ放送する意義は割とあるんじゃなかろうか。
youtu.be

takt op.Destiny

 クラシック版『Listeners』
 DeNAバンダイナムコアーツによるメディアミックスプロジェクトが原作で、シナリオ原作は『サクラ大戦』でおなじみ広井王子。ちなみに読みは「たくとおーぱす」で、アニメ版のみ表題に「運命」を冠している。
 制作はMAPPAとMAD HOUSE。スタジオを立ち上げた人が同じ人っていうよしみでタッグを組むことになったんだって。ちなみにそれぞれ6話ずつ担当してるらしい。
 監督は『魔法少女リリカルなのはViVid』『GRANBLUE FANTASY The Animation』の伊藤祐毅。シリーズ構成は同じくグラブルや『ゴッド・オブ・ハイスクール』『恋とプロデューサー〜EVOL×LOVE〜』等、MAPPA作品でおなじみ吉村清子
 旅モノxクラシック音楽の擬人化アニメ。ある日突然現れた謎の敵と戦う人たちのお話。音楽をモチーフにした作品としては、MAPPAの作品『Listeners』っぽい感じで、少年と特殊な能力を持つ少女が一緒に旅をするという話になっているみたい。ただ、あっちは『エウレカセブン』のようなボーイ・ミーツ・ガールを目指した作品だったけど、本作はさほどボーイ・ミーツ・ガール感が無いよね、そもそも幼馴染だし。
 クラシック音楽は作劇において「過去」のモチーフとしてよく使われるんだけど、本作の擬人化キャラことムジカートもまた、主人公の「過去への執着」として描かれているのが印象的。2話つら。本作は「過去への執着」がテーマだったりするんかな。
 あと、クラシック=古典じゃないところが好き。最初こそベートーヴェンだけど、次に出てくるのがまさかのマーラーだった。かなり幅広い楽曲を扱う感じなのね。
 いっぱい食べる君が好き。「クラシック音楽を擬人化」というネタを考える時、まず思いつくモチーフといえば「近代ヨーロッパ」「貴族っぽい出で立ち」「なんか鼻につく言動」みたいな?日傘とか差してそう。という予想に反して、本作で最初に登場する擬人化キャラ「ベートーヴェン交響曲第5番ハ短調Op.67』」は物語シリーズ斧乃木余接鬼滅の刃の猪之助を足して2で割ったようなキャラに。「好戦的」「自信家」「プライドが高く言うことを聞かない」みたいな。あと基本戦術が猪突猛進。戦闘フォームが攻撃色(赤)なのも好き。あと可愛い。武器もいいよね。元の「交響曲第5番ハ短調Op.67」は冒頭の「デデデデーン」っていう短いモチーフが特徴的なんだけど、そのモチーフを「細かいピースを組み替えて多彩な武器に変形する」というふうに解釈してるのかな。かっこいい。
 1話の大立ち回りでは敵に対し真正面から立ち向かう展開になっていて、すごくカタルシスがある。超かっけえ。作画の凄まじさと相まってちょっと感動した。

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©DeNA/タクトオーパスフィルハーモニック

 ちなみに、舞台はアメリカ。背景やBGMはすごくアメリカンで、最近のアニメでいうと『天晴爛漫!』っていう、キャノンボール(大陸横断レース)をテーマにしたP.A.WORKSの作品みたいな感じ(ちなみにあっちよりずっと現代が舞台)。白いキャンピングカーに、少し塗装が剥げて錆びている支柱の作画。荒野の中にぽつんとある廃工場の雰囲気とかメッチャ好き。

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©DeNA/タクトオーパスフィルハーモニック

 音楽がテーマということもあって、音響周りがすごく良い。冒頭の広場に置かれたピアノのシーンでいうと、まず「少年がホールの近くを走っているときのやや反響した足音」から「ホールの中を歩いているときの反響した足音」の響き方の変化に始まり、蓋を開けたときの「重い木の音」、ペダルを踏んだときの「どんっ」っていう鈍い音、ピアノを引く前からピアノがピアノしている。あえてアップライトピアノなのもいいよね。
 また、物語の鍵となるシーンではほぼ必ずクラシック音楽が登場するのだけれど、ちゃんと「視聴者がクラシック音楽を楽しむだけの時間」が用意されていたりする。てか冒頭のピアノ演奏シーンすごない?指の動きを撮影して3DCGアニメーションにしているらしいんだけど、1秒24コマだと指の動きが描ききれなくて大変だった~みたいな苦労話を聞くにつけ、ほんとすげーもん作ってるよなぁ、って。
 全体としては、激しいバトルアクションとクラシック音楽の演奏タイムが強烈な緩急になっていて、1話を視聴した後の余韻が凄く良かった。後味はザ・旅モノって感じ。
youtu.be
 EDは歌・中島美嘉、作詞/作曲・rionos。アニメーションを細居美恵子が担当しており、個人的に最高x最高x最高で最高。
youtu.be

最果てのパラディン

 ファンタジー家族ドラマ。
 『小説家になろう』で2015年から連載されている、柳野かなたによる小説が原作。2016年からオーバーラップ文庫で書籍版が刊行中。
 制作はChildren’s Playground Entertainment。また、製作委員会にビリビリ動画が参加していたりする。中国でウケやすいテーマなのか。
 監督は『まえせつ』『終末のハーレム』の信田ユウ。シリーズ構成は『はてなイリュージョン』『おちこぼれフルーツタルト』『IDOLY PRIDE』『終末のハーレム』の高橋龍也。でも本作はシリアス系。キャラデザは『スカーレットクルセイダーズ』の羽田浩二が他担当している。
 ひょんなことから異世界に転生した主人公が、アンデッドと一緒に暮らすお話。無職転生のルーデウスよろしく、日々鍛錬の中で成長する姿が描かれている。
 特に察しの良い主人公。異形の家族に愛されつつも、自身の生い立ちを徐々に疑問視していくように。心の底から彼らを愛している反面、彼らをどこまで信じていいか分からない複雑な心境がモノローグで丁寧に描かれている。基本はほのぼのした日常なんだけどね。
 家族であるアンデッドたちも、「かくしごと?なにもないよ!」じゃなくて「ごめんね、今はまだ本当のことが言えないんだ、いつか必ず話すから」という誠実なスタンスなのも好き。荒廃した世界観の割に、とてもやさしいせかいだった。
 1話から登場するおじいちゃんが講師としてこの世界の成り立ちを主人公に語ってるんだけど、BGMと相まって凄くワクワクする。本作における「信仰」ってかなり大きい意味があるんだね。そのためか、この世界の神話もかなり複雑で面白い。単なる伝承ではなく、「誰がどの神様を信仰しているか」「別の信仰を持つ人間にとってはどう捉えられているか」みたいな多角的な描かれ方になっている。ここの丁寧な作り込みは『魔術士オーフェン』っぽいかも。
 めちゃくちゃ中性的な容姿の主人公を演じるのは『ゾンビランド・サガ』の順子ちゃんでおなじみ河瀬茉希。最近だと同じく信田ユウ監督の作品『くまクマ熊ベアー』の主人公も演じているけど、本作(少年)の声のほうが地声に近いよね。ギャグ演技が特に好き。あと辛そうな演技もすごく好き。
 また、主人公の親代わりを演じているのは小西克幸堀江由衣飛田展男の3人。なんと3話までこの4人だけでヒューマンドラマを描いている。特に堀江由衣演じるマリーはお母さん感がヤバい。5話アホほど泣いたんだが。
 主人公の育ての親である3人は人外のため、アニメーション上の表情変化がほぼ無い(一応おじいちゃんは人間の顔だけどいつも仏頂面)。なのに、自然と「表情豊かで人間味に溢れたキャラ」として感じられるのが結構凄いよね。
 あとハイファンタジーアニメにしては珍しく、装備がちゃんとした中世風。フルプレートを装備してる主人公って最近だと『ゴブリンスレイヤー』くらいしか無いのでは。フルプレートアーマーを装備する過程がアニメで描かれるのってかなり貴重だよね。
 あと、MONACAによる劇伴がすごくファンタジーしてる。特に本作は登場人物も少なく静かなシーンが多い作品なので、なおさら音楽の良さが前に出ている。
youtu.be

ポプテピピック 再放送

 再放送とは。
 もちろんただの再放送ではなく「ポプテピってこういう感じのノリで楽しんだよねー」の部分までちゃんと再現している。すべての放送と配信を同時に展開するシステムを今回も採用しており、Abema派もニコニコ派もTV派も、土曜の深夜1:30に待機していればみんなと一緒にツイッター実況が楽しめちゃうのだ。たのしい!
 TLも、新規リピーター問わず新鮮な反応に溢れていて、同じアニメでも体験の仕方一つで随分と受け取られ方が変わるのはちょっとおもしろい。
 地上波で「バルス祭り」みたいな取り上げられ方をしていたアニメ映画と違い、本作はより「みんなで一緒に楽しむことを主眼に置いて作られた作品」と言える。

