やっと忌明けしたので2023年1月新作アニメ1話ほぼ全部観た感想書くよ

はじめに

 色々あって父が急逝した。

 私の父は、とても変わった人だった。見たことない楽器にハマりだしたり、目玉焼きには醤油でもソースでもなく、ポン酢をかけていた。
 その変わった父は、3年前にとてもポピュラーな病気で亡くなってしまった。

 これは2022年に放送されたアニメ『スローループ』1話冒頭シーンのセリフだけれど、我が家もまあ大体そんな感じだった。亡くなったのはせいぜい3ヶ月ほど前ではあるが。
 そう思うと、父親の死を3年も引きずっていた主人公や彼女の姿を傍で見ていた恋ちゃんの心情って、アニメではサクッと描かれているけれど本当は色んなドラマがあったのかなぁ、なんてことをふと考えていた。
 一方の私はスローループの主人公と比べ精神的にも経済的にも自立していたので、立ち直りは割りと早かったように思う。また肉親との離別も今回が初めてではないので、遅れてやってくるであろう、あの喪失感も既に対策済みだ。母の時に経験した「『そうか、もうあの人はいないんだ』という実感の欠片みたいなものを日常の中から拾い集める作業」を通じて、今回もまた徐々に受け入れていこうと思う。
 それはさておき、法要も終わってようやく自分の時間が進み始めたので、改めて1月クールのアニメを観始めることに。4月クールは・・・間に合うかな。私みたいにしばらくアニメから離れていた勢を一人でも多く沈めることができればと思い、それぞれ1-3話程度の視聴後感をまとめているので、興味を持つきっかけになれば幸いだ。
 ちなみに2クール以上の長期シリーズや続き物は「1期1話を観てね」くらいしか書くことができないので基本的に端折っている。

配信情報まとめ

 私はTVでアニメを観ない(BS見れないし、TOKYOMXもAT-Xも受信できない)ので、配信情報はこれ以外の手段について書いている。
 なお、独占配信系タイトルは放送開始時点でのものであり、後に他の配信サイトでも配信が開始される場合がある。あくまで現時点での参考になれば。

独占タイトル一覧

※《》内は月額有料プランの料金(税込み)

アマプラ独占配信《500円/月》

大雪海のカイナ
異世界のんびり農家(見放題)
とんでもスキルで異世界放浪メシ(アマプラ、ひかりTV独占)

ネトフリ独占配信《990円/月※上位プランあり》

MAKE MY DAY
ぐでたま 〜母をたずねてどんくらい〜
ソニックプライム
聖闘士星矢:Knights of the Zodiac
BASTARD!! 暗黒の破壊神
伊藤潤二『マニアック』
極主夫道 シーズン2

FOD独占配信《976円/月》

特になし

アベマ独占見放題《960円/月》

神様に拾われた男2

Disney+独占配信《990円/月》

東京リベンジャーズ 聖夜決戦編

WOWOW独占配信《2,530円/月》

火狩りの王

その他

Youtube,TikTok限定公開)
ポールプリンセス!!
(DMM独占配信)《550円/月》←NEW!
LUPIN ZERO

感想

ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん

 恋愛ADVゲーム実況解説プレイ
 小説家になろう原作のアニメの中でも、特にタイトルが秀逸すぎる作品。タイトルを読んだだけでだいたい何が起こるのか、誰が出てくるのか分かるのは普通にすごいと思う。
 ひょんなことから、恋愛ゲームの王子様キャラがツンデレ悪役令嬢のリーゼロッテを、実況の遠藤くんと解説の小林さんの力を借りて攻略することになったお話。というか、実況解説の二人が王子様を使ってリーゼロッテを好き放題弄り倒す作品。
 まず王子様にちょっかいを出されたときのリーゼロッテがかわいい。特に、キャラ同士のやり取りが「べっ、別にあんたのためじゃないんだからねっ!」までワンパッケージになっていないのが印象的で、代わりに「ああーっと!リゼちゃんがめちゃくちゃ照れている!!」という実況解説によってオチをつけているので、リゼたんがかなりナチュラルなツンデレキャラに仕上がっている。よく「もしリアルにツンデレがいたら、きっとすげーうざい奴だよね」みたいな話を聞くけれど、実況解説がなければリゼたんは概ねそういうキャラだよね。
 また、リーゼロッテの反応を見てテンションが荒ぶっている実況の石川くんと解説の花澤さんが異常に面白い。構図としてはゲーム実況動画のフォーマットそのままで、「声とお芝居に長けた声優さんがガチで実況するとこうなる」を体現したような作品に。解説実況コンビは物語の外側から関わっているので、純粋に楽しそうなのも良いよね。

©永瀬さらさ・紫真依/KADOKAWA/悪ラス製作委員会2022

 ただのゲーム実況と違う点は、実況と解説役の二人から無茶振りを受けて、毎回ドギマギしながらリゼたんと距離を詰めようと、ゲームの中の王子様が頑張っているところ。彼の頑張る姿を楽しむアニメという意味では「ゲーム実況をしている配信者にコメントでアドバイスする視聴者のリアクションを楽しむアニメ」みたいな感じになるのだろうか。

©永瀬さらさ・紫真依/KADOKAWA/悪ラス製作委員会2022

 実況の遠藤くん、誰が演じるのかと思ったら石川界人プロで草。同氏は非常に頭の回転が早い御仁で、よくラジオや生放送番組等で巧みな実況解説を披露しているところを拝見していたけれど、本作ではかなり地の声とテンションで実況してて笑った。ほぼまんまやんけ。
 おまけに解説の小林さんを演じるのは花澤香菜。この二人といえば『サクラダリセット』のイメージが強すぎて、あっちとの温度差につい笑ってしまう。サクラダリセットはいいぞ。
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 「小説家になろう」にて2018年から連載されていた、恵ノ島すずによる小説が原作。2019年にカドカワBOOKSから書籍化(イラスト:えいひ)。
 制作は『カノジョも彼女』『MUTEKING THE Dancing HERO』『魔法使い黎明期
』の手塚プロダクション。監督は『五等分の花嫁』『安達としまむら』『異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術Ω』に演出として参加していた吉村文宏。初監督かな。シリーズ構成は『ニル・アドミラリの天秤』『かくりよの宿飯』『ラブオールプレー』の金春智子。キャラクターデザインは『ガンダムビルドダイバーズ』キャラクター作画監督の片山みゆき。


TRIGUN STAMPEDE

 外惑星が舞台のFallOut
 とある惑星に広がる荒野と、そこに暮らす人々と、謎の指名手配犯のお話。
 序盤は、その指名手配犯を追いかける新聞記者や警察、彼を知る街の人達とのやり取りを描きながら「彼はどういう人物なのか」を徐々に掘り下げていくお話になっている
 過酷な環境とは無縁の箱庭で育った主人公が、ひょんなことから地上に追い出されてしまい、無限に広がる荒野を生きるお話。っていうと、ふと『Fallout』シリーズを思い出した。あっちは核戦争によって文明レベルごと荒廃したレトロフューチャーアメリカが舞台だけれど、 「荒野」「ロストテクノロジー」「錆びた鉄骨の街」「西部劇っぽい雰囲気」等、似たモチーフの作品だなって。てかトライガンって西部劇なんだね。
 それにしても、なんちゅうお芝居するんや・・・。先のアニメ『BEASTARS』でも、個性的な造形のキャラクターたちがめっちゃ人間臭い芝居をする作品だったけれど、本作は更に人間臭い芝居をしててもうなんか凄い。ややオーバー目なお芝居の付け方はカートゥーンっぽく、3DCGということもあって若干ディズニー(ピクサー)作品ぽい雰囲気に。おまけに、トゥーンシェーディングの効果で3DCGっぽさすら感じられないシーンもあって、ちょい昔の「ロトスコープでヌルヌル動く方のディズニー作品」みたいな情緒さえ感じられる。てか表情筋何個あるんだよ。

© 2023 内藤泰弘少年画報社/「TRIGUN STAMPEDE」製作委員会

 お芝居でいうと、カメラワークが相変わらずえげつない。作画アニメの苦手とする「回り込むような視点移動」をガンガン使いまくってて、アニメ全体に独特の躍動感がある。
 あとOrangeのアニメって、いつも背景が精巧で写実的な絵を採用していて、本作もまたシーンごとに様々な情緒のある背景ばかりでほんと大好き。例えば、1話で登場する建屋(街)は非常に入り組んだ構造で、引きで見ると壮観な1枚絵なのに、近くで見ると立体的でごちゃごちゃしている3Dモデルみたいな複雑な背景、でも「テクスチャを貼っただけのハリボテ」ではないちゃんとした絵になっている、というすごく不思議な背景になっている。美術監督曰く「3Dモデルを画用紙に印刷して絵の具で加筆するなんか大変な仕方をやっています。」とのこと。よくわかんないけどすげー。


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 内藤泰弘による漫画が原作。『月刊少年キャプテン』(徳間書店)にて連載されていた『トライガン』と、『ヤングキングアワーズ』(少年画報社)にて連載されていた『トライガン・マキシマム』がある。アニメ化は、1998年に放送されたマッドハウス制作のアニメシリーズ以来2回目。25年前・・・?
 制作は『宝石の国』『BEASTARS』『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』のOrange。というわけで本編は基本的にフル3DCGアニメになっている。監督は『宝石の国』の絵コンテ、演出として参加していた武藤健司。監督は初かな。ストーリー原案として、 SF小説家のオキシタケヒコがクレジットされている。わりとガッツリ改変する感じなのかな。
 コンセプトアート・キャラクター原案は『ブレードランナー2049』『パシフィック・リム: アップライジング』『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』他、SF映画のコンセプトアートを担当していた田島光二。毎話ラストに差し込まれるのが、同氏の描いたコンセプトアートかな。確かに外画っぽいかも。

© 2023 内藤泰弘少年画報社/「TRIGUN STAMPEDE」製作委員会



火狩りの王

WOWOW独占配信

 めちゃくちゃオイルショックで衰退した日本の時代劇
 ひょんなことから文明が衰退した近未来の日本を舞台にした時代劇。未曾有の災害とか疫病とか、色んなパターンの近未来SFアニメがあるけれど、本作は特に「文明が1~200年くらい後退した日本」というモチーフになっている。
 似たような世界観のアニメ作品としては『炎炎ノ消防隊』とか『錆喰いビスコ』あたりを思い出す。いずれも「未知の疫病によって衰退した日本」「荒廃した郊外」「高度に維持・管理されている首都」というモチーフの登場するSF作品なのでついでにおすすめ。
 翻って本作は「『火』によって人類は発展してきた」という人類史を踏まえた上で「謎の疫病によって、人類は『火』を扱うことができなくなってしまった」という転換点を経て衰退していった未来の日本が舞台。特に1,2話はこの世界観を、榊原良子の語りとともに描いていく内容になっている。登場人物のドラマはそこそこに、世界観を丁寧に描いているため、なんだか歴史ドラマを観ている気分に。カゲの少ない絵作りや、リアルなキャラの造形、表情の付け方も含めて『平家物語』を思い出す。あっちはガチの歴史モノだけれど。
 その世界観の描写は秀逸で、登場人物たちの前近代的な暮らしを通じて「人類が火を失って、どう暮らしや文化が変化していったか」という、本当にありそうなSF人類史が描かれている。特に地方は「液体燃料が非常に貴重だった頃の日本」がベースになってるよね。
 もちろん人類が持つすべての科学技術が衰退したわけでもなく、SFちっくな鋼鉄の車や現代的な衣類を身に着けた作業員なども登場するため、明治以前~現代までの日本がグラデーションになっている不思議な雰囲気の作品。
 押井守作品におけるSF描写ってすごく独特なイメージだったのだけれど、本作にはそのテイストがすごく馴染んでいる気がする。個人的に、鋼鉄の車に描かれている「壱」が好き。
 あと、なんとなく『ぶらどらぶ』を観ていて思ったけれど、本作って押井守セルフパロディとかよくわからん引用とかほとんど無いのね。原作があるアニメを手掛けるとこんな感じになるのか。
youtu.be


 2018年から2021年までほるぷ出版より刊行された、日向理恵子による小説が原作。イラストは『ロードス島戦記』『十二国記』でおなじみ山田章博
 製作はWOWOWの一社提供。押井守監督って一社提供じゃないとアニメ作れない体にでもされてしまったのだろうか。制作は『MARS RED』『ドラゴン、家を買う。』『プラチナエンドシグナル・エムディ。同スタジオはプロダクション I.Gの子会社ということもあり、プロダクション I.Gのスタッフが多く参加しているみたい。
 監督は西村純二、シリーズ構成・脚本は押井守のコンビ。この二人がタッグを組むのは『ぶらどらぶ』以来。また、イツメンである川井憲次も引き続き参加している。キャラクターデザインは『攻殻機動隊ARISE GHOST IN THE SHELL』サブキャラクターデザイン、『モンスターハンター ストーリーズ RIDE ON』キャラクターデザインの齋藤卓也

もういっぽん!

