2020年夏アニメ1話ほぼ全部観たので気楽な感想書くよ

 コロナ禍の影響でアニメ作品関連のイベントや生放送の多くが延期ないし中止を食らい続けている昨今、「〇〇って面白いよね!」を共有する場が少なくて寂しい思いをしていたので、自ら発信することにした。
 「うっせー!自分はこの作品が好きなんだァーッ!」という精神から最近は一人黙々とアニメを観ることのほうが多いのだけれど、一方で「もしかして、このアニメを好きなのは世界で自分一人だけなんじゃ・・・?」という不安に耐えられるほどメンタルが強くない自分のような人に、届けこの想い。

配信情報まとめ

 私はTVでアニメを観ない(BS見れないし、TOKYOMXもAT-Xも受信できない)ので、配信情報はこれ以外の手段について書いている。
 なお、独占配信系タイトルは放送開始時点でのものであり、後に他の配信サイトでも配信が開始される場合がある。契約の参考になれば。

独占タイトル一覧

ネトフリ独占配信

GREAT PRETENDER
日本沈没2020
バキ 大擂台賽編

FOD独占配信

ノー・ガンズ・ライフ

感想

デカダンス

 シドニアの騎士ならぬ「シドニアの騎士シミュレーター」。オリジナルアニメ。ちなみにデカダンス(décadence)は「退廃的なこと」を意味するフランス語。

特に文化史上で、19世紀末に既成のキリスト教的価値観に懐疑的で、芸術至上主義的な立場の一派に対して使われる。フランスのボードレールランボーヴェルレーヌ、イギリスのワイルドらを指す(デカダン派を参照)。
(Wikipediaより)

 制作はNUT。『幼女戦記』で初の元請けを務めたスタジオで、TVシリーズの元請けは本作が2作目。早速オリジナルアニメとは恐れ入った。どんだけ幼女戦記売れたんだろう。
 監督・シリーズ構成は『モブサイコ100』のタッグである立川 譲、瀬古浩司。というわけで、本作はモブサイコもびっくりのゴリゴリ系バトルアニメ。いわゆる「いくら瓦礫を描いても描いても描き終わらない」タイプの作品。
 キャラデザについて、メインのキャラクターコンセプトデザインを『LISTENERS』のpomodorosaが担当。他にもサイボーグデザイン、デカダンスデザイン、ガドルデザイン、バトルコンセプトデザインと気合の入った構成になっており、色々な要素を持つアニメに仕上がっている。
 ストーリーとしてはざっくりダブル主人公の構成。1話は女主人公サイドの視点で描かれ、人類を脅かす脅威から身を守るため築いた移動要塞の日常アニメ。「そこに暮らしている人々の生活に着目した描き方」という意味では『甲鉄城のカバネリ』よりも『シドニアの騎士』とか『空挺ドラゴンズ』っぽい。特に1話の「外装の掃除をする描写」とか「やっつけた敵を解体してお肉に加工するシーン」とか、SF描写として結構アガるよね。
 でもストーリーとしての本題は「モラトリアムからの脱出」で、それが示されるのは2話。同じ場所にいながら異なる状況に身を置く二人が、同じ「モラトリアムからの脱出」という目的で手を組むって流れがエモい。どういう結末になると、二人は救われるんだろうね。
 レオさん!?男主人公の声を務めるのは小西克幸。なので、懸命に頑張る主人公を見てるとついアルテを思い出さずにはいられない。
 それにしても主人公を演じる楠木ともりが非常にのびのびと演技していて、コッチまで笑ってしまう。演技プランの指導について「ほぼ素のままで、という指導だったので、まったく演技してないかも」と自身のラジオで語っており、それこそ『宝石の国』のフォスフォフィライト並にすごいことになっている(ちなみにオーディションは2018年後期らしい)。「つら。」めっちゃ良くない?そして、その表情豊かな演技にキャラの表情がちゃんと伴っているのが非常に素晴らしい。全体的に「止め絵の美しさ」よりも「アニメーションとしての豊かさ」に重きをおいた作風に。
 作画でいうと、デカダンス(でかいロボ)の描写が非常に素晴らしい。「大きい敵を倒す」というのはある意味プロセスの芸術だけれど、1話ラストで敵をワンパンするくだりはSF設定が非常によく練られていて、何度見ても飽きない。どう考えてもその設定いらんだろ、という部分がてんこ盛り。設定画(コンセプトデザイン)と思しきアイキャッチもすごく綺麗で、画集が出るなら買おうと思っている。
 雰囲気でいうと、劇伴は『モンスターハンター』みたいな、バグパイプやパーカッションが中心となった民族音楽風でまとまっているのが印象的で、「SF世界的」というより「生活感」がより強調されている。そして戦闘シーンで流れる金管楽器が死ぬほどカッコイイ。
 背景美術でいうと、遠景の美しさがほんとすき。『幼女戦記』にも通じる空の、特に雲の描き方がとても綺麗だよね。流れる雲の描写がほんと丁寧。生活圏が空中だから常に雲が目下に広がってはいるけれど、『空挺ドラゴンズ』ほど上層を飛行してるわけではないので、つねに地平線が見える、という絶妙な背景が特徴的。

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©DECA-DENCE PROJECT

炎炎ノ消防隊 弐ノ章

 2期。監督は八瀬祐樹から南川竜馬へ。南川竜馬といえば先のアニメ『波よ聞いてくれ』で初監督を務めたことが印象に残っている。本作もまた監督自身がシリーズ構成を担当しており、1話の構成は特に「1話冒頭から視聴者に一発かましてやるぜ」感が波よ聞いてくれと似ている。これが南川監督らしさ、ということなのかな。ちなみに1話の戦闘シーンは1期前期OPのオマージュ。
 それにしてもOPがめちゃくちゃすごいので必見。絵コンテをJOJOシリーズでおなじみ津田尚克が担当しており、シームレスに大勢のキャラクターを紹介していくアクションシーンはJOJOのOPっぽい。OPにロックナンバーを採用するのも炎炎ノ消防隊らしさだよね。
1期→主人公の所属する第八発足までのお話
2期→他の隊との関係を深めていくお話みたいな感じなので、登場人物がどんどん増えていくんだけど、OPはいい感じにまとめてる。
 監督以外も入れ替わりはあるけど、キーアニメーターは引き続き三輪和宏が担当しており、相変わらず炎の作画熱量がヤバい。特に同氏が筆頭原画マンとしてクレジットされている3話カロン戦は短いシーンだけどすごい。総じて「炎のアニメーション」にこだわるアニメ。



やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。

AmazonPrimeVideo独占配信

 3期。2期が放送されたのは2015年だけど、「2クールかけていい感じに完結したんだし、3期いらなくない?」どころの終わり方ではなく、「さあ、いよいよ物語の本筋が始まる」という感じのラストだった。そこから5年もお預けを食らっていたリアタイ勢としてはめちゃくちゃ歓喜案件だったりするのだ。
 スタッフは1期→2期のタイミングで制作会社ふくめ変更があったが、3期は2期のスタッフを中心に続投している。ちなみに美術監督を1期の池田繁美アトリエムサ)が担当しており、かなりコントラストの強い、写実的な雰囲気に。
 可愛いヒロインx「ラブコメ」という表題xライトノベルという額縁を見て「ははーん、さてはかわいいヒロインが出てくるラブコメ系のラノベだな?」って思う人も多いけど、ぶっちゃけそれはあくまでフレーバー。最近で言えば『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』と同等のラブコメ要素を持つ作品。
 この作品のすごいところは、「ひとまとまりのエピソードを、3クールかけてめちゃくちゃ丁寧に描いていく物語」というところ。『イエスタデイをうたって』のリクオもびっくりするくらいモラトリアムの中で苦悩する少年少女たちのお話。
 心情描写もすごく印象的で、「登場人物があえて言及を避ける姿を描くことで、逆に強調される心の機微」みたいな比喩表現を中心にストーリーの核心が描かれており、作中のキャラがはっきりとしたことを言わずに話が終わるので、現国の授業を受けた後みたいな読後感あふれる作品に仕上がっている。これライトノベルじゃないよね。
 そんな「薄々気づいてはいるんだけれど、この気持に名前を与えてしまったらそれをきっかけにお互いの関係性が変化してしまうのが怖いので、結論を出すことペンディングし続けてしまい、結果的に望まない関係性が生まれてしまう」という青春群像劇を見ていると『サクラダリセット』を思い出す。ハルキが人間になる話と似たものを感じた。

ノー・ガンズ・ライフ(第2期)

FOD独占配信

 2期。制作スタッフは続投。OPのテイストが一気に変わっててめっちゃカッコイイ。ストーリー的には1期で一度終わっている、わけではなくがっつり続き物なので、観るなら1期から。カテゴリとしては『カウボーイビバップ』みたいなSFハードボイルドアクション。最近ハードボイルド系の新作あんまり無いよね。『コップクラフト』くらい?

GREAT PRETENDER

Netflix独占配信

 コンフィデンスマンUS。リーガルハイ、コンフィデンスマンJPに次ぐアコギな商売コメディ。こういう信用詐欺師の話をコンゲーム(con game)モノというらしい。
 フジテレビの+Ultra枠で放送されるオリジナルアニメ。脚本は同じくフジのTVドラマ『リーガル・ハイ』『コンフィデンスマンJP』の脚本家である古沢良太。ちなみに執筆したのはコンフィデンスマンより本作が先らしい。
 制作はみんな大好きWIT STUDIO。フジテレビの枠でアニメを制作するのは『恋は雨上がりのように』以来かな。監督は同スタジオの作品『鬼灯の冷徹』で監督を務めた鏑木ひろ。キャラデザはまさかの貞本義行。『ふしぎの海のナディア』『新世紀エヴァンゲリオン』を始め、『時をかける少女』『サマーウォーズ』etc。「普段あまりアニメを見ない人にも届けたい」というフジテレビPの意図を感じさせる人選だよね。愛嬌がありつつも、全体的にスッキリした顔立ちほんとすき。
 表情も豊かで、特に優しい笑みと不敵な笑みの描き分けが好き。全体的に口が大きいキャラデザの大きな特徴になっている。おっちゃんもおばちゃんもおじいちゃんもお兄さんもカッコイイよね。
 ストーリーとしては、本作もまた詐欺師の話。概ね各話でちゃんとオチをつけてるので、1話1話の視聴後感が良い。怒涛のテンポ感は『リーガルハイ』なんかにも通じる魅力だけど、絵のはっちゃけ具合も相まってより加速している気がする。やはり堺雅人はアニメキャラ並の表情筋を持つ人間らしい。
 特に1話は同じ穴のムジナがたくさん出てくるため、騙し、騙され系ストーリーの多重的な展開が面白く、非常にエンターテイメントしてる。「詐欺に騙されるアホ」がいっぱい出てくるなー、って最初思うじゃん?
 そして、特に目を引くのがビビットな背景の設計。カートゥーンっぽく仕上がってて、日本のアニメじゃないみたい。最近だと『かくしごと』ED的な感じ。写真を加工してるのかな、っていうくらい構図が完璧なので、作品全体のクオリティがすごく高い。背景を担当しているのはWIT STUDIO作品ではすっかりおなじみBamboo。こんなのもいけるのか。色彩設計に『ローリングガールズ』『ひそねとまそたん』の小針裕子が参加しており、たしかにちょっとロリガっぽい気もする。
 あと音楽がめっちゃ好き。音楽は『ヴィンランド・サガ』に引き続き、やまだ豊ヴィンランド・サガの壮大なオケとは打って変わって、ブラスバンド中心の小気味良いテンポ感がすごくリーガルハイっぽい。

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©WIT STUDIO/Great Pretenders

