2020年春アニメ1話ほぼ全部観たので優しめの感想書くよ

はじめに

 今期のアニメ放送はコロナ災禍の影響を受けて製作状況が大変なことになっているので、先週まで普通に放送されていた作品が気づいたときには放送が延期されていた、なんてことが起こりまくっているし、今後ももっと増える可能性は高い。そんな状況において、視聴者が「このアニメ好きだけど、制作が間に合わなくなって放送延期になったら嫌だなぁ」という心配から新作の視聴を敬遠している人もいるかもしれない。
 もちろんその気持はわかるけど、やっぱり私はアニメを皆んなで楽しみたい派なので、一人でも多くの人が新作に触れてみたくなるような感想を書いてみた。もしかしたらこの中には最悪最後まで制作されない作品もあるかもしれないけれど、「最終話まで作られなければ(観なければ)何の意味もない」なんてことは無いと私は信じているので、1話1話噛み締めながら楽しめればそれで良いんじゃないかな。

配信情報まとめ

 私はTVでアニメを観ない(BS見れないし、TOKYOMXもAT-Xも受信できない)ので、配信情報はこれ以外の手段について書いている。
 なお、独占配信系タイトルは放送開始時点でのものであり、後に他の配信サイトでも配信が開始される場合がある。契約の参考になれば。

独占タイトル一覧

アマプラ独占配信

LISTENERS リスナーズ
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。(配信延期)

ネトフリ独占配信

攻殻機動隊 SAC_2045
BNA ビー・エヌ・エー

FOD独占配信

アルテ
ノー・ガンズ・ライフ(配信延期)

感想

イエスタデイをうたって

 『なんか人生逃げ腰だねぇ。一生懸命な自分ってのはかっこ悪いと思って…卑屈になって逃げ道作ってるだけじゃねえの?どう転んでも自分が傷つかないようにさ。』

 「グランドジャンプ」にて連載された、冬目景による漫画が原作。連載期間は1998~2017年までと長期に渡る(1998~2011年の間は「ビジネスジャンプ」にて連載された)。
 制作は動画工房。藤原 佳幸が監督を務めるのは『NEW GAME!!』以来。副監督にはNEW GAME!!8話絵コンテ演出の伊藤良太が参加している(葉月さんがメイド服着させてひふみんがゴミを見るような目で立ち去る回)。脚本はNEW GAMEのときと同様監督自ら担当していて、またゆるキャンのシリーズ構成でおなじみ田中仁が共同で参加している。
 それにしても。うわあああああああああああああああ甘酸っぱいよおおおおおおおおおおおおおおお!!!
 大筋としては、フリーターの主人公を中心とするラブストーリー。原作って何百年前の作品だっけ?と思って調べたら、なんと1998年連載開始。当時はまだ10歳以下だった身としては連載当時の日本の空気感を知る由もないのだけれど、「大学在学中にこれといった何かを見つけることができずに就職活動もおざなりなまま卒業しちゃって、今はコンビニのバイトとして貧乏な生活をしている主人公像」には共感しかない。共感する要素はどの子にもあって、特にハルちゃんが学校辞めた理由を語るシーンでもう全身血まみれ。
 1話冒頭、主人公の第一声がもう好き。最初から主人公に感情移入しちゃう。力が入っているようでどこか抜けたお芝居とでも言えば良いのだろうか、繊細なニュアンスを持ちながらはっきりした発音を持つ主人公を演じているのは小林親弘。彼が主人公を演じた『ゴールデンカムイ』『ビースターズ』でも素晴らしいお芝居をされているので、興味のある人は是非。
 カラス系女子を演じるのは宮本侑芽。『SSSS.GRIDMAN』宝田六花役でおなじみだけど、やっぱりナチュラル系のお芝居いいよね。『id:INVADED』のカエルちゃん役もすごく良かった。
 そして突然現れる元同級生役は花澤香菜。赤血球ちゃんみたいな役もらっておきながら一方で余裕のある先輩役も出来ちゃうってもうなんでもありやん。
 絵のお芝居が凄く良い。「セリフで直接描かずに行間を読ませる表現が多い」って花澤さんが言ってたけど、「口では軽くあしらっているんだけれど、内心ちょっと照れちゃってるんだよね」とか「全然気にしてないよ(結構気にしてる)」みたいなニュアンスが凄く伝わってくる。あまりにも切なすぎてハゲそう。
 小物のデザインがすっげー細かい。例えば1話冒頭で一瞬机の上が映るんだけど「昨日晩ごはんを食べるときに使った割り箸の袋(縦に裂いて開けた後が見える)」とか、「ゴリゴリの一眼レフカメラが映っている」という要素から、主人公が「普段コンビニ飯ばっかり食べてる青年で、カメラで写真を撮ることが彼にとって趣味以上のなにかである」ってことまでわかっちゃうの凄いよね。
 また、背景も美しい。担当しているのはPAworks作品でおなじみスタジオ・イースター。個人的な最近のベスト背景は『色づく世界の明日から』なんだけど、それと比べて本作の背景はこう、乾いてて黒い。特に夜の黒さが印象的。また東京都内を舞台にしていることもあり、看板や電線がごちゃっとしているあの感じをちゃんと描いてて、生活感のある雰囲気に。

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©冬目景集英社イエスタデイをうたって製作委員会
 特に1話の主人公とハルがベンチに座って会話するシーンなんか、写実的すぎてびっくりした。草葉の陰が黒いよね。あと1カット10秒以上あり「二人の距離感はこれくらい」を強く印象づけている。その後のハルのセリフで物語が動き出すわけだけど、ここで流れるBGMが凄く良かった。ちなみに音楽はagehasprings。アーティストのプロデュースや楽曲制作をしてる会社で、アニメの劇伴を手掛けたのは『サムライフラメンコ』くらいかな。

かぐや様は告らせたい? 天才たちの恋愛頭脳

 「かぐや様は告らせたい ~天才たちの恋愛頭脳戦~」改め「かぐや様は恋愛脳」
 2期以降の作品タイトルって、主な部分を変えずに ! や?を付けてみたり、x365を付けてみたり、☆を3つ付けてみたり、ハニカムを付けてみたり。色々試行錯誤があって好き。翻って本作の2期タイトルは、大きくタイトルを変えないまま「1期を通じて、二人の関係はどういうふうに変化したのか」を端的に表しているのが凄い。頭脳戦なんてなかったんや。
 ところで、アニメ作品の公式WEBサイトってURLが結構色々あって面白いよね。今の時代URLをわざわざ手打ちする人も少なくなり、覚えやすいURL需要がすっかり下火になた昨今において、キャッチーでウィットでセンセーショナルなURLをわざわざ選んでいるアニメの公式サイトを見つけるとつい嬉しくなってしまう。というわけで最近放送されたアニメ作品の中でも特にお気に入りのURLをいくつか紹介したいのだけれど、まずは本作。
www.kaguya.love

 まず、非常に短い。最近のブラウザが”https://www.”を省略表示するというトレンドをうまく捉えており、「かぐやドットラブ」と覚えておけばいつでも手打ちで公式サイトにアクセスできる、という圧倒的キャッチーさを誇っている。
 しかも本作の大まかな説明として大体合ってる。本作の表題である「告らせたい」というワードは「お前ら本当に告らせる気あるのかよ!」というコメディ部分を捉えたニュアンスを含んでおり、ある意味タイトル詐欺的な作品でもあるのだけれど、そこを踏まえた上で”love”というストレートな言葉をあえて選んでいるのが好き。
 そしてわざわざ.loveドメインを取得するという手間のかかりよう。ユニークドメインを取得する公式サイトは珍しく、基本的に.comか.jpが多い中で特に異彩を放っている。

次に『からかい上手の高木さん
www.takagi3.me

 本作が「高木さん」を主人公とした作品なのでURLに高木「さん」。URLの見た目を意識した「3」が可愛くて好き。そして何より、”.me”というドメインを見ただけで「高木さんにからかわれて赤面しながら『高木さんめ~!』って言ってる西方」を連想できてしまうところが素晴らしい。

そして『真夜中のオカルト公務員』
occultkoumuin.com

 個人的に公式サイトのURLは「海外の人も理解しやすいURLにしているかどうか」というのが面白ポイントだと思っていて、上記2作品は割りと対応している方。かぐや様の方はキャラ名+英語、高木さんは作中のセリフ(3がちょっと難しいかな?)。タイトル自体英語+日本語の場合、ローマ字表記をURLにしたり(ラブ→rabuみたいな)全部英語に統一したり(本好き→booklove)と様々だったりする。
 本作はそれをミックスして「サイコの綴りがPから始まるなんて知らなかったわ」レベルの難読英単語である「Occult」が混ざった結果「おきゅ・・・おc・・・オキュltk?オカルティ・・・オカルトこうみゅ・・・読めんわ!」みたいなURLに。