ブルーピリオド

Netflix独占配信

 現代のアルテ 山月記のフラグ回避できるのか。
 『月刊アフタヌーン』にて2017年から連載中の、山口つばさによる漫画が原作。
 制作はセブン・アークス・ピクチャーズ。同じく絵描きをテーマにした作品『アルテ』を作ってたスタジオで、シリーズ構成もアルテから引き続き吉田玲子が参加している。
 総監督は『かみちゅ!』『マギ』の舛成孝二。監督は『遊☆戯☆王VRAINS』の浅野勝也。キャラデザは『バクマン!』『サクラダリセット』『食戟のソーマ』『消滅都市』の下谷智之
 ひょんなことから藝大を目指す高校生のお話。『アルテ』が「当時、ベネツィアの絵師がどういう人生を送っていたか」という歴史モノだったように、本作も「現代の日本で、絵かきがどういうキャリアを経てプロになるのか」みたいな部分を紐解いていく感じのやつ。全く時代も世界観も異なる2作ではあるけれど、根底の部分として「自分らしい生き方を模索する主人公を描いている」という意味ではそう違わないのかも。
 絵の下手や上手って正直一般人には全くわからない世界なんだけど、本作では明確に「藝大に受かりそうな絵」「藝大に受からない絵」という基準があって、それを「どんどん上手くなっていく主人公の絵」を通じて知っていく感じが面白い。
 あと、すごく闇が深い。最初に主人公の書いた青い絵を「絵Lv1」とすると、2話の主人公がLv10、主人公の敬愛する先輩がLv30、先輩の通っているスクールの平均が4~50、のように、あっという間に戦闘レベルがインフレしていく。主人公が藝大合格に向けて前に進むほど、どんどん未来が暗くなっていく様子がすごくしんどい。
 演出を控えめにサクサクお話が進んでいく感じが、アニメっていうよりTVドラマって感じ。そういえばアルテも朝ドラっぽかったよね。
 ちなみに原作では登場する数々の習作はすべて、作者の知り合い(藝大出身)が描いたものらしいけど、アニメ版だとどうなんだろう。めっちゃ沢山の絵が登場するので、ある意味「この絵は何を表現したいのか」を主人公と一緒に読み解くことが本作のメインなのかも。ほんと外国語を履修しているような気分。


www.geidai.ac.jp

大正オトメ御伽話

 親から完全に勘当された『死神坊ちゃんと黒メイド』。タイトルが妙に読みづらいな、と思ったら原作から一度改題されてるのね。元々のタイトルは『大正処女御伽話』。
 『ジャンプスクエア』にて2015年から連載された、桐丘さなによる漫画が原作。
 制作はシンエイ動画の下請けでおなじみSynergySP。元請けは『出会って5秒でバトル』に続き2作目かな。
 監督は『カミワザ・ワンダ』副監督、また『ベイブレードバースト』バトル演出の羽鳥潤。シリーズ構成は『からかい上手の高木さん』『通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?』『群れなせ!シートン学園』の脚本を担当している福田裕子。キャラクターデザインの渡辺まゆみは『通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?』の総作画監督で、キャラデザは初かな。
 舞台は第一次世界大戦終戦後の大正時代。でも『この世界の片隅に』ほど身構えなくて大丈夫なやつ。シリーズ構成の福田裕子が関わった作品『からかい上手の高木さん』みたいな感じの、割と甘めなアニメになっている。
 社会や家族から孤立した二人が一緒に暮らすラブコメ作品といえば『死神坊ちゃんと黒メイド』もちょっと似た話ではあるけれど、あっちが「二人の家の中の話」であるのに対し、本作はふさぎ込んでいる主人公を明るい場所へ連れ出すお話なので、死神坊っちゃんよりも家の外の話題が多いよね。大正の街並みや、街行く人々の格好とかも割と凝っていて、百貨店のお買い物デートとかも含め「当時の東京の人たち(主に金持ち)がどういう暮らしをしていたのかがちょっとだけ垣間見えるアニメ」という趣が強くてすき。

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©桐丘さな集英社・大正オトメ御伽話製作委員会

 過酷な生い立ちを心底恨んでいる悲観的な主人公に負けず劣らず過酷な運命を生きているユヅキちゃん。でも決して恨むこと無く前向きに「自分らしい生き方を選ぼうとする姿勢」が主人公と対比する形で描かれている、とても前向きなテーマの作品。そういう意味で、結構色んな人に刺さりそうなテーマを扱ってる作品だよね。特に、大正時代を丁寧に描いた作品ほど辛く悲しいお話が多いイメージだったので、本作のようにやさいせいかつ系はなんか特別。雰囲気的に『フルーツバスケット』を思い出す。「ひねくれ主人公の成長物語」というより表題の「大正時代を生きた女の子の暮らしを描く日常アニメ」という部分がむしろメインなのかもしれない。2話のユヅキ可愛い。
 あと、世界を構成する小物や背景の雰囲気が好き。写実的な、というわけではなくもっと温かい雰囲気の丸い作風で統一されているので、どのカットも趣がある。海外が舞台の作品と違い、日本ならではのノスタルジーがあるよね。畳とか布団とか台所とか風呂釜とか。
 また、四季折々の風景が全然ちがう雰囲気になっていて、同じ家の前の風景でさえ毎話新鮮に映る。てか2話の背景やべえな。

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©桐丘さな集英社・大正オトメ御伽話製作委員会

youtu.be

海賊王女

FOD独占配信

 西のエデン。サムライ忍者と海賊王女のドタバタ珍道中。オリジナルアニメ。
 制作はみんな大好きProduction I.G。実はIGのアニメって女性主人公少ない?監督はProduction I.Gの偉い人こと中澤一登。監督作品は『B:The Beginning』以来。シリーズ構成はPSYCHO-PASSシリーズの文芸協力とか制作進行なんかを担当していた窪山阿佐子で、本作が初脚本かな。
 ガラスの靴を受け取ったシンデレラが、ワンピースよろしく大海原へ旅に出るお話。2話にしてクルーが全員揃っており、旅モノによくある「最初はたまたま出会っただけなのに、主人公と行動するうちに感化されて、一人、また一人クルーに加わっていく」みたいな部分が尺の都合上端折られている。なんやかんや3話から早速海賊の旅(本編)に突入しているので、1クールでも尺がたっぷり。
 また、シリアスな始まり方に反しかなりコメディテイスト。旅行く島々でコントみたいなやり取りをしていて非常ににぎやかなアニメになっている。登場する敵も色んな魅力に溢れた海賊団ばっかりなので、どんどん賑やかになっていきそうな予感。
 あと、おじさんがかわいい。主人公だけでなく、特におじさんの表情の描き分けが丁寧で好き。IGの作画って、目が奥まった骨格ゆえのタレ目とか、まぶたが重たそうな顔立ちが多いよね。
 主人公を演じるのは『B:The Beginning』の星名リリィ役でおなじみ瀬戸麻沙美。割とシャキっとしたキャラを演じているイメージだけに、本作の主人公はかなり緩めのテンションで意外だった。天真爛漫だけど、声が少し低くてハキハキしてるからゆるいパートとシリアスパートを同じテンション感で演じているところが印象的で、主人公のブレなさ、芯の強さがより強調されてる感じがすき。
 訪れる島々が毎回違う風景、建物、文化で描かれているのが凄いよね。特に背景美術やばい。背景美術の担当は、攻殻機動隊とか東のエデンとかでIGと縁のあるBamboo。また、本作のコンセプトアートを担当している西田 稔がめっちゃすごい人なので、各島を象徴する美術のクオリティが凄いことになっている。

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©Kazuto Nakazawa / Production I.G

 あとやっぱり作画すげー。特に2話の小道具の作画。刀や弓もそうだし、おにぎりの作画がやたら凄い。FFかよ。
 アクション作画でいうと、「1話で渾身のアクションシーンを持ってきて視聴者の心を鷲掴み大作戦」みたいな構成のアニメが多い中、本作でガッツリ殺陣を描くのは3話なんだよね。こういうところに作り手の余裕を感じる。非常に緩急のある身のこなしと、攻撃を避ける動きからそのまま攻撃の動きに繋がっていく一連の作画ほんとすげー。
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先輩がうざい後輩の話

 とある商社のトレンディドラマ。ちょっと大人になった「女子高生の無駄づかい」ロリの社会人生活2年目。
 2018年から『comic POOL』でも連載されている、しろまんた氏による漫画が原作。もともとTwitterで個人発信していた漫画が原作なのね。
 制作は動画工房。監督は『イエスタデイをうたって』副監督の伊藤良太。シリーズ構成は、プリキュアシリーズや『いつだって僕らの恋は10センチだった。』『抱かれたい漢1位に脅されています。』『アイ★チュウ』の成田良美。キャラデザは『キリングバイツ』でキャラデザ協力とか作監を担当していた阿部慈光。本作が初キャラデザかな。
 バイタリティが溢れている社会人2年目の女の子の日常を描くお仕事アニメ。もう冒頭から生活感のある作画すごい。雰囲気こそ違うけど、同じく動画工房の『イエスタデイをうたって』冒頭をちょっと思い出す。朝からこんなに元気なやつおらんけどな!

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© しろまんた・一迅社/先輩がうざい製作委員会

 1話は主人公の喜怒哀楽、というか表情の七変化が惜しみなく描かれていて、めっちゃ可愛い。今期でいうと『王様ランキング』の主人公ばりに全身で感情を全力で表現してて、不思議と周りの視線も温かい。一応ラブコメ作品ではあるけれど、ニュアンスとしては「ほほえましい」というキャプション付き。あと、主人公の同僚で別のカップルの話もちょこちょこ描かれているんだけど、この二人のベタで微笑ましいやり取り見ていると「『イエスタデイをうたって』のリクオはどうしてこうならなかったんやろなぁ・・・」ってなる。
 主人公の想い人である先輩も、彼女と同じ目線でお互い意識してるわけでもなければ、「いやいや、僕なんて彼女と釣り合わないっしょ・・・」みたいな卑屈さも持っていない、とても良き先輩って感じで好き。『亜人ちゃんは語りたい』の高橋センセーみたいな?
 実際、背伸びして年上の男性に猛アタックする健気な姿はちょっと「先生のことが好きな女子生徒のお話」っぽさを感じるけど、こっちは法律の壁もないから安心だね。
 犬みたいに可愛がられている主人公を演じるのは『アニマエール!』の舘島虎徹役でおなじみ楠木ともり。キャラ的には『デカダンス』のナツメに近い雰囲気かも。酒を飲みながら管巻いてるキャラ似合い過ぎ。あと、独り言を言ってるときのしゃがれた声がちょっとちびまる子ちゃんっぽい。
 また、主人公の保護者みたいな先輩を演じるのは「え、まだ20代前半なの?マジ?」でおなじみ武内駿輔。余談だけど、本作の縁で二人は楠木ともり名義で共作の楽曲を発表している(作曲・作詞/楠木ともり、編曲/武内駿輔)。普通にいい曲なのでついでにおすすめ。
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 ほんと細かい仕草のお芝居をつけるのが上手いよね。ちょっと戸惑うときの一瞬の仕草であったり、キャラが動いた後に追従して動く長髪の流れるような作画とか見ていて飽きない。
 ねーねーOPすごない?日常の一コマを切り抜いていく演出も好きだし、サビのみんなで踊るシーンとかめっちゃすごい。一本満足バーのCM並に躍動してるじゃん。OP絵コンテは『エロマンガ先生』監督、『月刊少女野崎くん』チーフ演出の竹下良平。またアニメの監督やってくれないかなぁ。
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サクガン