 令和の女子柔道
 とある高校の女子柔道部のお話。全柔連によると2021年時点で女子高校生の個人登録者(競技者)数は3882人なんだって。それは多いのか、少ないのか。
全日本柔道連盟 登録団体数推移 2004年~2021年全柔連HPより)
 アニメのスポーツモノは(ごく一部の大人気作品を除くと)「メジャースポーツで、エッジの効いたストーリー」と「マイナースポーツで王道ストーリー」に概ね分けられるのだけれど、
男子サッカー(メジャー)
・高校生の部活モノではなく、ガチのプロの世界を描く→アオアシ
・高校生の部活モノではなく、フォワードしかいないサッカーを描く→ブルーロック
女子サッカー(マイナー)
女子サッカー人口が少ない中、クセ者ばかりを集めて全国優勝を目指す高校生の部活モノ→さよなら私のクラマー
みたいな。翻って本作は後者。
 1話では、一度柔道から離れていた主人公がまた柔道を始めるまでの物語が描かれている。
 序盤は「なんで女子柔道は人気がないのか」について主人公目線で語られていて、それを聴くと「まぁそりゃ人気出ないよなぁ」ってなるし、それで柔道やめるわーってなる主人公の気持ちもわかる。会話も自然と受験の話になって、高校の話になって、高校入ってからは別の部活の話とか放課後どこ行く?みたいな話になっていく流れも好き。
 そして、主人公の柔道に対する姿勢が体育館でのシーンによって一気に変わるところが好き。「柔道は本当に辛い」という表の感情が、それまでの描写によって強い説得力を持っているという前段の流れがあるからこそ、「それでも私は」っていう裏の気持ちを逆説的に強調する演出になっていて凄い。主人公、柔道めっちゃ大好きやん。
 また、そんな主人公のことを親友や(元対戦相手の)スクールメイトそれぞれの視点から多角的に描いた2話も凄く良かった。偶然この3人が集まったのではなく、この主人公だからこそみんな集ったんだよ、というお話になっていて非常にエモかった。
 そんな1,2話を踏まえて改めて見返すと、冒頭の「主人公が武道場で一人、一所懸命に受け身の練習をするシーン」は後にスクールメイトをスパーン(SE)とぶん投げるシーンとリンクしているだけでなく、「主人公が柔道の何に執着しているのか」を端的に表現しているシーンになっていて感動した。1話の完成度すごない?
youtu.beSubway Daydream「Stand By Me」
作詞・作曲:藤島裕斗
編曲:Subway Daydream、坂本夏樹
絵コンテ・演出:荻原 健
作画監督:武川愛里、小宮山楓乃、佐々木里花


 『週刊少年チャンピオン』にて2018年から連載されている、村岡ユウによる漫画が原作。
 浦沢直樹の漫画『YAWARA!』が連載されていたのって、もう30年以上も前なのか。ひえー。
 制作はBAKKEN RECORD。タツノコプロが2019年に立ち上げたレーベル。元請けは『パンドラとアクビ』『擾乱 THE PRINCESS OF SNOW AND BLOOD』他。
 監督はBAKKEN RECORD制作の劇場版作品『僕が愛したすべての君へ』メイン演出の荻原健。『擾乱 THE PRINCESS OF SNOW AND BLOOD』のOP絵コンテ・演出を担当したのもこの人。
 シリーズ構成は皐月彩。円谷プロ作品を中心に脚本を書いていた実写畑の人で、『うちの師匠はしっぽがない』『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』の一部脚本を担当している。アニメ作品のシリーズ構成は初みたい。

HIGH CARD

 カードキャプターたちの仁義なき戦い
 ひょんなことから、不思議なカードを収集する仕事をすることになった青年のお話。1話では、主人公が巻き込まれることとなった顛末が描かれている。
 2話からは、次々と現れる超能力者たちを仲間と協力しながら倒していくストーリーに。ストーリーはかなり少年漫画感があって、相手も味方もみんなクレバーかつ非常にかっこいい。そういった魅力でいうと『JOJOの奇妙な冒険』シリーズに似てるかも。ちなみに主人公の能力はホル・ホースの相互互換みたいな感じになっていて、バトルの大ラスに必殺必中の一撃を決めるシーンのカッコよさが半端ない。

© TMS/HIGH CARD Project

 そんな主人公チームは、世を忍ぶ仮の姿として高級車を扱うカーディーラーの従業員という一風変わった肩書なのだが、要はこのアニメって「アクションシーンでかっこいい外車を乗り回すスーツ姿のイケメン」が描きたかったのね(笑)。実際めっちゃかっこよくて、ハードボイルドアクションの趣が強い作品になっている。

© TMS/HIGH CARD Project

 スタジオ雲雀の作品って絵が濃い作品が多くて、本作もまた例に漏れず濃ゆい作風のアニメになっている。特にアクションシーン。1話ラストのアクションシーンとか凄いよね。エフェクトの作画も綺麗。「相手をビー玉に変える能力者」の能力発動シーンも、色彩があえて華やかになっている所に制作の強いこだわりを感じる。

© TMS/HIGH CARD Project

youtu.be
FIVE NEW OLD「Trickster
絵コンテ・演出:荒川航
CGディレクター:小笠原俊介
作画監督:河野のぞみ


 トムス・エンタテインメントKADOKAWA、サミーによるメディアミックス作品。ポーカーがモチーフの作品らしく、表題はポーカー用語でノーペアのことなんだって。へー。
 ストーリー原案はTMS、河本ほむら、武野光。河本ほむら、武野光の両氏は『賭けグルイ』の原案としておなじみのチームで、アニメのメディアミックス作品に原案として参加するのは『ビルディバイド』以来。いずれの作品も「賭け」がテーマになってるの面白いよね。
 制作はトムス・エンタテイメント…だけど、それとは別にアニメーション制作として『地縛少年花子くん』『IDOLY PRIDE』『逆転世界ノ電池少女』のスタジオ雲雀がクレジットされている。結局どっちが作ってるんや。作画を見るに、実際に制作しているのはスタジオ雲雀かな。監督は『Caligula』『終末なにしてますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか?』『SAKUGAN』の和田純一。サテライトの作品を中心に関わってる人なのでちょっと意外だった。シリーズ構成は黒栁尚己。トムス作品に文芸担当として参加していた人で、シリーズ構成、脚本は初かな。キャラクターデザインは、スタジオ雲雀の作品である『ラディアン』キャラデザ、『IDOLY PRIDE』サブキャラデザを務めている河野のぞみ。

大雪海のカイナ

アマプラ独占配信

 ポリゴン・ピクチュアズナウシカ。読みは「おおゆきうみのかいな」
 1話は、でっかい木に住む人たちのお話。惑星規模で作り込まれたSFをじっくり堪能するという主旨の作品になっている。
 テイストとしてはボーイミーツガールになっていて、ひょんなことからでっかい木の住人である主人公と、大雪海に浮かぶ島のお姫様が出会うまでのお話が序盤で描かれている。
 そして、そこから「足元に生えている大樹を下りながら冒険するパート」に繋がっていくのだが、お姫様にまつわるストーリーの性急さに反し、意外と緩やかに冒険が描かれていて好き。ここらへんは『メイドインアビス』に似た情緒があるよね。
 それにしても世界観よ。広大な海に沈んだ世界、雲の上まで伸びる樹、樹から降り注ぐ泡、独自の生態系、限られた資源を頼りに暮らす人たち、その資源の奪い合いが発端となって起きる戦争、etc。ポストアポカリプス世界と環境問題がテーマなんやな。原因が人為的かどうか、という点はまだ明かされていないけれど、総じてちょっとナウシカっぽいかも。
 演出としては、「巨大な樹と小さな人間」という構図が多用されているのが非常に印象的。引きのカットが非常に多く、制作の「世界観を楽しんでほしい」という気持ちがめっちゃ伝わってくる。
 ちょくちょく現れる虫達もみんな巨大で、やっぱり「巨大な虫と小さな人間」の構図を意識しているのが分かる。というかこういう構図の絵を作るのほんとうまいよね。
 巨大生物の動きや、それらを調理して食べるシーンなんかは『空挺ドラゴンズ』で培ったノウハウが活きてるのかな。ある意味、ポリゴン・ピクチュアズの過去作のいいところ全部盛り、みたいな作品になっている。
 それにしても音楽が良すぎて。壮大なオケの楽曲が多く使用されているため、マジでジブリのアニメを観ている気分になる。 
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 オリジナルアニメ。ポリゴン・ピクチュアズ40周年記念作品で、続編となる劇場版が公開予定。
 制作は『シドニアの騎士』シリーズ、『空挺ドラゴンズ』『エスタブライフ グレイトエスケープ』でおなじみポリゴン・ピクチュアズ。『シドニアの騎士』原作者である弐瓶勉が本作の原作を務めており、監督は『シドニアの騎士 第九惑星戦役』副監督の安藤裕章、シリーズ構成は『シドニアの騎士』に引き続き村井さだゆきが担当している。キャラクターデザインも『シドニアの騎士 あいつむぐほし』より福士亮平が続投しており(本作は小谷杏子と共同)、実質シドニアの騎士

とんでもスキルで異世界放浪メシ

アマプラ、ひかりTV

 狼とネットスーパーで買った香辛料
 ひょんなことからとんでもスキルで異世界を放浪しながらメシを食べるお話。異世界で知り合ったイッヌといっしょに旅の行商をしつつ、いろんな料理で腹を満たしていく。
 「行きずりの冒険者たちに、それぞれのニーズに応える形で様々な料理を提供する洋食屋」がコンセプトの作品『異世界食堂』と違い、本作は主人公の食べたいモノを食べるお話なので、ちゃんとこだわってる料理からスーパーの惣菜まで幅広い飯が出てくるのが印象的。ただイッヌが肉食なので、全体的に肉料理が多め。もっと魚料理出してもろて。
 食い物の作画やばすぎて草。登場する食べ物は、現代日本で入手できる商品を主人公の超能力で召喚する形式のため、スーパーで売ってるアンパンやら水の入ったペットボトルがそのまま描かれている。全体的な作風こそ異世界ファンタジー作品っぽいデフォルメ調のそれなのに、食べ物の作画だけ異常にリアル。試しにコマ送りで再生しても、パッケージの細かい文字まで一切作画が崩れていなくて笑ってしまった。いや世界観!
 料理シーンはまさかの実写トレス。ツイッターに制作過程がアップされているが、なぜベストを尽くしたのか。料理作画といえば、ufotable制作のアニメ『衛宮さんちの今日のごはん』が狂気じみたクオリティの作品として印象的だったけれど、本作もアレに負けず劣らず狂気じみてる。


 また、企業協力としてイオンリテールやらエバラ食品やらサントリーやらがクレジットされており「実際にありそうなパッケージの商品」ではなくガチの商品が登場するため、実際に作中の料理を再現することが出来てしまうタイプの飯テロアニメになっている。料理と言っても、焼いた肉にエバラの焼肉のタレをかけただけなのにね。めっちゃ美味しそう。
 とはいえ、今期『ヴィンランド・サガ』の制作をしているMAPPAということもあり、ベースの世界観は雰囲気がすっっっっげー良いアニメになっている。背景美術も良いし、冒険者ギルドにて主人公と知り合った冒険者にしても、装備している鎧や衣服、所持品まで含めて雰囲気があって好き。ファンタジー異世界ヴィンランド・サガって感じ。特にモブのおじさんたち。モブおじが全員かっこいい。
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 『小説家になろう』にて2016年から連載されている、江口連による小説が原作。同年11月からオーバーラップノベルス(オーバーラップ)より書籍版が刊行されている(イラスト:雅)。原題は「とんでもスキルが本当にとんでもない威力を発揮した件について」。
 制作はMAPPA。監督は『賭ケグルイ××』『うちタマ?! うちのタマ知りませんか?』『RE-MAIN』の松田清。シリーズ構成は『ジャヒー様はくじけない!』『トライブナイン』『史上最強の大魔王、村人Aに転生する』『よふかしのうた』等でおなじみ横手美智子。キャラクターデザインは『BEASTARS』『平穏世代の韋駄天達』の大津直。メインキャラに狼が登場するアニメ繋がりかな。言われてみれば雰囲気が似てるかも。

トモちゃんは女の子!

 ツンデレならぬツンギレヒロインラブコメ
 ちゃんとした告白から始まるすれ違いラブコメがあるらしい。フィジカルに恵まれたヒロインが、彼氏に猛アタック(物理)する様子を描くお話。
 「フィジカルに恵まれた体格や男勝りな性格ゆえ女子からモテまくるイケメンヒロインの恋模様を描いた作品」といえば『可愛いだけじゃない式守さん』が記憶に新しいけれど、あっちは「容姿や性格は女の子っぽいけど、式守さんにもっと頼られたい男の子」がヒーローとして登場し、全編に渡って二人の歩み寄りが丁寧に描かれていた作品だったが、一方の本作は「彼氏から永遠に女の子扱いされないヒロインが毎回ブチ切れる」というコメディ作品になっている。
 ちなみに式守さんとはイケメンのベクトルが微妙に違う。式守さんは紳士的な正統派イケメンだったけれど、本作の主人公はガサツだけどフレンドリー、根は優しい感じのワイルドなイケメンだった。それにしても、アピールに失敗した主人公が照れ隠しで毎度彼氏と殴り合いしてて草。仮に男子高校生同士でもそうはならんやろ。
 また、悪友から様々なアプローチを伝授されては、それを彼氏に実践するたび盛大に恥をかく様がコミカルに描かれているのだが、アドバイスを受ける彼女の男子中学生感と、悪友のお姉さん感が年の近い兄弟のようで微笑ましい。特に、お姉ちゃんの「親身に相談に乗ってあげよ❤」という善意と「いい感じに面白くなーれ♪」という悪意のブレンド具合が好き。『かぐや様は告らせたい』における四宮と早坂みたいな。
 主人公の男子中学生を演じるのは高橋李依。最近は特に「男勝りな女」みたいなポジションの役を担当しているところを見かける機会が増えたよね。直近だと『ロマンティック・キラー』でもサバサバしたラブコメ主人公を演じていているけれど、その「すこし男の子っぽい女の子」を超えた、本作での「男の子っぽい女の子」のお芝居ほんとすごい。特に女の子と喋っているときのお芝居がすごく魅力的で、リアルにモテそう。
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マハラージャン「くらえ!テレパシー」
作詞・作曲・編曲・歌:マハラージャン
絵コンテ・演出:大地丙太郎
作画監督:佐古宗一郎
作画監督補佐:福島陽子


 星海社の4コマ漫画配信サービス「ツイ4」にて、2015年から2019年まで連載されていた、柳田史太による4コマ漫画が原作。単行本が星海社COMICSから発刊されている。
 制作は『荒ぶる季節の乙女どもよ。』『アイ★チュウ』『ヒロインたるもの!〜嫌われヒロインと内緒のお仕事〜』『群青のファンファーレ』のLay-duce。監督は『いつだって僕らの恋は10センチだった。』『Fate/Grand Order -MOONLIGHT/LOSTROOM-』総監督の難波日登志(絵コンテは「三條 なみみ」名義)。副監督は『ヒロインたるもの!嫌われヒロインと内緒のお仕事』の橋本能理子。シリーズ構成は『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…X』『真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました』『4人はそれぞれウソをつく』の清水恵。原作はそこまで少女漫画っぽさは無いかもしれないけれど、スタッフがなんせハニワ作品を作っている人たちということもあってか、そこはかとなくティーンズラブを描いた少女漫画感のあるアニメになっている。気がする。


リベンジャー

 虚淵玄流の必殺仕事人
 江戸時代の長崎を舞台にした勧善懲悪モノの時代劇。「アニメってどんなに辛い話でも、最後はほんの少しだけ希望を感じさせる明るい余韻で締める作品多いよね」みたいなトレンドを真っ向から否定していくスタイルほんま。あの大河内一楼でさえラストにわずかな希望を感じさせる脚本書くのにね。
 復讐劇って言っても、ざっくり「勧善懲悪でハッピーエンド」とか「やめるんだ!復讐をしても被害者は浮かばれない!」「そうかもしれないけど俺の気持ちがスッキリするから無駄じゃないぞ」とか「復讐は何も生まないが、きっちり復讐する人間だという評判は将来の被害から自分を守ってくれる」等色々なパターンがあるけれど、本作はそのどちらでもなく「③現実は非情である」みたいなオチになっている挿話が多い。悪人を裁いたところで当事者は既に他界していて、明るい余韻というよりも「虚無」だけが残る・・・みたいな、なんとも言えない後味に。
 世界観はかなりリアリティがあって、作中で登場するワードもちゃんと時代に準拠した会話劇になっている。説明無しで当時の用語がガンガン飛び交うので、ガチで時代劇が好きな人向けに作ってるみたい。あと、特に西洋のモチーフの混ぜ方がすげー好き。舞台が長崎だからこそだよね。
 テーマが復讐劇なので「憎きあの悪代官を、いかに恨みを込めてブチ殺すか」という描写が肝になっているのだけれど、アクションシーンの熱量が非常に高くて良かった。必殺仕事人ばりに敵をむごたらしくオーバーキルしていて、毎話ちゃんとカタルシスを感じる作品に。まぁ1話の後味は最悪だけどな!
 


