2022年秋アニメ1話ほぼ全部観たので簡単におさらいするよ

はじめに

 あとで見返す時のため、今期のアニメについて序盤の感想を簡単にまとめてみた。リアタイしたい作品が増えるほどリアタイできない作品が多くなるので、どんどん積ん読が増えていくよ、という趣旨の内容になっているよ(アニメは積ん読って言わないか)。それにしても時が経つのは早い。
 うっかりアニメを観ていなかった反動から今期のアニメを一気に観始めたばかりなので、リアタイ勢からすれば過去の世界の感想なのであまり参考にはならないと思うけれど、様々な事情から今期のアニメにまだ触れることができていない人にとっては「1話が面白いかどうか」が全てなので、一周回ってこういう感想も逆にアリかな、って。それに年末は一挙配信とかあるし。
 ちなみに2クール以上の長期シリーズや続き物は「1期1話を観てね」くらいしか書くことができないので基本的に端折っている。

配信情報まとめ

 私はTVでアニメを観ない(BS見れないし、TOKYOMXもAT-Xも受信できない)ので、配信情報はこれ以外の手段について書いている。
 なお、独占配信系タイトルは放送開始時点でのものであり、後に他の配信サイトでも配信が開始される場合がある。あくまで現時点での参考になれば。

独占タイトル一覧

※《》内は月額プランの料金(税込み)

アマプラ独占配信《500円/月》

ポプテピピック 第2シリーズ
ゴールデンカムイ 第4期
モブサイコ100

ヒューマンバグ大学 -不死学部不幸学科-

ネトフリ独占配信《990円/月※上位プランあり》

サイバーパンク: エッジランナーズ
名探偵コナン 犯人の犯沢さん
ロマンティック・キラー

FOD独占配信《976円/月》

忍の一時
マブラヴ オルタネイティヴ 第2期
永久少年 Eternal Boys(見放題)

Disney+独占配信《990円/月》

特になし

Abema見放題《960円/月》

転生したら剣でした

感想

ぼっち・ざ・ろっく!

 まんがタイムきららBECK
 とある高校生バンドの活動を描く、下北沢の日常アニメ。
 ぼっちの陰キャがいきなりライブハウスなんか行っちゃって「やべ、自分めっちゃ場違いだわ・・・今すぐ消えたい・・・」ってならないの?もちろんなってます。表題の通り、太陽に憧れたぼっちの女の子が太陽にその身を焼かれながら、それでも音楽を続けようとするお話。陰キャを脱しようと背伸びしては、自らの劣等感に心を折られてしまう主人公の葛藤する様を、あの手この手でコミカルに描いていく。
 いつも顔色の悪い主人公は「あらゆる学生時代の負の思い出」を煮詰めて濃縮したようなキャラクターなので、やたら的確な陰キャ描写を見るたび「わかるー(全身から血を流しながら)」ってなる。学生時代につらい思いをした人ほど刺さる内容で、少なくとも私は開幕10分で全身血まみれだった。心を折られてもなお前に進もうとするぼっちちゃん、すごいな。

©はまじあき/芳文社アニプレックス

 陰キャな主人公のきらら作品といえば『こみっくがーるず』が記憶に新しいけれど、あっちは「漫画家として成長するために漫画家の仲間と交流を持ち始めた女の子のお話」なのに対し、本作の主人公は「ギター上手くなってめっちゃチヤホヤされてぇ・・・」という承認欲求の悪魔に魂を半分くらい取り込まれた状態から始まるのが印象的。そういう意味では非常に等身大の思春期を送る15歳の少女であり、そのリアルさが本作の「きらら作品っぽくなさ」をより強調しているよね。本作ほど「もしかして私めっちゃすごいかも!」「いや、現実を見よう。私はやっぱりミジンコ以下なんだ・・・」という思考循環を無限に繰り返すきらら作品の主人公、いなくね?
 特に3話の主人公が好き。まるで風船のように激しく膨らんでは破裂を繰り返すぼっちちゃんの承認欲求と感情の乱高下を、あまりにも多彩なアニメーションで描いていく演出がすごすぎて、笑いつつも感動した。3話絵コンテ・演出を担当した副監督の山本ゆうすけ氏マジやべえって。