彼女、お借りします

 イドとエゴと、デリヘル嬢。いい最終回だった。
 『週刊少年マガジン』にて連載中の、宮島礼吏による漫画が原作。同氏はAKB48のコミカライズ作品とか22/7のシリーズ構成とか、秋元康案件での活動が多い人。
 ラブコメということで、制作はA-1・・・ではなく、トムス・エンタテインメント。監督は『僕らはみんな河合荘』『ナナマルサンバツ』で副監督を務めた古賀一臣。TVシリーズの監督は雨色ココア(2期)以来かな?
 ストーリーとしては「いち風俗勤務の女性から見た、様々な人間模様」みたいなやつではなく「偽物の恋と本物の愛」的なラブコメ作品。ニセコイかな。
 少年誌のラブコメ作品は割と「主人公は清廉潔白な聖人」みたいな子が多いけれど(最近だと五等分の花嫁とか、ぼく勉とか、かぐや様とか)、本作の主人公はもっと悶々としている。家にいるシーンでたいていオナニーしてるし、そこらへんに丸まったティッシュ落ちてるし。一人暮らしの大学生ってこんな感じだよね。
 また、物語の動く理由がそんな主人公の自尊心であったり、虚栄心であったり、概ね後ろ向きな理由というのがリアル。三島由紀夫の『金閣寺』で、主人公が風俗店に初めて入ったシーンを思い出した。
 キービジュアルを見ての通り複数のヒロインが今後登場するのだけれど、ヒロイン同士のギスギスシーンが多く、特に2話のねっとりとした悪意の描き方はすごかった。ここらへんは原作者の連載作品『AKB49〜恋愛禁止条例〜』で培った技術なのかな。すごい。
 それにしてもヒロインがずっとかわいい。「”恋に落ちた瞬間”っぽい顔!!」が常に続いているような熱量を感じる。でも人間臭さみたいな部分はちゃんと出していく感じとか、「仕事モードと、そうじゃないモード」というギミックが良い感じにハマってる。
 そしてOPがすごく良い。ヒロインの表情であったり動きの作画熱量が非常に高く、一瞬しか写らない自撮り風カットとかめっちゃかわいい。曲はthe peggies。『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』『さらざんまい』に続き、ザ・思春期な歌詞すこ。

Re:ゼロから始める異世界生活 第2期

 2期。渡邉政治監督以下主要スタッフは続投。制作スタジオも引き続きWHITE FOX。1期の放送からかれこれ4年。この間にもちょくちょく映像化があったのでそこらへんを整理すると

1期・・・2クールで原作1~3部相当。無事ハッピーエンドを迎えた。
OVA・・・主人公カップルのボーナスステージ。やさいせいかつ。
劇場版・・・前日譚。ヒロインであるエミリアの過去を描く。きびしいせかい。
新編集版・・・「1期がハッピーエンドで終わったと言ったな。アレは嘘だ。」視聴者「▂▅▇█▓▒░('ω')░▒▓█▇▅▂うわあああああああ」

 というわけで、本作は新編集版の続きに相当する。本作ばかりは1期、できれば新編集版を観てから観てほしい。というのも、2期は原作の4部以降がメインなんだけど、26話(2期1話)は4部冒頭からではなく3部ラストから始まる構成。「最初からクライマックス感」を味わうためにも、ぜひ新編集版を見てね!

 本作の特徴としては「とにかく主人公に闇落ちしてほしい世界vs主人公」と言う構図。主人公に厳しい世界に加え、主人公があまりメンタル強者ではないため、事あるごとに主人公が負の感情に支配されがち。毅然とした生き方のキャラクターが多いのもその対比を強調していて(どのキャラもかっこいいよね)、「人間の醜い部分を顕にする主人公」を見て悲しくなる、というのが本作の魅力だと思う。
 そんな陰鬱とした作風ゆえ、1期から続く公式ラジオ番組は対照的にやたらハイテンション。「せめてラジオだけでもはっちゃけないとやってらんねーよ!」みたいな感じで演者も視聴者も大いに盛り上がっているので、ストレス耐性の低い人はラジオを一緒に楽しもう。

Re:ゼロから始める異世界ラジオ生活 | インターネットラジオステーション<音泉>

モンスター娘のお医者さん

 医療行為なら仕方ないな!
 ダッシュエックス文庫より刊行されている、折口良乃ライトノベルが原作。
 監督はラブコメ作品でおなじみ岩崎良明。同氏の監督作は『ぼくたちは勉強ができない』以来。ちなみに本作の制作元請けであるアルボアニメーションは、ぼく勉でstシルバーと共同制作としてクレジットされており、ぼく勉からの流れで本作も岩崎監督が担当したのかな、という感じ。シリーズ構成は白根秀樹で、監督とのタッグはJ.C.STAFF作品『ラストピリオド -終わりなき螺旋の物語-』以来。ラスピリはいいぞ。
 無理やり分類するなら『異種族レビュアーズ』と同じカテゴリに位置する作品。あっちが「異世界グルメの分派」であるように、本作もまた「(お医者さんとしての立場から)いろんな種族の身体的特徴を描いていく」というコンセプトの作品。そういう意味では『亜人ちゃんは語りたい』っぽいかも。ちなみに主人公のムッツリ具合は
レビュアーズ>>モンスター娘≧亜人ちゃんは語りたい>>本作 と言う具合?やたら主人公がスンってしてる。さすが医療行為。
 ラブコメ要素としては主人公の助手であるラミアさんの恋路が序盤から描かれる。その嫉妬深さたるや、『モンスター娘のいる日常』のあの子もかくや、といった具合なんだけど、なんやかんやかわいい。(訂正。ラミア=SBJKみたいな書き方をしているけれど、ラミアの中には嫉妬深い子もいるよ、というのが正しいのであって、一部を切り取って全体を論ずるのは良くないよね。ラミアの皆さんすみません)
 ちなみに『モンスター娘の日常』と無関係な作品でもなく、実は本作の原作者によるモン娘のノベライズが決まっていたりする。8/29発売だよ!
 異種族系女子の描き方について、身体的な特徴は現実に結構寄せてて、1話のケンタウロスの蹄をメンテするくだりでいうと、爪とぎの際に足を抱える動きとか、爪とぎ用の工具もリアル準拠で良い。思わず馬の削蹄作業の動画検索しちゃったわ。
 この話に限らず、生物学的アプローチで異種族の特徴を描いていく作品なので、視聴者的にも「そういやケンタウロスの心臓ってどこらへんにあるんだろう」みたいな視点で観てるとすごく楽しい。実際ニコニコのコメントとか見ててもそういう視点の人が多い気がする。
 ちなみに2話はマーメイドの話。肺呼吸とエラ呼吸の仕組みどうなってるん?みたいな感じの話で面白い。