 SF色が強くなったメイドインアビス
 Project ANIMAというプロジェクトによるオリジナルアニメ作品シリーズの第1段。「超A&Gで腐るほどCMを打ってたやつ」といえばピンとくる人も多いハズ。

「Project ANIMA」は、DeNA文化放送、創通、MBSが共同でオリジナルTVアニメシリーズを制作する大規模プロジェクトです。原案となる小説・脚本、マンガ、企画書を幅広く一般から募集し、2020年代を代表する作品の創出をめざすとともに、次世代を担うアニメ作家を発掘します。
コンテストは第一弾「SF・ロボットアニメ部門」、第二弾「異世界・ファンタジー部門」、第三弾「キッズ・ゲームアニメ部門」の三部門に分かれ、2018年2月から2019年3月までの約1年間をかけて原案の募集・選考を実施しました。

だって(公式サイトより)。へー。

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© 「サクガン」製作委員会/SAKUGAN Project

 制作は、シンフォギアシリーズや『Caligula -カリギュラ-』『ガーリー・エアフォース』『ソマリと森の神様』のサテライト。監督・シリーズ構成は『終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?』『Caligula -カリギュラ-』等、サテライト作品ではすっかりおなじみ和田純一。また脚本として、永井真吾、望月真里子、根元歳三というサテライト作品でおなじみの人が参加している。他にも河森正治を始め、ザ・サテライトって感じのスタッフィングに。
 ひょんなことから憧れの地を目指して旅に出た親子のお話。移動手段がロボットなので、実質ロボアニメ。色々ある旅モノの中でも本作は親子の旅なので、扱うテーマは「旅」「SF」「親子愛」「ロボット」みたいな感じ。余談だけど、同じくサテライトの親子x旅モノ作品『ソマリと森の神様』もすっげー良かったのでついでに宣伝。
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 1話は二人の暮らしている地下世界のお話から始まり、そこから旅に出るまでのお話が2話にかけて描かれる。1話と2話はセットなので、まとめて視聴推奨。
 強気な幼い少女と頼りないおっさんのコンビ。おっさんは不器用ながらも娘を守りたい、でも当人はそれを望んでいない、むしろ面倒見てるのはこっち。みたいな衝突から始まり、なんやかんやあって一緒に旅に出るまでの流れの中でそれぞれの成長が描かれていてすごくエモかった。親子だからといってお互いのことをすべてわかっているわけじゃないってのがね。旅の中で二人の成長が描かれていくのが楽しみ。
 もちろんシリアスな展開も多いんだけど、基本的にノリが軽いので観やすい。『魔女の旅々』くらいコミカルで明るい話が多いよ!
 戦闘シーンは3DCG。ドリルついてるやん!コミカルなモーションや、ノリと勢いで困難を打破するシナリオはリアルロボットというよりスーパーロボットって感じ。あとロボのデザインとかちょっとロックマンDASHっぽい。ちなみに、怪獣のデザインは河森正治
 BGMは加藤達也。最近だと『少女歌劇レヴュースタァライト』なんかが印象的だけど、本作も「主人公の思春期」みたいなBGMが多い。また、静かな時間から徐々にテンションが上っていく感じの曲調が好きで、本作でも盛り上がりのシーンで音楽がすごく輝いている。
 主人公の幼女を演じるのは、今回行われたプロアマ混交の公開オーディションで選ばれた天希かのん。元アマチュアで、今回のオーディションを経て今は青二プロダクション所属なんだって。本放送に先駆けて配信されている公式ラジオ番組では、同氏の初々しい喋りと彼女を優しい目で見守っている東地さんと豊永さんの様子がすごく微笑ましくて好き。
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 てか背景やべー。広大な地下世界ということで『メイドインアビス』を彷彿とさせる背景美術が多め。あっちは植物の存在感が半端ないけど、本作は表題である「削岩」の通り、むき出しの岸壁が印象的。こっちのほうが山登り感があるよね。ちなみにコンセプトアートは『NieR』シリーズでコンセプトアートで有名な幸田和磨が担当しているため、引きで風景を見せるカットの力がすごく強い。

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© 「サクガン」製作委員会/SAKUGAN Project

 OPはちょっとアメコミ風。話が重い分、ノリと勢いを大切にしてる感じが伝わってくる。最後まで笑顔でいてほしいけどなぁ。
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ルパン三世 PART6

 悪いルパン三世
 制作はおなじみトムス・エンタテインメント。監督は『カーニヴァル』『B-PROJECT〜鼓動*アンビシャス〜』『ロード オブ ヴァーミリオン 紅蓮の王』の菅沼栄治。シリーズ構成はルパンPart5の17話で脚本を担当していた、ミステリー作家の大倉崇裕。ちなみに同氏は『名探偵コナン から紅の恋歌』『名探偵コナン 紺青の拳』の脚本を担当している人。後のスタッフはだいたいいつものメンバー。
 0話は小林清志さんの勇退に宛てた、ブロマンス風のファンムービー。チームやめるんかい、やめへんのかい、やめるんかい、やめへんのかい、やめへんのかーい!
 「時代の変遷」をテーマとした0話を観ていて思い出すのが、Part5の第23話「その時、古くからの相棒が言った」っていう回。「いままで散々楽しませてもらったし、もうここらへんで泥棒なんて辞めない?」という旨を次元からルパンに切り出すシーンがあるんだけど、単に物語の中にとどまらないほど含蓄があるこのセリフは「ルパンシリーズ、もう終わりでよくね?」という作り手の想いを内包した、とても重いセリフなんだよね。
 で、そのセリフを聞いた時ふと「そうか、もうルパンは永遠に続くわけじゃないのか」とか「小林清志さん、あとどれくらい次元を演じ続けられるんだろう」みたいな考えがよぎった視聴者も多かったと思う。
 この「今後もルパンシリーズを作り続ける意義って何?」という投げかけに対するルパンの答えがめちゃくちゃエモかったので、未だに記憶に残ってるんだよね。まだ観てない人はぜひPart5もよろしくね。
 そういえば昔のルパンって結構めちゃくちゃな展開多かったよね。普通に人殺すし、ビックリドッキリメカでトンデモ展開、物理法則無視してカーチェイス、etc。Part6はそこら編の「ルパンは悪いこともするめちゃくちゃなヤツ」っていう感じをうまく汲み取ってリメイクしてる感じなのかな。Part5はかなりハードボイルド系だったので温度差がすごい。
 ちなみに今回のゲスト脚本家は押井守辻真先芦辺拓、樋口明雄、湊かなえ。わーい押井さんだー。
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月とライカと吸血姫(ノスフェラトゥ)

 冷戦時代の宇宙兄弟
 ガガガ文庫より2016年から刊行中の、牧野圭祐による小説が原作(イラスト:かれい)。
 制作は『ぼくたちは勉強ができない!』『モンスター娘のお医者さん』のアルボアニメーション。
 監督は『フォトカノ』『Cutie Honey Universe』の横山彰利。シリーズ構成は原作者の牧野圭祐が担当している。同氏は実写ドラマの脚本とかも書いてる人なんだって。キャラデザは『モンスター娘のお医者さん』から加藤裕美が引き続き担当している。そういえば雰囲気がモンスター娘のお医者さんっぽいかも。
 アニメの魅せ方的に、どうしても「吸血姫」の方に目が行きがちなのだけれど(OPもALI PROJECTのザ・吸血鬼みたいな曲だし)、本作のメインはむしろ「月とライカ」のほう。
 描かれているのは架空の国家、施設、歴史だけれど、「ライカ」については概ね史実通りのお話になっていて、そこだけを切り取ると「歴史モノ」というジャンルに。ストーリーも「地球軌道を周回した最初の動物から、初の有人飛行へ」がメインになっている。主人公はその計画に参加しているパイロット候補生。彼らの訓練の様子を通じて、50年以上前の宇宙開発の現場を垣間見るアニメみたい。あえてテロップを堅いフォントにしてルポルタージュっぽく演出してるのも好き。

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© 牧野圭祐小学館/「月とライカと吸血姫」製作委員会

 で、「吸血姫」がいい感じのSF要素として輝いている。おおまかに言うと「多少我が国が一歩リードしてはいるけど、ここで一気に差をつけるため世界初の有人宇宙飛行を一斉に中継…でも失敗したら意味ないし…せや!人語を話せる家畜を飛ばせばええんや!」みたいな感じ。
 これは公式のラジオの中でもちょっと触れられていたけれど、実は人種差別がテーマなのかな。吸血鬼と言っても『亜人ちゃんは語りたい』の小鳥遊ひかりくらいの身体的特徴を有する(ほぼ)人間として描かれているのが印象的で、特に1話は前任の犬と、後任の吸血鬼を重ね合わせるような演出が多かったよね。
 アニメで冷戦を描くのって結構珍しいよね。「プリンセス・プリンシパル」みたいに、膠着状態の国同士を巡ってスパイが暗躍するアクション作品みたいなモチーフはたまに見るんだけど、本作は「冷戦時代に繰り広げられた、国力(科学技術)の熾烈な競い合い」という、かなり政治色が強いくて地味なテーマだし。とにかく偉いおっさんがいっぱい出てくるのが本作の最大の特徴。
 音楽がちょくちょくバロック音楽なのがいいよね。劇伴を担当している光田康典は『黒執事 Book of Circus』も担当している人。高貴でありつつも、ちょっと妖しい感じが好き。
 EDはchima。急にノスタルジックじゃん。
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世界最高の暗殺者、異世界貴族に転生する

 ひとりLEON
 2018年より「小説家になろう」にて連載されている、月夜涙による小説が原作。2019年より角川スニーカー文庫から書籍版が刊行中。めっちゃ最近じゃん。
 制作は、なろう作品でおなじみSILVER LINK.と、同スタジオ作品の下請けでよく一緒に仕事しているstudioぱれっと
 監督は『つうかあ』『賢者の孫』『魔王学院の不適合者』でおなじみ田村正文。シリーズ構成は『つうかあ』の高山カツヒコが担当している。キャラクターデザインは『ブレイドアンドソウル』キャラデザや『呪術廻戦』の一部サブキャラクターデザインを担当している長田絵里。
 1話は今の主人公の姿、そして過去の主人公のお披露目回。実質2話から本編。剣と魔法の世界(銃がない世界とは言っていない)。
 主人公が元老兵のため、内容はハードボイルド系なのかな。脚本は高山カツヒコだし。同氏はSF作品でおなじみだけど、本作も例にもれず「なんで暗殺者が女神様直々にご指名で転生することになったのか」の部分の描かれ方が非常にきっちりしてて好き。ここまでくるともはやSF作品では。あと、神の都合で転生させられた主人公に動機があるとは限らないんだけど、本作は意外と主人公の動機づけが丁寧に描かれていて分かりやすかった。実質、闇属性のヴァイオレット・エヴァーガーデンみたいな主人公なのでぜひ幸せになってほしい。
 2話では魔法のお師匠と意気投合するお話なんだけど、二人の無邪気さが微笑ましい。あと、お師匠に両親の自慢をしているときの主人公がワントーン声が明るくなっているところが細かいけど非常に好き。