 オリジナルアニメ。制作は『本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません』『かくしごと』『怪物事変』の亜細亜堂。監督は、同スタジオ作品である『終末のイゼッタ』『怪物事変』の藤森雅也。ストーリー原案、シリーズ構成、脚本はみんな大好き虚淵玄。同じく脚本としてニトロプラス大樹連司が参加しており、この二人が共同で脚本を担当するのは『OBSOLETE』『バブル』以来。キャラクターデザインは『幼女戦記』の細越裕治。時代劇ということもあり、幼女戦記に負けず劣らずおじさん率が高いアニメになっている。

お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件

 高校生カップルとハリネズミのジレンマ
 自己満足で隣に住む平民のお世話を始めた、とある天使様のお話。
 「天使様」は作中で、完全無欠のヒロイン個人を指す言葉。『彼氏彼女の事情』の宮沢雪野(豹変前)みたいな。彼女の学校とプライベートでの2面性を、駄目人間である主人公目線で魅力的に描いていく作品。
 特に本作の天使様は根っからのお人好しとして描かれているため「普通に接したつもりが、相手から望んだ以上の好意を抱かれてしまう」というありがちな悩みを抱えていて、そこから避難できる安全地帯が主人公、みたいな関係性なのね。「自身のお節介したい欲を振りまくことが出来ない、という苦しみを救ってくれる駄目人間」って書くとなんかすごいな。
 好き放題お節介しても関係性がこじれないという安心感を抱いている天使様に対し、その警戒心のなさに困惑する主人公だけれど、ちゃんと「彼女にとって居心地のよい場所であろうと努めている姿勢が丁寧に描かれている。結構繊細なやり取りが多い作品だよね。
 「君と一緒は落ち着くなー!だって君は私のこと絶対に好きにならないもんね!」というやり口は、まさに『やがて君になる』における七海燈子のそれ。そう考えると、表題の意味は「天使様に施しを受けるダメ人間としてのロールを演じないといけなくなった話」みたいな感じなのかな。でも、やが君と違い本作の二人は比較的序盤から関係が融和していき、序盤から凄まじいイチャコラを見せつけてくる。上記の建前が崩壊するのは意外と早いのかもしれない。
 そんな天使様を演じるのは石見舞菜香。コメディ作品でもよく見かけるけれど、そういう足し算のお芝居も、逆に本作のような引き算のお芝居もすっげー良いよね。冒頭のシーンの「ありがとう・・・ござい・・・ます・・・」めっちゃ好き。タイトルからコメディ寄りな作風を想像していたが、意外と全体的にテンションを抑えた作風なのでむしろTVドラマっぽい作品かもしれない。
 OPはオーイシマサヨシ。TVドラマならメインキャストが部屋の中で踊ってたやつだこれ。
youtu.be
オーイシマサヨシ「ギフト」
作詞・作曲・編曲:大石昌良
絵コンテ・演出:干支羽久遠
総作画監督野口孝行
作画監督・原画:干支羽久遠


 「小説家になろう」にて2018年より連載されていた、佐伯さんによる小説が原作。GA文庫より書籍版が刊行されている(イラスト:はねこと)。
 制作は『弱キャラ友崎くん』『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』『恋は世界征服のあとで』『継母の連れ子が元カノだった』のproject No.9。まーたラブコメ作ってるよ。
 監督は王麗花。誰?また、『小森さんは断れない!』『放課後さいころ倶楽部』『キングダム』監督の今泉賢一が監修として参加している。
 シリーズ構成は『まちカドまぞく』『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』『安達としまむら』『五等分の花嫁』の大知慶一郎。キャラクターデザインは『音楽少女』『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』『180秒で君の耳を幸せにできるか?』『史上最強の大魔王、村人Aに転生する』の野口孝行

転生王女と天才令嬢の魔法革命

 転生王女と天才令嬢のアトリエ
 とある転生王女と天才令嬢の魔法革命のお話。こう見えて実は悪役令嬢モノで、1話ではとある破滅フラグを迎えた悪役令嬢を、意図せず救ってしまうお話が描かれている。しかし1話の完成度めっちゃ高いな!
 2話では天才令嬢と転生王女と、それぞれの父親の関係性が描かれていて、今までの生き方や親子関係の温度感、将来の展望まで何もかも違う2つの親子が対比的に描かれているのが非常に印象的。特に、転生王女親子の関係を見た令嬢パパが自身を省み、不器用なりに娘へと一歩歩み寄るシーンが好き。パパのセリフももちろん良かったけれど、それに加えて強く握られた手や、固く結んだ唇にフォーカスしたカットが、より親と子の心情を強く表現していてすげー良かった。また、パパの吐露に対する令嬢の返答が「はい」でも「いいえ」でもなく、少し子供っぽく「・・・うん」と頷くっていう。ここまで完璧な令嬢として振る舞ってきた彼女が、初めて弱さを見せるというギャップ。ヤバない?

©2023 鴉ぴえろ・きさらぎゆり/KADOKAWA/転天製作委員会

 ギャップといえば。本作は王族の後継問題がテーマということもあり、全体的にお堅いセリフ回しや描写が多いのだが、そんな硬派な世界で繰り広げられる悪役令嬢モノとしての物語と(そんなことはおかまいなしに)風の如く軽快に飛び回る主人公のギャップよ。特に1話は、さっきまで貴族同士のシリアスなやり取りが続いていたのに、主人公が現れた途端に馴れ馴れしい口語調の会話劇が始まってしまう。その場違い感というか浮世離れ感がいつも雰囲気クラッシャーすぎて笑ってしまう。少しは取り繕え(笑)。それにしても、ここまで「アイツにだけは関わらんとこ・・・」って思わせる主人公ってかなり珍しいのでは。

©2023 鴉ぴえろ・きさらぎゆり/KADOKAWA/転天製作委員会

 一方、作中のキャラクターは皆何らかの束縛(家柄ヒエラルキーとかそういうの)を受けていて、その不自由を「カゴの中の鳥」「空を飛ぶ鳥」みたいな暗喩を用いてちょくちょく描いているのだけれど、その「空=自由への憧れ」というモチーフを使った表現からの、「その空をひとり自由に飛び回る主人公」って。もう最高かよ。

©2023 鴉ぴえろ・きさらぎゆり/KADOKAWA/転天製作委員会

 そんな天才王女を演じるのは千本木彩花。同氏のお芝居は底抜けに明るい役柄との相性が凄まじく、例えば先のアニメ『ぼっち・ざ・ろっく』では廣井きくり役として、アル中独特の狂人じみたお芝居のハマりっぷりが強く印象に残っている。翻って本作の主人公でも、「え、その訳解んない薬飲んだら魔法つかえるの?やったー!」みたいな狂人ムーブを盛大にブチかましてて笑った。どこかネジ飛んでるキャラを演じるのが得意な御仁なのだろうか。
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花たん「アルカンシェル
作詞・作曲・編曲:doriko
絵コンテ・演出:玉木慎吾
作画監督井出直美


 2019年から2021年にかけて『小説家になろう』にて連載されていた、鴉ぴえろによる小説が原作。書籍版がファンタジア文庫から2020年より連載されている。ちなみに作者曰く「Web版と書籍版は展開や内容が異なる部分も多い」らしい。
 制作は『あひるの空』『聖女の魔力は万能です』『フットサルボーイズ!!!!!』『異世界薬局』のディオメディア。監督は『アホガール』『あひるの空』の玉木慎吾。シリーズ構成は『聖女の魔力は万能です』『異世界薬局』の渡航。キャラクターデザインは『アクションヒロイン チアフルーツ』『ドメスティックな彼女』の井出直美

お兄ちゃんはおしまい!

 後天性のゆるゆり
 社会的に死んでいたお兄ちゃんを、彼の妹が「妹」に転生させちゃうお話。生前のお兄ちゃんの姿は描かれず、最初から小学生くらいの女の子(元成人男性)が登場するため、ちょっとした異世界ファンタジーくらいのノリで描かれている。
 TSモノっていうから、てっきり主人公のことを好きな男性が女体化した主人公とセックスするお話、みたいなものを想像していたけれど、そういうわけじゃないのね。これ健全なやつだ。
 1話では、TSを経た主人公の、肉体的、精神的な変化をそれぞれ丁寧に描いている。特に精神面。主人公のことを心から慕う妹と、出来すぎた妹に対して強いコンプレックスを抱いているお兄ちゃんの日常を回想として描いた後、モノローグで
 「でも、実のところ、今は妙に気分が楽だ」
 「自分が、身の丈にあった位置に収まった気がする」
 「もういっそ、おにいちゃんはおしまいにして・・・」
と心境を綴っているシーンが好き。TSをきっかけに、少しだけ呪いから開放された主人公と、彼の止まっていた時間が少しずつ動き出すお話なのね。彼(彼女)に平和な日常が訪れますように。
 それにしても日常シーンのお芝居にかける異常な熱意よ。なんか一昔前の動画工房のアニメを観ている気分。どうしてトイレに行って返ってくるだけのお芝居がそんなに丁寧なんだ(笑)あと、人生初のブラジャーを選びにランジェリーショップに赴くシーン。採寸シーンの作画に限って言えば、先のアニメ『その着せ替え人形は恋をしない』と色んな意味でいい勝負してて笑った。

©ねことうふ・一迅社/「おにまい」製作委員会

 作画で言うと、影の付け方がなんか草。特に1話では主人公の全裸がちょくちょく描かれているのだけれど、脇のくぼみ、鎖骨周りの骨っぽさ、直立時の大殿筋上部にできる溝、鼠径部のくぼみ等、アニメーターの性癖が如実に現れている作画だった。特にアイキャッチの威力が毎回すごい。かわいい。
 ところで1話エンドカードは『ヤマノススメ』『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』等のキャラクターデザインでおなじみ松尾祐輔。同氏がエンドカードを担当していることからも、本作の大まかな方向性がなんとなく分かる。
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えなこ feat. P丸様。「アイデン貞貞メルトダウン
作詞・作曲・編曲:やしきん
絵コンテ・演出 渡辺明夫 (フロントウイング)
作画監督:今村 亮 山崎匠馬


 ねことうふ氏が同人誌として展開していた漫画が原作で、2019年より『月刊ComicREX』にて連載中。
 制作は『無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜』のスタジオバインド。元請けは本作が2作目となる。記念すべき2作目にどうして本作を選んだのか。
 監督は『無職転生異世界行ったら本気だす~』のティザーPVで絵コンテ、演出、原画を担当していた藤井慎吾。また、無職転生の1話で「ルディが初めて魔法を使って水を放つシーン」にてヤベー作画を担当していたのもこの人。シリーズ構成はいつもの横手美智子。キャラクターデザインは、無職転生にアニメーターとしてガッツリ参加している今村亮。



シュガーアップル・フェアリーテイル

 菓子職人見習いの少女とイケメン妖精の異種間ラブロマンス
 ひょんなことから、妖精といっしょに砂糖菓子職人を究める旅に出た少女のお話。
 「(しがらみのある)田舎に住む少女が自分らしく生きるために地元を飛び出して冒険するお話」ということで、基本的に少女漫画の文脈上にある作品なのかな。そういえば、巷で話題のゲーム『ライザのアトリエ』シリーズもまたそういったストーリーらしいという噂を聞いたので、今度やってみようかな。
 見切り発車で違う世界に飛び出した主人公が、何度も辛い目に遭っては挫折し、立ち上がっては挫折し、成長していく様が描かれていくストーリー。1話ラストの「ご両親から受け継いだ崇高な目標を抱いたお嬢様が現実に打ちのめされて、身の程を思い知らされる描写」は、ちょっと『86』っぽかったかも。両作とも、人種差別をテーマの一つとして扱っている作品であり、描かれる世界の厳しさ自体はそんなに違わないのかもしれない。
 そういえば風の噂で聞いたのだけれど、最近の少女漫画(レディコミ)って『美女と野獣』を代表するような、異種族間の男女の恋愛を描くファンタジー系ラブストーリーが流行ってるんだって。そう言われてみると、そういうアニメ作品を最近よく見かける気もする。そもそも本作は漫画原作じゃないから関係ないけど。
 職人を目指す少女の成長物語という文脈でいうと、最近の作品では『アルテ』を思い出した。アルテは、ルネサンス期のヴェネツィアを舞台に、画家を目指す少女の成長を描いた作品なのだけれど、本作に通じる魅力が結構あるのでついでにおすすめ。
 あと、1話で特に好きなシーンが「主人公たちを乗せた馬車を遠くから見送るような構図」のカット。広がる小麦畑の緩やかな勾配と遠くまで続く丘陵が二人の長い旅路を思わせるような、非常にエモいカットに。ここに限らず、背景描写が凄く凝ってて好き。いわゆる中世から近世ヨーロッパ風の世界観で、少しふんわりしたニュアンスが乗っている感じが可愛い。