 そんな魅力に溢れた主人公を演じるのは、『Wake Up,Girls!』でおなじみ青山吉能。主人公に負けず劣らず中の人も闇属性なのね。公式ラジオが配信されているが、毎回オブラートに包んだ呪詛を世界に撒き散らしていて「あぁ、まるで深夜ラジオだなー」って感じがする。昼に聞くもんじゃないわ。まだアニメも始まっていない(言えないことが多い)時期から開始したラジオで、いきなり1時間以上もソロで喋り続けられるのほんとすごいよね。ちょっと大人になって社会経験と語彙力を得たぼっちちゃんそのものだった。みんな強く生きていこう。
youtu.be
 そしてアニメーションよ。まるで各キャラの中に人間が入っているような写実的なお芝居もそうだし、コミカルな表現もたくさんあって、なんか「TVアニメの得意な表現とTVドラマの得意な表現のいいとこ取り」みたいな仕上がりに。ドラマパートの緊張と日常パートの緩和のバランスも良いので、ほんと何回観ても飽きない。
 また、背景美術がすごくリアル。というか写真をアニメ風に加工してるのかな。先のCloverWorks作品『その着せ替え人形は恋をする』でも写実的な背景美術がふんだんに使用されていたけれど、着せ恋より更にデフォルメされている本作のキャラクターが、この写実的な背景から浮いてないのほんとすごいと思う。構図の良さももちろんだけど、お芝居やドラマのリアリティが非常に高い作風だからこそ成立してるよね。たまに実写と見紛うようなカットもあってほんと面白い。
youtu.be
 OPED含め「結束バンド」名義での楽曲が好き。ロックバンドということで楽曲はすべてロックで統一されているのだけれど、アニソンにしては珍しく主人公がボーカルを担当しておらず、リードギターを担当。特にアニプレ作品は「アニソンといえばボーカル楽曲」というイメージが強かったので、結束バンドの「リードギターが音色で叫びまくる楽曲」というのがものすごく新鮮だった。でも楽曲は全体的に調和を重視した調整になっていて、どの楽器の音もちゃんと聴こえる(アニメのボーカル曲は劇伴がよく聴こえない事がわりと多い)。特にリードギター。各曲でちゃんとソロパートがあるのだけれど、「ぼっちちゃんはギターがプロ並みに上手い」という設定にかこつけて、どの曲もやりたい放題してて笑った。どんだけ上手い設定なんだw
 作中の演奏シーンでも、人前で喋れないぼっちちゃんが無理くり舞台の上に引っ張り出されて演奏させられて・・・という展開と思いきや、むしろ逆に彼女のエゴとカリスマに溢れた演奏よって空気を一変させてしまう演出になっている。ギターが上手いとかそういう次元じゃなかったわ。
 特にED『カラカラ』がお気に入り。「演奏しているのはまだ駆け出しの高校生」という表現上の技術的な制約を取っ払った非常に技巧的な楽曲で、ボーカルもコーラスもホント綺麗で、聴いているうちにこの曲が架空のバンドの曲であることを忘れそうになるような魅力がある。
 でもちょっと悲しいのが、アニメの放送が終わったらこのバンドの新譜ってもう出ないんだよね。悲しい。アニメ終わっても新譜出してくれないかなぁ。
youtu.be
3話ED「カラカラ」
作詞・作曲:中嶋イッキュウ
編曲:三井律郎
演出・作画監督・作画:スズキハルカ
EDアニメーション制作:Pie in the sky


 『まんがタイムきららMAX』にて2018年から連載中の、はまじあき氏による4コマ漫画が原作。
 制作は「まーた江ノ島のアニメ作ってるよ」でおなじみCloverWorks。きらら作品を手掛けるのは『スロウスタート』以来。監督は『ACCA13区監察課 Regards』監督、また『Sonny Boy』の3話と8話で絵コンテ、演出を担当した斎藤圭一郎。
 副監督は、同スタジオ作品『その着せ替え人形は恋をする』のアニメ内アニメ作品『フラワープリンセス烈!!』にてキャラクターデザイン、作画監督を担当していた山本ゆうすけ。何気に『恋する小惑星』のOP絵コンテ・演出も担当してる人なのね。
 ライブディレクターは『ワンダーエッグ・プライオリティ』アクションディレクターの川上雄介。特に本作のライブシーンはモーションキャプチャーまで駆使したロトスコープ風アニメーションになっているため、プロデューサー曰く川上氏が死ぬほど頑張ったらしい。お疲れ様です。ワンダーエッグプライオリティといえば、同氏の他にもコンセプトアートを担当していたtaracodが本作の美術設定として参加していたりして、ワンエグのスタッフがかなり関わっているみたい。
 シリーズ構成は『TRICKSTER -江戸川乱歩「少年探偵団」より-』『なむあみだ仏っ!-蓮台 UTENA-』『神之塔 -Tower of God-』の吉田恵里香。また、ニッチな界隈で話題になっていたWebアニメ『Artiswitch』のシリーズ構成・脚本を担当していたのもこの人だったりする。
 キャラクターデザインは、けろりら氏。『ワンダーエッグ・プライオリティ』にてアニメーション武器デザインを担当した人で、キャラデザは初かな。本作では作監だけでなく各話の原画までガッツリ担当しており、本作に関わったアニメーターの方々が「けろりらさんマジで神」って言ってるのをよくツイッターで見かける。それだけでなく、同氏は今期のアニメ『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』にもアニメーターとして参加(作監だけでなく原画としても)しているようで、マジでめちゃくちゃすごい人なのかも。名前が特徴的なのでEDクレジットから見つけてみてね。
 ワンダーエッグプライオリティといえば、アクションディレクターとして参加していた川上雄介が本作のライブディレクターに、コンセプトアートを担当していたtaracodが本作の美術設定として参加していたりして、ワンエグのスタッフがかなり関わっているアニメになっている様子。