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© 2021 月夜 涙・れい亜/KADOKAWA/暗殺貴族製作委員会

 「そもそも最高の暗殺者ってなんやねん」の部分については、主人公の語りの中で明かされていく感じ。自分なりの矜持を持ってる主人公すき。
 3話でのやり取りを通じて、「お?これはワンチャン暗殺者にならずに平和な人生歩むパターン来ちゃう?」と思わせといてからの~っていうラストの流れがすごく好き。人生2周目にして、改めて「そもそも最高の暗殺者ってなんやねん」の部分が成長していってしまうカルマが裏テーマなのかな。
 さすがSILVER LINK.。1話冒頭の大立ち回りこそ本作で一番見せたい部分って感じ。「剣と魔法の飛び交う殺陣」という特殊ジャンルが最も得意なアニメ制作スタジオの一つなのでは。同スタジオのアニメは毎回なんやかんや魔法が使える登場人物がやたら多い中、作品ごとに魔法の演出を変えていってるのが結構凄いよね。個人的に魔王学院の幾何学的な3D魔法陣が好き。

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© 2021 月夜 涙・れい亜/KADOKAWA/暗殺貴族製作委員会

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SELECTION PROJECT

 アニメで学ぶアイドルのオーディション番組
 オリジナルアニメ。制作はみんな大好き動画工房。監督は『私に天使が舞い降りた!』『恋する小惑星』の平牧大輔。着々と監督としてのキャリアを積んでいくぅ!
 シリーズ構成は『ルパン三世 PART IV』『ラクエンロジック』を担当していた高橋悠也
 キャラクターデザインは平山寛菜。『彼女、お借りします』でキャラデザを担当していた人なので、目元が凄くカノカリっぽい。
 また、恋する小惑星総作監を務めた杉田まるみ、松浦麻衣が本作でも参加しており、絵の雰囲気がすごく恋アスのようなエモい感じに仕上がっている。夕方~夜のシーンがめっちゃ好き。

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©SELECTION PROJECT

 アイドルオーディションというエンタメ自体は昔からあって、本作はそれをアニメでやろうぜ、っていうアニメ。「リアリティショー」ということで、あのリアリティショーがテーマになっている。ナマモノじゃないからとっつきやすい?リアリティショー自体は3話からで、2話まではオーディションの話(前日譚)。
 アイドルって、序盤のくだりを適切に端折るために「おもしれー子だな。スカウトしちゃお」から始まることが多いけれど、本作は「大規模な」オーデションから。
 その後、オーディション番組を放送しているというテイでオーディションの様子が描かれるんだけど、課題曲を歌っているときも「歌っている子を魅力的に見せる演出」ではなく「歌っている後ろで順番を待っている子から見える景色」なのがヤバい。その後のパフォーマンスシーンでも「舞台で踊っている候補生を撮影しているカメラマンや、険しい顔で卓を操作している音響スタッフ」等の描写が多く、現場の緊張感がやたら丁寧に描かれていて胃が痛い。確かに、歌う順番待ってる子の視点だとああいう景色が見えるだろうし、普通なら空気に飲まれちゃうよね。みんな堂々と歌っててすごいなーって。
 3話は主人公とライバルの子のお話。二人の関係すき。手が届かないほど遠い星(CV.早見沙織)を見ている二人の視線って、星が遠いほど限りなく平行に近づくよね、みたいなことを思ってた。肝の座り方が中学生じゃねえ!
 あと衣装。練習着なのにちょくちょく衣装チェンジしてるのが細かい。もしかして全員毎日着替えるん?キャラデザの人死にそう。

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©SELECTION PROJECT

 構図の良さはやっぱり健在。オーディションに向かう道、オーディションからの帰り道が特に好き。キャスター付きスーツケースのタイヤを使った演出もすき。
youtu.be

やくならマグカップも 二番窯

 2期。ものづくりを通じて多治見市の魅力を発信するご当地アニメ。
 主人公の成長を丁寧に描いてて、青春部活モノとして面白い。放課後ていぼう日誌みたいな感じ。焼き物、というより「ものづくり」に目覚めた高校生のお話なので、『ステラのまほう』のような感じの作品。何かを自分の手で作るのって楽しいよね。
 押井守監督が『ぶらどらぶ』にて単独スポンサーとして参加してくれた企業について「金は出すけど口は出さない」と感謝してたのが印象的だったんだけど、本作もまた多治見市が参加した企画でありながら、かなり制作側に裁量を委ねてくれたらしい。そういった経緯もあり、普通に日常アニメとして完成度の高い作品に仕上がっている。尺が半分しかないけどな!
project.nikkeibp.co.jp
 とにかく構成がすごく練られている。アニメ本編は15分の枠しか無いのに、視聴後感は30分アニメを観たあとのような満足感。監督も1期の特番で「尺がみじけえ!」ってボヤいてたけど、やっぱプロって凄い。
 EDのイントロすき。あと途中でペンギンが脳漿をぶちまけるところもすき。
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境界戦機

 未来の北緯38度線(日本が舞台)。
 サンライズバンダイのオリジナルアニメ。制作は『キングスレイド』『ガンダムビルドダイバーズ』のSUNRISE BEYOND。監督は『蒼穹のファフナー』『宇宙戦艦ヤマト2202』の羽原信義。シリーズ構成の木村暢は『ガンダムビルドダイバーズ』でシリーズ構成を担当した人。キャラデザは『機動戦士ガンダムSEED』『ガンダムビルドファイターズ』『ゴールデンカムイ』の大貫健一が担当している。
 また、「メカニックデザインスーパーバイザー」という肩書で、奥山清行(KEN OKUYAMA DESIGN)が参加している。同氏は新幹線とかフェラーリとか、ヤンマーの農業機械とか、幅広く工業デザインを手掛けているすごい人。というわけで本作のロボットはすごく、どこかで見たような工業機械っぽいデザインに仕上がっている。なぜならデザインした人が同じだからね!
 あと、音楽をラスマス・フェイバーが担当している。同氏がTVアニメの劇伴を担当するのって『はるかなレシーブ』以来かな。
 パット見子供向けのようで、普通に戦争アニメ。東西南北に分断された日本を舞台に、ひょんなことからお尋ね者になった少年の視点で紛争の顛末を描いていく。
 単に敵とロボットで戦う話ばかりでもなくて、たとえば2話は「紛争の影響を受けたとある老夫婦の暮らし」に着目した挿話になっている。普通に感動してしまった。
 アニメーションについて。令和のロボアニメでありながら、なんとすべて作画アニメーション。ロボのギミックも内部の構造もやたらマニアックで、かなりミリタリー感がある。膝の関節の異様なこだわりほんま。工業用重機かよ。
 操作シーンも「このロボットはどういう機序で動いているのか」に焦点をおいた描かれ方なのが最高にすき。「ロボットで敵のロボットを殴る動きを、クレーン車を操縦するような感覚で説明するとこうなるよね」みたいな、非常に説得力のある描写。
 あと、無人機による戦闘→操縦者は近くの施設内に違いない→ロボをスルーして近くの施設を攻撃する→実はロボットに登場してました。みたいな読み合いの流れがカッコ良かった。
 もちろん主人公が登場しているのはガンダム並に特別な機体なんだけど、敵(軍隊)の統率の取れた連携や機銃掃射のSEにすごくリアリティを持たせているため「え、主人公これ勝てなくね?」という緊張感が常にある。ダウン中に機銃掃射のシーンとか、普通に主人公がひき肉になる未来が見える。
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メガトン級ムサシ

 レベルファイブスーパーロボット。タイトルの「メガトン級」は、特撮作品における専門用語で「めっちゃつよい」という意味。みんな大好きレベルファイブによるメディアミックス作品。
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 制作はレベルファイブ作品ですっかりおなじみOLM。総監督・企画/原案・シリーズ構成はいつもの日野晃博。監督は、劇場版の妖怪ウォッチシリーズで監督を務めている髙橋滋春。以下スタッフも妖怪ウォッチのスタッフがだいたい続投している。
 ひょんなことからロボットに乗って敵と戦うことになった少年少女のお話。なんせレベルファイブだし、もっと平和でとっつきやすい作品をイメージしていたのだけれど、唐突な王道ストーリーに不意を打たれた。先のアニメ『ゲッターロボアーク』を観た後に本作を観ると、完全にその系譜の作品であることがわかる。めちゃくちゃハードですやん。
 正義感のある主人公が、みんなを守るために自ら率先して白兵戦に飛び込む・・・みたいな英雄譚ではなく、「あいつらマジで許せねえ・・・ぶっ殺す!」という復讐劇から始まるお話。そういえば『プラネット・ウィズ』も最初は復讐から始まったよね。本作はこの後どこへ向かうのかな。
 本作のロボットは非常に無骨。やっぱりちょい昔のスーパーロボットを意識してるんかな。鉄人28号をちょっと可愛くデフォルメした感じ?
 特にコックピット。最近のロボアニメは全天球モニター(全方位見れるやつ)が多いけど、本作は普通の画面だし、しかもちゃんとヘルメットをかぶってる。それに限らず、「よくわからない計器」「よくわからない大量のスイッチ」「よくわからない確認」「よくわからない前後にしか動かないレバー」「よくわからないetc」というレガシーを丁寧に踏襲しており、2話にして既にめちゃくちゃロボアニメしている。
 個人的にツボったのが合体シーン。というのも、昔よく柳田理科雄氏の『空想科学読本』シリーズを読んでいたのだけれど、ロボアニメについての記述で「ロボットが合体する際、ブースター部分を接続に使用してしまうと、ブースターの熱で膨張してるからピッタリハマらずに壊れるで」みたいな話が出てくるんだよね。で、本作の合体シーケンスは自由落下を利用してブースターを使用せずに合体することで上記の問題を(一応)解決してて「おお!」ってなった。
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プラチナエンド