最後に『ポプテピピック
hoshiiro.jp

 ポプテピ要素どこやねん!というのも、これまでの経緯を振り返ると

原作ポプテピピックが連載打ち切り(2015年11月7日)
☆色ガールドロップ連載開始(12月18日)
☆色ガールドロップのアニメ化が発表される(2017年4月1日のエイプリルフールネタ)
公式サイト開設(これ)
翌日、ポプテピピックのアニメ化が発表される
公式サイトがリニューアル(これ)
2017年10月放送予定だったが、キングレコードの勘違いで放送が延期される
2018年1月放送開始

 サイトのリニューアルに伴いURLを変更しないという英断により数多のリンク切れが発生するのを防いだかどうかはさておき、URL一つとってもこれだけネタに溢れている様はまさに「その作品らしいURL」と言えるんじゃないかな。

LISTENERS リスナーズ

AmazonPrimeVideo独占配信

 『エウレカセブン』みたいなボーイミーツガール系のロボットアニメで音楽劇
 制作はみんな大好きMAPPAによるオリジナルアニメ。監督の安藤裕章は『シドニアの騎士 第九惑星戦役』『亜人』等の監督を務めた人で、MAPPAの人というよりポリゴン・ピクチュアズの人。作中に登場するロボット(メカデザインは『ストライクウィッチーズ』でメカニックデザイン、メカ総作監を務めた寺尾洋之)を見るとすごくポリゴン・ピクチュアズっぽい。ちなみに本作の3DCG制作を行っているのは「しいたけデジタル」という若い会社。
 そしてストーリー原案は『カゲロウプロジェクト』でおなじみ、じん氏(本作もまた、同氏が楽曲プロデュースを兼任している)。また、『エウレカセブン』のシリーズ構成でおなじみ佐藤大がシリーズ構成として参加している。
 というわけでSF世界を舞台にしたボーイミーツガール系ロードムービー。じん氏曰く「若いミュージシャンが上京する旅に出る感じをイメージして脚本を書いた」とのこと。エウレカと比べると、まずヒロインがめっちゃロックしてる(てかヤンキーやんけ!)ので全くテイストが違う。なんと、OPから劇伴からEDまで全部ロックミュージックというコンセプチュアルなアニメ。
 構成として、各話ごとに実在するロックバンドがテーマとなっている。1話はOasis。なんというか、めっちゃOasis。サブタイ「Live forever」は良いんだけど、タイトルのロゴがもうOasis。1話の舞台はリバチェスターという架空の街なんだけど、ニコ生特番で「リバプール+マンチェスターです」ってゲロってた。BGMもすげーOasisだし。Oasisどんだけ好きやねん!2話のテーマは「アインシュテュルツェンデ・ノイバウテン」。いやジャケ写まんまやないか!
 そしてなにより、爆音推奨。ロックをテーマにした作品としては序盤の音が小さい気がするんだけど、アニメ作品の音量ってその1話の中で一番大きい音を基準に全体の大きさを調整する仕様なので、ピークの音がアホほど爆音になっている本作は全体的に音が小さめに仕上がっているみたい。なのでぜひ冒頭から「ちょっと音が大きいかな?」くらいまで音量を上げてほしい。見せ場のシーンは音響も音楽も音圧がすごいので「なんか音楽を聴いてたら終わってた」「激しいロボットアクション+爆音+爆音」みたいな体感型アニメとして楽しむことができる。ちなみに音響効果を担当した西村睦弘は『GUNSLINGER GIRL』や、機動戦士ガンダムシリーズの音響効果とかもやってたすごい人。
 あと、毎話変わるEDがアルバムとして発売される。歌うのはヒロイン役の高木さん改め高橋李依。ライブで聴きたいんだけどなー、厳しいかなぁ。
youtu.be
youtu.be

 余談だけど、毎話放送に合わせメインスタッフ達が集まってYoutubeで生放送をしている。のんびりした雰囲気で制作の裏話を語ってくれているので、興味のある人はぜひ覗いてみてね。
一挙配信直前!『LISTENERS GIG 1話~4話振り返りSP』

かくしごと

 エモい最後を遂げた『絶望先生
 「月刊少年マガジン」にて連載中の、久米田康治による漫画が原作。制作はシャフト、ではなく亜細亜堂。同スタジオは今期『本好きの下剋上』も担当している。監督は同じく亜細亜堂の作品『異世界魔王の奴隷魔術』で監督を務めた村野佑太。彼の監督作品『ぼくらの七日間戦争』は面白かったのかな。ネトフリに来てほしいな。
 主人公はやはり神谷浩史だよな!先のアニメ『続・終物語』で死ぬほど喋り倒してた頃が懐かしい。本作でも相変わらず喋り倒している。というか『斉木楠雄のΨ難』でもクソほどしゃべったし、もしかしなくても神谷さんは喋り倒す系キャラ専属声優なんだろうか。そして娘さんは高橋李依。可愛くて天真爛漫だけど利発そう。幼少期と青年期の演じ分けが凄く好き。
 久米田康治作品らしいノリが1話から全開。自分まで巻き込んで全方位爆撃していくスタイルは全くぶれない。
 演出は全体的に「ああ、久米田康治作品だわ」という感じにまとまっている。私もついアニメ版『絶望先生』を脳の片隅に置きながら本作に触れているように、作り手の方もあの完成されたイメージを崩すことなく本作のアニメ化をしている印象を受けた。ギザギザの光線とか寄りの表情とかモブの感じとかまんまアレ。カケアミとか「のぺーっとした髪にトーンを重ねるやつ」とか。懐かしい!
 ただし、本作は2つの軸によって構成されているという点でこれまでの久米田作品とテイストが大きく違う。横軸はいつもの「絶望した!」のあれなんだけど、同時に「主人公と娘の物語」という縦軸を「もうお父さんのいない世界を生きる、高校生になった娘」を主人公として描き、「過去編」「現在編」2つの話が同時に進んでいく。

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©久米田康治講談社かくしごと製作委員会
 特に、過去編→現在編にシフトした途端背景の雰囲気がガラっと変わる様は一気に引き込まれる魅力を持っている。急に背景の解像度が上がる。「まるで漫画のような日々と、現実の対比」というか「淡い、幼い頃の記憶と、現在の鮮明な自我の対比」というか。背景を草薙が担当しており、陽光による強めの陰影表現はまさに青春モノっていう印象が強い。ゴリゴリのコメディどころか、むしろ逆まである。
 多少のシリアス要素があるそんな本作において、あの久米田作品のキャラがたまに物憂げな表情をしたりするのでドキッとする。そういう表情もあるのか。
 一方過去編では柔らかいテイストの背景になっていて、それぞれ描きたいことが違うんだねっていうのが伝わってくる。特に特殊効果がわかりやすくて、もはや別作品と言っていいくらい。
 OPの平面的な構図はどこか漫画チックな、やっぱりシャフトっぽいような。主人公が漫画家である、という要素を意識した画作りなのがすごく印象的。ギャグアニメなのにエモい。
 そしてED!うわああああああああああああ大滝詠一だああああああああああああああしかも原曲。何が素晴らしいって、EDクレジットにちゃんと「Niagara RECORDS」って書いてあるんだよね。映像も曲に負けないくらいテンポ感があって(ちゃんと曲のリズムとアニメーションが同期している)、ビビットな色彩の背景は「登場人物がその時に経験した記憶の鮮烈さ」を強く感じる。EDディレクターは「へー、このアニメのPVも作ってるんだ」でおなじみ、10GAUGEの依田伸隆。
www.youtube.com