 アニメ放送終了後に公開されるPV、というものがあるらしい。しかも本PV。
youtu.be

サイバーパンク エッジランナーズ

Netflix独占配信

 サイバーでパンクなブラックラグーン
 ひょんなことから、アンダーグラウンドの運び屋になった少年のお話。原作はゲームだが、オリジナルストーリーのため実質新作。作風もかなりトリガー然としているので、ゲームに興味があろうがなかろうがあまり気にせず楽しめる作品。
 貧困街に生まれた主人公が「貧困の家庭に生まれたということ」を散々わからされる1話がすごく良い。前半の伏線が、後半にかけて怒涛の支払い催促という形で回収されていく展開と、それによって精神的に限界を迎える主人公の心情描写。本作は特に主人公の鬼気迫る表情の描き方が秀逸で、シリアスなシーンやアクションシーンの緊張感がほんとすごい。
 序盤の展開だけ取り出して見ると『チェンソーマン』に通じるものがあるよね。ノブリスオブリージュ精神は無く、力を持つものとしての矜持も無く、正義も悪も無く、ただ生きるためにとんでもなくヤベー力を振るう主人公の危うさ、みたいなものの描かれ方。ほんとゾクゾクするからもっとやってほしい。これはなんていうジャンルになるんだろう。
 先のNetflix独占アニメ『BNA ビー・エヌ・エー』でもトリガー節の効いた作画がふんだんに盛り込まれていたが、本作はよりアクションシーンのウェイトが大きい。バカスカ撃ちまくる警察や殺し屋集団、人間を蹂躙する武装サイボーグ等が山ほど登場するので、毎回凄まじい銃撃戦に。ニンジャスレイヤーかよ。特に表現規制もないため、紙くずのように飛び散る人間の作画とか見ているとハードコアなアクションというよりもはやスプラッタである。映画『MADMAX』で感じた、謎の爽快感を久々に味わえたような気分。ほんと、「グレンラガンは神アニメ」「キルラキルは神アニメ」と思っている人は本作に早く触れたほうが良いって。ヤバいって。
 あと音楽がすげー良い。楽曲はすべて海外アーティストによるもので、アメコミっぽい雰囲気も併せて「ネトフリ以外の配信サイトで視聴可能なアニメ」と明確に差別化されてるよね。挿入歌の数自体もかなり多いので、アルバム出たら買おうかな。てかこの挿入歌ってゲームのものを使ってるのね。
doope.jp
 また、ネトフリ未契約の人向けにYou TubeでアニメPVが公開されている。非常に完成度が高いので、これだけでもそれなりに本作のヤバさが伝わると思う。ちなみに、PV視聴にあたり人体欠損などの過激な暴力描写、性描写、音量に注意。
youtu.be


 ポーランドのゲーム開発会社「CD Projekt RED」が発売したゲーム『Cyberpunk 2077』が原作。
 制作はみんな大好きTRIGGER。ネトフリ独占配信の作品を手掛けるのは『リトルウィッチアカデミア』『BNA ビー・エヌ・エー』に引き続き3作目で、そのうち専属契約とかしちゃうんだろうか。
 監督は『キルラキル』『宇宙パトロールルル子』『プロメア』等でおなじみ今石洋之。また、Disney+独占配信作品『スター・ウォーズ: ビジョンズ』にて、TRIGGERのお当番回で監督を務めている。シリーズ構成と脚本は、株式会社トリガー代表取締役社長の大塚雅彦と、株式会社トリガー代表取締役副社長の宇佐義大が共同で執筆しており、もはやTRIGGERの総力戦みたいな布陣になっている。キャラクターデザインも当然、『リトルウィッチアカデミア』『BNA ビー・エヌ・エー』監督の吉成曜が担当。スタッフィングやべー。
 

チェンソーマン

 犬から生まれたデビルマン
 1話では、とある少年の生涯を通じて本作の世界観がおおまかに描かれている。現代が舞台で、悪魔というかモンスターが人間の生活圏内に存在していて、かつ一般人にも割りと認知されていて、そいつらを討伐する専門家がいて、公的機関に所属するやつと民間のそれが存在していて、結構人死にが出ているシリアスな世界。
 主人公はまるで「B級映画に登場する、最序盤で殺されるチンピラA」みたいな役回りなのが印象的。明日食うメシにも事欠く最貧民であり、友人もおらず、ヤクザの犬として生きてきた人生が終わっていく様が1話で描かれる。カタルシス全振りのシナリオが凄くて、まるで映画みたい。前半の静かなお芝居と、後半のはっちゃけまくりな戦闘シーンの温度差ほんとすごいよね。