 愛と天使のデスノート。2クール予定。
 大場つぐみ(原作)、小畑健(漫画)による漫画が原作。『ジャンプスクエア』にて2015年から連載されていた。
 制作は『MARS RED』『ドラゴン、家を買う』のSIGNAL MD。監督は1期と2期で異なり、1期は『覆面系ノイズ』『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』『ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN』の髙橋秀弥。2期はProduction I.Gの偉い人こと黄瀬和哉。キャラクターデザインは『ノーゲーム・ノーライフ』等、よくマッドハウス作品でアニメーターをやってる大舘康二が担当している。
 シリーズ構成は『ペルソナ5』『エガオノダイカ』『グレイプニル』の猪爪慎一。登場人物みんな死にそう。
 絶望している少年が、ひょんなことから天使に助けられるお話。あまりにも自然な流れすぎて好き。
 天使から福音というか寵愛というか、幸せ()を授かった主人公が自分の力で幸せを手に入れよう、っていう話なんだけど、問題は本作における「天使」が、いわゆる「天使」とは違うこと。さてはお前、死神だな?
 主人公の性格はある意味デスノートとの対比だよね。生まれ育った環境、才能、プライド、そして命の重さの捉え方。本作の主人公はかなり人間みに溢れているため、感情移入しやすい。ファーストキル一つとっても、月→ニュースで報じられていた立て籠もり犯を殺害 明日→両親の仇である養母を殺害。血が流れないデスノートの殺害方法が「殺人の実感を感じにくい性質」であるのに対し、主人公の武器は「殺人の実感を得やすい性質」になっているのも印象的。今後も、デスゲームを巡って主人公の葛藤が描かれる。
 デスゲーム作品のわりに大立ち回りはあんまり無かったりする。あくまで日常生活は普通に送れるし、バトルもワンショットワンキルが基本だから、戦う前に勝負が終わっていることのほうが多い。デスノートもそうだったけど、そういう「静かな戦争」みたいな描き方いいよね。
 2話以降は参加者が何人か判明するんだけど、案の定やべー参加者しかいない。ところで、前作のデスノートでは登場人物による全力の顔芸が作品の魅力だったけれど、本作でもモブたちの多彩な顔芸を見ることが出来る。乞うご期待。
 抑圧と開放。カタルシス的な演出として「空を飛ぶ」っていうモチーフは『ひそねとまそたん』とか『さよならの朝に約束の花をかざろう』とか、岡田麿里の作品をふと思い出す。一貫して、テーマはむしろ「自分の翼で空を飛べ」っていう話なのかも。でも、デスノート時空なので「てめえの手で邪魔なヤツを殺せ」という解釈になってしまうのが非常にアレ。
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吸血鬼すぐ死ぬ

 高貴でクソ雑魚な邪神ちゃん
 『週刊少年チャンピオン』にて2015年から連載されている、盆ノ木至によるの漫画が原作。
 制作はマッドハウス。監督は『魔人探偵脳噛ネウロ』『HUNTER×HUNTER』『魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸』の神志那弘志。シリーズ構成は『オーバーロード』『ノー・ガンズ・ライフ』『戦闘員、派遣します!』の菅原雪絵。キャラクターデザインは『イナズマイレブン Reloaded』以降キャラデザとして参加している中野繭子。
 ひょんなことから一緒に暮らすことになった吸血鬼とヴァンパイアハンターのお話。ゴリゴリのギャグアニメ。最近の暴力系ギャグ作品では『邪神ちゃんドロップキック』があるけれど、あっちは邪神ちゃんの非人道的な行い(フリ)を同居人が断罪する(ツッコミ)流れが1話数あたり3~5回くらいなのに対し、本作は1話だけで20回くらい死んでいる。
 邪神ちゃんって結構丈夫だから、ツッコミもかなり丁寧に殺害しないと成立しない分大きくボケて大きくツッコミを入れる感じのテンポ感なのだけれど、本作の吸血鬼は一瞬で死ぬ上に一瞬で復活するので、ボケとツッコミの流れがめちゃくちゃ早いのが特徴。ハイテンポなコントという意味では『おそ松さん』の仲間ということになるのだろうか。ドラルク演じてるの福山潤さんだし。
 制作こそマッドハウスだけど、各話の主要な制作スタッフはグロス請けの会社が多いためか、絵の全体的な雰囲気はあんまりマッドハウスっぽくないよね。
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異世界食堂2

 2期。1期は2017年に放送されていたので、4年ぶり2回目。
 制作は1期のSILVER LINK.から、『ODD TAXI』のOLMに。キャラクターデザインはOLM作品『ヒミツのここたま』の東海林康和にバトンタッチしているが、監督・シリーズ構成の神保昌登を含む主要スタッフは概ね続投している。主人公のおっさん、ちょっと若くなった?
 グルメ漫画あるある→パット見普通の料理だけど、その中に光る料理人の工夫に不意を突かれて「な、なんだこれは!」ってなる
 これ→一般的な洋食を、その料理を知らない人たちが評価するので、上記のような変化球がいらない。また、食べ慣れた料理であっても「こ、この工夫はすごい!」というノリで既存のレシピに培われた先人の知恵を丁寧に再評価している内容なので、味が想像できる上にすごく作りたくなる。
 多少の異世界要素もあるけど、基本的に「ポピュラーな洋食(海外の料理ではなく、洋食屋の料理っていうのがポイント)を食べるグルメ漫画」みたいになっている。車輪の再発明
 割としっかりしたファンタジー世界なので、必ずしも『異種属レビュアーズ』のように平和とは言えないのだけれど、めし屋の中ではそれぞれの出自や種族、立場を超えて「は?一番うまいのはエビフライだろ?」みたいな言い合いをしているとても平和なアニメ。また1話完結なのでいつでも気軽に楽しめるのが好き。
 
 1期振り返りPV。めっちゃお腹が空く。
youtu.be


ヴィジュアルプリズン

 V系バンドの聖杯戦争
 オリジナルアニメ。制作はA-Pictures。『神姫絶唱シンフォギア』でおなじみ上松範康が原作を担当しており、音楽は上松が率いる音楽クリエイター集団ことElements Gardenが参加している。
 総監督は『うたの☆プリンスさまっ♪マジLOVEレジェンドスター』『七つの大罪 戒めの復活』『DOUBLE DECKER! ダグ&キリル』の古田丈司。また、監督の田中智也は『七つの大罪 戒めの復活』で副監督を務めている。
 総監督は、おなじくA-Picturesの作品『ヒプノシスマイク Division Rap Battle "Rhyme Anima"』にてバトルシーンの絵コンテを何話か担当している人ということもあり、本作のライブシーンも割とあんな感じ。ちなみにキャラデザの芝美奈子もヒプマイから続投している。シリーズ構成は『オーバーロード』『ノー・ガンズ・ライフ』の菅原雪絵。結構ハードめのストーリーなのかな。
 ひょんなことから対バンライブに参加することとなった少年のお話。V系の音楽を通じて主人公の成長を描く感じ?シンフォギアやヒプマイと違って、本作はそこまで世紀末って感じでもない。日常の中に音楽がある世界なので、「非日常に連れて行ってくれる音楽」みたいな立ち位置として、V系バンドの音楽が広く受け入れられているみたい。
 実は結構平和な戦い方。歌で衝撃波も出ないし、歌いながら拳で敵をやっつけないし、歌って踊って奪い合う訳でもない。空は飛ば・・・飛ぶけど、基本的に「音楽で魅了する」という点にフォーカスを当てている分、見た目よりずっと渋いロックミュージシャンたちの群像劇。
 当の主人公も、最初からずっと「どうやって音楽と向き合えばいいのか思い悩む姿」が描かれているのが印象的。最近だと『ましろのおと』みたいな感じかも。
 衣装が細部に至るまでめっちゃV系。歌の演出も凄く「こってり」に仕上がっている。
 てか声優さんマジですげえ。もはや「V系バンドのボーカルを担当しているキャラクターの声を演じている人」を超えて、完全に本物になっとるやんけ。加えて楽曲が良すぎる。BGもボーカルも完璧すぎひん?
 あと、登場人物がみんな身も心もヴァンパイアなので「身も心もV系バンドだけど、舞台を降りたら(お化粧を落としたら)云々」の部分が無いから安心だね。「普段は普通の人間だけど、舞台の上では華やかに着飾ってますよ」ではなく「普段はかりそめの姿で生きているけど、舞台の上では本当の姿を披露できる」が正しい解釈だったみたい。
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プラオレ!~PRIDE OF ORANGE~

 アイスホッケー版バンドリ。栃木県は日光市の日常アニメ。
 サイバーエージェントとDMM GAMESによるメディアミックス作品。協力:栃木県、日光市、株式会社下野新聞社、株式会社とちぎテレビ、株式会社エフエム栃木、CRT栃木放送、株式会社新朝プレス。ということで、割とガチの地方創生アニメとなる。
 制作のCraft Eggはバンドリのゲームアプリでおなじみ。キャラ原案もここが担当しているので、「幼いバンドリ」みたいな感じのキャラに。ちな中学生。
 アニメーション制作は『はるかなレシーブ』『ひとりぼっちの〇〇生活』『魔女の旅々』でおなじみC2C。監督は『ひとりぼっちの〇〇生活』の安齋剛文で、シリーズ構成は『はるかなレシーブ』の待田堂子。キャラクターデザインは『ひとりぼっちの〇〇生活』より田中紀衣が担当している。監督ははるかなレシーブの一部絵コンテも担当しており、わりと『はるかなレシーブ』っぽさが強い作品に。
 とある日光市のスケート場で活動している、女子アイスホッケーチームのお話。ご当地アニメとして選ばれやすいテーマって色々あるけど、最近は「スポーツ」「アイドル」が定番なのかな。てか、ウィニングライブ・・・いる?
 「マイナースポーツの競技としての面白さを描く作品」でありつつ、日光市の風景描写と中学生の日常描写が中心の作品。放課後にみんなで集まって、一緒に部活動して、部活終わりにおやつを買い食いして、楽しく喋りながら帰って、みたいな日々が描かれている。
 日光・鬼怒川のご当地スポットといえば「山」「川」「かつて栄えていた温泉街の廃墟」だけじゃないんだよ、ということが少しでも伝われば県民として嬉しいな。
 OPが華やかなアイドルソング(曲はいつもの田中秀和)なのでどうしてもそっちの印象に引っ張られがちではあるけれど、ちゃんとスポ根だから!2話ラストからちゃんと本気出すから!
 実際の競技を観ると分かるけど、ゲームスピードがくっそ速くて全然目で追えないし、コート小さい上にパック(試合で打ち合ってる平たい黒いやつ)が小さいので、シュートするたびパックを見失ってしまう。ざっくりいうと「ボールがめっちゃ小さいバスケ」みたいな感じ。
 一方、アニメでの競技シーンは分かりやすくて面白い。絵的には特別新しいことをしているわけではなく、サッカーとかバスケとか、既存のアニメでよく見る演出で競技を描いているので、初心者でもなんとなく解った気になれる。あと、実際に競技を見に行った人でなければ「フィールドを見渡せる遠くの視点から望遠気味に試合を撮影しているカメラ目線」以外の視点でアイスホッケーを観たこと無いと思うので、全てが新鮮に映る。特にドリブル~シュートの際のスティックさばきがなんか不思議。ちょんちょんってやつ。あれって引きの映像だとよく見えないから助かる。
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逆転世界ノ電池少女