https://natalie.mu/comic/pp/monisha02natalie.mu

THE GOD OF HIGH SCHOOL

 クランチロールのかんがえたさいきょうの天下一武道会
 『NAVER WEBTOON』という韓国のWeb漫画配信プラットホームにて連載中の、Yongje Parkによる漫画が原作。ちなみに日本でもLINEマンガで和訳版が配信中。
 制作はみんな大好きMAPPA。本作は製作(お金を出す方)をあの海外配信サービス大手であるCrunchyrollが担当しており、「海外向けに日本のアニメを作ろう」という旗振り役は必ずしもNetflixだけとは限らないらしい。まあ本作は原作から日本じゃないけどね。
 監督は朴 性厚、シリーズ構成は𠮷村清子(「𠮷」は「土」の下に「口」)。このタッグは『牙狼〈GARO〉-VANISHING LINE-』以来。1話でカーチェイスならぬチャリンカーチェイスを繰り広げてるけど、この圧倒的な既視感である。
 見ていて強烈な印象を受けるのは、テンポ感重視のギャグ演出とアニメの殆どを占める格闘シーン。特に1話は怒涛の展開に。アクション作画めっちゃすげえ。
 武闘派作品ということで、日本の作品であれば「〇〇という格闘技を描く作品」みたいに武器の指定とかルールの統一が多いけど、本作はドッグファイト大歓迎なやつなので出場者の殆どを「なんかよくわからん武術使い」が占めている。主人公すらよくわからん武術だし(ちなみに公式プロフィールは「リニューアルテコンドー使い」)。素手vs金属バットとかなかなかに個性的なマッチングだよね。アクションシーンもそれぞれの個性があって、かつ派手。普通に空飛ぶし、衝撃波でモブを吹っ飛ばすし。よく考えると少林サッカーでも「2回くらい限界突破したヤムチャ」みたいな敵いたし、あのレベルがスタンダードな格闘技なのかもしれない。
 主人公といえば、声を担当するのは橘 龍丸。先のアニメ『歌舞伎町シャーロック』の小林寅太郎役で初ネームドキャラクターを担当し、本作が初主人公となる。もともと演劇畑の出身で、こっち方面での活動はまだまだこれからなのでみんなも応援してね。
 あと、特に異彩を放っているのがゴリゴリのクラブミュージックOP。原作が韓国ということでK-POPというチョイスなんだけど、めっちゃカッコイイ。ここまで強烈なOPを採用するアニメってなかなか見ないよね。なんかMVみたい。



魔王学院の不適合者~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~

 身分を隠さない暴れん坊将軍
 「小説家になろう」にて連載中の、秋氏によるライトノベルが原作で、制作はSILVER LINK.。同スタジオによる、なろう作品アニメ化はかなり多い。ここ2~3年に絞っても『異世界食堂』『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』『賢者の孫』『痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。』『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』があり、すっかり「なろう作品といえばSILVER LINK.」みたいな感じに。
 監督は『賢者の孫』の田村正文。総監督に大沼 心、助監督に湊 未来が参加しており、SILVER LINK.一丸となって作ってる感がある。
 転生→超強い→学園生活→一目置かれる→…というテンプレを踏襲しつつも、実はメタ的なストーリーになっていて、「魔王が転生したって自分で言ってるんだし、もうそいつが魔王でよくね?なんで学校に通わせなあかんの?」というのが本作のメインストーリー。転生x学園モノといえば『賢者の孫』もそうだけど、あっちと違い本作の「学校」は「誰かによって意図的に作られた謎のシステム」という意味を持っていて、そこらへんの謎解きが物語の縦軸に。
 主人公の「茶番は良いから、さっさと本題を話せザコ」というパワハラスタイルは、実は「一般人を装って、幅を利かせてる役人の内情を探り、勧善懲悪を行う偉い人」という暴れん坊将軍も納得の王道ストーリーではあるんだよね。「しがらみからの開放」で締められるお話は後味が良くてすこ。
 EDを歌うのはミーシャ役(青い方)の楠木ともり。彼女がアニメのEDを歌うのは『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』以来(→訂正。正しくは『アサシンズプライド』ED以来。ご指摘感謝です)。やっぱり歌めっちゃうまいな。声優歴3周年を迎えて活躍の場が広がっている同氏だが、特筆すべきはラジオパーソナリティとしての活躍。既に10本以上のラジオ番組でパーソナリティを経験しており、かつ現在も不定期更新を含め6本のラジオ番組を持っている。常にゲラゲラ笑いながらも落ち着いたトークのテンションと聴きとりやすい声、目上のゲストや放送作家からのパスに対し全く物怖じせず打ち返す瞬発力は率直にすごいと思った。特に今年の4月から文化放送で開始した『楠木ともり The Music Reverie』では、同氏の音楽に対する造詣の深さが垣間見えるのでお勧め。