©2023 三川みり・あき/KADOKAWA/「シュガーアップル・フェアリーテイル」製作委員会

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 角川ビーンズ文庫角川書店)より2010年から15年まで刊行されていた、三川みり氏による小説が原作(イラスト:あき)。
 制作はJ.C.STAFF。監督は『プラネット・ウィズ』『叛逆性ミリオンアーサー』『舞妓さんちのまかないさん』の鈴木洋平。シリーズ構成は『とある科学の超電磁砲』『世紀末オカルト学園』『NO.6』バチカン奇跡調査官』の水上清資。キャラクターデザインは『えんどろ〜!』『あんさんぶるスターズ!』『ホリミヤ』の飯塚晴子。キャー!晴子さーん!
 全体的にアクション方面に強そうなスタッフが多いため、比較的穏やかな本作もまた時折挟まるアクションシーンのキレが凄い。


ノケモノたちの夜

 旅する魔法使いの嫁
 ひょんなことから上位悪魔と契約した女の子が旅をするお話。1話では、生きながら死んでいるような生活をしていた二人の出会いと、二人が悪魔の契約を結ぶまでの顛末が描かれている。
 主人公の少女は客観的に見れば「人間以下の扱いしか受けられず、いつ死ぬともわからない人生」から「悪魔の眷属として協会から駆除対象として追われる人生」にスライドしただけなので、人生ハードモードであることに何ら変わりはないんだよね。彼女が1話にして多くを失ってもなお「こんなに旅の計画が楽しみなのは、初めてだ」という悪魔のセリフで締めくくり、明るい余韻で終わる1話の良さったら無いわ。最後のシーンが夜なのもすげー好き。朝でも昼でもなく、夜に旅が始まるという演出よ。
 「人間社会から爪弾きにされた少女が、人外と出会うことで居場所を見つける物語」という意味でいうと『魔法使いの嫁』にちょっと似ている。あっちもヨーロッパが舞台だし。ただ、あっちは主人公の希死念慮というか「死への憧れ」と向き合うまでの過程を描く内向きのストーリーになっていて、「知らない世界を一緒に見に行こう」っていう外向きのストーリーの本作とはわりと真逆の内容だったりする。まほ嫁2期楽しみ~。
 以降、二人は旅先でいろんな悪魔とその契約者コンビに出会うお話が続く。ここらへんから旅モノっぽくなる感じかな。「契約者と悪魔にとっての幸せ」を、悪魔、契約者それぞれの視点から描いた3話は非常にエモかった。いろんな人たちとの出会いを経ながら、二人は成長していくんやなぁ、って。
 あと、意外とバトル要素が強い作品。基本的に悪魔vs悪魔だったり悪魔vs聖職者の戦いが1話に1回は挿入されている感じ。特に古谷友二(音響効果)によるSE周りが秀逸で、片っ端から魔法で木端微塵にしちゃう悪魔がメインのキャラということもあり、毎話爆音を轟かせていて気持ちいい。若干音量注意かも。
 少女を演じるのは竹達彩奈。喜怒哀楽の豊かな少女の演技もすげー良いし、1話の絶望する少女のお芝居もまたすげー最高だった。対する悪魔を演じるのは小西克幸。特にギャグ系のお芝居をするモブキャラとしての出番が多かっただけに、抑えめのイケおじのお芝居ほんと良い。その孤高っぷりが『デカダンス』の組長以来のハマりキャラかもしれない。
 しっかしOPの完成度よ。1話の内容だいたいOPだけで表現できてるやん。冒頭の、窓越しにマルバスを呼ぶウィステリアのカットめっちゃ好き。
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竹達彩奈「明日のカタチ」
作詞・作曲・編曲:毛蟹
絵コンテ・演出:中田彩
作画監督:大沢美奈


 『週刊少年サンデー』にて2019年から連載されていた、星野真による漫画が原作。
 制作は『虹色デイズ』『異世界はスマートフォンとともに。』『Cutie Honey Universe
』の葦プロダクション。監督は『ネコぱら』『NOBLESSE -ノブレス-』『阿波連さんははかれない』の山本靖貴。シリーズ構成は『京都寺町三条のホームズ』『可愛ければ変態でも好きになってくれますか?』の山下憲一。監督とは『実は私は』『ROBOMASTERS THE ANIMATED SERIES』で一緒に仕事をして以来かな。また、脚本として『NOBLESSE -ノブレス-』シリーズ構成のハラダサヤカ、監督自身がクレジットされている。監督は他にも音響監督を兼任している。すごいね。キャラクターデザインは『学園ベビーシッターズ』『ギヴン』『アイ★チュウ』『失格紋の最強賢者』の大沢美奈。たしかにイケメン率高いアニメやな。

NieR:Automata Ver1.1a

 自動人形とポストアポカリプス。荒廃した地球を巡って戦う機械生命体たちのお話。
 ニーアシリーズのストーリーは一見複雑なようで、実は結構複雑。まず2003年(え、20年前なの・・・?)に発売されたPS2のゲーム『ドラッグオンドラグーン』シリーズから始まり、2010年発売のゲーム『ニーア ゲシュタルト』『ニーア レプリカント』があって、その続編が本作。しかも各作品はマルチエンディングになっていて、特定のエンディングをつなぎ合わせた世界線が本作の世界となっている。おまけに本作は20種類以上のエンディングがが用意されているというとんでもボリュームになっている。放送時点でどのエンディングに繋がるかは告知されていないため、結構楽しみ。
 本作のようにストーリー分岐のあるRPGゲーム原作アニメって、尺の都合でストーリーが駆け足になりがちなのだけれど、そういう意味でも本作の2話はかなり異質だった。視点が主人公から原住民(ロボ)に移り、彼らの日常風景が描かれる回になっていて、ギャグ要素を適宜織り交ぜた緩急のあるシナリオに。本作のシリアスなストーリーとギャップがあって、非常にほっこりするお話になっている。本当だよ?

©SQUARE ENIX/人類会議

 また、そのパートがただの脈絡のないサイドストーリーで終わらないところが好き。本作は「地球で戦うレジスタンス(人間)」「宇宙からやってくる主人公たち(アンドロイド)」「地球を侵略している敵(機械生命体)」というグラデーションによって「人間とはなんぞや」という哲学的な問いを掘り下げるストーリーになっており、それを描く上で、上記のエピソードが重要な意味を持っているんだよね。
 2話で「ただのロボットがまるで人間のような振る舞いをしている可笑しさ」を描いておきながら、「では、どれくらい人間に近い見た目や行動をするようになると、人間はそれを不気味に感じるようになるのか」「じゃあ主人公たちアンドロイドはどうして人間のように振る舞い、また人間のように扱われているのか」という、視聴者の認識の境界線を試すような描写。アニメで観てもやっぱりキモいな!このキモさを鮮烈に描くために、2話のほっこり描写を前フリとして効果的に利用する脚本ほんとすごいわ。
 アクション多めの画作りは、やっぱりゲーム画面を意識した感じだろうか。ゲームそのままの画角のカットも多く、観てるとすごくゲームやりたくなる。BGMも、ゲーム版BGMを担当した岡部啓一が参加していて、劇伴がそのまま使われてるみたい。個人的に、岡部啓一はニーア、ゆゆゆの劇伴の人っていうイメージが強いので、こういうテイストの劇伴ずっと聴いていたい。


 2017年に発売されたゲームが原作。開発はスクウェア・エニックスプラチナゲームズ
 制作はA-1 Pictures。監督は同スタジオ作品『ブレンド・S』の益山亮司。シリーズ構成は原作ゲームに引き続き、ヨコオタロウが参加している。キャラクターデザインは『GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』『ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 -魔眼蒐集列車 Grace note- 特別編』の中井準。

アルスの巨獣

 ヒュージモンスターハンター
 巨獣と戦う戦士のお話。1,2話では、とある港町での戦いが描かれている。
 襲ってくるモンスターをみんなで討伐する戦闘アクションだけでなく、その骨肉を生活必需品として利用している狩猟民たちの生活もわりとしっかり描かれているのが印象的。そういう世界観の描き方が『空挺ドラゴンズ』っぽくて好き。空挺ドラゴンズは、空を飛ぶドラゴンを狩りながら生計を立てる空賊の日常を描いた作品。あっちは3DCGでありながら飯テロアニメという特殊な作品なので、興味があったら見てみてね。ネトフリ独占配信だけどな!
 ストーリーとしては、巨獣と戦う不思議な力を持つ戦士(どうみてもおっさんだけど、一応青年らしい)が、更に不思議な力を持ったヒロインと出会い、一緒に旅をするお話になっている。ボーイ・ミーツ・ガールなのかな。どうみても主人公おっさんだけど。
 港町を出た後も、ファンタジー世界を旅する主人公一行と、巨獣を狩猟しながら暮らす人々の生活を描いていく感じなのかな。結構王道なファンタジー冒険活劇なのね。
 また、身元不明のヒロインは結構SFチックなバックグラウンドを匂わせていているので、旅物語と並行してヒロインの過去を掘り下げていく→SFチックな物語の真相へ、みたいな流れになっていくのかな。
 特に1話は特にヒロインの作画アニメーションがすごかった。もはや神秘的まである。「おてんばだけど神秘的なヒロイン」ってやっぱり良いよね。『GRANBLUE FANTASY The Animation』のルリアちゃんとか『海賊王女』のフェナ様とか。ちなみに声を演じるのは『その着せ替え人形は恋をする』にて乾 心寿を演じている羊宮妃那。出演した作品は現時点でそこまで多くないのに、すっげー印象に残る声をした方だなって。
 アクションシーンでいうと、大きなモンスターを討伐する小さな人間の立体的なアクション表現がすごく良かった。テーマの似た作品『デカダンス』も序盤はそういう趣旨のアクション系アニメだったけれど、本作のアクションはそれを彷彿とさせる。
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 DMM.comおよび旭プロダクションによるオリジナルアニメ。DMMってことはゲームでも作るんだろうか。
 制作は『天地創造デザイン部』『ピーチボーイリバーサイド』『ドールズフロントライン』の旭プロダクション。監督は同スタジオ作品『なむあみだ仏っ!-蓮台 UTENA-』のオグロアキラ。シリーズ構成は『Deep Insanity』原案、また『彼方のアストラ』『アクダマドライブ』シリーズ構成の海法紀光。キャラクターデザインは『メガロボクス』『岬のマヨイガ』の清水洋と、『なむあみだ仏っ!蓮台 UTENA』『ピーチボーイリバーサイド』の加藤真人。おじさんのおじさん感がめっちゃ強いのは清水洋さんだからか。

もののがたり

 付喪神絶対殺すマンのお仕事アニメ
 とある付喪神ハンターのお話。世界観とか、ちょっとだけ『チェンソーマン』に近いかも。「人の思いの積み重ねによって生まれた魑魅魍魎と、戦ったり共生したりするお話」みたいな。そういう意味では、主人公はアキくんのポジションだろうか。
 でもチェンソーマンほど荒廃した世界観ではなく、普通の日常の中にちょっとだけ付喪神の引き起こすトラブルがあって、そのたびに主人公たちハンターがトラブル解決に当たる、といった具合なので、わりと平和な日常の描写が多め。
 メインのストーリーは「主人公の家族を殺した悪魔を見つけて殺すこと」と、「付喪神と一緒に暮らす?!無理無理あんな化け物たちと一緒なんて!」の2軸。序盤は後者がメイン。付喪神絶対殺すマンだった主人公が、ヒロインとその家族に出会うことで徐々に成長していく姿が描かれていくみたい。かなりハートウォーミングなお話だった。
 あと、ジャンプ作品かと見紛うほどバトルアクションに重点を置いた作品。てかジャンプ作品だったわ。付喪神との対話も基本的に物理で、特に主人公が非常に脳筋だった。たまに平和的解決によって終幕となる挿話もあるけれど、概ね少年漫画らしいバトルモノなのね。2話の付喪神を追い詰めるカットが特に好き。やっぱロングマフラーつけた主人公のアクションはかっけえな!