 特撮オタクのぱすてるメモリー
 オリジナルアニメ。制作は『ラディアン』『地縛少年花子くん』『IDOLY PRIDE』のLerche。監督は『彼方のアストラ』『地縛少年花子くん』の安藤正臣。シリーズ構成は『結城友奈は勇者である』シリーズや『ラディアン』『空挺ドラゴンズ』の上江洲誠
 未来の秋葉原を舞台にした、特高(思想警察)との戦いを描くロボアニメ。ひょんなことからお尋ね者になった元オタクの主人公が、現役オタクの仲間と一緒に反旗を翻す。最近こういうディストピア系のSFアニメ多くない?流行ってんのかな。
 ところで、「秋葉原のオタクカルチャー」が、最近「日本のレトロカルチャー」として描かれるようになってきてるよね。本作のキャラデザやギャグのノリ、BGM等がちょっと懐かしい感じなのは、そのあたりの文脈を汲んでるみたい。丁寧にあの頃の作品を今風に復刻しよう、という気概を感じる。昔栄えた芸術をオマージュしたネオロマネスクみたいなアニメ。
 面白いのが、戦いにおいて「特撮っぽくてテンション上がるかどうか」がマストなところ。期せずして特撮っぽい展開になっちゃうのではなく「恥を捨てて全力でヒーローになりきる」をあえて大切にしている分、非常にオタッキーな作品に。

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作中で最もノリノリの人(CV.杉田智和) ©伽藍堂/「逆転世界ノ電池少女」製作委員会 ©RUMBLE GARANNDOLL PARTNERS

 また、主人公が器用な人間なので「はいはい特撮ごっこね、わかったわかった」みたいなオトナの対応を三度やらかして、ヒロインから「乗り気じゃねえなら帰れ」と突き返されちゃう感じが、すごくクローズドなオタク像っぽいけど矜持があって好き。3話の「そうやって馬鹿にして、ちゃんと見ようともせず否定する!」というセリフこそ本作の伝えたいメッセージなのでは。
 また、どのキャラ、あるいは人工物もすべて「何かに似ているんだけど、何だっけ・・・」ってなるのですごくモヤモヤする。あのモニュメントなんだっけ。
 ちなみに、背景美術はLerche作品でおなじみ草薙が今回も担当している。ファンシーな見た目に反し、細部に渡るまでめっちゃ描きこんでるのが好き。

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©伽藍堂/「逆転世界ノ電池少女」製作委員会 ©RUMBLE GARANNDOLL PARTNERS

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見える子ちゃん

 呪術廻避。
 2018年より『ComicWalker』にて連載中の、泉朝樹による漫画が原作。2019年より書籍版が刊行中。
 制作はリメイク版ひぐらしパッショーネ。監督は『みるタイツ』『異種族レビュアーズ』でおなじみ若き才能、小川優樹。エロいアニメかな。助監督の間島祟寛も『異種族レビュアーズ』の人なので、実質異種族レビュアーズ。シリーズ構成は『俺だけ入れる隠しダンジョン』『究極進化したフルダイブRPGが現実よりもクソゲーだったら』『月が導く異世界道中』の猪原健太。キャラクターデザインは『劇場版 誰ガ為のアルケミスト』『十二大戦』の嘉手苅睦が担当している。てっきりまたエロアニメかと思っていたけれど、エロアニメじゃなかった、というほどエロ要素皆無でもなかった。
 内容は今時珍しいホラー作品。TVのホラー番組、たとえば「本当にあった怖い話」でいうと、再現ドラマの構成はたいてい
 日常の中の違和感→なにかいる?→いなかった→やっぱりなんかいた→キャー!(オチ)→後日譚
 みたいな展開で締める形が一般的だけれど、本作はこの「日常の中の違和感→何かいる?→いなかった→やっぱりなんかいた」の部分のみ取り出してシナリオにしているのが面白い。
 ショートエピソードじゃないから導入の部分も後日談もいらないし、「おるやんけ!」の後も「主人公が無視してエンゲージ回避」を徹底しているため、何も起こらずにそのまま日常に戻っていく。呪術廻戦みたいにバトることもなければ夏目友人帳みたいに友だちになることもないので、最初から最後まで「ホラー作品の一番美味しいところ」だけでできている。
 とはいえ、主人公は決して鋼メンタルでもなければ「ちっちゃい頃からお化けと仲が良かった」みたいな特殊な人間でも無いため、普通に毎回ビビり散らす。その姿がとても不憫かわいい。
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さんかく窓の外側は夜

FOD独占見放題配信

 ファンタジー要素が薄くてグロ要素が濃い『深夜のオカルト公務員』
 『MAGAZINE BE×BOY』にて2013年から連載されていた、ヤマシタトモコによる漫画が原作。アニメの公開に先駆けて実写映画が公開されていた。
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 生まれつきお化けの見える主人公が、ひょんなことからよくわからない事件に首を突っ込んでいくミステリー&ホラー作品。1話完結タイプかな。
 『見える子ちゃん』と違い、本作はちゃんとゴーストバスターズのお話。ホラーはエログロとセットということを知った。見える子ちゃんも大概だけど、本作は作者がBL作家ということもあり、割とあけすけな表現が多め。
 めっちゃ怖い。ゴーストバスターズなので、当然お化けと対峙したり退治したりする話なのだけれど、意外とB級パニックホラー映画っぽくないよね。単に恐ろしい怪物が出てきて、それをやっつけて、だけではなく「そのお化けが生まれるまでに至った、人間同士の悲喜こもごも」を丁寧に掘り下げるほど、ホラーとしての強度が上がっていく感じ。先のアニメ『裏世界ピクニック』もカテゴリ上はホラーだけれど、あっちはそういった掘り下げが無いのでモンスターハンターっぽい作品になってるし。
 特に「漠然といるのは分かるけど、目には見えない」という状態をあえて強調してるシーンが一番怖い。主人公は見える子くんなので、主人公が見える世界をそのまま描いてしまうと、この「見えそうで見えない」というお化けのベールが剥がれちゃうんだけど、本作は「主人公ははっきり見えていて、しかも明らかに怯えているんだけど、画面にはそれが映っていない」という演出になっていて、ちゃんと怖い。

マブラヴオルタネイティヴ

FOD独占配信

 Re:ゼロから始める地球防衛軍
 アダルトゲームメーカー「âge」(アージュ)のゲームが原作。割とグロ注意。
 制作はFLAGSHIP LINE。エイベックス・ピクチャーズグラフィニカが立ち上げたスタジオなので、ロボットのバトルシーンはグラフィニカが担当している。監督は『音楽少女』『異常生物見聞録』の西本由紀夫。シリーズ構成は『バキ』『ハイスコアガール』『新サクラ大戦 the Animation』シリーズ構成、また『第501統合戦闘航空団 ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN』でチーフライターを担当している浦畑達彦。キャラクターデザインは『紅殻のパンドラ』『ラーメン大好き小泉さん』『OneRoom』の谷拓也。アニメーションメカディレクターは『神姫絶唱シンフォギア』『ガーリー・エアフォースメカニックデザイン大河広行が担当している。ちなみに同氏は今期の『サクガン』にて怪獣デザインを担当している人。
 1話は、EDFよろしく宇宙からやってきた侵略者との撤退戦を描く前日譚。侵略者との最初の戦闘シーンをどう描くかって作品によって様々だけど、本作は限りなくリアル寄りに「悲惨な撤退戦」を描いていく。軍事行動の展開も描写が丁寧で、めちゃくちゃSFしてる。軍事考証は『戦翼のシグルドリーヴァ』等でおなじみ鈴木貴昭なので、「うちぃかた始め!」も多分リアル準拠。
 話の大筋は2話から。前提として「元となる恋愛ゲームがある」「本作はその正当な続編」ということを抑えておかないと冒頭の展開がちょっとわかりにくいかも。主人公がこの世界で何をしたいか、の部分が描かれていく。
 世界観に戸惑いつつも頑張る主人公と、相変わらず悪くなる一方の情勢。主人公視点と副所長視点で随分見え方が異なっている演出が印象的で、「俺の言うことを聞いていればいいんだよ!」とか言ってた頃のリゼロのスバルくんをちょっと思い出す。そのうち大コケしそう。
 描き方として、主人公のモノローグが中心なのは原作のゲームライクってことなのね。訓練校での生活を通じて各ヒロインの(こっちの世界での)姿を描く部分が本当はメインなのだけれど、尺の都合上かなりカットされている。見たい人はゲーム買ってね、ということなのかな。2話あたりでちょろっと描かれてるけど、甘酸っぱいというか、思った以上に青春している。
 そして戦闘シーンやべー。制作はみんな大好きグラフィニカ。最近だと『SSSS.GRIDMAN』なんかがグラフィニカだけど、本作も例にもれずアクションが凄まじい。
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デジモンゴーストゲーム