放課後ていぼう日誌

4話以降の放送延期

 てーぼう!
 「月刊ヤングチャンピオン烈」にて連載中の、小坂泰之による漫画が原作。防波堤で魚を釣ったり捌いたりするゆるい部活の日常系作品。熊本県芦北町のご当地アニメ。
 制作はみんな大好き動画工房。先のアニメ『私、能力は平均値でって言ったよね!』のチーム太田ではなく、チーム太田の作品に副監督として参加していた大隈孝晴が初監督を務める。シリーズ構成は動画工房のきらら作品でおなじみ志茂文彦。テイストが日常系作品であることや、劇伴を『まちカドまぞく』の櫻井美希が担当していたりするのもあってきらら作品みが強い。
 キャスティングで言えば、めっちゃ驚いたのが黒岩先輩。中の人である篠原侑はまさかの『となりの吸血鬼さん』主人公・天野灯の中の人。マ? 
 釣りって結構スポーティな側面を持っているので、多くの作品で「アクションもの」という描かれ方をしてきたけれど、本作ではもう一つの側面である「スローライフ」にフォーカスしている。初めて釣り糸を垂らしてかかるのを待っている主人公が「私、何やってるんだろう?」と言っていたのが印象的で、「釣れるのを待っている時間」をたっぷりの尺感で描いている。この良さというのは多くの人が『ふらいんぐうぃっち』『のんのんびより』『ゆるキャンさんかっけー』で知っていると思うけれど、要はそういう作品。特にJKのアウトドア趣味ということで、ED映像なんか見てると「これ、ゆるキャンじゃね?」ってなってくる。
 釣り初心者(というか魚介類初心者)の視点で語られる「釣りとはどんなものかしら」が本作のいいところ。よく考えると、よほど魚を捌くのが好きな人でもなければナマの魚に実際に触れる機会って無いよね。肌感覚を中心に「魚」を丁寧に描いている。「きっも!」「臭い」「こんな小さい魚のどこに、あれだけの引く力があるの・・・」「ちっちゃい」「きらきらしてる」「臭い」「顎がにゅーんってなる」表現が拙いけど、それが良い。
 背景美術はスタジオ・イースター。最近よく見るよね。ちなみに先の動画工房アニメ『ダンベル何キロ持てる?』もスタジオ・イースターが背景美術を担当していたりするんだけど、本作は美術設定として東潤一がクレジットされており(スタジオ・イースターで一番すごい人)、メチャクチャ気合入れてることが分かる。
 気合が入っているのは釣具もそう。ガチ監修の入った釣具は実在のものをちゃんと再現しているだけでなく、例えばリールの巻く音は実在のもの(スタッフの私物って言ってた)を使って録音してたりするので一つ一つ音が違うらしい。スタッフ釣り大好きか!

フルーツバスケット2nd season

 2期。1期では旧作アニメに相当する話が終わり、ここから先は初めてアニメ化される。本作を簡単に紹介するのは難しいけれど、あえて言うなら「自分なりの生き方を見つける物語」と言ったところだろうか。
 よく本作を「人生のバイブル」と語る人を見かける。私自身まだ原作を読んでいないので必ずしもその意図を理解しているとは言い難いけれど、「どんな人も、多かれ少なかれ人に言えない事情や困難を抱えていて、それが原因で生きづらさを感じているものだよね」という共感と、「そういう自分の弱さは決して否定されるものではなく、うまく付き合う方法を学ぶことで前に進めるようになるんだよ」という示唆はこの作品における大きな魅力だな、って思う。
 リアルで生きづらさを感じていた人が本作を通じて「自分を許す方法」や「人に優しくする方法」を得て、少しでも生きることが楽になったのなら、その人にとって本作はもはや「生き方指南書」みたいなもんだよね。バイブルってそういうことなのかな、って。

アルテ

FOD独占配信

 「女のくせに」「これだから女は」と戦うイタリアの連続テレビ小説
 「月刊コミックゼノン」にて連載中の、大久保圭による漫画が原作。監督、シリーズ構成は放送中のアニメ『まじゅちゅしオーフェン』と同じく浜名孝行、吉田玲子。吉田玲子は最近は特に「強い女性」をテーマにした作品を多く手掛けている印象がある。制作はオーフェンを作ってるスタジオディーンではなくセブン・アークス・ピクチャーズ
 物語としては、当時の身分社会と芸術家の暮らし、そしてフェミニズムがテーマ。1話は「なぜ職人になった(なりたい)?」という話なんだけど、当時の時代背景が垣間見えるシナリオで趣深い。当時、誰の依頼でどんな絵をどういう作業体制で描いてたの?とか、女性の絵描きってどれくらいいたの?とか。2話では逆に「ひどい!女の子にこんなことをさせるなんて!」っていうキャラも出てきて、(当時の)普通の女性のリアクションと対比されてるシーンとかね。そして師匠の接し方が凄く好き。捨て身で飛び込んだ逆境に毅然と立ち向かう主人公の姿は、もう完全に朝ドラのそれだよね。そんな主人公を演じるのは小松未可子氏。強い女性といえば、という声を持つ彼女らしい感じに溢れていて素晴らしい。溢れる芯の強さがアルテらしさをより高めている。
 ちなみに劇伴は伊藤ゴロー。NHKのドラマで劇伴を担当してたりする人で、同氏がアニメの劇伴を担当するのは初めて。つまり実質NHKの朝ドラ(放送はTOKTO MXだけど)。
 舞台となるのはルネサンス期のフィレンツェ。アサクリで実家より訪れた回数が多い土地としてはおなじみだけど、原作における時代考証のクオリティが非常に高く、背景から建物、小物や衣装に至るまで驚愕の再現度を誇る。ちなみに時代考証鈴木貴昭。『ハイスクール・フリート』の原案や『ガールズアンドパンツァー』の考証、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の世界観設定等で活躍してる人。1話で次女が主人公の部屋を訪れるカットなんか、床の模様、壁の模様、ろうそくのデザイン、次女の衣装等細部に至るまで「あ!アサクリとか絵画で見たやつだ!」ってなるレベル。

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大久保圭/コアミックス,アルテ製作委員会
 それもそのはず。本作のクレジットを見ると「協力:イタリア大使館」となっており、強力な協力を得て制作されている本作は「当時のフィレンツェを知るための時代劇」と言っていいと思う。

波よ聞いてくれ

 戦うコミュニティFMラジオパーソナリティ
(→訂正。作中のラジオ局はCFMではなくJFL系列です。ご指摘感謝)
月刊アフタヌーン」にて連載中の、沙村広明による漫画が原作。制作は『銀魂』でおなじみサンライズ。地上波作品は『DOUBLE DECKER! ダグ&キリル』以来だろうか。監督は南川達馬。監督として参加するのは劇場版フェアリーテイル以来2作目かな。
 シリーズ構成の米村正二は子供向けアニメや仮面ライダーシリーズの脚本家でおなじみ。音響監督の高橋剛は実写畑、特に洋画の吹き替えがメインの音響監督だったりと、スタッフィングが面白い。
 このアニメを見て真っ先に思うことは唯一つ、やっぱラジオは良い。私の趣味はラジオを聴くことなので現在も週3-40番組くらい聴いてるけど、主人公のラジオ、普通に聴いてみたい。ろくな生き方をしていないようなパーソナリティが世の中を斜めの角度でディスりながらも、ユーモアを備えている感じ。そんな主人公の魅力に引き寄せられるメールが、ほぼ卑屈でくっそエグい内容なのもすごく好き。
 ヘッドフォン推奨。ラジオをテーマにしている作品なので、「普段何気なく聴いているラジオ番組だけど、実は放送の裏でこんな事になってまーす」という楽しみ方ができる。映像がなければ本当にラジオ番組。
 札幌のとある地方コミュニティFMを舞台にしたラジオマンの日常を描くギャグテイストのアニメなんだけど、銀魂並にテンポが凄い。サンライズ作品って絵の圧力が強いので、ギャグに凄みがあるよね。ギャグアニメで眼球が震える怒りの表現とか中々見ない。
 動きの芝居も凄くて、たとえば2話の喫煙室でチーフが主人公に電話で詰められてるシーンなんか「後ろのお姉さんがそこに立っているだけのアニメーション」がもう自然すぎて逆に不自然なレベル。サンライズすげえ。
 リアルでは「こんなカオスな番組ねえだろ」って普通思うんだけど、本作のファンであるニッポン放送吉田尚記アナが「登場人物のテンションが高い以外、地方コミュニティFMはだいたいこんな感じ」と太鼓判を押すくらい実は真面目な作品だったりする。「面白いラジオを作るためには何が必要か?」という理論的な部分をチーフが語るシーンなんかガチ感あるよね。硬派な部分と軟派な部分が共に素晴らしい作品。
 主人公の女性について、微塵も飾りっ気のない女性像が描かれる作品としては『臨死!江古田ちゃん』くらい生々しさに溢れている。特に自宅でフルグラ食べながら借りパクした恋愛映画観るシーンがすげー好き。
 その主人公を演じる杉山里穂の声の太さと強さが最高にキマってる。作中でも主人公含むキャラクターが喋っている後ろで主人公の声がラジオから流れるシーンが結構あり、単純に「アニメ1本分+ラジオ1本分」くらい喋っているんじゃないだろうか。割とMVPだと思う。
 ちなみに、北海道ではマジでこの作品のラジオが放送されている。パーソナリティは主人公の中の人。北海道出身なんだって。これでまたラジコプレミアムに加入する理由ができたね!ちなみにRadiotalkというサービスでもアーカイブを配信してるので、興味のある人は聴いてみてね
 OPはヘッドフォン推奨。エレキギターのリフが最高にかっこいい。EDのイントロも凄く良いので要は最初から最後までヘッドフォン推奨。

www.air-g.co.jp
radiotalk.jp

本好きの下剋上

 「地味だけど面白い」これに尽きると思う。2期の序盤をざっくり説明すると、宮仕えとして仕事を始めた主人公が人間関係で苦労しながら頑張る話。ファンタジー作品なのに、モンスターは出ない、強大な力を持つ魔王も出ない、当然勇者も出ない、多種多様な亜人も出ない。でも面白い。
 本が好きな主人公の魅力を描くため、「本を読んでいる主人公の姿」を敢えて描かないことで逆説的に主人公の異常な執着を描いている。実際まだほとんど本を読んでないんだよね。あっち行ったりこっち行ったり紆余曲折ある物語だけど、この執着によって一本筋が通っているのが凄い。