©オニグンソウ/集英社, もののがたり製作委員会


 『ミラクルジャンプ』にて2014年から連載され、2016年から『ウルトラジャンプ』にて連載中の、オニグンソウによる漫画が原作。
 制作は『魔入りました!入間くん』『BIRDIE WING -Golf Girls' Story-』『後宮の烏』のBN Pictures。監督は『アイカツ!』『けものフレンズ2』『アイカツプラネット!』の木村隆一。シリーズ構成は『カノジョも彼女』『まちカドまぞく』『組長娘と世話係』の大知慶一郎。同氏は『アイカツ!』で脚本を担当していたときの縁かな。また、助監督の大川貴大、メインキャラクターデザインの藤澤志織をはじめ、主要スタッフは全員アイカツ作品に関わった人たちだったりする。実質アイカツ


久保さんは僕を許さない

 からかいが雑な久保さん
 とある高校生カップルの日常アニメ。雰囲気的には『からかい上手の高木さん』が近いかもしれない。ただ、あっちは「高木さんにからかわれた西片が「高木さんめー!」って言ってる様子が可愛いアニメ」なのに対し、こっちは「好き放題してくる久保さんが、主人公そっちのけで勝手に盛り上がってて楽しそうなアニメ」になっているため、ずっと久保さんのターン。1話の締めに至るまで全部久保さんなので、終始久保さんがかわいい作品に。
 おまけに、久保さんは主人公との「ちょっかいを出す、出される」関係に反して、普段は友人や姉から「イジられる方の愛されキャラ」というギャップまで持ち合わせている。どんだけかわいいんだ。

©「久保さんは僕を許さない」製作委員会

 そんな久保さんを演じるのは花澤香菜。同氏はかなり笑いに貪欲な方で、ネタになりそうな事があったら片っ端から弄っていきたい!っていうストロングスタイルなのよね。そんな中の人が透けて見えそうなくらい、久保さんのキャラクター性が花澤さんとマッチしている。「なんか面白い事起きねえかな」って常に考えながら主人公と会話してる感じがよく出ているよね。
 表題が「〇〇さんは☓☓」系のラブコメ作品の中でも、特に久保さんは魔性が色濃いキャラクターで、主人公をいらずらっぽく誘惑してくる感じや纏っている雰囲気はちょっと大人っぽいけれど、主人公にちょっかいを出してキャッキャしてる様は逆に子供っぽくて、ギャップのあるそれぞれのニュアンスを、巧みに緩急を付けながら表現しているお芝居ほんとすごい。
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 どこか小学館っぽい雰囲気の作品だけどジャンプ連載。「週刊ヤングジャンプ」2019年より連載されている、雪森寧々による漫画が原作。また「少年ジャンプ+」でも2020年より配信中。
 制作は『かげきしょうじょ!!』『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』のPINE JAM。監督は『彼女、お借りします』『がんばれ同期ちゃん』の古賀一臣。PINE JAMは『彼女、お借りします』に制作協力として参加していたので、その縁だったりするのかな。シリーズ構成は『ラクエンロジック』『ひなろじ〜from Luck & Logic〜』『SELECTION PROJECT』の高橋悠也。キャラクターデザインは『こみっくがーるず』の齊藤佳子。特にデフォルメキャラの雰囲気がこみっくがーるずの原作絵っぽくて好き。

©「久保さんは僕を許さない」製作委員会



僕とロボコ

 ジャンプから生まれた呪霊
 3分アニメなのに体感30秒くらいで草。ジャンプ作品内外を問わず、片っ端からネタにしていくコメディ作品。特に最近はダークファンタジー系のヒット作が多いジャンプ作品を中心にコメディとして昇華していく本作は、ある種の清涼剤にすら思えてくる。元々ジャンプ(本誌)は最後の方にシュールギャグ作品を掲載する慣習みたいなものがあって、本作はその系譜だったりするのかな。
 あと、シュールギャグ全振りのジャンプ作品といえば『ボボボーボ・ボーボボ』が有名だけれど、1回観ても半分くらいしか理解できないボーボボと違って本作は「ある日主人公の家にやってきたロボットと、一緒に暮らしながら絆を深めていく」というストーリーがある分「今、自分は何を見ているんだ・・・?」と我に返る瞬間が訪れにくいので、シュールギャグが苦手な人にも割りとおすすめ。尺も短いし。
 そんなヒトガタロボットを演じるのは、なぜかチョコレートプラネットの松尾駿。主人公とロボ子のスピーディーな掛け合いがそもそも漫才のテンポ感なので、それを芸人さんが演じたらそれはもう漫才なのよ。てかどういう経緯でキャスティングされたんだろ。
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 『週刊少年ジャンプ』にて2020年から連載されている、宮崎周平による漫画が原作。
 制作は遊戯王シリーズ(VRAINSまで)でおなじみ、ぎゃろっぷ。監督は『信長の忍』『明治東亰恋伽』『名探偵コナン 犯人の犯沢さん』の大地丙太郎。シリーズ構成は『ロマンティック・キラー』の大場小ゆり。二人してめっちゃハイテンションなギャグアニメ作りそう。キャラクターデザインは遊戯王シリーズに各話の作画監督として参加していた荏原裕子。初キャラデザかな。

氷属性男子とクールな同僚女子

 トレンディドラマになった亜人ちゃんは語りたい
 ひょんなことから氷属性の男子と同僚になった女子のお話。二人の会社での交流や日常を描く社会人ラブストーリー。それぞれの視点でお話が進んでいく構成のため、一応ダブル主人公ということになるのだろうか。
 仕事の中で氷属性ゆえの困りごとが発覚する→「へー、そうなんですか」とクールな対応をする同僚女子→後日、対処法を考えてくる彼女と、それに感謝する彼。という日常の一コマがテンポよく描かれていて、なんか4コマ漫画読んでるみたい。
 アニメ作品などにおいて氷タイプのキャラと言えば寡黙、思慮深く、動じない、みたいなステレオタイプがあるけれど、本作のキャラクター性はこのステレオタイプと異なる性格になっているのが印象的。もちろんその身体的特徴が当人の人格形成に大きく影響を与えているんだろうなぁ、と推察される描写みたいなものはあって、一見すると「氷属性らしい性格」に見えなくもないのだけれど、クールな同僚女子が彼の特性を紐解きながら歩み寄っていく過程で「その身体的な特徴を踏まえた上で、彼はどう生きたいのか」が徐々に見えてくる話になっている。「自身の冷気で草花を枯らせてしまうけど、本当は花が好きだから花を育てたい」とか。身体的な特徴をそのキャラの個性として描くのではなく「個性との向き合い方」でそのキャラの個性を描いていて素敵だった。
 他作品の話になるけれど、自身の身体的特徴による特有の悩みを抱えていた氷属性の女子高生が、周りの力を借りつつ、その悩みを乗り越えようとする姿が描かれている作品『亜人ちゃんは語りたい』をふと思い出した。数話程度の短い挿話ではあったけれど、「身体的特徴を漠然と恐れずに向き合う」「自分は本当はどうしたいのか、本音を言う」「こっちの事情を知らない相手に、理解してもらえるよう説明する」という過程を経てちゃんとハッピーエンドに向かっていくストーリーがすごく良い作品だったので、ついでにおすすめ。
 EDの、ノリノリのベースと明るい印象の金管がすき。あとイラストめっちゃ可愛いな、って思ったら作者自身がED絵を担当してるのね。


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Nowlu「リナリア
作詞:秋浦智裕
作曲・編曲:KIYOSHI IKEGAMI
イラスト:殿ヶ谷美由記
エンディングディレクター・編集:徳田 俊

 


 2018年にTwitterにて公開の後、『ガンガンpixiv』にて連載を開始した、殿ヶ谷美由記による漫画が原作。
 制作は『つぐもも』『理系が恋に落ちたので証明してみた。』『さんかく窓の外側は夜』のゼロジー。と、リーベルの共同。リーベルゼロジーの子会社かな。よくわかんない。
 監督は『磯部磯兵衛物語』『お前はまだグンマを知らない』『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』の、まんきゅう氏。シリーズ構成は『ニル・アドミラリの天秤』『かくりよの宿飯』『ラブオールプレー』の金春智子。キャラクターデザインは『理系が恋に落ちたので証明してみた。』に作監として参加していた狩野都。メインスタッフ的には『さんかく窓の外側は夜』の制作スタッフが中心になっているみたい。

異世界のんびり農家

アマプラ見放題

 異世界DASH村
 ひょんなことから異世界でのんびり農家をするお話。日テレの番組「鉄腕DASH」を見た知識とチート能力を頼りに、見よう見まねで農業をしつつ「健康的で文化的な必要最低限度の生活」を目指す様子が描かれている
 なにもないところから始めて、徐々に村人を増やしながら村を拡張していく様子が毎話ラストの「今の村マップ」にまとまっていて、ちょっとしたログインボーナスみがある。私がマインクラフトの実況動画にハマっていた頃は各動画主のワールドが徐々に拡張されいくのが毎日の楽しみ好きだったので、本作もそういった趣のある作品だなって。
 ちなみに主人公が挑戦するカテゴリは概ね鉄腕DASHTOKIOが挑戦した分野が中心になっているため、微妙に主人公の知識がちぐはぐになっている。とはいえ、同番組はかれこれ20年くらい続いている長寿番組なので、少なくとも第1クールはネタに尽きることはなさそう。ほんと、あの人達なんでもやってんな。
 本作は序盤からいきなり農業が軌道に乗っちゃってるけど、最終的にどこを目指すのだろうか。リアルの農業はもっとトライアンドエラーなのだろうけれど、そこらへんは「いい感じのチート能力(詳細不明)のおかげで、なんとなくうまく行った」といった具合にサクサク進んでいく。リアルと比べると随分ヌルゲーではあるけれど、そこはエンタメってことで。
 農業にまつわる描写の中で特に好きなのが「ふと現れた来訪者に対し、自分の作った農地を嬉しそうに見せて回る主人公」のシーン。自分が褒められるよりも、自分が作った農地や農作物が褒められる方が嬉しいといった様子がまさに、農業を初めた頃のTOKIOを思い出す。そういう意味でも鉄腕DASHと本質的によく似た魅力のある作品だよね。
 ただ、あっちは地元の農家さんたちと交流を深めながら農業の手ほどきを受ける様子も放送されているが、本作はそういうのが無い手探り初見プレイのため、農業に詳しい先輩農家さん(おじいちゃんおばあちゃん)は登場しない。かわりにおっぱいの大きい女の子がどんどん増えていく。いや、よく考えると「数百年生きているエルフの女の子」は実質おばあちゃんみたいなもんか。じゃあ一緒だわ。
 そんな主人公を演じるのは阿部敦。農作業、実況、解説をすべて一人でこなしている1話は特にずっと喋り続けているのが印象的。鉄腕DASHだと(演出として)出演者が「今日は〇〇するために✗✗するぞー」って喋りながら色々な作業をする様子が放送されていて、あれは作業している内容を視聴者に分かりやすく説明するためにああしているわけで。本作の主人公もまた説明口調で上記をやっているため、より農業系TV番組っぽい内容に。
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 2016年より『小説家になろう』にて連載されている、内藤騎之介による小説が原作。2017年よりKADOKAWAから書籍版が刊行されている(イラスト:やすも)。
 制作は『つぐもも』『理系が恋に落ちたので証明してみた。』『さんかく窓の外側は夜』のゼロジー。監督は『奴隷区 The Animation』『つぐもも』の倉谷涼一。同氏はつぐももでシリーズ構成も兼任していたが、本作では待田堂子がシリーズ構成を担当。ただし1~3話は脚本・絵コンテ・演出をすべて監督が担当している。すげー。
 キャラクターデザインは『こみっくがーるず』『久保さんは僕を許さない』の齊藤佳子。総作画監督に『理系が恋に落ちたので証明してみた。』キャラデザの五十内裕輔、『つぐもも』キャラデザの中原清隆が参加しており、ヒロインの作画がすっときれい。

Buddy Daddies

 訳あり夫夫(ふうふ)の子育て奮闘記
 ひょんなことから幼い女の子を育てることになったヒットマンコンビのお話。現代日本を舞台に、アウトローのパパと純真無垢な娘の日常を描くストーリーという意味では割りと王道路線の作品だろうか。
 「Buddy」要素について。主人公は若い人男性ヒットマンコンビで、毎話スパイ映画ばりに変装、潜入、ガンアクションが繰り広げられている。
 キャラクターとしては「面倒見が良くて、潜入が得意で手先が器用な主人公」と「普段は寡黙だけど銃の扱いは一流の相棒」という組み合わせ。乗ってる車もそうだけど、やっぱりルパン三世を意識してるのかな。
 あと、割りと仕事ができる風を装ってはいるが、普通に失敗しまくっていて「出来の悪いルパン三世コンビ」みたいになっている。ハードボイルドというより二人の成長物語がメインなのかな。

©KRM’s HOME / Buddy Daddies製作委員会

 そして「Daddies」要素について。この手の作品におけるダディって、例えば『SPY FAMILY』の父(スパダリ)や『組長娘と世話係』の霧島さん(スパダリ)、『ヒナまつり』の新田(聖人)みたいに、ダディが完璧超人だからこそ成立する作品が多い中、本作のダディ’sはむしろ逆。特に相棒。普段は家に引きこもり、TVゲームをずっと遊んでいて、社会との関わりが希薄。幼少期の虐待描写もあって、かなり「アダルトチルドレン」の側面が色濃いキャラだったりするんだよね。ダディとしても当然未熟で、まるで大きい子供が小さい子供を育てているような構図になっている。とにかく日常のやりとりが非っっっっ常にもどかしい。こっちもまた、彼らの成長物語なんだね。

©KRM’s HOME / Buddy Daddies製作委員会

 少し余談。「まだ未熟な親が、更に幼い子どもを育てるお話」という共通点で思い出したのが、あの岡田麿里が監督を務めた『さよならの朝に約束の花をかざろう』という劇場版作品(制作はP.A.WORKS)。ハイファンタジー世界を舞台にした作品でありながら、幼い主人公が必死に子育てをする描写のリアリティがやたら凄くて、劇場で観て以来ずっと印象に残っているんだよね。「幼い子供の天真爛漫さや制御不能っぷりがよく描けているアニメ」という意味では本作と通じるものがあるけれど、こっちは逆に(現代劇ではあるけど)リアリティラインが低く、かつコメディタッチで描かれているので多少は気楽に楽しめる内容になっている。気がする。
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Ayase「SHOCK!」
作詞・作曲・編曲:Ayase
OPディレクター・画コンテ・撮影・VFX松木大街(10GAUGE)
演出:本間修
作画監督:佐古宗一郎、さとう沙名栄


 オリジナルアニメ。ストーリー原案は『東京24区』でおなじみ、ニトロプラスの下倉バイオ。ニトロプラスって世界の未来と少女の未来を天秤に掛けるの好きだよね。
 制作は『白い砂のアクアトープ』『パリピ孔明』『アキバ冥途戦争』のP.A.WORKS。監督は『FateApocrypha』『神様になった日』の浅井義之。シリーズ構成は『恋と呼ぶには気持ち悪い』『白い砂のアクアトープ』『うる星やつら』の柿原優子と下倉バイオの共同。キャラクターデザインは『天狼 Sirius the Jaeger』の佐古宗一郎。
 何気に、劇伴を北川勝利が担当してるのね。同氏は花澤香菜さんの個人名義での音楽活動に楽曲提供として参加しているイメージが強かったので、劇伴を担当するのはちょっと意外だった。