楠木ともり The Music Reverie | 番組詳細

ド級編隊エグゼロス

 さいたまの日常を描くエロい特撮ヒーロー。「エグゼロス=H x EROS」を念頭に冒頭のタイトルコールを聞くと絶対笑ってしまう件。
 ジャンプスクエアにて連載中の、きただりょうま氏の漫画が原作。
 制作はproject No.9。こないだ放送していた同スタジオのアニメ『白猫プロジェクト』に引き続き、監督とシリーズ構成を神保昌登が担当している。めっちゃ忙しそう。
 かつて大切だった女の子を奪われた悲しみを背負う主人公が、正義のために怪人と戦う話。「怪人の攻撃によって「Hエネルギー」を奪われてしまう」という非常に恐ろしい設定を採用するあたり、すごくジャンプスクエアっぽい。
 先のアニメ『つぐもも』は「バトル:ギャグ:エロ=1:1:1」を忠実に守っている作品だったけど、本作は「特撮:エロ=1:3」といった具合で、もっとシチュエーションコメディぽい。特にOPの「戦隊モノのディティールにこだわってます」感。真面目な顔してやってるけど一周回ってギャグっていうノリが非常に好き。ちなみにOPは『ハイキュー!』シリーズや『Dr.STONE』のOPでおなじみBURNOUT SYNDROMES。「ド級編隊エグゼロス!」というタイトルコールに目を瞑ればめっちゃカッコイイ曲。
 ラジオパーソナリティとして活躍されているイメージが強かったので忘れてたけど、加隈亜衣の声めっちゃかわいいな!そんな同氏がパーソナリティを務めるラジオ番組は聞きやすくて面白いのでおすすめ。最近だと第2回(ゲスト:矢作紗友里)すっげー面白かった。
 劇伴は『ポプテピピック』『ギャルと恐竜』でおなじみ吟(BUSTED ROSE)。本作も電子音楽が中心で、ちょっと懐かしいラブコメっぽい。特にポプテピOP並にゴリゴリのチップチューンなEDがすごーく良かった。 
 ところで今期は「規制バージョン」「配信なので規制がゆるいバージョン」「AT-Xバージョン」みたいな作品が多かったりする。あれ!主人公の乳首規制されてないやん!

-NEWS- ド級編隊エグゼロス | インターネットラジオステーション<音泉>



Lapis Re:LiGHTs

 ゆるリトルウィッチアイドルアカデミアゆりフェスティバル。
 『ラブライブ! スクールアイドルフェスティバル』でおなじみKLabとKADOKAWAによるメディアミックスプロジェクト。制作は横浜アニメーションラボ。同スタジオが30分枠のアニメシリーズで元請けをするのは本作が初めてかな。監督は『最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが』『ゆるゆり』シリーズ(なちゅやちゅみ以降)監督の畑 博之。ちなみにシリーズ構成に『まよチキ!』原作者・あさのハジメが参加してたりする。でもあんまりギャグじゃないよ。
 ストーリーとしては、スクールアイドルとして一人前になるため日夜鍛錬に明け暮れる女の子のお話。「えぇ~!?廃部~!?」ならぬ「えぇ~!?退学~!?」のやつ。
 やっぱ百合作品じゃねえか!割と丁寧に百合のテンプレを踏襲している。夜景シーンの髪サラッとかすごく丁寧で気合が入ってて、「ああ、それでゆるゆりの監督が・・・」という感じ。
 そんな主人公を演じるのは安齋由香里。主役を演じるのは先のアニメ『RELEASE THE SPYCE』以来かな。なにかとゆるゆりの関係者と縁のある人である。
 アイドルコンテンツということで、メインのライブパートは2話ラストから。つまり2話までが前フリ。ライブパートにおける舞台演出の解釈について、本作では「魔法使い」という設定なので、「自分で舞台演出までセルフプロデュースしてますよ感」を大切にしているのかな。魔法と言いつつ、2話のライブはアップテンポの曲とレーザービーム演出で、世界観とのギャップも相まって良かった。曲はチームによってガラッと変わるのかな。
 キャラデザについて、特に目がきれい。丁寧に書き込まれてて、顔のアップの絵がすごーく華やか。キャラデザは池上たろう。何気に本作が初のキャラデザかな?渋のアカウント覗いたけどやっぱり目がキラキラしてる絵が強い人だった。渋の絵もそうだけど、少女漫画っぽい雰囲気があるよね。コミック百合姫Sで連載してそう。1話EDクレジットの表示順序が脚本→絵コンテ・演出→作監(池上たろう)→キャスト→…になっているのは、つまりすごく作品に貢献してるってことだよね。
 丁寧さでいうと、「主人公は所作が綺麗なので、多分いいとこの娘さんなんだろうな」っていう表現をするために、食事シーンで手元を写すシーンが何回かあるんだけど、この描写がすごく好き。やっぱりお姫様ともなると、食べ方ひとつで品性が溢れ出ちゃうんだろうなぁ。お腹ぐぅぐぅ鳴らしながらマンガ肉食べるお姫様とかおらんやろなぁ。
 背景もかなり凝ってて、陽光のエフェクトとか好き。世界観的には近代の欧州がモチーフになってるのかな。建物が全体的にゴシック様式モチーフ。あとみんな私服かわいい。
 あとモブが手書きなの地味にすごいよね。遠くまでちゃんと描いてるし、動かしてるし。制作の横浜アニメーションラボ、めっちゃ気合入ってるやん!

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©KLabGames・KADOKAWA/TEAM Lapis Re : LiGHTs



宇崎ちゃんは遊びたい!

 『からかい上手の高木さん』ほどじゃないけど、『上野さんは不器用』ほど下手でもない、からかい好きな宇崎ちゃん。遊びたいのは宇崎ちゃん。
 丈による漫画が原作。元々ツイッターに上げてたショート漫画がニコニコ静画Webコミック配信サイトの連載に繋がり、今に至る。
 制作はENGI。ENGIといえばKADOKAWA資本のアニメスタジオで、先のアニメ『旗揚!けものみち』が初の元請け作品(本作が2作目)。監督も、けものみちで監督を担当した三浦和也が引き続き担当している。シリーズ構成はコメディ作品でおなじみ、あおしまたかし。というわけでラブ<コメ。
 内容は主人公カップルの日常アニメ。彼女にうだつの上がらないカレシというわけでもなく、ガンガンツッコミを入れていくスタイル。むしろツッコミが強すぎて中の人の喉が死にそう。
高木さん→叩くと傷つきそう
上野さん→自重で壊れる
かぐや様→叩くと消される
宇崎ちゃん→打てば響く
 主人公も彼女もお互い気を遣い合う仲睦まじい関係なので、『かぐや様は告らせたい』に似た微笑ましさに包まれている。キャンパスライフ満喫してんなー。
 中の人でいうと、宇崎ちゃんを演じる大空直美のハマりっぷりがすごくて、『つぐもも』桐葉さん並に唯一無二なキャラに仕上がっている。声の端々から漏れ出る「語尾に(笑)がつく感じ。だけど悪意はない感じ」いいよね。