BNA ビー・エヌ・エー

 Netflixビースターズ
 制作はみんな大好きTRIGGERによるオリジナルアニメ。ネトフリ独占配信作品『リトルウィッチアカデミア』の吉成曜監督を筆頭に、キャラデザや背景、色彩設計等主要スタッフが続投している。シリーズ構成は『天元突破グレンラガン』『キルラキル』とTRIGGER作品に縁のある中島かずきが担当。 
 私は別にケモナーではないのだけれど、主人公が・・・その・・・超かわいい。お話としては、獣の姿の生き物と人間が同時に暮らしている世界の分断、差別を描く作品。マイルドな差別なんてものはなく、いうなればリアル移民・難民問題テイストで 描かれている。
 もちろんシリアスなんだけどどこかコミカルなのはTRIGGER作品らしい。台詞回しも魅力的で、1話ラストで差別絶対殺すマンが「その姿でか?」という容姿差別セリフできっちり落とす感じとか最高に皮肉が効いてて良くない?
 作品を通して一番印象的なのは独特な色彩設計。担当した垣田由紀子はパンスト、リトルウィッチアカデミアキルラキル等TRIGGERと縁のある人で、間違いなく「TRIGGERらしさ」の一翼を担う人。前半の危険地帯は全体的に赤い色彩なんだけど、その後逃げ込んだ安全地帯は全体的に青い色彩。こういう強烈な対比いいよね。赤と青の対比は何度も登場するので、気にしてみてね。
 それにしてもアニメーションの細かさやべー。アクションシーン相変わらず凄いし。アサルトライフルの射撃シーンもリロードモーションも、ショットガンの弾をベルトから給弾する仕草もめっちゃ丁寧で草。なぜハンドガンを普通に構えない!?(カッコイイ)
 あと音楽が最高。本作のノリノリなヒップホップ劇伴を作ってるmabanuaはアニメ『メガロボクス』の劇伴を担当した人で、あんな感じのアウトサイダーな作品と非常に相性が良いみたい。

富豪刑事 Balance:UNLIMITED

3話以降の放送延期

 アニメ版「フジテレビ系列で放送されている、なんか設定がぶっ飛んでる刑事ドラマ」
 原作は筒井康隆の小説。最初に発表されたのは1975年で、なんと45年前。ちなみにテレ朝で放送されたTVドラマは2005年。
 制作はA-1Picturesの高円寺スタジオことCloverWorksで、監督は『ソードアート・オンライン』シリーズの監督でおなじみ伊藤智彦。音響を岩浪美和チームが担当していて、この監督・音監の組み合わせは『HELLO WORLD』以来。
 音楽は菅野祐悟。同氏が劇伴を担当したノイタミナ枠の刑事ドラマといえば『PSYCHO-PASS』だけど、どっちかといえばTVドラマの劇伴を担当している人として呼ばれている感じがする。全体的に劇伴が華やかなんだよね。
 メインのキャスト二人は宮野真守と大貫勇輔。特に大貫勇輔は声優としての初仕事になる。突飛なキャスティングのようにも思えるけど、同氏がテレビドラマで活躍していることを踏まえればそんなに不思議でもない。本作のプロデュースの方向性を端的に物語っていると思う。
 OPはSixTONES。わ!刑事ドラマっぽい!先のアニメ『ランウェイで笑って』ではEDがジェジュンだったんだけど、こういう「アニメが好きな層、ではない層に向けたアプローチ」みたいな意図が垣間見えるOPEDは私には凄く新鮮に感じるので、もっと増えてほしいな。普通にカッコイイ。
 話としては、現代の東京・警視庁を舞台に日々仕事をする刑事さんのお話。所謂バディもの。「感情的な行動をする主人公と、冷静で上から目線の相方」とか「主人公がカーキのカジュアルなジャケットで、相方がバッチリ決まってる黒スーツ」とか「警察内で部署ごとの縦割り行政感を演出してくる」とか「当たりが優しい上司のおじさんが、面倒だけは起こさないでねって言いがち」とか、徹頭徹尾「フジテレビ系列で放送されている、なんか設定がぶっ飛んでる刑事ドラマ」に見られるようなテンプレを踏襲している。極めつけは「ゲストキャラになんか有名人が登場する」みたいなやつまできっちり抑えている。ちなみに1話のゲストは原作者・筒井康隆。なんだろうね、こういう「ゲストさんが登場するシーン」が放つ強烈な違和感。
 キャラデザに既視感を覚えている人はどれくらいいるだろうか。本作のメインキャラクターデザインを担当した佐々木啓悟は『青の祓魔師』『七つの大罪』シリーズでキャラデザ・総作監をしてる人なので、「男性キャラがめっちゃ青エク」「女性キャラがめっちゃ七つの大罪」みたいな、すごく不思議な感じ。黒スーツの君と事務の女の子の組み合わせが好き。
 絵的にもTVドラマライクな演出が多い。冒頭の「警視庁の空撮から始まるテレビドラマ第1話」とかよくあるよね。ほんと、TVドラマとしての完成度が非常に高い。
 一方1話、2話のカーチェイスはアニメならではっていう感じ。車のモーション班がめっちゃ楽しそうに車を爆走させている。リアルだとこんなに高価な車で街中を走れないもんね。足し算の演出によって神戸のぶっ飛び具合がすごいことに。

ミュークルドリーミー

 シリアスじゃない『まちカドまぞく』
 制作はJ.C.STAFF。『斉木楠雄のψ難』『まちカドまぞく』でおなじみ桜井弘明監督によるサンリオの新しいIP。シリーズ構成は、桜井監督と『斉木楠雄のψ難』『ジュエルペット』シリーズで一緒に仕事をした金杉弘子。
 あれ!変身用テクマクマヤコンにネジが入ってないやん!人の夢に入る力を使って色々する女の子の話。先のアニメ『pet』では悪いことに使ってたけど、こっちは子供向けアニメなので安心だね!偶然、桜井監督の作品『まちカドまぞく』でも主人公が同じ力を持ってるけど、シャミ子が彼氏のためにその力を使ってた一方で本作の主人公はもうなんかめっちゃ自由。「部活動何にしようかな~?よし!夢で仮入部だ!」←どうやったらこの発想が生まれるんだ。
 『まちカドまぞく』観てても思ったけど、とにかくコミカルでカワイイお芝居が多くて好き。また細かくつけられたSEもかわいいし「?」などの記号による表現も全然自重してなくて、絵としてすごく忙しくて面白い。だってさ、朝ごはん食べてるだけなのになんでこんなに面白くできるの?って思うよね。
 それ以外でも、「ゆめちゃんのサンダルかな」「あー、あり得る」っていう女子3人の会話とか動きの付け方に監督のセンスを感じる。ただの会話で終わらせない技術すごい。

プリンセスコネクト! Re:Dive

 きれいなこのすば
 サイバーエージェントとCygamesによるソシャゲを原作とするメディアミックス作品。制作はサイゲ自ら立ち上げたスタジオであるCygamesPictures。同社が制作するアニメは『マナリアフレンズ』以来2作目となる。
 監督は『この素晴らしい世界に祝福を!』でおなじみ金崎貴臣。本作は同氏が監督・シリーズ構成・音響監督を一人でこなしているため、かなり監督の色が強く出た作品になっている。
 ストーリーとしては、ひょんなことからファンタジー世界に転生した(アホな)主人公♂が、いろんな女の子と冒険をする話。テンション感としてはかなりゆるく、ほぼギャグアニメ。主人公がいつも(*´ω`*)みたいな顔してる。
 自身のIPを大切にするサイゲらしくアニメのキャラの崩壊(主に女の子)は抑えめなんだけど、明らかに「お前金崎貴臣監督の某アニメから来ただろ」っていう感じのモブが多数登場するため、全体としてはこのすばみたいなアニメに落ち着いている。特にモブの演技が凄く脂っこい感じに仕上がってるのは絶対監督のせい。
 戦闘も熱い。敵モンスターも活き活きしてるし攻撃エフェクトも盛り盛りだし(イメージはめぐみんのエクスプロージョンみたいな感じ)。特に2話は凄かった。音響効果はこのすばと同じく小山恭正が担当してるので爆発音のクオリティも安心だね!
 面白いのが背景と空気感。本作はCygamesPictures制作のため、背景はサイゲの子会社である草薙が、撮影監督も『マナリアフレンズ』に引き続き 米澤寿が参加している。マナリアフレンズは全体的に美麗でめっちゃエモい作品なんだけど、本作も同じく(特に夕暮れのシーンが)エモい雰囲気に包まれている。このすばとは違い、ほっこりした後味の作品。
 あと、なにげに飯テロ。ファンタジー世界なのになぜか白米を使った料理が頻出しており、「カレーめん食べてるなでしこを見たときの気分」を思い出した。

乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…

 外野席からバッターボックスを奪うラブゲーム
 「小説家になろう」にて連載された山口悟による小説が原作で、制作はなろう作品のアニメ化ではすっかり常連となったSILVER LINK.。スタッフ的には先のアニメ『みだらな青ちゃんは勉強ができない』監督の井上圭介と、キャラクターデザイン・総作監大島美和。『Butlers 千年百年物語』シリーズ構成の清水 恵といった感じ。本作が乙女ゲーを題材にした作品なので、そういう趣向に仕上げてるのね。でも女の子が可愛いラブコメ顔なのはあくまでギャグアニメだからかな。
 タイトル回収。ジャンルをざっくり説明すると「恋愛ゲームによくいる、主人公に悪さをする悪役の女性キャラ(後に粛清される傾向アリ)に転生した主人公が、王道ストーリーを捻じ曲げてでも生き延びようと悪戦苦闘する話」という感じ。特に本作は元が女性向け恋愛ゲームということもあり、テイストとして女性向けの印象が強い。
 というわけで、ほぼカタリナさんの独り相撲。でもなんやかんや普通に魅力的な女性だよね。一応物語としては幼少期編と青年期編がメインになる予定、なのかな?普通のアニメの5倍くらい喋ってる主人公を演じるのは内田真礼。物語の大筋はラブストーリーっぽいんだけど、「流れに身を任せると死ぬ」という謎縛りに苦悩する姿がギャグとして映えている。
 最近出番があった、キツイ悪役令嬢ポジのキャラといえば『盾の勇者の成り上がり』のビッチとか?ビッチと比べると神経質なハイトーンは共通なんだけど、本作の方がなんかこう・・・残念かわいいニュアンスがある。VSアランのくだりとか見ると、ナチュラル系悪役みが溢れている。
キャスティングでいうと、EDが蒼井翔太で笑ってしまったのは全部ポプテピピックのせい。後にジオルド役として登場するので期待しててね。
 劇伴について、全体的にオケ中心なのが印象的。大筋が昔の貴族社会における恋愛物語である、という骨格を大事にしている雰囲気を大事にしている印象がある。やっぱりラブストーリーじゃん!2話冒頭のホルンで始まる曲とかすごく好き。
 背景は柔らかい雰囲気。『えんどろ~!』の美術監督も務めている込山明日香が担当しており、えんどろ~と似た雰囲気に。放送中の作品である『かくしごと』は幼少期→柔らかい雰囲気の背景 青年期→写実的な背景とくっきり分けてるけど、本作はそこまでくっきりしてるわけじゃないところにかなり違いを感じる。

社長、バトルの時間です!

 ファンタジーで学ぶ中小企業の経営術
 KADOKAWA、でらゲー、プリアップパートナーズより配信されているスマホアプリが原作
 制作は『はるかなレシーブ』『ひとりぼっちの〇〇生活』でおなじみC2C。監督の池下博紀は、はるかな特技監督(競技シーンの作監かな?)、ぼっちの副監督を経て本作が初監督となる。お、出世か?
 シリーズ構成は『幼女戦記』『慎重勇者』でシリーズ構成を担当した猪原健太。シリアス系と思った?日常系アニメでした。

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©KADOKAWA・でらゲー・PREAPP PARTNERS/「シャチバト!」製作委員会
 主人公が可愛い。パット見で「A-1 Picturesみたいな絵柄してんな」って思った人も多いと思うけれど、本作のキャラデザを担当した渡邊敬介は『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』とか『エロマンガ先生』の作監をやってた人なので、その系譜の絵柄ということになる。ちなみに原作のメインキャラクターデザインはあの吉崎観音が担当されているので、興味のある人は是非ゲームをプレイしてみてね!A-1 Picturesっぽいキャラデザも相まって、なんとなくラブコメ見てる気分になる。主人公も秘書ちゃんもかわいい。
 1話はチュートリアル。ファンタジー世界を逞しく生きる労働讃歌。テーマが「会社の運営」なので、その世界におけるノウハウ(割と現実準拠)を学びながらホワイト企業を目指していく。でも月末締めは流石に草。2話では資金難から、中小企業→零細企業に格下げを食らってしまう。経費削減の影響で設備投資に回せず、冒険活動に影響が出るのを食い止めようと主人公は奔走するのだが・・・第2話『遺産相続』乞うご期待。
 「あ、ちょうど外回りに出られていた社員さんが戻られました」で草。中々ファンタジー系作品で聞かないセリフ筆頭である。あと「受領印を押してください」が好き。「いい仕事取ってきてよね」「週末は休ませてよね」「給料ちゃんと払ってくれれば」等、社員からの(当然の)要望に苦しめられる主人公、応援せずにはいられない。
 ほっちゃーん! ほ、ほーっ、ホアアーッ!! ホアーッ!! ところでマコトを演じている青山吉能さんは現在体調不良により当面の間活動に制限を設けると発表されてたんだけど、無事復帰されたようで何よりです。
 全体的にかわいい演出すき。ゲート入ったときのロード画面とか。あと(ぼっちでもそうだったけど)髪の毛がふわふわ動くアニメーションにこだわりを感じる。
 余談。公式ラジオ番組が配信されているんだけど、パーソナリティの二人(堀江瞬市ノ瀬加那)のやり取りが新鮮。二人は新人さんゆえ他作品ラジオ等では先輩との絡みが多く、比較的かしこまった喋り方が印象的だったんだけど、本ラジオでは凄く和気あいあいとしてて「あー普段はこっちなのか」という印象を受けた。楽しそう。
社長、ラジオの時間です!シャチラジ! | インターネットラジオステーション<音泉>

ギャルと恐竜

 2~3次元くらいの時空をウロウロしている『リラックマとカオル』
 「週刊ヤングマガジン」にて連載中の、森もり子原作・トミムラコタ作画による漫画が原作。簡単に言うと『ポプテピピック』のスタッフによる新作。プロデューサーはもちろん須藤孝太郎で、同氏が実写パートのシリーズ構成も務める。実写パート?
 スタッフクレジットを見ると、ポプテピピックに関わっていた人たちが随所で活躍しており、これはこれで一つのチームなんだね。あと「蒼井翔太協力 大川ぶくぶ」って何?
 酔った勢いで恐竜を拾ってきちゃった!でもギャルは悩まないんで、よろ!(1話公式あらすじより)
 ポプテピピックと比べ、本作はそこまで虚無じゃない。やや虚無くらい。今回もショートアニメのノリは健在で、半分くらいの尺でお腹いっぱいになる。もちろん再放送が・・・あれ?
 2話の山田が来る回ホント好き。お前何しに来たんだよ。久しぶりにおばあちゃん家行ったときの自分かよ。
 ギャルの声を担当するのは島袋美由利。先のアニメ『キャロル&チューズデイ』でキャロルを担当していたのが記憶に新しいが、あんな感じのサバサバ系女子。
 実写パートのギャル役は8467(やしろなな)。リアルJKの・・・あれ?エンドレスエイト始まった・・・?
 ( ゚д゚)…→( ゚д゚)!→(゚∀゚)!でくっそ笑う。無声映画ではないけどそういう趣の作品。改めて見ると、「曲線1本だけで眉毛を描いてキャラの心情を表現する手法」って面白いね。
 音楽やSEがいちいちカートゥーン風のコミカルなチョイスになってるのが腹立つ。SEで遊ぶな。ちなみにSEはポプテピピックに引き続き、みんな大好き小山恭正
 EDのアニメーションもすごい。二人の何気ないやり取りだけど細かいモーションの付け方がとても丁寧。