MAKE MY DAY

ネトフリ独占配信

 SFホラー・アクション映画
 とある惑星で起きた長い一日のお話。未開拓の外惑星にある刑務所で、アルバイトとして刑務官を務めていた主人公がひょんなことから未知との遭遇をするストーリーになっている。
 戦いを通じて主人公の成長を描いていくストーリーが主軸になっていて、1話では「絵を描くことと、マスをかくことくらいしかできない主人公(この言い回しがすげー外画っぽい)」が、いろんな出来事を通じてどんどんイケメンになっていくところがすごく好き。言動がどんどんイケメンになっていくだけでなく、ちゃんと表情もそれに伴って変わっていくのが良いよね。ここまで顔が変わる主人公は毎週配信のアニメではあまり観なくて、ある意味一挙配信だからできるタイプの表現なのかもしれない。
 本作は全8話で、OPEDが無いことや、時系列が飛ぶことなく進んでいく事などから「長めの映画を8分割で配信している」という感覚のほうが近い。また、登場人物の多種多様な人種、台詞回し、扱うテーマ等、かなり王道のアメリカ映画として作られているよね。観ていて『スターシップ・トゥルーパーズ』を思い出した。
 割りとグロ表現仕放題なのはネトフリ独占配信らしさなのかな。特にネトフリのオリジナルドラマって『ストレンジャー・シングス』のようなSFホラー系作品のイメージが強くて、本作もそういう作品が好きな視聴者を想定している作品っぽい。
 総じて非常にスリルでショックでサスペンスな作品なのだけれど、それにしてもモンスターの造形よ。なんでそうなったんや。たしかに小さい虫が巨大化して襲ってくる、というシチュエーション自体は定番なのだが、なぜその虫をチョイスしたし。てか虫じゃねえし!元の可愛さを隠しきれていないデザインのせいで、絶妙にサメ映画のような味わいが出ている作品に。 
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 『MOONLIGHT MILE』『機動戦士ガンダム サンダーボルト』原作者でおなじみ太田垣 康男が原作を務めるオリジナルアニメ。ちなみにKindleにて本作の原作となるネーム原稿が配信されている(全12巻)。
 制作は、台湾のCGアニメーション制作スタジオである株式会社5。最近だと『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』『ジョゼと虎と魚たち』にてCGアニメ制作を担当していたりするんだって。へー。というわけで全編3DCG作品になっている。

ポールプリンセス‼

YoutubeTikTok限定公開

 キラッとポールプリ☆ンセス。ショートアニメ。
 1話5分程度のショートアニメが全7話…ではなく、0話があるため全8話(+劇場版)。ひょんなことからポールダンスを始めることになった女の子たちのお話。「いや、そうはならんやろ」と思うなかれ、この世界のポールダンスはアイススケート並にメジャーなスポーツだったのだ。それなら仕方ないか。
 1話は「廃部~?!」の亜種みたいなお話になっていて面白かった。先生チャーミングでかわいいな。CV釘宮理恵だし、実は『ぼっち・ざ・ろっく』のStarryの店長並に萌えキャラなのかもしれない。
 ちなみにお話としては「廃部を回避するために部員を集めるパート」「初ライブに向けて練習を頑張るパート」「初ライブ」の3部構成になっていて、すべて最終話の初ライブまでの壮大な前フリになっている。観るならイッキ見を推奨。お互い知らない人同士だった女の子たちが徐々に仲良くなっていく様や、部活動に精進しながら成長していく描写は、本作がショートアニメであることを忘れるくらい丁寧で、「やっぱり待田堂子すげえ」ってなる。良い最終回だった。
 ポールダンスの監修をしているのは、現役のポールダンサーであるKAORI(STUDIO TRANSFORM)。同氏の演技をYoutubeで見たんだけどマジですごい。重力に逆らうような動きはすべてマッスルによって支えられており、非常にパワフルなダンスだった。インスタでご自身のマッスル自撮りを定期的に上げていらっしゃるが、想像の10倍くらいバキバキでビビる。ちなみにアニメ作中のダンススタジオは、同氏の持つスタジオまんまな見た目だったりする。
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 お芝居とカメラワークが独特。作画アニメだと、2人のキャラの会話ってそれぞれ喋ってるキャラのバストアップを交互に抜く感じのパターンが多いけれど、本作では3DCGの強みを活かして?会話してる様子を引きのカメラがぐるぐる回りながら撮影してるみたいな演出に。落ち着きがないカメラやな。
 加えて、キャラクターのお芝居も面白い。どんなに引きのカットでもキャラが常に身振り手振りをつけて会話しているシーンが多く、作画アニメにはないコミカルさがある。モーションキャプチャーによって細かく動きをつけているので、「画面には映ってるけど、セリフもなくただそこにいるだけのキャラ」でさえ常に何らかのお芝居(黙って話を聞いている人のお芝居、とか)が見れて面白い。
 身振り手振りがややオーバー気味のお芝居をするという表現は舞台のお芝居の文脈だが、本作のキャラは「上半身を中心に、画面からはみ出さない程度の小さな動きで 感情表現する」という、すこしオーバーだけど舞台のお芝居ほど大げさでもない、控えめな身体表現って感じの独特なお芝居になっており、なんていうかVtuberみたい。
 あと映像のフォーマットについて。驚いたことに、本作は4K画質で制作、配信されているため、クソでかい画面でもきれいな映像を視聴可能になっている。Youtube配信ゆえの強みというか、3DCGアニメの強みがこんなところに。なにげに革新的なことしてんのね。
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 エイベックス・ピクチャーズタツノコプロによるオリジナルアニメ。2023年初冬に劇場版が公開予定。キャラクター原案は『スパイ教室』(原作イラスト)、『おにぱん!』(キャラクター原案)のトマリ。
 制作は『プリティーリズム』シリーズや『エガオノダイカ』『ハクション大魔王2020』『MUTEKING THE Dancing HERO』でおなじみタツノコプロ。監督は『アイドルタイムプリパラ』『キラッとプリ☆チャン』にてライブ演出を担当している江副 仁美。本作のライブシーンもまたプリチャンのアイドルライブっぽい雰囲気だったりするんだろうか。
 シリーズ構成は『SHOW BY ROCK!!』『プラオレ!〜PRIDE OF ORANGE〜』『うちの師匠はしっぽがない』『農民関連のスキルばっか上げてたら何故か強くなった。』等でおなじみ待田堂子。CGディレクターは『プリティーリズム』シリーズ、『MUTEKING THE Dancing HERO』、『ラブライブ!サンシャイン!! The School Idol Movie Over the Rainbow』にてCGディレクターを務めた乙部 善弘。音楽は『英雄王、武を極めるため転生す 〜そして、世界最強の見習い騎士♀〜』『ビルディバイド(井内啓二と共同)』『iiiあいすくりん』『プリンセスコネクト!Re:Dive』の東大路 憲太。

UniteUp!

 ゴリゴリに王道のアイドル作品
 ひょんなことからアイドルを目指すことになった少年のお話。鮮烈なアイドル体験を経て、幼い頃からアイドルを目指す少年少女のお話は割とあるけど、本作はゼロからアイドルを目指すことになった少年の始まりの物語が1話で描かれている。
 要約すると「アイドルとか全然興味なかったんだけど、なんか友達が勝手にオーディションに応募しちゃってさー」になるのだけれど、Bパートで描かれている「青天の霹靂といった心境の主人公を、(きっかけを作った)親友が説得する通話シーン」がすげー良くて。二人の過去の物語はあまり掘り下げてはいないけれど、そんな親友が主人公のことをどう大切に思っているのか、優しく語りかけるような会話で、今まで築き上げてきた二人の信頼関係が垣間見える非常にエモいシーンに。またこのシーン、音がすげー良いのでぜひヘッドホンかイヤホンで聞いてほしい。

©Project UniteUp!

 そして、二人の関係性を補間するED。1話だけでもう青春群像劇として完結してるやんけ。
 それにしてもライブシーンのカメラワークすげえ。1話でちらっと出てくるだけなのに、つい何回も観てしまう。3DCGアニメーションによるライブシーンって、現実の模倣(リアリティの追求)とは違う進化をしているんだなぁ、って改めて感動した。ああいうライブばっかり見てると、そのうちリアルのライブで満足できない体になりそう。
 


 ソニー・ミュージックによるメディアミックス作品。スマホゲーム展開は放送時点ではしておらず、代わりにYoutubeにて楽曲MVをめっちゃ公開しまくっている。活動の主体はこっちなのか。
 制作は『くノ一ツバキの胸の内』『シャドーハウス』『SPY×FAMILY』『ぼっち・ざ・ろっく!』のCloverWorks。監督は『ワンパンマン』『ALL OUT!!』副監督で、『君の膵臓をたべたい』監督の牛嶋新一郎。シリーズ構成は、CloverWorks作品『明日ちゃんのセーラー服』にて全話脚本を担当した山崎莉乃。言われてみれば本作の1話って、ちょっと明日ちゃんに通じるエモさがあるかも。キャラクターデザインは『マクロスΔ』『カブキブ!』『千銃士』の、まじろ氏。

テクノロイド OVERMIND

 自分探し系AIアイドルの成長物語
 ひょんなことからトップアイドルを目指すことになった貧乏アンドロイドたちのお話。人間とアンドロイドが共存している世界が舞台で、1話、2話と少しずつ本作のSF(すこし不思議な)世界観が描かれていく。平和な世の中ではあるけれど、一歩引くとハードな世界が見え隠れする作品だった。地球温暖化が裏テーマなのかな。この雰囲気は結構好き。
 最初はとんちんかんな言動を繰り返していたアンドロイドたちが、他人とのコミュニケーションを通じて「人間」として成長していく様子を描く音楽劇。主人公たちの出自が不明、という設定も含めて、先のアニメ『プリマドール』に似ているかも。あっちはもうちょっとハードな世界観だけれど、ヒューマンドラマという意味では近いベクトルの作品だよね。各話で描かれるヒューマンドラマを経て成長した姿をそれぞれライブパフォーマンスで表現していく、という音楽劇としての構成もまた、両作ともに味わうことができる魅力の一つだったりする。2話ライブパートめっちゃエモいな!
 あと「見た目は大人だけど心は子供」ってなんかいいよね。ライブパフォーマンスも大人っぽくてかっこいい系なのに、心はまだ幼いっていうギャップよ。
 それにしても楽曲がすんげー潤沢。1話1曲のペース超えてね?全部で何曲くらい流すんだろ。
 


 サイバーエージェントエイベックス・ピクチャーズElements Gardenによるメディアミックス作品。2022年からスマホゲームが配信されている。原案は上松範康RUCCAElements Gardenの連名。上松範康がアニメ作品に原案として参加するのは『神姫絶唱シンフォギア』『ヴィジュアルプリズン』以来。
 制作は動画工房。コロナの影響で放送が半年くらい延期になってたのね。監督は『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』副監督のイムガヒ。また、『アオハライド』『チア男子!!』『歌舞伎町シャーロック』監督の吉村愛がスーパーバイザーとしてクレジットされている。なぜにサンライズの人が。シリーズ構成は『アイドリッシュセブン』『さんかく窓の外側は夜』の関根アユミ。キャラクターデザインは『number24』キャラクターデザイン、『TSUKIPRO THE ANIMATION 2』メインアニメーターの崎口さおり。


スパイ教室

 女子校の暗殺教室
 冷戦下のとある架空の国で暗躍する、スパイの少女たちのお話。原作1巻に相当する最初のエピソードはアニメ3話で一応完結するので、観るならとりあえずそこまで。ミステリー・サスペンス要素が強いエピソードになっているため、ネタバレ回避のためにも一気に視聴推奨。
 ひょんなことから集められたスパイの女の子と、彼女たちの指導者である先生との対話(物理)を通じて、彼女たちの成長を描いていく
 スパイx女学生という似たコンセプトの作品として『プリンセス・プリンシパル』がパッと思いつくけれど、あっちは世界観の描写が非常に秀逸な作品であるのに対し、本作は世界観の掘り下げはそこまで重視してないみたい。どっちかというと、彼女たちの会話を楽しむ作品って感じなのでテイストはかなり異なる。
 また、プリプリの脚本は『機動戦士ガンダム 水星の魔女』で脚本を務めているあの大河内一楼が書いているため、その、すごくアレな内容になっている。一方本作には大河内一楼は関わっていないので、「やめなさいっ!」みたいなことは起こらないという安心感がある。関わっているスタッフの過去作的には、「スパイやってる女の子がかわいいシリアス系ラブコメハーレム作品」という位置付けになるのかな。ラブコメ要素ほとんどないけど。
 4話以降も、1~3話で描かれなかった日常のお話を(わざわざ時系列を無視してまで)描いていて、シリアスも日常もぜーんぶ描きたいっていうスタッフの強欲さがにじみ出ている。かわいいがいっぱい。
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 2020年1月からファンタジア文庫より刊行されている、竹町による小説が原作(イラスト:トマリ)。
 制作は『おちこぼれフルーツタルト』『ぼくたちのリメイク』『組長娘と世話係』のfeel.。監督は『おちこぼれフルーツタルト』『ぼくたちのリメイク』『組長娘と世話係』の川口敬一郎。助監督は『おちこぼれフルーツタルト』『ぼくたちのリメイク』『組長娘と世話係』の池端隆史。シリーズ構成は『PERSONA5 the Animation』『エガオノダイカ』『グレイプニル』『プラチナエンド』の猪爪慎一。キャラクターデザインは『ピアノの森』『おちこぼれフルーツタルト』『IDOLY PRIDE』の木野下澄江。
 ちなみに原作では「銃器設定協力」として『リコリス・リコイル』脚本のアサウラ氏がクレジットされているため、主に拳銃の描写がリコリコ並にガチだったりする。

あやかしトライアングル

 性転換To LOVEる
 ひょんなことから女の子になっちゃった妖怪ハンターのお話。そうはならんやろ。
 少年誌で連載されている最近のハーレムモノって、一方的に主人公が女の子にエロいことをする内容だとあんまり受けないんだろうか。全く無いわけではないけれど、それをメインに扱った作品はあまり見ないな、と思っていたら。特に同作の作者はあらゆるパターンをToLOVEるでやり尽くしているため、どうやっても「あーこれToLOVEるで見たわ」って言われちゃうわけじゃない。そこで「男子が女子にセクハラする描写を省いてエロいシーンを描くには・・・そうだ!主人公が性転換した女子なら、一人で完結するやん!」ってなったのだろうか。天才か。
 「主人公の性転換した体を元に戻すために頑張るお話」というストーリーとしては『異世界美少女受肉おじさんと』に近いものを感じる。あっちの作品もまた主人公と親友との関係が片方の性転換によって更に複雑になってしまうラブコメ作品で、「主人公(男性)のことを同性として意識している親友(男性)が、主人公の性転換をきっかけに歯止めが効かなくなる」というややこしい恋愛模様を描いている。コメディとしてすげー面白いのでおすすめ。
 翻って本作も、「主人公のことを異性として意識している幼なじみ(女子)が、主人公の性転換によって日常的なコミュニケーション上の障害が減り、『いや、これ女子のままでもワンチャンいけるんじゃね?』と思い始める」という、ややこしい恋愛模様が描かれている。本作は登場人物がみんな女性なので、すこし百合の香りが強いかも。
 そういえば本作の表題って、「今にもくっつきそうな年頃の男女を妬んだ妖怪が、二人の間に挟まって引き裂こうとする三角関係の話」みたいな意味なのね。
 1~2話でのエロいシーンは概ね、主人公が自分の体に興味津々という目であちこち弄ってみる様子が描かれている。めっちゃ丁寧に作画してて笑った。原作も読んでみたけれど、特にエロいシーンは原作のカットがそのままアニメになったような再現度で、「アニメのスタッフが描きたかったもの」が最初からはっきり分かるところが好き。
 あと、原作の主人公はかっこいい雰囲気の女の子だけど、アニメ版はすこし可愛いニュアンスが強くなってない?声を担当しているのが『かぐや様は告らせたい』伊井野ミコ役の富田美憂だからかな。かっこいい女の子(主人公)と可愛い女の子(ヒロイン)っていう構図だったのが、可愛い女の子2人になってるやん。まーいいか!