 デジタルネイティブ世代の妖怪ウォッチ
 デジモンシリーズの新規ストーリー。「デジモンって20年くらい前の人が考えたデジタル世界のキャラでしょ?」っていうイメージからかなりアップデートされててびっくりした。
 たしかに、時代の変遷とともに「おばけ」の実在性って変化するよね。単に「体が透けている人」だと、ARホログラムと区別つかないし。電子機器に干渉するだけなら電磁波でも説明できちゃうし。
 「人間に、物理的に作用するらしいよ」っていう情報が加わって初めて「え、こわ」ってなる感じがすごくSFっぽかった。なんか電脳コイルを思い出す。
 あと、現実世界を可愛いマスコットキャラクターが縦横無尽に飛び回りながら戦ってるのってちょっと新鮮かも。かわいい。
 個人的に好きな演出が「謎のお化けが人間から”時間”を吸い出す際に発生する光のパーティクル」。よく見ると0と1なんだよね。「デジモンが相手から情報を吸い出す様子を、バイナリで表現する」ていう発想めっちゃ好き。あいつらバイナリで出来てるんか。
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ディープインサニティ ザ・ロストチャイルド

 憧れが止められる方のメイドインアビス
 スクウェア・エニックスによるメディアミックス作品。制作はSILVER LINK.。世界観原案として『ベルセルク』『revisions』『魔法少女特殊戦あすか』の深見真、『ダンガンロンパ』『魔法少女特殊戦あすか』『アクダマドライブ』の海法紀光が参加しているため、既に辛い展開の予感しかない。
 監督はいつもの大沼心。今作は総監督でも共同監督でもないのね。シリーズ構成は『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』『ナカノヒトゲノム』『君と僕の最後の戦場』の下山健人。キャラクターデザインは『サークレット・プリンセス』『魔王学院の不適合者』の山吉一幸が担当している。
 ひょんなことから、南極の新規開拓地でゴールドラッシュよろしく穴掘りをする事になった開拓民のお話。先の縦穴系アニメ『メイドインアビス』は縦穴から生まれて縦穴に死ぬお話だったけど、本作の縦穴はまだ見つかったばかり。憧れとかではなく資源採掘のために掘り進んでいたら大変なことになった、みたいな感じ。未開拓の地を描くお話としては『群青のマグメル』に近いかも。あっちはもっとトリコとかハンターハンターのような少年漫画みがあるけど。
 また、死地を求めて人々が思い思いにラストダイブする、という感じではなくむしろ逆なのが印象的。1話では、ひょんなことから志願兵として入隊した少年がいろんな先輩にイロハを教わる。「ここにしか居場所のない人間が、生きるために潜ってる」という先輩の言葉に、改めて覚悟を決めるまでのお話になっていて、登場人物の「死にたくない」感がひしひしと伝わってくる(でも死にそう)。よりによってここが居場所なのか。カイジやん。
 また、背景美術がめっちゃ仕事してる。森のような開放感と、洞窟のような閉塞感が合わさり最強に見える。それこそメイドインアビスみたいに、階層ごとに景色が変わっていくのかな。序盤は「なにを探しに潜っているのか」が漠然としているので、なんとなく穴に降りってなんとなく穴の中でよくわからん怪物と戦って、なんとなく帰ってくるお話になってるけど。

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©2021 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.

 また、基本的に兵士は感染症対策で『HALO』みたいな武装してるけど、主人公チームだけ「感染するときはするし、しないときはしない」とかいって着の身着のまま潜っちゃう感じがゲーム原作っぽい。死ぬときは身軽なほうがいいからね、仕方ないね。
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テスラノート

 RELEASE THE TESLA NOTE。スパイの日常アニメ。
 『週刊少年マガジン』にて2021年から連載中の、原作:西田征史・久保忠佳、作画:三宮宏太による漫画が原作。てかめっちゃ最近やんけ。ちなみに久保忠佳は実写映画の脚本を書いている人。
 制作はギャンビット。どこ?監督は『ぬらりひょんの孫』『テラフォーマーズリベンジ』の福田道夫。シリーズ構成は原作の西田征史が担当している。同氏が原作を担当する作品がアニメ化されるのは『タイガーアンドバニー』『RE−MAIN』に続き3作目。リメイン面白かったよ。
 牡丹かわいい。日本では昔から「スパイは忍者、忍者は女子高生」という定番があるけれど、本作はそんなスパイ女子高生とスパイ青年のタッグを中心としたチームが、とあるオーパーツを探すドタバタスパイコメディ作品。
 男女ペアなのでてっきり恋愛モノでもやるのかと思っていたけれど、タイバニよろしく凸凹コンビの愉快なぶつかり合いがメイン。どっちかというとバディものって感じだよね。
 また、年齢的には主人公ちゃんのほうが年下ということもあり、相方の青年が(人生の先輩として)メンターの役割を持っているところが好き。牡丹ちゃんの成長物語なんやな、って。
 そんな牡丹ちゃんを演じるのは小原好美。同氏曰く「魔術系アホを演じることが多い」とのこと。無職転生でも残念ながら師匠は前例を踏襲なさっていたので、本作こそはいい感じにカッコイイキャラを・・・とか個人的に思っていたけれど、やっぱり駄目みたい。
 あと、相方の青年・クルマを演じるのは鈴木達央。魔王学院の不適合者もそうだけど、同氏の「かっこいい上司/先輩」感のある演技がホント大好き。ガサツなキャラから品行方正なキャラまで、あらゆる上司キャラを網羅してるんじゃないだろうか、この人。
 毎話の展開として「今回はこういう事件の捜査で、目標はこれだよ」みたいなブリーフィングと作戦会議、作戦の実施の流れがあるため、比較的説明セリフの多い作品なのだけれど、程よく軽口の叩き合いを混ぜながらそれぞれのキャラの表情をカメラで舐めつつ進行していくため、あんまり長く感じさせない工夫がおもしろかった。引きの絵と寄りの絵を行ったり来たりするカメラワークは3DCGアニメらしい面白い表現だよね。
 あと、3DCGが苦手な「コミカルで崩れた表情による表現」を、作画アニメーションを挟んで描いている回数が多いのも印象的。これは視聴者側が慣れる必要があるけど表情に緩急が出ていて面白い。
 作画アニメーションとトゥーンシェーダー調3DCGアニメーションのキャラが入り交じるハイブリッドって最近増えてるけど、それぞれ得意な中小企業が力を合わせれば1クールのアニメを作れるっていう、今のアニメーション業界らしい作風と言えるのかな。
 ただ、出番の多いキャラ=3DCGなので、作画キャラが登場するたび「ああ、こいつはモブか」ってなるのがちょっと問題ではある。『荒野のコトブキ飛行隊』では、1話で登場した飛行機乗り(作画)が、後に3DCGキャラとして再登場して「あ!アイツ受肉しやがった!」って言われていたのを思い出す。
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MUTEKING THE Dancing HERO

 陽属性のさらざんまい
 1980年に放送されたタツノコプロ製作のテレビアニメが原作。制作はタツノコプロ手塚プロダクションの共同。エグゼクティブ・プロデューサーにタイムボカンシリーズでおなじみ笹川ひろし、総監督にボトムズ原作でおなじみ高橋良輔、監督に『ガッチャマンクラウズ』助監督のサトウユーゾー。シリーズ構成として『レイトン ミステリー探偵社 カトリーのナゾトキファイル』の近藤祐次。メインキャラクターデザインは『ガッチャマンクラウズ』の高橋裕一、キャラクター設定、総作画監督に『ASTRO BOY 鉄腕アトム』の瀬谷新二。
 ひょんなことから街を守るヒーローになった少年のお話。ヒーローモノと聞いてちょっと身構える人もいるかもしれないけれど、「タイムボカンシリーズみたいなノリのやつ」と聞けば多少は観るハードルも下がるだろうか。
 とにかく最初から最後までノリと勢いで出来ているアニメ。展開も怒涛の速度で、たいてい気づけば終わっている。1話だけだと何が起きているのかわからないけど、2話、3話と観ていくと、いわゆる「お約束の展開」で作られたテンポ感がだんだんつかめてくる。諦めずに4話くらいまで観てみてね。
 また、あらゆる意匠が尖ってる。一応、未来のアメリカはサンフランシスコが舞台という設定ではあるけれど、なぜか半世紀前のモチーフで埋め尽くされている。なぜにヒッピー&サイケデリック。むしろ逆に新鮮なのか?深夜アニメではあるけれど、ポップな色彩、コミカルな表現は子供向けアニメの文脈だよね。なんとなく観てて楽しいアニメ。
 そして楽曲提供がめっちゃ豪華。音楽はビクターの提供なのね。つい話の展開に目が行きがちだけど、むいろ音楽を聴くほうがメインのアニメなのでは。わざわざ毎話ライブシーンあるし。
 OPは、代表曲『SUSHI食べたい feat.ソイソース』で知られるORANGE RANGE
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シキザクラ

 名古屋のご当地アニメプロジェクト。足掛け4年の集大成
 シキザクラ(四季桜、学名:Cerasus × subhirtella ‘Semperflorens’ Miyoshi)はバラ目バラ科サクラ属のサクラ。マメザクラとエドヒガンが交雑した種間雑種で、春と秋の二度開花する二季咲きが特徴。
 制作は3DCGアニメーション制作スタジオのサブリメイション。最近だとネトフリ独占配信作品『ドラゴンズドグマ』を制作したスタジオで、TVシリーズは本作が初めてかな。
 総監督は同スタジオの代表こと須貝真也。同氏は『魔法使いの嫁』『PSYCHO-PASS Sinners of the System』にてCG監督を担当している。監督は『ラブライブ サンシャイン』CGスーパーバイザーの黒﨑豪。シリーズ構成は、『スカーレッドライダーゼクス』のストーリー原案、シリーズ構成を担当していた永川成基が担当している。キャラクターデザインは『ひなこのーと』『ctrus』『ハイスクールDD』の中武学。3DCGアニメとしてはかなり丸みのある女の子デザインが印象的。
 「メイドイン名古屋のアニメ作ろーぜ」という企画から始まったアニメ作品。ストーリーとしては、ひょんなことから不思議な力を得た少年が、地球の平和を守るために戦うお話。ちなみに、Youtube配信番組「アニメ制作の裏側全部見せます!」で制作の裏側を全部見せているらしいので、興味のある人はぜひ。
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 ベースは特撮っていうかヒーローモノを踏襲していて、結構王道な感じ。制作陣としては「主人公の成長物語が描きたい」とのこと。主人公の成長とともに初主演の若い俳優さんも成長していく関係性ってなんか良いよね。ちなみに1話で主人公の過去が匂わせ程度でサラッと描かれているけれど、元のプランではここも掘り下げる予定だったらしい。
 という前知識を踏まえると、2話Bパートの「・・・変身。」がめっっちゃエモいんだよぉぉ!
 で、そこからの戦闘シーン、ワンカットでアングルをぐるぐる回してて、まるで特撮作品。ロボではなくパワードスーツを着た複数の戦士が一緒に戦うので、戦隊モノっぽい雰囲気がある。
 みんな声がフレッシュ。2018年に開催された一般公募のオーディションこと「ナゴヤセイユウオーディション」で選ばれた人を中心にキャスティングされており、ほぼ新人。なんというか「天才てれびくん」とか「おはスタ」の間に放送されている子供向けアニメみたいな感じの雰囲気に。ちなみに彼らの所属はTYK Promotionという名古屋の事務所で、今回の企画の発起人の一人となる。つまり「TYK Promotionにはこんな感じの声優がいますよ!」というプロモーションアニメでもあるのね。なんか「キャラの表情が豊か」=「中の人が試されている」感があってちょっとドキドキする。
 ご当地アニメということで、背景は名古屋を忠実に再現してるらしい。土地勘が無いから全然わからんけども。
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ビルディバイド -#000000-(コードブラック)