©藤本タツキ/集英社MAPPA
©藤本タツキ/集英社MAPPA

 主人公を演じるのは戸谷菊之介。本作が初主演なんだって。あとマキマさんを演じる楠木ともりと同じ事務所で1年違いの後輩らしい。へー。主人公が、何の取り柄もない、本当にただの青年で、ひょんなことから事件に巻き込まれて殺されてしまうモブAとしてのキャラクターを、「張りのない、どこか儚げで生命力に欠けるモブの声」で表現している。特に、1話後半で発狂してなお、主人公が「事件に巻き込まれた被害者A」という属性を全く失わずにいるところ。ここまで主人公っぽくない主人公いるんだ。
 2話以降で主人公が危険な仕事を続ける理由というか、信念みたいなものは何なのか?と本人が逡巡する様子が描かれるのだけれど、結果が最高に俗物的で草。悪を許さないとか、正義を成すとか、守りたい人がいるとかそれ以前に、この時点での彼はまだ「人間としての「普通」に憧れている犬」なのね。
 色々ヤバいキャラはいるけれど、もう主人公がすげーヤバい。まず一番印象的なのが「認知の歪み」のヤバさ。まず主人公が上司なりに「君はこれからこういうことをしなきゃいけないんだよ」という説明シーンが描かれていると、視聴者は「なるほど主人公はこれからこういうことをするのか」とか「なるほど主人公の次の目標はこれなのね」と思うし、主人公もまたその提示された目標に向かって物語を進めていくのだろう、という予測ができるはずなのに、本作の主人公は「やべ、マキマさんのおっぱいめっちゃでかい・・・もみたい・・・よし!俺の目標はこれだ!」になっちゃう感じ。お前は何を見ているんだ。
 本作が非常に写実的で丁寧な描写によって描かれているため、「視聴者が見たもの(例えば、マキマさんの不気味な笑み)」と「主人公が見たもの(マキマさんの笑み)」はほぼイコールで、視聴者が「マキマさん、ちょっと怖いな・・・」と思ったなら、きっと主人公も同じ気持ちに違いない、って思うじゃん。てかそういう演出だと思うじゃん。だからこそ、この写実的な描写が逆に主人公の認知の歪みっぷりをより強調してるよね。マジで話がどう転んでいくのか分からなすぎて震える。

「デンジ君みたいな人。」©藤本タツキ/集英社MAPPA

 他方、1話で親の莫大な借金によりヤクザから犬のような扱いを受けていた主人公が「待てよ、こいつら全員殺せば借金チャラじゃね?」と閃くシーンが描かれており、時折見せる主人公の高い知性と鋭い洞察力というギャップが、より彼を魅力的なキャラにしてるよね。かわいい。

©藤本タツキ/集英社MAPPA

 静かなシーンが続く作品なのに、構図が凄すぎてずっと見ていられる。映画かよ。特にMAPPAは3DCG方面が非常に強いスタジオなので、本作もその技術を発揮しまくっている。特に引きの構図。ごちゃごちゃしている背景の中を歩くキャラの多さとか、違和感なさすぎてヤバい。先のアニメ『ドロヘドロ』はトゥーン調のフル3DCGアニメだったが、作画アニメーション表現も織り交ぜまくった結果ドロヘドロより更に凄いことに。
 また、BGMの仕事が凄まじい。劇伴は『DEVILMAN crybaby』『ブギーポップは笑わない』『平家物語牛尾憲輔。しっとりしたシーンですら強烈に歪んだギターの音(ずっとぎょわんぎょわんしてる)が鳴っていて、終始不気味な雰囲気に支配されている。雰囲気で言えば先のアニメ『ブギーポップは笑わない』と似てるかも。サントラ欲しい。
 ゴリゴリのベースから始まる悪夢みたいなOPすき。作画がすごすぎて最初は気づかなかったけれど、歌詞がめちゃくちゃ主人公だった。「「止まない雨はない」より先にその傘をくれよ」ホント好き。それにしても主人公、マキマさんのことめっちゃ好きなの?
youtu.be
米津玄師「KICK BACK」
作詞・作曲:米津玄師
編曲:米津玄師、常田大希 (King Gnu / millennium parade)
絵コンテ・演出:山下清
総作画監督:杉山和隆

 また、EDは各話ごとに変わる特殊仕様。そんな事するアニメはMAPPAの作品『LISTENERS』のような音楽劇くらいなので(あっちはすべて、じん氏による作曲)、わざわざ楽曲の製作者を統一していない本作のEDはあまりに多彩すぎてビビる。チェンソーマンは音楽劇だった?


 『週刊少年ジャンプ』にて2019年から連載されていた、藤本タツキによる漫画が原作。第2部が『少年ジャンプ+』にて2022年より連載されている。
 制作はMAPPA。また、製作はMAPPA。アニメーションスタジオが製作まで含めて担当している作品は非常に稀有で、「金は出すけど口は出さないパトロン」というパターンを含めても『ポピテピピック』のキングレコード、『ぶらどらぶ』のいちごアニメーション株式会社くらいしか思い浮かばないかも。本作もまた、前例に漏れずやりたい放題している異色な作品。
 監督は中山竜。『マクロスΔ』メインアニメーター、『夜ノヤッターマン』キーアニメーター、また『盾の勇者の成り上がり』16話で脚本・絵コンテ・演出・原画を、『Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-』16話で絵コンテ・演出・アクション作画監督・原画を、『呪術廻戦』19話(サブタイトル『黒閃』)で絵コンテ・演出を努めていたりする。脚本は、MAPPA作品でおなじみ瀬古浩司
 キャラクターデザインは『無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜』の杉山和隆。また、本作を彩っている悪魔デザインを担当しているのは『フリップフラッパーズ』監督で、『DEVILMAN crybaby』のデビルデザインを担当していた押山清高。これは現代のデビルマンだったんや。