球詠

 『MAJOR』系女子
 「まんがタイムきららフォワード」にて連載中の、マウンテンプクイチによる漫画が原作。フォワードということできらら作品全体の中ではかなりガチのスポーツ作品。先のアニメ『はるかなレシーブ』と似た路線の作品となる。
 制作はA-CAT。『超可動ガール』以来の元請け作品となる。30分枠は初めて?監督は『MAJOR』シリーズでおなじみ福島利規。シリーズ構成は同じくきららフォワード作品『はるかなレシーブ』と同じく待田堂子
 ストーリー自体は王道のスポ根を踏襲していて、『8月のシンデレラナイン』を思い出す。やっぱり甲子園目指すのかな。
 それにしても、すげー男の体してる。首が筋張ってる。お尻が四角い。大腿筋が張ってる。肘がごつい。OP見ると分かるけど、投球フォームが美しい。球種によるフォームの違いまでバッチリ描き分けてるのはさすが。
 よーく見ると日常パートとやきうパートで登場人物の体格や姿勢が変化している。1話の投球練習シーンはまず立ち方から違って、打席に立つ娘の足を見ると非常に安定感のある立ち方かつ良い筋肉量になっていて「あ!絶対野球アニメ描いたことある人が原画描いてる!」ってくらい美しい。その前のキャッチボールもフォームが美しい。そういう見方が楽しい、非常にフェティッシュな作品。
 『フレームアームズ・ガール』『超稼働ガール』でおなじみ3DCGモーション班は本作でも健在で、主にやきうモーションで活躍している。細かいモーションつけるのは大変なので低コスト化が主な目的って感じだろうか。作画カロリーの配分が分かりやすいよね。特にチームプレーの輝くシーンがどうなるのか乞うご期待。

文豪とアルケミスト ~審判ノ歯車~

 DMM GAMESより配信されているブラウザゲームを原作とするメディアミックス作品
 制作を担当するのはOLM。『メジャーセカンド』とか『MIX』を制作したチーム。監督は『NARUTO -疾風伝-』や『東京喰種:re』の監督を務めた渡部穏寛。DMM GAMES原作の作品といえば、『刀剣乱舞』『艦これ』『南無阿弥陀仏~蓮台~』等アクション要素の強い作品が多いのでスタッフィングもそっちに明るい人が招集されやすい印象があるよね。
 徐々に歯車が狂っていく名作を、いい感じに正していく。同様の趣向を取り入れたゲーム原作アニメは結構あって、パッと思いつくのは『グリムノーツ(サ終予定)』『ぱすてるメモリーズ(サ終)』とか。本にまつわる話という意味では『ニル・アドミラリの天秤』っぽいかも。そんな本作の世界観監修はイシイジロウ。元はチュンソフトの人で、新しい方のサクラ大戦のストーリー構成なんかをやってる人。それもあってか、なんかパンクなデザインに溢れてて好き。
 キャラの元ネタが文豪ということもあり、全員性格が擦れている。見た目がイケメンのおっさん。おっさんという年齢でもないか。そんな良い年したお兄さんたちによる、何気ない会話が結構面白い。総じて文学的な表現になってて、かつ水を差す人もいないのでちょっとした小説を読んでいるときのような心地よささえ感じる。これはアリ。キャラデザは薄桜鬼、メガネブ!、サンリオ男子、胡蝶綺 〜若き信長〜等でおなじみ中嶋敦子。原作のゲームはイケメンを攻略する感じのやつ?
 音楽がなんというか、すごく奥ゆかしい。(原作における)シリアスシーンなんだけど、音楽はあえて「そこを読んでいる読者」を意識した音楽になっていて、独特のリズム感がある。日本の文豪をテーマにしているのでBGMも当然和風、ってこともなく。あえて言うなら、ロマン?劇伴を担当したのは坂本英城。同氏はゲーム音楽を中心に活躍する人。ゲームもこういう雰囲気の劇伴なのかな。気になる。
 それにしてもOPアニメーションがすっげーカッコイイ。制作したのは神風動画。3Dの立体感を活かした作画アニメーションのハイブリッドな感じと、ステンドグラスの鮮やかさが良い。
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グレイプニル

 純文学チックな魔法少女
 「ヤングマガジンサード」にて連載中の、武田すんによる漫画が原作。制作はPINE JAM。『月曜日のたわわ』『Just Because!』を手掛けたスタジオで、30分枠のアニメは本作が3本目、かな。
 デスゲーム。ある日、突然強い力を得る→戦いに巻き込まれる→生き残るために戦うっていう魔法少女あるあるを踏襲してるけれど、本作の主人公は生への執着を持たない無気力少年なんだよね。何者にもなれない虚無感をもっていた上に、まともな人間ですら無くなってしまった苦しみを描く群像劇。
 もしこれがフランツ・カフカの「変身」だったら、家族から「早く死んでくれないかな・・・」なんて思われちゃうけど、本作ではそんな主人公に同情してくれる共犯者がいて、一見救われているようにも見える。でも、彼女がけしかけた「二人で一つだよ」という展開は決して前向きな意味ではなく、むしろ「そうか、自分はこうする以外に生きる術がないんだ」という絶望のようななにかに見える。多少エログロで味付けしてるけど、人間の持つ黒い部分をメインに描く本作はかなり文学的な作品という印象。闇落ちしそう。
 「コイン」という名の舞台装置によって「主人公組が、夢にあふれる若者(敵)をぶち殺す」という物語が生まれているんだけど、主人公組はただの被害者というのがポイント。当事者でありながらカルマの外側っていうのは結構珍しい。まあすぐ闇落ちするんですけどね。
 演出でいうと、特に背景が美しい。陰影表現が強く、夕方のカットが多いのは心情描写の一部として駆使しているからっていう感じ。まさに青春群像劇。本作の美術監督を務めた 岡本有香は『Just Because!』の美術監督も担当。あっちも背景が美しいのでオススメ。
 あと屋上のドア開閉音すこ。音効を担当したのは安藤由衣。波よ聞いてくれもこの人。全体的にフェティッシュなSEが多くて好き。ツイッター覗いたら「ブラのホックを外す音がつけるの楽しかった」って言ってたのでみんなもよく聴いてみてね。
 アニメーションでいうと1話「ちょっと残念」の揺れるカットに強いこだわりを感じる。動かすのが好きなアニメーターさんおるな。と思って調べたら、キーアニメーターがすごい人だった。キーアニメーターの新井博慧は主にシャフト作品で作監とかやってた人で、『幸腹グラフィティ』のメシ作監は主にこの人。中屋了は中屋はJOJOシリーズのキーアニメーターだったりする。加えて2話の格闘シーンにはエイトビット作品でおなじみ江畑諒真が絵コンテで参加しており、総じてゴリゴリ動かす系アクション作品に仕上がっている。

天晴爛漫!

4話以降の放送延期

 アッパレくんはRun Man
 制作はみんな大好きP.A.WORKSによるオリジナルアニメ。監督は『TARI TARI』『ハルチカ〜ハルタとチカは青春する〜』の橋本昌和。本作では監督がシリーズ構成も担当している。キャラクターデザインは、ハルチカSHIROBAKOでキャラデザ補佐をしていた大東百合恵。本作が初キャラデザらしく、PA作品としてはちょっと新しい雰囲気。
 話としては1900年代初頭、アメリカで実際に行われた大陸横断レース(通称キャノンボール)を舞台にした、というか最近コロナの影響で新記録出した云々が話題になってるあれを舞台にした冒険ファンタジー作品。
 「なんでレースに出るの」「そこにレースがあるから」みたいなロジックは『ONE PIECE』をちょっと思い出す。特に主人公の性格である「夢に向かって突っ走ること以外何も考えていない」という潔さによってゲストキャラが気付きを得る、みたいなシナリオってベタだけどやっぱり良いよね。ザ・少年漫画。
 世界観は1900年代初頭のアメリカを舞台にしているようで、していない。このリアリティ溢れるファンタジーみたいな路線は『色づく世界の明日から』『Fairy Gone』他PAWORKSの十八番で、「実際にあった風景を精密に描写しながらも、異質なものをちょくちょく混ぜていって、最終的にリアルなファンタジー世界に」みたいな手法になっている。本作は細部のリアリティをいろんな時代からつまみ食いしまくった結果キメラみたいな世界に。
 その影響もあり、登場人物もカオス。いろんな時代のいろんな物語を背負ったキャラが登場するので、なんか格ゲーみたい。そういえばなんで格ゲーのキャラって国際色豊かなんだろう?
 そして、そんな世界を構築する背景美術を担当するのはいつものスタジオ・イースター。やっぱりレンガの描き方すっごく好き。あと、日本パートとアメリカパートで背景の雰囲気が違うのが印象的だった。また日本パート来ないかな。