 『To LOVEる -とらぶる-』でおなじみ矢吹健太朗による漫画が原作。「週刊少年ジャンプ」にて2020年より2022年まで連載され、「少年ジャンプ+」にて2022年より連載されている。え、これ本誌で連載してたんだ。
 制作は『俺を好きなのはお前だけかよ』『川柳少女』『魔法科高校の優等生』『スローループ』のCONNECTで、監督は『俺を好きなのはお前だけかよ』『スローループ』の秋田谷典昭。シリーズ構成は『UQ HOLDER!魔法先生ネギま!〜』『とある科学の超電磁砲』『処刑少女の生きる道』のヤスカワショウゴ。キャラクターデザインは『六畳間の侵略者!?』『ステラのまほう』『バトルガール ハイスクール』『ストライク・ザ・ブラッドⅢ』の古川英樹

冰剣の魔術師が世界を統べる

 魔法科学園の劣等生
 ひょんなことから世界最強の魔術師である少年が、魔術学院に入学するお話。退役軍人が素性を隠して学生生活を謳歌するお話としては『魔法科高校の劣等生』が著名だけれど、真面目な作風のあちらと比べ、本作は割りとギャグに振っているのでボケとツッコミがわかりやすい。魔法科高校の劣等生はツッコミどころが多いのにみんなシリアスな顔してるからツッコミ入れにくくてちょっと困るのがね。
 それにしても、すごい勢いでヒロインを落としまくる主人公。結構ラブコメ要素強いのかな。他にも、一通り学園モノとしての定番イベントをRTA走者の如く駆け抜けていて、満喫しているんだか生き急いでいるんだか。
 序盤のメインは彼のラブコメハーレム学園生活の様子を描く日常パートだけれど、サブとして「専門家、科学技術者としての魔法使い」を掘り下げていくストーリーが描かれている。その非常にお堅い話と、ゆるい日常パートとのギャップもまた、さすおにに近いものを感じる。
 元軍人らしい、お堅い性格の主人公を演じるのは榎木淳弥。とはいえ感情のない劣等生のお兄様と比べ、遥かに感情豊かな本作の主人公は案外、学園生活を満喫していてほっこりする。特に友人と筋肉の話をしている間はイキイキしていて好き。さすが元農家。
 あと、全体的にコテコテのアニメっぽさを出す会話劇としてお芝居を組んでいるキャラが多い中、3話の師匠(リディア=エインズワース役:種﨑敦美)と弟子(主人公)の会話が一転してめっちゃナチュラルで驚いた。ある意味「本音と建前」とか「外聞を意識した姿」と「身内にしか見せない表情」みたいな対比を表現してるのかな。二人の何気ない会話パートの心地よさが半端なくて、ずっと聴いていたい。
 


 「小説家になろう」にて2019年より連載されている、御子柴奈々による小説が原作。2020年より、講談社ラノベ文庫から書籍版が刊行されている(イラスト:梱枝りこ)。原題は『冰剣の魔術師が世界を統べる〜世界最強の魔術師である少年は、魔術学院に入学する〜』。
 制作統括は『Lapis Re:LiGHTs』『禍つヴァールハイト -ZUERST-』『天才王子の赤字国家再生術』の制作でおなじみ横浜アニメーションラボ。アニメーション制作自体は、横浜アニメーションラボの協力企業である「クラウドハーツ」が元請けとしてクレジットされている。同社は2021年に設立された若いスタジオで、代表取締役は横浜アニメーションラボ作品のプロデューサーである中谷諭史が務めている。独立したんかな。
 監督は『ニル・アドミラリの天秤』の、たかたまさひろ。本作では監督・シリーズ構成・音響監督・脚本・絵コンテまで兼任しており、過労死しないか心配になる。

解雇された暗黒兵士(30代)のスローなセカンドライフ

 無職転職
 とある解雇された暗黒兵士(30代)のスローなセカンドライフが始まるお話。「勇者パーティを追放されて」から始まる追放系はいくつかアニメ化されていたけれど、「魔王軍を追放されて」っていうパターンは珍しい。
 訳ありの怪しいおじさん(30代)をそう簡単に雇ってくれるとこなんてあるんだろうか、とか思いながら観始めたけれど「この農村では3~40代はまだまだ若手扱いだよ」みたいなノリで受け入れてくれる優しい田舎が舞台だった。確かに、働き手不足の田舎であれば30代の健康な男性は貴重な労働力だよね。そこがちょっとリアルで好き。
 お話の舞台が田舎の小さな村ということもあって、序盤は登場人物が少ない。特に主人公と関わりの深いギルマスとその娘さん、村唯一の冒険者である少年を含むメンツが本作の中心人物で、1〜2話にかけて家族みたいな関係を築いていく。そのせいもあってか、すこしホームドラマっぽい雰囲気の作品に。同スタジオ作品『メルクストーリア -無気力少年と瓶の中の少女-』『であいもん』はいずれもハートウォーミングな作品だったけれど、本作もまたそういうテイストの作品なのね。

©岡沢六十四・るれくちぇ・講談社/解雇された暗黒兵士製作委員会

 あと、追放系といえば「順風満帆な主人公パーティ」と「主人公脱退後の元パーティ」が対比的に描かれている作品が多いのだけれど、本作もまた同様の描写がある。前の会社の評価基準では「無能」扱いだった主人公が人間の社会では「有能」扱いで、その実直な働きぶりでみんなに評価されるようになった、というメインのお話と、主人公を解雇した魔王側は人材不足にあえいでいた・・・というお話が対比的に描かれている。最終的に魔王パーティの破滅まで描くのだろうか。ある意味「魔王軍を抜けたことで魔王軍が崩壊する原因となった主人公」って、その功績だけ見れば勇者そのものだよね。実はこれって英雄譚なのか?
 「ゆうて30代はおじさんちゃうやろ」「この世界なら平均寿命を考えれば30代は十分おじさんでしょ」っていう微妙なラインの主人公を演じるのは杉田智和。絶妙な若さとおじさん感を感じる芝居のハマりっぷりがすごい。


 「小説家になろう」にて2018年より連載されている、岡沢六十四による小説が原作。2019年からKラノベブックスより書籍版が刊行中(イラスト:sage・ジョー)。
 制作は『メルクストーリア -無気力少年と瓶の中の少女-』『異世界チート魔術師』『ご注文はうさぎですか? BLOOM』『であいもん』のエンカレッジフィルムズ
 監督は『セントールの悩み』『メルクストーリア -無気力少年と瓶の中の少女-』『であいもん』の追崎史敏。シリーズ構成も、メルクストーリアから雨宮ひとみが参加している。実質メルスト。

英雄王、武を極めるため転生す 〜そして、世界最強の見習い騎士♀〜

 人生二週目の孫悟空
 とある英雄王が、武を極めるために転生し、世界最強の見習い騎士♀になるお話。
 転生してセカンドライフを送る、という作品の中でも「異世界の人が異世界で死んで、その世界にもっかい転生する」というパターン。異世界とこっちの世界が交わること無く単独で成立している転生ファンタジーって「異世界転生モノ」って呼ぶとややこしいから、なんか良い感じの別の呼び方は無いのだろうか。
 主人公の人となりは、冒頭のモノローグで大まかに語られている。ざっくりいうと「武勲を上げすぎて英雄(というか為政者?)になってしまった主人公が、強いやつとワクワクする戦いがしたくて少女に転生した。これで身分を気にせず強敵と戦える!やったー!」という感じ。ある意味、転生が終わった時点で救われてる主人公である。
 主人公は、生まれ持ったノブリスオブリージュの精神から「悪をくじく正義の使者」として剛腕を振るうお話になっていくので、概ね勧善懲悪モノなのね。
 ただ、主人公の動機づけが「オラ、ワクワクすっぞ!」なので、真面目でシリアスなシナリオを繰り広げる人達が、ゴーイングマイウェイな主人公の脳筋っぷりに振り回される様がいい感じの脱力感を演出していて好き。シリアスとコメディのバランスいいよね。
 キャラの表情も、真面目なシーンから急にコメディになるシーンをしっかりコミカルな表情で落としててすき。表情でいえば敵役の表情がめっちゃいいよね。特に目元。同スタジオ作品の特徴的な男性の目元の描き方をうまく活用していて、非常に憎たらしく、今すぐぶん殴りたくなる敵キャラが爆誕している。
 新作アニメは数あれど「ザ・悪役」なキャラクターが登場するってあまり多くはない(悪行をする動機に同情する余地があったり、多少なりとも魅力が描かれているキャラが多くなったよね)一方、なろう原作のアニメは割りと出番多いから結構助かる。


 『小説家になろう』にて2019年より連載されている、ハヤケンによる小説が原作。HJ文庫より書籍版が刊行中(イラスト:Nagu)。
 制作は『美男高校地球防衛部』『RobiHachi』『Fairy蘭丸〜あなたの心お助けします〜』のスタジオコメット。監督は『ビキニ・ウォリアーズ』監督、『彼女、お借りします』『KING's RAID 意志を継ぐものたち』『ありふれた職業で世界最強 2nd season』にて各話絵コンテを担当していた葛谷直行。シリーズ構成は『彼女、お借りします』『EDENS ZERO』『シュート!Goal to the Future』『虫かぶり姫』シリーズ構成の広田光毅。キャラクターデザインは『Fairy蘭丸~あなたの心お助けします~』にて変身バンク作画を担当していた大藤玲一郎

便利屋斎藤さん、異世界に行く

 斎藤さんの転職成功事例
 ひょんなことから、便利屋の斎藤さんが異世界に行くお話。現世でブルーカラーだった主人公が「サイトウの代わりは、どこにもいないからな。」って言ってもらえるような職場に出会い、仕事もプライベートも充実していくストーリーになっている。これもある意味追放系?1話あたり数本の小話で構成されている特殊な形式なので、ショートアニメをまとめて視聴している気分になる。
 異世界転移した斎藤さんは、魔王討伐の大冒険に出かけることもなく、普通の冒険者として固定パーティとともに日々頑張る姿が描かれている。多くが「サイトウの代わりは、どこにもいないからな。」というニュアンスの終わり方で締められていて、斎藤さんとともに自己肯定感が高まる作品に。よかったね。
 また、息抜き代わりに他のパーティの何気ない日常回もちょくちょく挟まってくるため、かなりスローテンポな日常アニメになっている。
 元が便利屋さんということもあり、「誰にでもできるわけじゃないけれど、そのスキルが過小評価されがちな風潮」を体現したようなキャラクターになっている斎藤さん。お客さんのために自分のできることは可能な限りやるという愚直なスタンスを貫いていて、それが「元の世界ではやたら舐められる世渡り下手」だったのが「誠実で多彩な技術を持った優秀な冒険者」として扱われているんだけど、特に「優れた技量」だけでなく「誠実さ」が評価されているところが好き。実際、斎藤さんは器用貧乏である(自身のスキルが万能でないこと)ことをわかっていて、その上で自分にできることは何でもやろう、という勇敢さがある意味、斎藤さんの一番の魅力だよね。なんせサイトウの代わりは、どこにもいないからな。
 それにしてもアクションシーンの作画すごい。特にフルプレートの戦士。ガッツリ作画アニメーションで大剣をぶん回す作画いいよね。同スタジオの作品『転生したら剣でした』でもそうだったけれど、ちゃんと物理的に威力の高い攻撃によってモンスターがバラバラになる作画も丁寧。アクションシーンの尺はそこまで多くないけど、それが各話で日常シーンとの強いギャップになっているため、展開がぬるすぎずキツすぎず、いい感じの温度感に。
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Teary Planet「kaleidoscope」
作詞・作編曲:Nanao
絵コンテ・ディレクション:山下敏幸(ハイパーボール)
演出:永富浩司
総作画監督:たなべようこ
作画監督野田康行



 『ComicWalker』にて連載されている、一智和智による漫画が原作。
 制作は『魔女の旅々』『月が導く異世界道中』『プラオレ!〜PRIDE OF ORANGE〜』『転生したら剣でした』のC2C。なんか最近異世界モノめっちゃ作ってるね。監督は『はるかなレシーブ』『魔女の旅々』の窪岡俊之
 シリーズ構成は、『乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です』『異世界おじさん』『悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました』を始め、あらゆる異世界転移ファンタジー作品でシリーズ構成を担っている猪原健太。キャラクターデザインはC2Cの各作品で作画監督として参加している、たなべようこ。初キャラデザかな。