機動戦士ガンダム 水星の魔女

 機動戦士ガンダム スクールの中の戦争
 まず「ガンダムシリーズ」における本作の位置づけについて。ガンダムシリーズは大まかに「宇宙世紀」と「それ以外」に分かれている。宇宙世紀はいわゆるファーストガンダムから始まるシリーズで「人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって、既に半世紀が過ぎていた。地球の周りの巨大な人工都市は人類の第二の故郷となり、人々はそこで子を産み、育て、そして死んでいった。」というナレーションから始まる物語。他の宇宙世紀シリーズもまた同じ時間軸を共有している続きモノのため、ちょくちょく同一人物が複数の作品に登場する点が特徴的。
 一方「それ以外」と大まかにまとめてしまっているが、要は別の宇宙の「ガンダム」というロボットが登場するお話。それぞれ別々の世界線(たまに続きモノもある)が描かれており、また作風も作品ごとにベクトルが大きく異なるので、ファンの間で「〇〇ガンダムは好きだけど✗✗ガンダムは好きじゃない」みたいな話をよくしてるイメージがある(個人の感想)。本作はこちらのパターンであり、プロデューサー曰く「色んな人に楽しんでほしい」という点に重点を置いた作品になってるんだって。へー。
 ちなみにファーストガンダムを手掛けた演出家の富野 由悠季は基本的に宇宙世紀シリーズの総監督を担当していることが多いので、「富野由悠季さんの関わってる方のガンダム」「富野由悠季さんがあんまり関わってない方のガンダム」という分け方のほうがわかりやすい気がする。最近公開された映画のガンダムは、富野さんが関わっているので宇宙世紀シリーズ。
 閑話休題。本作は1話の放送前に前日譚として「プロローグ」が配信されているので、まずそっちの感想から。前日譚と1話の温度差に戸惑うよね。
 前日譚は主人公の幼少期のエピソード。主人公のご両親が関わっている技術開発センターで研究されていた技術と、その技術によって作られたロボット(ガンダム)の社会的な位置づけと、その研究者たちの顛末が描かれている。
 扱っているテーマは普遍的なもので、「軍事技術は革新的なものであっても、結局は人殺しをするためのもの。いつも人殺しの顔をしていないといけない」「いつか人々を幸せにするための技術がたまたま強力な兵器として転用されただけで、技術そのものは悪ではない」という倫理感の衝突を、それぞれの視点から描いている。
 特に強烈な印象を残した戦闘シーン。やっぱりガンダムのアニメーション作画ってすごいなー、という印象以上に、主人公の鮮烈な初陣に恐れおののいているお母さんの表情が忘れられない。幼い主人公(=技術者たちにとっての未来の象徴)がその身に「祝福」を受けたのと同時に、ガンダム否定派の言う「呪い」もまたその身に受けてしまったという非常に救いのないお話を「主人公史上最年少記録更新」という凄まじいシーンに仕上げている。短編としても非常に完成度が高い挿話なので、とりあえずプロローグだけでも見てみたら良いと思う。

© 創通・サンライズMBS

 で、ここから1話の感想。とある学校に編入した田舎出身の主人公が、楽しい学園生活を送るお話。
 本作ではモチーフとして「学園モノ」を採用しているという点ですごく特殊だよね。でもほのぼの日常アニメというわけにはいかないところはやっぱりガンダムなんやなって。
 実際の戦争に巻き込まれているわけではないのでガンダムの出番はあまりないのだが、その代わりにモビルスーツでの戦いは実際の命の取り合いではなく「学生同士、モビルスーツに搭乗した上で行われるAR空間での決闘」という描かれ方になっている。そういう意味ではビルドファイターズのような平和な作品っぽくもあるけれど、作中の文化的背景を考えるとそうもいかない。本作はより「代理戦争」としての「決闘」がメインの作品みたい。
 学生のお話なので「気に入らないアイツをぶっ飛ばす」という目的で決闘をすることが多く、意思のぶつかり合いを描いた青春群像劇みが強い。また、決闘の手法が「モビルスーツに乗って」というのが結構面白い。簡単に言うと「3塁ベース生まれの奴が一番強い」ということがより強調された仕組みになっていて、
・親と決別している女の子→親から支援を得られないため、まともに戦うことも出来ない
・大企業の御曹司→高性能な機体と厚いサポートを得ているので一番強い
みたいな。決闘の結果次第であらゆるルールを捻じ曲げられるという意味では実力至上主義に聴こえるが、結局は「格差の再生産」とか「理不尽の押し付け合い」という描写になっていて、学生が主人公ならではのお話だな、って。
 だから、主人公とヒロインにとっての「エアリアル」は「親や社会から押し付けられたあらゆる理不尽や困難を打破するための希望」という物語上の意味を持っているんだよね。これは主人公サイドに限らず、例えば3話では御曹司が再び決闘に身を投じるのだが、彼もまた「御曹司だからこその理不尽」の象徴として「自分にあてがわれた機体(自分で機体を用意することは出来ないため)」があり、それを決闘の中で否定することで、彼なりの戦いを制しているというお話になっていてすごくエモい。ガンダムはみんなの希望なんや。
 主人公はガンダム作品では初の女性。上記の決闘後に「花より男子」の道明寺よろしく「・・・おもしれー女」フラグが立つのだが、この二人の関係性が本作のメインストーリー「じゃない」ところがホント好き。主人公は別にサバサバ系の強い女性とかではなく、むしろフニャフニャ系のかわいい女の子なのに!道明寺じゃなくて!女の子と!そっかー!