デジモンアドベンチャー

4話以降の放送延期

 デジモン(2周目)
 過去シリーズは同じ世界線の中でファンの成長とともに登場人物の成長が描かれてきたんだけど、対して本作はシリーズ第1期のリメイクになっている。
 制作は東映アニメーション。監督を『魔法つかいプリキュア!』の三塚雅人が担当し、シリーズ構成を『ポケットモンスター』『イナズマイレブン』『バトルスピリッツ』シリーズでおなじみ冨岡淳広が担当する。
 ちなみにキャストは少年少女のみ更新されていて、デジモンの中の人はほぼ続投。
 キャラデザなっつ!というのも、本作のキャラデザを初代シリーズの中鶴勝祥が手掛けているので、見た目がほぼ初代そのまま。
 キャラデザでいうと、本作は基本的に作画アニメになっている。「デジタル世界のモンスターがメインのアニメでありながらデジタル作画じゃない」っていうのが趣深いポイントで、デジモンって電子世界の生き物でありながら非常に荒々しい(ワイルドな)見た目の生物ばかりっていうギャップがあり、それを表現するには作画アニメの方が相性がいいんだよね。実際1話のアグモンが凄くワイルドに映えている。

邪神ちゃんドロップキック‘

AmazonPrimeVideo独占配信

 2期。相変わらずの『撲殺天使ドクロちゃん』みたいなノリのギャグアニメ。1話は主人公を演じる鈴木愛奈がクソほど喋り倒しているので楽しみにしててね。あと邪神ちゃんがあまりミンチになっていない。

つぐもも

 子供と楽しめない方の『ぬ~べ~』2期。1期から3年くらい経過してるのでスタッフも多少入れ替わって入るものの、監督やシリーズ構成は続投だったりするのであんまり「作ってる人が変わったな」感はない。
 少年漫画:ギャグ:エロ=1:1:1は健在。ただし「お色気アニメーター」というクレジットから漏れ出る熱情よ。お前それがやりたいだけちゃうんかと。2話からもうOVAでやれ状態になっている。はやく金山さん出てくれないかな。超楽しみ。

啄木鳥探偵處

 金田一青年の事件簿。「きつつきたんていどころ」と読む
 東京創元社より発売された、井伊圭によるミステリー小説が原作。そのコンセプトから『文豪アルケミスト』みたいなメディアミックスなのかなと思われがちだけど、れっきとしたミステリー作品である。文豪はフリー素材だからね。仕方ないね。
 制作はライデンフィルム。先のアニメ『はねバド!』のメインスタッフが再集結している。監督の江崎慎平(本作では総監督。監督は牧野友映)、シリーズ構成の岸本卓、メインアニメーターの橋本尚典、色彩設計の辻田邦夫、撮影監督の野澤圭輔。岸本卓は最近特にミステリー作品で脚本を書いている事が多く、最近だと『91Days』『歌舞伎町シャーロック』『富豪刑事』のシリーズ構成を担当している。しかも今期は『ハイキュー』『フルーツバスケット』のシリーズ構成までやっているすごい人。
 ミステリー作品といえば群像劇だけど、本作における群像劇の主役は「犯人と被害者の因縁」ではなく「石川啄木金田一耕助」だったりする。決して「事件に居合わせた物好き」じゃないところがミソ。「歴史上の人物はみな聖人なんかじゃなく、普通の人間なんやで」というメッセージかな。ちなみに原作がミステリー小説ということもあって、1話2話では切のいい終わり方をしていない。ちゃんと4話くらいまで観ることを前提としたストーリー構成になっている。
 あと、本作は文豪というフリー素材を扱った作品郡の中でもかなり素材の味を生かしている方の作品。例えば2話の石川啄木を簡単に説明すると「いやー君から借りたお金でなんとか宿から追い出されずに済んだよ!お礼に、余ったお金でソープ行こうぜ!どーせお前ソープ行ったこと無いんだろ?いい店知ってるからさ!」みたいなキャラに。また明治時代が舞台なので、登場人物がやたらタバコを吸ってる描写がぜんぜん自重する気なくて好き。ここ自重したら意味ないもんね。中々ここまでリアル寄りの雰囲気を描く作品って珍しい。明治~大正時代の日本ってやたら美化されがちだし。
 なんかこう、独特な色彩なんだけどどこか懐かしくて、不思議な感じ。色彩設計を担当している辻田邦夫の手掛けた作品は『金田一少年の事件簿』『おジャ魔女どれみ』『WUG』『残響のテロル』『アニメガタリズ』『はねバド!』『メルクストーリア』等多岐にわたる。確かに色彩の感じが金田一少年の事件簿に似てるかも。
 そして音楽が素晴らしい。担当したのはMONACA。『ひとりぼっちの〇〇生活』みたいにコミカルで、『BEASTERS』のように叙情的。特に、登場人物の感情の機微とシンクロしてるシーンのメロディが凄く良い。フィルムスコアリングかな?
 あとNOW ON AIRによるEDが独特。EDのイントロが流れるタイミングも凝ってるし、アニソンらしからぬAメロも印象的。カッコイイよね。

アルゴナビス from BanG Dream!

 BanG Dream! SideM(語呂が良い)
 ブシロの代表的作品群『BanG Dream!』の派生作品。世界線の異なる物語とのこと。
 監督はブシロのIP『ミルキィホームズ』でおなじみ錦織博。ストーリー原案はシリーズを通して中村航が引き続き担当し、シリーズ構成は綾奈ゆにこではなく毛利亘宏。同氏は舞台や特撮作品の脚本がメインの人らしい。実質青春ドラマ。インタビュー記事読んだけどやっぱり勝手が違うもんなんだね。
natalie.mu
 序盤はバンドリらしく王道の展開で、函館の大学生バンドのお話。上京するのかな。登場人物はJKではなく大学生だけど、めっちゃ青春してるやん!序盤から「俺たち有名になってやるぜ!」感全開で好き。
 3DCGのライブシーンいいよね。実はモーションアクターを中の人がやってたりする。ガチのファンはライブで「あ!今の動きは○話のライブパートの動きだ!」ってなるのかな?
 バンドリシリーズということで、本作の中の人は「楽器に触れたことのある声優」というより「アマチュアミュージシャンやってました」みたいな人が集まっており、既に何度か開催されているライブがもう普通にライブハウスのライブなんだよね。みんなの推しバンド教えて?そして本編を抜きにしてもめちゃくちゃ曲が良い。楽曲プロデュースをしているのはあのUNISON SQUARE GARDEN。そりゃいい曲だわ。
www.youtube.com
 バンドリ1~3期で劇伴を担当していたElements Gardenに代わり、本作の劇伴は高橋諒。最近だと『警視庁 特務部 特殊凶悪犯対策室 第七課 -トクナナ-』の劇伴とか?音楽がずーーーーっとエモい。てっきりバンドサウンドが中心だと思ってたんだけど、意外とオケ中心の劇伴。

サクラ大戦 the Animation

 原作は1996年に発売されたセガのゲーム。アニメとしては2000年に放送されたのが最初なんだって。
 制作はサンジゲン。『蒼き鋼のアルペジオ』など3DCGアニメーション専門の会社。最近は特に『バンドリ』シリーズを担当していることでおなじみ。というわけで本作も3DCGアニメ。
 監督は『ソードアート・オンライン アリシゼーション』3期以降の監督を務めている小野学で、シリーズ構成は浦畑達彦が共同でクレジットされている。二人が一緒に仕事するのは『Aチャンネル』『境界線上のホライゾン』『咲』以来かな。
 彼は藍染惣右介じゃないよ!本作のキャラクター原案を担当したのはBLEACH原作者・久保帯人。またアニメ版BLEACHのキャラクターデザインを務めていた工藤昌史が本作にも参加しており、それはもうBLEACHみたいなキャラに。「かっこいい女性」というコンセプトに非常にマッチしてて好き。
 というわけで大正時代(っぽい世界)を逞しく生きる女性たちのお話。大まかなベクトルとしては『荒野のコトブキ飛行隊』に近いかも。スチームパンク風近代日本を彩る背景美術が美しい(背景:草薙)。やっぱり市街地を中心としたお話なんだろうか。だと嬉しいな。スチームパンク風といえば『炎炎ノ消防隊』も日本を舞台にした作品ではあるけど、あっちと比べて華やかな街並みが印象的。
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 主人公を演じるのはさくらさん改め佐倉綾音さん。新作アレンジOPを聴いて真っ先に思うのは「佐倉さんすげえ・・・」だった。キャラ声でその音域が出るっていうのがもう凄すぎ。
 色々アップデートされていく中、ずっと変わらないサクラ大戦らしさの一つに「田中公平御大による音楽」があるんだけど、これだけでもうお腹いっぱいになる。特に出撃シーン。音楽だけで完全勝利した気分になるよね。そんな御大によるEDがもう何もかも強い。

白猫プロジェクト

 コロプラのソシャゲを原作とするメディアミックス作品
 制作は『ぱすメモ』『超人高校生たちは余裕で生き抜くようです』『私、能力は平均値でって言ったよね!』でおなじみproject No.9
 初めから怒涛の展開。正直この圧縮の仕方は好き。1話の前半で2話分くらい進む。監督の神保昌登は基本的に脚本も引き受ける人なので、彼がうまーくやってるのかな。禅問答で無理やり主人公の意思を引き出すっていうくだりは一度小説で読んでみたいかも。
 ダブル主人公の構成になってて、立場的に『エガオノダイカ』みたいに敵対組織の頭取同士みたいな感じ。悲劇の綱引きになるのかな?
 ほっちゃーん! ほ、ほーっ、ホアアーッ!! ホアーッ!! やっぱり、CV.堀江由衣のヒロインってすっごくいいね!対となる男主人公を演じるのは梶裕貴。未熟さ全開の序盤から、一気に紳士になる感じが好き。

八男って、それはないでしょう!