恋とプロデューサー〜EVOL×LOVE〜

 月刊「ムー」編集長がSPECホルダーと出会う。
 中国の会社が開発した恋愛シュミレーションゲームアプリが原作。制作はみんな大好きMAPPA。特に監督が『ゾンビランドサガ』の境宗久だったりする。シリーズ構成は『THE GOD OF HIGH SCHOOL』の𠮷村晴子(「よし」は弓へんに剪)。𠮷村がMAPPA作品にシリーズ構成として参加するのは『GRANBLUE FANTASY The Animation Season 2』以来。
 境遇としては先のアニメ『A3』みたいな感じで、会社の命運をかけて主人公がイケメンたちと東奔西走する話。
 特に印象的なのは、主人公が「社会的に対等な立場であろうと努力するお話」という点。イケメンがそれぞれ「じゃあこういう成果を出してくれたらおたくの会社を信用するよ」って提案してくるところとか、お仕事アニメかな?
 巻き込まれ型主人公のようで、むしろ自分から渦中に飛び込んでいくスタイルすき。SPECホルダーの謎をジャーナリストとして追いかける話なので、恋愛モノというより刑事モノっぽいシリアスな作風に。

うまよん

 「スバル。・・・トレーナー、って・・・誰のこと?」
 アプリのデイリー周回しながら観るショートアニメ。かつて人気を博したcygames配信のゲームアプリ「ウマ娘 プリティーダービー」が原作。
 制作はDMM.futureworks。最近だと『BanG Dream! ガルパ☆ピコ』を制作したスタジオで、そのガルパ☆ピコの監督である宮嶋星矢が本作の監督・キャラクターデザイン・総作画監督を担当している。実質ガルパ☆ピコ。
 ショート尺を駆け抜ける系ギャグアニメなんだけど、ほのかに香るウマ娘感を味わっていると、ふと「ああ、自分は結構ウマ娘ロスだったんだな」みたいなことを思う。アプリ再配信楽しみだね。
umamusume.jp

ジビエート

 日本のアニメでハリウッド映画。カタログスペック最強アニメ。サムライ!シノビ!カタナ!カリグラフィー!(公式の宣伝文句)
 2018年に起ち上げられた日本のクロスメディア企画。脚本家の青木良が原作・総指揮を務めており、アニメなど様々なコンテンツで展開される予定らしい。制作はランチ・BOXとスタジオエル。共に制作の下請けがメインの会社で、元請けは初めてかな。そしてプロデューサーとディレクターを青木氏が一人で担当するというストロングスタイル。いろんなインタビューで彼が語っている通り、既存のアニメ作品とは異なるアプローチを意識した制作スタイルになっているらしい。
 それにしてもカタログスペック。公式サイトでぜひ見てみてね。ちなみにこのアニメ、「未知のウイルスに感染した世界」を舞台にしていることから、キー局の地上波放送が消滅するという憂き目に遭っている。そこら辺の事情についても公式サイトで青木氏がメッセージを出してるので、「このアニメを通じて何を伝えたいのか」に興味のある人は読んでみてね。
gibiate.com

 ストーリーとしては結構シンプルで、
1.未知のウイルスで世界が滅びかける
2.難民キャンプに住む主人公たちはゾンビを退けながら起死回生の策を探している
3.そんなある日、道端で江戸時代から転移してきたサムライとシノビを拾う。
 うん、シンプル!
 ストーリーに限らず、難民キャンプにいるメンバーの感じがすごく「ハリウッド映画で見たメンツやな」っていう感じになっているので(そもそも国際色豊かだし)、「日本のアニメ」というより「海外の映画を日本のアニメーションで」というコンセプトなのがわかる。この「日本のアニメーションで」を端的に表すのが、このサムライとシノビなんだよね。「ハリウッド映画と日本のキャラがコラボする作品」という文脈で考えるとわかりやすいかも。
 本作のゾンビは3DCGの質感が強いのと、あんまり節々が可動しないためキモさが物足りないなーって思ったのだけれど、よく見るとデザインがめっちゃキモかった。小さい頃に生物の図鑑かなにかで見た「遺伝子操作により、本来触覚が生えるはずの場所から前足が生えているハエの電子顕微鏡写真」みたいなキモさに溢れていてすごく強烈。このモンスターデザインは漫画家の芹沢直樹。どんな漫画書いとんねん。特に公式サイトに載っている2D版モンスターの図録(アニメーション付き)がすげえキモいので、これはホント見てほしい。
 ポストアポカリプス作品ということで、廃墟を中心とした背景が印象的。現代の町並み(特に市街地)がそのまんま廃墟になってるっていいよね。
 余談だけど、先のアニメ『キャロル&チューズデイ』で海外のアーティストとたくさん交渉してたプロデューサー裏話で、「アニメでは楽曲をフルサイズでは流さずに、いい感じに編集して流します」っていう演出がなかなか理解されにくかった、みたいな話をしてたのが印象に残っている。あっちではフルサイズで流すほうがスタンダードなのだろうか。

ムヒョとロージーの魔法律相談事務所 第2期

 2期。1期はスカパー契約者しか見れない独占配信だったが、2期は各種配信サイトで視聴が可能。ちなみに1期も各種サイトで配信されている。
 イロモノ扱いされがちだけど、週刊少年ジャンプのマンガが原作らしい王道展開。ぎりぎり救いのない元人間を、容赦なく地獄に叩き落していくハートウォーミングストーリー。処刑後のなんとも言えない後味は先のアニメ『鬼滅の刃』に近いものを感じる。鬼滅も元人間の未練みたいなものとセットで描かれてるのが特徴的だよね。

放送再開組

 以下は、2020年4月から放送を開始したものの、放送延期の憂き目に遭っていた作品。前期のエントリでレビュー済みだったので、手前味噌だが再掲。どれも面白いよ!