© 創通・サンライズMBS

 そんなフニャフニャ系主人公を演じるのは『キャロル&チューズデイ』チューズデイ、『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』四条 眞妃役の市ノ瀬加那。同氏の「えぇ〜っ!?」というふにゃふにゃした声がホント好きなので、毎回これが聴けるのが非常に嬉しい。本人曰く「恋愛で報われない系の女の子にすごく縁がある」というキャリア上の偏りをよくネタにしたり、されているイメージが強いので、本作の主人公もまた相当の不幸体質なんやろなぁ、って。
 OPはYOASOBIより「祝福」。同アーティストの楽曲はいずれも「元となる小説」が存在するという特色を売りにしている。先のアニメ『BEASTARS』のタイアップ曲「怪物」では、漫画の原作者である板垣巴留が自ら「楽曲の原作」となる小説を執筆しているという変わった経緯を持っており、「祝福」の原作に相当する小説もまた、本作のメインライター・大河内一楼が小説を執筆し、公式サイトで公開している。
 ミオリネ・レンブラン役のLynnが、自身のラジオ内で同小説を読んだ感想を「最初読んだときは「そんな・・・ばかな・・・!」ってなった」と語っていたのが印象的で、多分読んだ人はほぼ全員「そんな・・・ばかな・・・!」ってなると思う。ネタばれ要素を多分に含んでおり、作品の見方が大きく変わるくらいのインパクトがあるので読むタイミングは少し気をつけたほうが良いかもしれない。パッと見でもう「そんな・・・ばかな・・・!」ってなるので。
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YOASOBI「祝福」
作詞・作曲・編曲:Ayase
歌唱:ikura
原作小説:「ゆりかごの星」(著:大河内一楼https://g-witch.net/music/novel/
ディレクター:依田伸隆
絵コンテ:依田伸隆、絹田慎也
演出:絹田慎也


 オリジナルアニメ。2クール作品で、後半は23年の4月予定。
 監督は『キズナイーバー』『ひそねとまそたん』の⼩林寛。シリーズ構成は『甲鉄城のカバネリ』『プリンセス・プリンシパル』『ルパン三世 Part5』『SK∞ エスケーエイト』の大河内一楼
 キャラクターデザイン原案はモグモ氏。同氏がアニメ作品のキャラデザに関わるのは本作が初かな。アニメーションキャラクターデザインは田頭真理(『ゼーガペインADP』『あの日の心をとらえて』キャラデザ)、戸井田珠里(『ガンダムビルドダイバーズ』キャラデザ)、高谷浩利(超すごい人。『機動戦士ガンダム サンダーボルト』キャラデザ)が共同で担当している。いろんなガンダム作品のキャラデザを担当しているアニメーターがポンポン出てくるのほんと凄いよね、サンライズやべー。