 ド田舎の 貧乏貴族の 八男て(585)
 「小説家になろう」にて連載された、Y.Aによる小説が原作。制作はシンエイ動画。制作協力のSynergySPはビーダマンとかベイブレードとかピカちんキット等子供向けアニメを制作している会社で、現在はシンエイ動画の子会社。子供向けのなろう作品かな?
 所謂異世界転生モノの醍醐味として「こっちの世界で得た知識が、思いの外異世界でも通用してて草」っていう楽しみ方があるけれど、その文脈で本作を語るなら「サラリーマン時代に培った処世術のおかげで、貧乏貴族の八男という弱い立場ながらうまく自分なりのライフスタイルを見つけようとする主人公ほんま苦労人やな」みたいな感じ。海外に転勤したサラリーマンの苦労話みたいなアニメ。メインキャストの一人、西明日香が特番で「大人同士の確執を描くドロッドロのTVドラマみたいな楽しみ方もできる」っていう斜め上の宣伝をしてたのが印象的だった。
 舞台としては架空のファンタジー世界なんだけど、貴族文化のモデルは中世ヨーロッパかな。妙に生々しい話が多く、1~2話は「貧乏貴族の継承権を巡る兄貴と末っ子(幼児)が争いに発展しないよう、いい感じに身の振り方を考える」という話。なので「アニメで学ぶ、中世ヨーロッパの貴族文化」みたいなノリだと思って楽しもう。ガッツリ監修の入っている『アルテ』と比べるとこっちはあくまでファンタジー世界だから、肩の力を抜いて観られるのが楽。
 あと、音楽に注目して観てほしい。本作の劇伴を担当しているのは関美奈子と、カテリーナ古楽合奏団。作中で劇伴の雰囲気がガラッと変わる瞬間があり、ここであまり聴き馴染みのない音色が流れてくる。これが凄く良いんだよね。
 余談だけど1話冒頭に登場するお城は架空の城ではなく、実際にあるお城がモデルっぽいなって思った。フランスのロワール=エ=シェール県に現存する古城・シャンボール城ヴァロワ朝第9代のフランス王・フランソワ1世が余暇のために訪れる目的で建てられたフレンチ・ルネサンス様式の城は、その土地柄から冬の城内がくっそ寒く、なんと300個以上の暖炉が備えてある(画像を検索してもらうと分かるけど、屋根が凄いことになっている。この尖塔はだいたい暖炉の煙突)。でも屋根の形はシャンボール城っぽくなくて(尖塔から伸びる槍みたいなやつはゴシック建築の特徴)、強いていうとアンドル=エ=ロワール県に現存する古城・シュノンソー城(後期ゴシック様式と初期ルネサンス様式の混ざった建築様式)っぽいかも。2つの城は距離的に結構近いので観光の際はぜひ行ってみてね。実は昔マイクラで建てたことがあって、結構思い入れのあるお城なんだよね。
 そして、なぜかOPEDが非常に強い。特にジャケ写。音楽の強さに合わせてOPアニメーションもゴリゴリのバトルモノっぽく仕上げてきてるけど、OPほど本編は世紀末じゃないよ。あ、聖飢魔IIじゃないよ。
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アサティール 未来の昔ばなし

 昔々あるところに。日本昔ばなしならぬサウジ昔ばなし。千夜一夜物語かな。
 サウジアラビアの制作会社・マンガ プロダクションズと東映アニメーションが共同で制作したオリジナルアニメ。日本での放送に先駆けてサウジアラビアでは1月から放送されている。
 テーマはアラビア地方の民話。異文化に触れるアニメとしては『アルテ』と同じカテゴリになるのかな。シナリオもサウジの人が書いているので、「日本語吹き替え版海外アニメ」と言って差し支えない。
 アニメーションとしては、端的に言って不思議。「ああ、あのシーンはあのアニメの影響かな」とか「ああ、あの車のデザインはあの作品リスペクトかな」とか「ああ、あのキャラの顔立ちはあの人の作品っぽいな」に溢れている。おばあちゃん(語り部)のCVが野沢雅子なのは「ああ、なるほどね」って思った。日本のアニメが好きな人達が作ったアニメと言えば良いだろうか。制作の過程にすごく興味が湧いてくる。
 地味に凄いのが、モブ含めちゃんと口パクとセリフの尺が合ってる所。もともとはアラビア語で放送されていると思うんだけど(未確認)、日本語でも尺感がバッチリって凄いよね。
 お父さんがソーラープラント(☓ソープランド)の会社っていうところがエネルギー輸出国サウジっぽい設定。ちなみにサウジアラビア等の砂漠地帯では大規模な太陽光発電施設がたくさん稼働してて、中でも「鏡をたくさん並べ、太陽光を一箇所に集めて熱を発生させ、それで湯沸かし器方式の発電をするプラント」(太陽熱発電)というのがすごくSFチックな見た目でカッコイイのでググってみてね。作中の鏡みたいな材質のヤシの木は多分これが元ネタだと思う。

ハクション大魔王2020

 読売テレビタツノコプロのリメイクシリーズ
 プロデューサーは『夜ノヤッターマン』『タイムボカン24』等タツノコプロのリメイク作品でおなじみ永井幸治。監督は『恋愛暴君』『ぼくのとなりに暗黒破壊神がいます。』の濁川 敦。シリーズ構成は『RobiHachi』の金杉弘子で、今期『ミュークルドリーミー』のシリーズ構成も担当している。ははーん、さてはギャグアニメだな(名推理)。
 キャラクターデザインについて。キャラ原案はタツノコプロ初代社長、吉田竜夫の娘さんこと吉田すずかがクレジットされており、そのデザインは旧作と全然変わってない印象を受ける。同氏はアクビちゃんを主人公とするスピンオフ作品でもキャラデザを担当しているので、その続きを観てる感じ。アクビちゃんがかわいい。
 CVについては色々刷新されてて、前作の主人公は加藤みどりから古川登志夫へ。ハクション大魔王大平透から山寺宏一へ。ジーニーじゃねえか!そしてアクビちゃんは貴家堂子から諸星すみれへ。前作の「それからどしたの」って愛川欽也さんだったのね(リメイク版はチョーが担当)。クレジット見ると分かるけど、全体的にキャストが豪華で草。
 本作の主人公は、初代アニメの主人公・与田山カンイチのお孫さん。50年の年月が経ち、いよいよ地球で修行することになったアクビちゃん達と久しぶりに再開、できるのかな。
 すごく世相を反映してるなーって思うのが、「何でも願いを叶えてあげる!」って言われた主人公が「別に…」って塩対応するくだり。1作目の放送当時と主人公像がどう違うんだろう、という視点が「お前のじいちゃんはこうだった」という大魔王の語り口で描かれるのはアリよりのアリ。初めて孫に会ってテンション上がってるおじいちゃんと、ただ困惑してる孫みたい。本をプレゼントしたら「電子書籍あるからいらなーい」って言われてショック受けるシーンすこ。主人公のめっちゃドライな感じと、アクビちゃん&大魔王の喜怒哀楽が激しい感じの対比が特に印象的。というか主人公お前何歳だよ。
 全体的にギャグの緩急があって心地よい。濁川 敦監督の作品ってもっとハイテンポのギャグっていう印象なのでちょっと意外。ここらへんは金杉弘子脚本っぽいノリを感じる。

最後に

 新作全部1話視聴はおすすめしない。初めのうちこそ新作を観れば観るほど楽しみが増えた一方で、数ヶ月に渡って何十作品も追いかけるのはスケジュール管理が難しいため「本当に観たいアニメを観忘れてしまう」という事態にとても悩まされている。結果としてQOLがかなり低下しやすくなったので、アニメの視聴はほどほどにしよう。
 そして、製作者様へ感謝をば。今期もまたとても面白い作品を作っていただきありがとうございます。コロナウイルス感染症の影響で、大きな曲がり角に突き当たっている状況を憂慮しているのは私も同じです。結局の所いち視聴者にできるのは「アニメを見ること」「面白い、って思ったら「面白い」って発信すること」「お金を払うこと」くらいなので、今後もできるだけ自分なりに行動しよう思っています。特に私にとってエンターテイメントは血肉の一部であり、無いと死んじゃう類の物なので。