 京都がまるごとカケグルイになった放課後さいころ倶楽部
 アニプレックスによるトレーディングカードゲームを原作とするメディアミックス作品で、分割2クールの予定。
 制作は『はたらく細胞BLACK』『さよなら私のクラマー』『東京リベンジャーズ』のライデンフィルム。実は京都にスタジオを構えているので、京都にまつわる作品を手掛けることが多い。原案は『賭ケグルイ』の原作者こと河本ほむら、および同作品のノベライズ担当である武野光によるタッグ。実質賭ケグルイ
 監督はライデンフィルム作品『無限の住人 IMMORTAL』副監督の駒田由貴。シリーズ構成は『ベルゼブブ嬢のお気に召すまま』『幼馴染が絶対に負けないラブコメ』シリーズ構成、また『炎炎ノ消防隊』『東京リベンジャーズ』で各話脚本を担当している富田頼子。キャラクターデザインは『セキレイ』『幻影をかける太』『トリニティセブン』の友岡新平
 ひょんなことから王様ゲームに参加することになった少年少女のお話。絶対王政になって久しいネオ京都で、王様への挑戦権を掛けてカードゲームバトルが繰り広げられる。遊戯王デュエルモンスターズデュエリストキングダム編みたいな?
 あとカードゲームのアニメ、ゼロか100かの大勝負多すぎ問題。本作も前例に漏れず、カジュアルに闇のゲームが行われている。ちなみに負けても変顔したりしない。残念。
 でも、負けても死ぬわけではないので「デスゲーム」という感じでもない。カードゲーム自体が一般教養(全員デュエリストという世界)の世界で「王への挑戦者」と「それ以外の一般市民」の意識がどう違うのか結構気になる。
 主人公はその中でも、反乱分子みたいな感じなので、「力こそ全ての世紀末」という社会の枠組み自体どうなん?っていう方向に進んでいきそう。3話以降にそういう描写もあるので、最終的にネオ京都を焼き討ちにでもするのかな。
 カードバトルについては、ルールの説明や戦略の紹介もほどほどにさっさと本戦を開始してしまう感じなので、興味のある人は公式の動画を見てみてね。第1回を見ただけでも随分理解度が違うと思うので。
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 パット見、ゲームシステムとしては「最後までワンチャンあるで」っていうギャンブル要素が印象的。本作の主人公がつのドリルを使いまくるタイプの戦略なのは、こういうゲーム性を前面に出していきたいという制作の思惑なのかな。
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進化の実~知らないうちに勝ち組人生~

 下野紘のツッコミ1000本ノック
 2014年から「小説家になろう」にて連載されている、美紅による小説が原作。また同年より『モンスター文庫』にて書籍版(イラスト:U35)が刊行中。
 制作は『スパロウズホテル』のHOTLINE。普段は下請けがメインで、元請けはめっちゃ久しぶり。監督は『エレメントハンター』『獣旋バトルモンスーノ』の奥村よしあき。シリーズ構成は『けだまのごんじろー』の市川十億衛門。子供向けアニメかな。
 勝ち組人生とか言うから、てっきり50代の主人公が転生して云々みたいな展開を想像していたけれど、思春期の少年がこじらせる感じのパティーンだった。
 1話は下野紘劇場。どんだけしゃべるんだあの人。最初のエピソードは、正ヒロインと主人公との馴れ初めを描きつつ、異世界転移した主人公が人間をやめる話。ちなみに2話も下野紘劇場。
 ちなみに正ヒロインは花澤香菜(CV.稲田徹)。メインの3人が出演した特番がこないだ配信されていたんだけど、めっちゃ面白かったのでまたやってほしいな。
 総じてちょい昔のギャグアニメをオマージュした作風になっている。ほぼ主人公の顔芸と下野紘の演技によって支えられているといって差し支えない。
 どうしても作画コストの都合上登場人物が少ないため、あらゆる登場人物のボケに対し主人公のツッコミで落とすという形式になっているんだけど、なんというか下野紘がすごく試されている。最近だと『魔王様、リトライ』のような謎の緊張感があって、サッカーのゴールキーパーみたい。
 そして、ついに3話でボケとツッコミの均衡が崩れてしまう。途中からボケが渋滞してて草。進化の実の能力により主人公の容姿が徐々に変化(イケメン化)していくんだけど、これはルッキズムというよりも「ボケが渋滞しているのに、ツッコミのお前にボケ要素を残してどうするんだ」という天啓だったみたい。

真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました

d'アニメストア独占配信

 RPGで役割を終えたNPCセカンドライフ。公式サイトのURLは”
https://shinnonakama.com
”なので、通称は「真の仲間」。どっちやねん。
 2017年から「小説家になろう」にて連載されている、ざっぽん氏による小説が原作(イラスト:やすも)。2018年から角川スニーカー文庫にて書籍版が刊行中。
 制作はウルフズベイン×スタジオフラッド。ウルフズペインは『ピーター・グリルと賢者の時間』、スタジオフラッドは『ダメプリ ANIME CARAVAN』の元請けをしている。
 監督は『うたプリ マジLOVEレボリューションズ』『ダメプリ ANIME CARAVAN』『KING's RAID』の星野真。シリーズ構成は同じく『KING's RAID』の清水恵。キャラデザはダメプリから渡辺るりこが続投している。作監色彩設計美術監督ダメプリのスタッフなので、絵の雰囲気はダメプリっぽい。
 大学時代に知り合った仲間同士でベンチャー企業を立ち上げたけど、経営方針の違いから退職した主人公が脱サラして田舎で個人商店を開く、みたいな感じのお話。小説家になろう界隈で広く展開されているジャンル「追放系」の上流に位置する作品。
magmix.jp
 コミカライズ版がベースになっているらしく、割とコミカルな表現が多め。実際のところ、コミカライズ版ベースのアニメと原作ベースのアニメって結構違うのかな。
 本作は勇者の解釈が特殊で、「生まれ持った素質」の拡大解釈で「その職業につきやすくなる運命レベルの調整が入る」という、全体主義みたいな世界。メジャーな仕事に限らず盗賊とか喧嘩師みたいなアウトサイダーまで、このシステムによって先天的な素質、というか人生のレールが敷かれているという、人類が全員NPCみたいな設定になっている。
 翻って主人公は、RPGでいうところの「序盤に仲間になり、最初からある程度レベルが高いため活躍するんだけど、味方のレベルが上がるほど相対的にくなるのでだんだん使わなくなる味方キャラ」みたいなポジションとして描かれている。ちなみに1話はクビ宣告から始まるため、さっさとセカンドライフ編に突入している。あっという間にタイトル回収。
 夢やぶれて隠居生活、というより「自分らしく生きる」ていうお話がメインテーマみたい。2話では同じような悩みを持つ少年が登場するけど、先天的な素質に困惑する少年に行き方を説く主人公はちょっとした先生のよう。押しかけ妻との馴れ初めエピソードも「主人公が器用貧乏だからこそ培ってきた考え方や、生き方」が描かれていて好き。
 ちなみに、主人公と押しかけ妻との蜜月がほぼ本編のすべてを占めている。
 あと、主人公の抜けた勇者パーティのその後も描かれてるんだけど「この炎上案件、あいついないと全然回らないからもう一回あいつ呼び戻そう」みたいな恐ろしい会話をしていて怖い。
OPはゆいにしお(読み:ユイ・ニシオ)。こういうガッツリシティポップ感のある楽曲がアニメのOPやEDに採用されることって結構珍しいよね。スローライフみがあって好き。本人曰く、海外の人からの反響が結構凄いらしい。日本のシティポップって海外で評判いいのかな。
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最後に

 新作全部1話視聴はおすすめしない。普段からアニメを観ている人であれば、ある程度は自力で視聴作品の取捨選択は出来るのだろうけれど、それを超えて手を出そうとした場合、「とりあえず1話だけでも見るか」の労力さえ捻出出来ない場面が増えていってしまう経験をした人は多いと思う。
 そこで、「まだ見ぬ作品から魅力的なものを」となった時どうしても他者の評価に頼ってしまい、「他者の評価が低いアニメは悪いアニメ」といった他人本位の評価軸でアニメを選ぶ→だんだん自身の評価軸も他人本位のそれに寄っていってしまう、ということが起こりやすいんだよね。
 全部視聴するという行為は一見、フラットな視点でアニメを楽しむ行為に見えるけれど、実は「すべてのアニメに優先順位を付ける」という行為とだいたい同義なので、より上記の問題に苛まれやすいんだよね。「このアニメ、世間的な評価低いんだよなぁ、でも全部見るって決めたしなぁ・・・」というテンションで観るアニメほどしんどいものは無いので、宗教上の理由でもない限りは新作全部1話視聴はおすすめしない。
 そして、製作者様へ感謝をば。今期もまたとても面白い作品を作っていただきありがとうございます。暑い日が続きますが、お体に気をつけつつ制作頑張ってください。陰ながら応援しています。ではでは。