放課後ていぼう日誌

 てーぼう!
 「月刊ヤングチャンピオン烈」にて連載中の、小坂泰之による漫画が原作。防波堤で魚を釣ったり捌いたりするゆるい部活の日常系作品。熊本県芦北町のご当地アニメ。
 制作はみんな大好き動画工房。先のアニメ『私、能力は平均値でって言ったよね!』のチーム太田ではなく、チーム太田の作品に副監督として参加していた大隈孝晴が初監督を務める。シリーズ構成は動画工房のきらら作品でおなじみ志茂文彦。テイストが日常系作品であることや、劇伴を『まちカドまぞく』の櫻井美希が担当していたりするのもあってきらら作品みが強い。
 キャスティングで言えば、めっちゃ驚いたのが黒岩先輩。中の人である篠原侑はまさかの『となりの吸血鬼さん』主人公・天野灯の中の人。マ? 
 釣りって結構スポーティな側面を持っているので、多くの作品で「アクションもの」という描かれ方をしてきたけれど、本作ではもう一つの側面である「スローライフ」にフォーカスしている。初めて釣り糸を垂らしてかかるのを待っている主人公が「私、何やってるんだろう?」と言っていたのが印象的で、「釣れるのを待っている時間」をたっぷりの尺感で描いている。この良さというのは多くの人が『ふらいんぐうぃっち』『のんのんびより』『ゆるキャンさんかっけー』で知っていると思うけれど、要はそういう作品。特にJKのアウトドア趣味ということで、ED映像なんか見てると「これ、ゆるキャンじゃね?」ってなってくる。
 釣り初心者(というか魚介類初心者)の視点で語られる「釣りとはどんなものかしら」が本作のいいところ。よく考えると、よほど魚を捌くのが好きな人でもなければナマの魚に実際に触れる機会って無いよね。肌感覚を中心に「魚」を丁寧に描いている。「きっも!」「臭い」「こんな小さい魚のどこに、あれだけの引く力があるの・・・」「ちっちゃい」「きらきらしてる」「臭い」「顎がにゅーんってなる」表現が拙いけど、それが良い。
 背景美術はスタジオ・イースター。最近よく見るよね。ちなみに先の動画工房アニメ『ダンベル何キロ持てる?』もスタジオ・イースターが背景美術を担当していたりするんだけど、本作は美術設定として東潤一がクレジットされており(スタジオ・イースターで一番すごい人)、メチャクチャ気合入れてることが分かる。
 気合が入っているのは釣具もそう。ガチ監修の入った釣具は実在のものをちゃんと再現しているだけでなく、例えばリールの巻く音は実在のもの(スタッフの私物って言ってた)を使って録音してたりするので一つ一つ音が違うらしい。スタッフ釣り大好きか!

 余談だが、主役の高尾奏音が自粛期間中、自身の兄貴とのED演奏動画(ピアノアレンジ:兄貴)を公開している。いや兄貴すげえな。

 あと1個だけ。本作の舞台である熊本県芦北町では先の豪雨災害の被災地域であり、現地民である原作者も被災した影響で本作の連載を休載している状態なのだけれど、先日芦北町が義援金の受付を開始したよ、というアナウンスをアニメ公式垢がつぶやいていたので、ここでも紹介。



富豪刑事 Balance:UNLIMITED

 アニメ版「フジテレビ系列で放送されている、なんか設定がぶっ飛んでる刑事ドラマ」
 原作は筒井康隆の小説。最初に発表されたのは1975年で、なんと45年前。ちなみにテレ朝で放送されたTVドラマは2005年。
 制作はA-1Picturesの高円寺スタジオことCloverWorksで、監督は『ソードアート・オンライン』シリーズの監督でおなじみ伊藤智彦。音響を岩浪美和チームが担当していて、この監督・音監の組み合わせは『HELLO WORLD』以来。
 音楽は菅野祐悟。同氏が劇伴を担当したノイタミナ枠の刑事ドラマといえば『PSYCHO-PASS』だけど、どっちかといえばTVドラマの劇伴を担当している人として呼ばれている感じがする。全体的に劇伴が華やかなんだよね。
 メインのキャスト二人は宮野真守と大貫勇輔。特に大貫勇輔は声優としての初仕事になる。突飛なキャスティングのようにも思えるけど、同氏がテレビドラマで活躍していることを踏まえればそんなに不思議でもない。本作のプロデュースの方向性を端的に物語っていると思う。
 OPはSixTONES。わ!刑事ドラマっぽい!先のアニメ『ランウェイで笑って』ではEDがジェジュンだったんだけど、こういう「アニメが好きな層、ではない層に向けたアプローチ」みたいな意図が垣間見えるOPEDは私には凄く新鮮に感じるので、もっと増えてほしいな。普通にカッコイイ。
 話としては、現代の東京・警視庁を舞台に日々仕事をする刑事さんのお話。所謂バディもの。「感情的な行動をする主人公と、冷静で上から目線の相方」とか「主人公がカーキのカジュアルなジャケットで、相方がバッチリ決まってる黒スーツ」とか「警察内で部署ごとの縦割り行政感を演出してくる」とか「当たりが優しい上司のおじさんが、面倒だけは起こさないでねって言いがち」とか、徹頭徹尾「フジテレビ系列で放送されている、なんか設定がぶっ飛んでる刑事ドラマ」に見られるようなテンプレを踏襲している。極めつけは「ゲストキャラになんか有名人が登場する」みたいなやつまできっちり抑えている。ちなみに1話のゲストは原作者・筒井康隆。なんだろうね、こういう「ゲストさんが登場するシーン」が放つ強烈な違和感。
 キャラデザに既視感を覚えている人はどれくらいいるだろうか。本作のメインキャラクターデザインを担当した佐々木啓悟は『青の祓魔師』『七つの大罪』シリーズでキャラデザ・総作監をしてる人なので、「男性キャラがめっちゃ青エク」「女性キャラがめっちゃ七つの大罪」みたいな、すごく不思議な感じ。黒スーツの君と事務の女の子の組み合わせが好き。
 絵的にもTVドラマライクな演出が多い。冒頭の「警視庁の空撮から始まるテレビドラマ第1話」とかよくあるよね。ほんと、TVドラマとしての完成度が非常に高い。
 一方1話、2話のカーチェイスはアニメならではっていう感じ。車のモーション班がめっちゃ楽しそうに車を爆走させている。リアルだとこんなに高価な車で街中を走れないもんね。足し算の演出によって神戸のぶっ飛び具合がすごいことに。