うる星やつら

 みんな大好き高橋留美子劇場
 アニメの公式サイトURL最優秀賞候補。公式サイトのURLは英数字縛りがあるため、一般的に「アニメタイトルのローマ字表記」「タイトルの英語表記」「省略タイトルのローマ字表記」あたりが採用されることが多いのだが、本作のように当て字をタイトルにしている作品はローマ字表記と相性が悪いため、担当の人はかなり悩んだのではないだろうか。ざっと調べた限りでは、英語版の表題は『The Return Lum』らしいので、それをURLに採用するという選択肢もあるかもしれない。特に最近のアニメ作品は海外展開を意識したものが多く、公式サイトも日本語以外の言語に対応したサイトも多く、したがってURLもまた「非日本語話者でも覚えやすいURLを」という需要はきっとあると思う。
 本作の公式サイトのURLは
https://uy-allstars.com/
 「うる星やつら」というローマ字表記し辛いタイトルを「uy」とコンパクトに略し、「騒がしい人々」という意味の「うるせえやつら」と「異邦人」という意味の「星」をかけた言葉遊びを「All Stars」と訳した人は控えめに言って天才だと思う。ここまで短く、また簡単な英単語のみの構成なので、手打ちでも「uy-allstars.com」で検索できちゃう点も見逃せない。翻訳の的確さ、パッと見の作品らしさ、文字列の簡素さ、総じて完成度の高いURLといえるのではないか。
 閑話休題。ひょんなことから同棲することになった宇宙人と地球人のお話。内容は概ね原作のままリメイクされている。アニメで観てようやく理解したんだけど、「別にラムちゃんのことが好きじゃないあたる」と「めちゃくちゃ強引な押しかけ妻のラムちゃん」っていう構図のラブコメだったのね。
 その後も登場人物がたくさん増えていくのだが、全員が自分の都合を優先しまくる迷惑な人ばっかりで草。ラムちゃんも基本的に自分の都合であたる君を毎日シバき倒しているので、自分勝手に楽しく生きている感じがして好き。やっぱめっちゃかわいいな。
 ラムちゃんに限らす、どのキャラも登場するたび台風みたいな勢いで回りを巻き込んでいくハイテンションなギャグアニメになっている。夕方に放送していてもおかしくない内容なのだが、なぜ深夜のノイタミナ枠なのか。別に夕方でも良くない?
 アニメーションは『ジョジョの奇妙な冒険』でおなじみDavid Productionのため、漫画のオノマトペがそのままアニメーション化していて好き。声優さんもちゃんと読み上げてて好き。
 また、本作は「昔の作品を改めてリメイクしていますよ」という文脈を丁寧に明示していているのがすごく印象的。特に「原作の絵はこんな感じ」「旧アニメはこんな感じ」というアニメーションの描写から、新デザインのラムちゃんが飛び出す演出になっているOPがすげー良かった。原作には原作の魅力があって、新アニメはそれらを否定しているわけじゃないんだよ、っていうメッセージみたいで。あのOP観ちゃうと原作欲しくなる。てかOP絵コンテ担当してるのって、チェンソーマンOP絵コンテの山下清悟さんなのか。すご。
youtu.be
MAISONdes「アイウエ feat. 美波, SAKURAmoti」
絵コンテ・演出:山下慎吾
作画監督:近岡 直
制作:スタジオコロリド teamクロマト


 「週刊少年サンデー」にて1978年から連載されていた、高橋留美子による漫画が原作。てか本作が初連載だったのね。てっきり『めぞん一刻』が先かと思ってた。アニメ化されるのは1981年~1986年のアニメシリーズ以来20・・・30年ぶりくらい?リメイクに伴い、キャストは一新されている。
 制作は『ジョジョの奇妙な冒険』『はたらく細胞』『炎炎ノ消防隊』『2.43 清陰高校男子バレー部』のdavid production
 監督は『覆面系ノイズ』『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』『ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN』『プラチナエンド』の高橋秀弥。また『三者三葉』『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』『2.43 清陰高校男子バレー部』も監督としてクレジットされており、長期シリーズである黄金の風と同じ二人体制に。シリーズ構成は『はたらく細胞』『灼熱カバディ』『恋と呼ぶには気持ち悪い』『白い砂のアクアトープ』の柿原優子。
 キャラデザは『魔法陣グルグル』『おそ松さん セカンドシーズン』『映像研には手を出すな!』『えいがのおそ松さん』の浅野直之おそ松さんでチョロ松を、本作で諸星あたるを演じている神谷浩史は同氏を「天才」と称していたけれど、やっぱ天才だよね。


Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-

 新潟県三条市版やくならマグカップも。自作するなら長ベンチも。
 ひょんなことからDIYにハマった女子高生たちのお話。同じくご当地アニメ&ものづくりがテーマの作品としては、岐阜県多治見市が舞台の作品『やくならマグカップも』が記憶に新しい。本作の舞台は、「上越新幹線の、燕市三条市のとこにある駅名って三条燕だっけ、燕三条だっけ?」でおなじみ三条市。作中で唐突にスキー板が登場するのはそういう理由なのね。
 やくならマグカップも、の主人公は両親が訳ありだったことをキッカケに序盤からヒューマンドラマが描かれていたけれど、翻って本作はそういった要素もないため最初から奔放な日常アニメになっている。特に主人公の抜けてる感じとか見てると、ちょっと『ライフル・イズ・ビューティフル』を思い出す。あっちも割とゆるい部活モノだったよね。
 2話めっちゃ好き。まだ部活動をするって決めたわけじゃないけれど、みんなと一緒にものづくりをしているときの楽しさが本当に愛おしくて、まだ味わいたくなる。
頭の中でイメージしたものが、ちょっとずつ形になっていく感じ。作中でみんな超楽しそうにしてんの。DIYって、もちろん「欲しい物を手に入れるための方法の一つ」ではあるけれど、同時に「DIYをしたくて、自作可能かつ実用的なものを探している」みたいなとこあるよね。DIYは手段が目的だったんや。軽快な音楽も相まって「観る日曜大工」みたいな雰囲気の作品に。家でゆっくり観るのがすごく楽しい。
 また、DIYということで本作の作業シーンでは多くの現場猫案件が描かれている。作中の冒頭で「主人公は非常に身体が丈夫な女の子ですよ」とわざわざ明示しているのは、様々な現場猫案件を主人公自ら体を張って実演するため・・・なのか?
 例えば2話では「上の方の棚に資材があるな。ちょっと大きくて重いけど、2,3段くらいの小さいステップに登れば届くのでヨシ!」のやつが実演されているので、心して観よう。ちなみに主人公は死なないので大丈夫。
 全体的に柔和なアニメーションがすんごいヌルヌル動く。同スタジオ作品『グレイプニル』に引き続き、アニメーターの江畑諒真が本作にも参加しており、主人公たちが歩くときの作画がすごく良い。あとチャリに乗ってるシーンを作画でやってるのがヤバい。ちょくちょく背景も動かしてるなぁとは思っていたけれど、背景も自前でやってるのね。日常のキャラクターお芝居だけでも観ていて楽しいよね。表情のお芝居もすごく良くて、特に4話の「親友と微妙な距離感のまま、うまく会話のきっかけを見つけられずにいた女の子が、久しぶりに親友宅を訪問しようと決意するも、なかなか踏ん切りがつかなくて逡巡していたところを親友の母親に見つかってしまい、恥ずかしさ半分、でも安堵が半分くらい」みたいな表情がすげー良くて。