齢5000年の草食ドラゴン、いわれなき邪竜認定

 なろう原作の逆輸入アニメ。ショートアニメ
 ひょんなことから、齢5000年の草食ドラゴンがいわれなき邪竜認定をされてしまうお話。邪竜を狂信する少女に連れられて、魔王討伐に駆り出されてしまう主人公(竜)のコミカルなお芝居を楽しむアニメになっている。『ワンパンマン』のサイタマとジェノスみたいな関係性でありながら、主人公がサイタマじゃなくてキングだった、という感じ。全編に渡ってキングの受難が続くアニメ、と言えば本作がどんな感じか伝わるだろうか。
 ストーリーこそシリアスだが、主人公からすると「いい感じに少女を言いくるめながら、いい感じに邪竜としてのロールから逃げる事ができるか」という至上命題のために頑張るお話なので、基本的にコメディ。尺が短いこともあり、非常にテンポよく進んでいく。
 邪竜様がかわいい。非常に喜怒哀楽が豊かでコミカルなリアクションが尽きることなく繰り広げられている。『ドラゴン、家を買う』の主人公が大人になったらこんな感じだろうか。おまけに、声(吹き替え)を担当しているのが大塚芳忠ということもあり、他キャラクターの魅力まで食い散らかす勢いに。芳忠さんがめっちゃ喋るキャラを演じること自体割りと珍しいよね。もっと聴きたい。


 『小説家になろう』にて2017年から連載されていた、榎本快晴による小説が原作。原題は『齢5000年の草食ドラゴン、いわれなき邪竜認定〜やだこの生贄、人の話を聞いてくれない〜』。2018年から書籍版が角川スニーカー文庫から刊行されていた(イラスト:しゅがお)。
 製作は、中国の動画配信サイトbilibili。というわけで、本作は日中合作のメディアミックスプロジェクトとして2022年からbilibiliで配信されていたアニメ『食草老龙被冠以恶龙之名』を逆輸入したもの。日本での配信版は日本の声優が吹き替えている。
 制作は『時光代理人 -LINK CLICK-』でおなじみ、中国のアニメスタジオであるLAN STUDIO。
 監督・シリーズ構成は「劉思文」表記。劉思文は時光代理人に登場するキャラクターの名前なので、多分ペンネームだと思う。しらんけど。

老後に備えて異世界で8万枚の金貨を貯めます

 異世界転売ヤー金策RTA
 ひょんなことから、老後に備えて異世界で8万枚の金貨を貯めるお話。1話では本作における方針が示されている。
 2話は準備回。こっちの物品を向こうの世界で捌いた利ざやで稼ぐと簡単に言うけどさ。と思いきや主人公がかなりクレバーで行動力に溢れた人間だった。どんな知識、道具、技能が必要なのか、それを入手するためにどうすればよいのか、順序立てて考えながら行動に移していくさまはなんか、起業家のドキュメンタリーっぽくて好き。いわゆる「ゼロから成り上がる話」と違い、本作の主人公は最初から十分な知的財産や社会的財産、資金を持っている(入手する方法を得ている)ので、「手元の資金を更に増やしていく投資家」に近い気がする。内容は大概ぶっ飛んでるけど。特に、向こうで手に入れた金貨をこっちで換金する方法。勢いよく裏社会に首突っ込んでて笑った。主人公が裏社会を利用して資金洗浄するアニメがあるらしい。
 異世界転生系作品は「異世界だから倫理的な問題なんて関係無いぜ!」とか「ここは無法地帯、殺るか殺られるかの世界だ!」とか言いながら、現実の倫理問題と一旦分けた上で非人道的な行為をする主人公(現実世界では模範的な人間だった)というパターンははよく見るけれど、本作の主人公は両方の世界でガッツリ犯罪に手を染めているので、より彼女の倫理的なヤバさが際立っているよね。作中でも、彼女を客観的な視点から「悪人」として描こうとはしていないので、妙にリアリティラインが低く感じる不思議。「現実世界が舞台の異世界ファンタジー作品」みたいな感じ。とりあえず税金払え。


 2015年より「小説家になろう」にて連載されている、FUNAによる小説が原作。2017年からKラノベブックスより書籍版が刊行中(イラスト:モトエ恵介)。
 制作は『ネコぱら』『裏世界ピクニック』『阿波連さんははかれない』のFelixFilm。監督は『GIBIATE THE ANIMATION』副監督の玉田博。シリーズ構成は『イナズマイレブン』シリーズで脚本を担当している稲荷明比古。キャラクターデザインは『プランダラ』の福地友樹。

最強陰陽師異世界転生記

 実力者の影になりたくて!
 ひょんなことから、最強の陰陽師異世界に転生したお話。本作の世界における陰陽師は「超強い超能力者」というより「強力な配下を持つ為政者」みたいなポジションらしく、前世で政治的なミスから失脚してしまった主人公が、セカンドライフでうまく人生やり直そうと奮闘するさまが描かれている。そういう意味では「英雄王、武を極めるため転生す 〜そして、世界最強の見習い騎士♀〜」と導入がちょっと似ているかもしれない。
 ただ、本作の主人公は「みんなのヒーロー」というより「殺人をしない吉良吉影」みたいな感じなので、あまり英雄的行動を取らないのが印象的。「正義をなさず、悪をなさず、ただ平穏に生きたい」なので、すごく計算高いというか、狡猾というか。雰囲気だけで言えば『ようこそ実力至上主義の教室へ』の主人公みたい。あっちの主人公よろしく、むしろ主人公ががラスボスなのでは。主人公の父親がモノローグで語っているとおり、彼の持つ潜在的な「危うさ」がどう転んでいくかを見守る作品なのかな。
オバロ→仲間の表に立ちながら、問題解決を部下にさせつつ組織として成長していく
かげじつ→影のヒーローめっちゃかっこいい!俺そういうのやりたい!
ようじつ→自身の利益のために、利用できるものは何でも利用しよう。え、コイツ俺に惚れてんの?よっしゃ便利な駒ゲットだぜ。
これ→いくら強くても、矢面に立たされるとロクなことにならない。そうだ、藁人形を用意してそいつに全部やってもらおう!これで余生は平穏だぜ!
 そんな主人公を演じるのは花守ゆみり。少年声はすっかり聞き慣れた気がしていたけれど、本作のすっげー雰囲気のあるお芝居いいよね。淡々とモノローグの続く作品になっていて、常に落ち着きのある声。かっこいい。


 「小説家になろう」にて2018年から連載されている、小鈴危一による小説が原作。原題は『最強陰陽師異世界転生記〜下僕の妖怪どもに比べてモンスターが弱すぎるんだが〜』。書籍版が2019年からMノベルスより刊行中(イラスト:夕薙、柚希きひろ)。
 制作は『僕の彼女がマジメ過ぎるしょびっちな件』『うらみちお兄さん』のスタジオブラン。総監督、シリーズ構成は『僕の彼女がマジメ過ぎるしょびっちな件』『ランウェイで笑って』『うらみちお兄さん』等でおなじみ長山延好と待田堂子のコンビ。
 監督は『ランウェイで笑って』『うらみちお兄さん』にてチーフディレクターを務めている渋谷亮介。キャラクターデザインは菊池政芳、上野沙弥佳。ふたりとも初キャラデザかな。

最後の召喚師 -The Last Summoner-

 中国色のガッシュベル
 ひょんなことから召喚師になった少年のお話。召喚師にまつわるバックグラウンドが非常に壮大な作品で、事情を知らない主人公が、憎たらしい原神のパイモンみたいな少女と出会ったことをキッカケに巻き込まれていくストーリー。『惑星のさみだれ』みたいな超能力バトルが作品の主軸で、OPはまさに「これがやりたいです」と言わんばかりのアクションシーンてんこ盛りに。ジャンプで連載されてそう。
 2話のバトルが顕著だが、いきなり前のめりに戦い始める主人公がちょっと新鮮だった。この時点で主人公はまだ事情をほとんど知らないけど、その割にめっちゃ本気だし。動機づけの過程はどこ行ったんや。
 日本の作品はまず最初に「説明」パートが丁寧に用意されている、動機づけが明確な作品が主流だけれど、そんなことよりテンポ重視でそこを端折るのが大陸側のトレンドなのかも。時光代理人や邪竜様に至っては、途中から始まった?1話見逃した?ってくらい食い気味の始め方だし。
 あと、アニメのテンションが常に高い。序盤はわりかしコメディチックなやり取りが多いが、以降もテンションが高いシリアスとギャグを間髪入れず織り交ぜていて、意外と緩急が小さい、アクセルベタ踏みなアニメに。尺的に展開を急いでいるのかもしれないけれど、その割にギャグの尺をしっかり使ってて草。ギャグ挟まないと死んじゃう病なのか。


 2016年に連載を開始した、ASK STUDIOによる漫画作品を原作とするメディアミックス作品らしい(バイドゥ調べ)。原題は『最后的召唤师』。
 制作はASK STUDIOとbilibiliの共同。というわけで、2022年にビリビリ動画で配信された後、日本語吹き替え版として配信が始まった。日本語版の制作を担当しているのはハピネットファントム・スタジオとフジテレビ。へー、フジテレビなんだ。
 総監督は于沺。シリーズ構成・脚本は于沺、张丹(薄荷映像)の共同。特に本作は、企画、総監督、原作の脚本も于沺が担当している作品なので、かなり同氏の意匠が反映された作品になっているみたい。
 あと、本作は原作の表紙が非常に厨二っぽい。アニメでも序盤から厨二臭のするキャラが登場するのだが、最初の刺客がたまたま厨二っぽかったということは無く、今後もこの路線のキャラがガンガン増えていくみたい。

人間不信の冒険者たちが世界を救うようです

 追放された冒険者の集団カウンセリング
 ひょんなことから、人間不信の冒険者たちが世界を救う旅に出るお話。
 大まかなジャンルは追放系なのだろうか。同ジャンル作品の特徴として「お前、うちのパーティクビな!」と宣告を受けるシーンから始まるというお約束があるのだけれど、本作のコンセプトが「追放された冒険者たちが集まってパーティを組んでみたら」のため、上記の導入部(人数分)のシーンだけで1話が終わる。ちなみに全員分の「お前クビな!」が終わるのは3話なので、メインストーリーが動き出すのは4話あたり。
 特に序盤は「心の傷を負った人たちを対象に集団での心理カウンセリングを通じて社会復帰を支援する物語」を観ている感じ。それぞれ抱えている問題も割りとリアルな内容ばかりで、一度カウンセラーさんにリアルでお世話になった身としてはあまり他人事とは思えないキャラが多かった。みんな社会復帰できるといいね。
 他の追放刑と違い「追放された主人公を受け入れてくれる役」というものが存在しないパーティなので、パーティ結成直後めっちゃギスギスしてて草。4人共「良いやつばかりがバカを見る」という経験者なので、ひねくれっぷりが妙なリアリティのあるキャラになっている。そんな彼らが「信頼できる仕事上のパートナー関係(現在のパーティ)を、うまく育てるにはどうしたら良いのか」という問題を協力して解決しながら、それぞれの成長、というか精神的な成熟を描いていくのが本作のメインみたい。過度に依存することなく「仕事上のパートナーとして信頼する相手」としてパーティを捉えている感じが結構好き。『追放されたビーストテイマー』のようにイチャコラしてる関係も結構だけれど、あれは仕事上のパートナーというより家族みたいな感じだし。


 『小説家になろう』にて2019年より連載中の、富士伸太による小説が原作。書籍版がMFブックスにて2019年より刊行中(イラスト:黒井ススム)。
 制作は『可愛ければ変態でも好きになってくれますか?』『プランダラ』『幻想三國誌 -天元霊心記-』のGEEKTOYS。また、制作協力として『可愛ければ変態でも好きになってくれますか?』『トライナイツ』『ピーター・グリルと賢者の時間』のアニメーションスタジオ・セブンがクレジットされている。
 監督・シリーズ構成は『あいまいみー』『可愛ければ変態でも好きになってくれますか?』の、いまざきいつき。あーそれで、EDに「宣伝協力」としてちょぼらうにょぼみ先生がクレジットされているのね。キャラクターデザインは『バトルアスリーテス大運動会 ReSTART!』の長尾浩生。

犬になったら好きな人に拾われた。

 ある朝犬になっていた俺クンの人生
 ひょんなことから犬に転生した少年のお話。実質チェンソーマン。女の子に拾われた主人公目線で、ヒロインの日常を描いていく。1話は定番のお風呂回。主人公はオフゼリフこそ荒ぶっているけれど、犬として能動的にリアクションを返すことはほとんどなく、ヒロインの一人芝居を近くで見守っているだけというシチュエーションが多い。意外と音が良いので、ASMRを題材にしたアニメ『ある朝ダミーヘッドマイクになっていた俺クンの人生』みたいなノリで楽しめるかもしれない。
 内容的にDMM独占配信アニメっぽいなーとか思っていたのだけれど、普通に配信してるのね。ちなみに月イチでニコニコ生放送にて本作の生放送特番が配信されているのだが、あのエキゾチックな企画を見るとなおさら「なんでDMM独占配信作品じゃねえんだよ!」と突っ込みたくなる。この手の作品は完全版BD・DVDの販売がメインのイメージが有ったけど、ついにサブスクを始めたDMMこそ真っ先に見放題配信しそうだよね。


 2020年より『マガジンポケット』にて連載されている、古川五勢による漫画が原作。2022年から『少年マガジンR』に移籍。
 制作は『怪人開発部の黒井津さん』のQuad。監督は安ドウタカシ。誰?ヴィジュアルディレクターを『怪人開発部の黒井津さん』監督の斉藤久が務めている。キャラクターデザインは『月がきれい』『ようこそ実力至上主義の教室へ』の森田和明。黒井津さんは「若干エロいけど概ね健全なアニメ」だったが、本作は普通にエロいアニメ。タイトルで分かるか。