ミュークルドリーミー

 シリアスじゃない『まちカドまぞく』
 制作はJ.C.STAFF。『斉木楠雄のψ難』『まちカドまぞく』でおなじみ桜井弘明監督によるサンリオの新しいIP。シリーズ構成は、桜井監督と『斉木楠雄のψ難』『ジュエルペット』シリーズで一緒に仕事をした金杉弘子。
 あれ!変身用テクマクマヤコンにネジが入ってないやん!人の夢に入る力を使って色々する女の子の話。先のアニメ『pet』では悪いことに使ってたけど、こっちは子供向けアニメなので安心だね!偶然、桜井監督の作品『まちカドまぞく』でも主人公が同じ力を持ってるけど、シャミ子が彼氏のためにその力を使ってた一方で本作の主人公はもうなんかめっちゃ自由。「部活動何にしようかな~?よし!夢で仮入部だ!」←どうやったらこの発想が生まれるんだ。
 『まちカドまぞく』観てても思ったけど、とにかくコミカルでカワイイお芝居が多くて好き。また細かくつけられたSEもかわいいし「?」などの記号による表現も全然自重してなくて、絵としてすごく忙しくて面白い。だってさ、朝ごはん食べてるだけなのになんでこんなに面白くできるの?って思うよね。
 それ以外でも、「ゆめちゃんのサンダルかな」「あー、あり得る」っていう女子3人の会話とか動きの付け方に監督のセンスを感じる。ただの会話で終わらせない技術すごい。

デジモンアドベンチャー

 デジモン(2周目)
 過去シリーズは同じ世界線の中でファンの成長とともに登場人物の成長が描かれてきたんだけど、対して本作はシリーズ第1期のリメイクになっている。
 制作は東映アニメーション。監督を『魔法つかいプリキュア!』の三塚雅人が担当し、シリーズ構成を『ポケットモンスター』『イナズマイレブン』『バトルスピリッツ』シリーズでおなじみ冨岡淳広が担当する。
 ちなみにキャストは少年少女のみ更新されていて、デジモンの中の人はほぼ続投。
 キャラデザなっつ!というのも、本作のキャラデザを初代シリーズの中鶴勝祥が手掛けているので、見た目がほぼ初代そのまま。
 キャラデザでいうと、本作は基本的に作画アニメになっている。「デジタル世界のモンスターがメインのアニメでありながらデジタル作画じゃない」っていうのが趣深いポイントで、デジモンって電子世界の生き物でありながら非常に荒々しい(ワイルドな)見た目の生物ばかりっていうギャップがあり、それを表現するには作画アニメの方が相性がいいんだよね。実際1話のアグモンが凄くワイルドに映えている。

天晴爛漫

 アッパレくんはRun Man。
 制作はみんな大好きP.A.WORKSによるオリジナルアニメ。監督は『TARI TARI』『ハルチカ〜ハルタとチカは青春する〜』の橋本昌和。本作では監督がシリーズ構成も担当している。キャラクターデザインは、ハルチカSHIROBAKOでキャラデザ補佐をしていた大東百合恵。本作が初キャラデザらしく、PA作品としてはちょっと新しい雰囲気。
 話としては1900年代初頭、アメリカで実際に行われた大陸横断レース(通称キャノンボール)を舞台にした、というか最近コロナの影響で新記録出した云々が話題になってるあれを舞台にした冒険ファンタジー作品。
 「なんでレースに出るの」「そこにレースがあるから」みたいなロジックは『ONE PIECE』をちょっと思い出す。特に主人公の性格である「夢に向かって突っ走ること以外何も考えていない」という潔さによってゲストキャラが気付きを得る、みたいなシナリオってベタだけどやっぱり良いよね。ザ・少年漫画。
 世界観は1900年代初頭のアメリカを舞台にしているようで、していない。このリアリティ溢れるファンタジーみたいな路線は『色づく世界の明日から』『Fairy Gone』他PAWORKSの十八番で、「実際にあった風景を精密に描写しながらも、異質なものをちょくちょく混ぜていって、最終的にリアルなファンタジー世界に」みたいな手法になっている。本作は細部のリアリティをいろんな時代からつまみ食いしまくった結果キメラみたいな世界に。
 その影響もあり、登場人物もカオス。いろんな時代のいろんな物語を背負ったキャラが登場するので、なんか格ゲーみたい。そういえばなんで格ゲーのキャラって国際色豊かなんだろう?
 そして、そんな世界を構築する背景美術を担当するのはいつものスタジオ・イースター。やっぱりレンガの描き方すっごく好き。あと、日本パートとアメリカパートで背景の雰囲気が違うのが印象的だった。また日本パート来ないかな。

最後に

 新作全部1話視聴はおすすめしない。特に昨今はコロナ災禍の影響で新作の数そのものが少ないため、「全部で30作品以下?余裕やんけ」とか思ってしまいがちではある。
 もちろん「最新話がすごく面白かった!来週が待ち遠しいわ!」という「ちょっとした刺激」は新作アニメにおける醍醐味の中の一つだと思うんだけど、だからといって20作品も30作品も追いかけてしまうと、この「ちょっとした刺激」の積み重ねが「日々のストレス」に変わってしまうことがよくある。
 その結果としてアニメから距離を置くムーブに繋がりやすく、本来であれば自分なりに楽しめたはずの作品を、作品とは関係の無い要因によって楽しめなくなってしまうのはやはり悲しい(体験談)。
 もちろん人によってキャパシティは様々ではあるけれど、概ね言えることとしては、新作全部1話視聴はおすすめしない。