©IMAGO/avex pictures・DIY!!製作委員会

 ちなみに、登場する工具類は株式会社髙儀の製品。ちゃんと監修を受けているため工具類の作画がすごい。全体的に柔和な雰囲気のアニメーションに工具のゴツい見た目のギャップいいよね。1話で主人公が電動ドライバーを使うシーンがあるけど、彼女の手に余る大きさと駆動音、うまく刺さらなくて先端が暴れるアニメーションとすごくリアルで笑った。日常アニメとしては奇をてらったストーリーじゃない分、アニメーションで魅せてやろうっていう気合いがすごい。
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OP「どきどきアイデアをよろしく!」
歌:潟女DIY部!!
作詞/作曲:佐高陵平(Hifumi,inc.)
絵コンテ/演出:新井陽次郎
作画監督:古橋 聡


 オリジナルアニメ。制作は『魔法少女なんてもういいですから。』『月曜日のたわわ』『グレイプニル』『かげきしょうじょ!!』のPINE JAM。監督は、同スタジオの作品のうち『魔法少女なんてもういいですから。』『月曜日のたわわ』『グレイプニル』『かげきしょうじょ!!』で監督を務めていた米田和弘。シリーズ構成はいつもの筆安一幸。同氏は『魔法少女なんてもういいですから。』でもシリーズ構成を担当しており、実質魔法少女なんてもういいですから。
 キャラクターデザインは『ヤマノススメ』シリーズにてキャラデザを担当している松尾祐輔。ちょうどヤマノススメ3期が放送されていることもあり、本作を観ているとヤマノススメも観たくなってくる。
 クレジットに「オフィシャルサポーター:三条市」と表記されており、明確に地方創生という使命を背負ったアニメだったりする。


アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】

 ゾンビのいないバイオハザード
 国家転覆を目論む武装集団から人々を守る戦士のお話。1話では、記憶喪失になった主人公と一緒に敵の追撃から逃げつつ、街の描写や世界観の説明がなされている。一応原作ゲームとストーリーは一緒みたい。
 かなりリアル寄りのファンタジー世界観好き。とある感染症のまん延をきっかけに、非感染者から差別・抑圧されていた感染者たちが武装蜂起、襲撃と略奪を繰り返していて、それと戦うのが主人公たちの組織、という設定。感染者による暴動といえばゾンビモノの定番だけれど、本作の設定は「虐げられていた人たちによる武装蜂起」なので、かなりリアル。あくまで敵は武装した市民のため、人道上の問題を抱えながらの戦闘行為に思い悩むヒロインの心情描写がすごく印象的だった。

©Hypergryph / Studio Montagne

 本作には感染者とは別に超能力を持つ人がおり、基本は超能力者同士のバトルが描かれている。原作となるゲームがタワーディフェンスということもあって、戦闘描写はそれぞれの能力を生かした戦術的なものになっていて面白い。一人で戦局を一変させるような能力者はほぼおらず、現代的な都市戦闘+超能力者による戦い方がベースになっているので、ここもわりとリアリティがあって好き。特に、銃弾を食らって負傷した兵士の描写とかいいよね。
 全体的に陰影の表現を多用した映像表現が、静かだけど非常に熱い絵になっている。映画かな?全体的な彩度を抑えた絵と写実的な背景も相まって、すごく緊張感のあるアニメ。それにしても背景マジですげえな。また林ゆうきによる劇伴がより一層緊張感を演出していて、戦闘と非戦闘シーンの緩急がすごく良いよね。特に2話で訪れた医療施設跡のシーンは、物語を感じさせる背景の描写が秀逸ですき。

©Hypergryph / Studio Montagne

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OP「Alive」
歌:ReoNa
作詞:rui( fade ) / ReoNa
作曲:rui( fade)
編曲:堀江 晶太
絵コンテ・演出・作画監督渡辺祐


 中国のゲーム会社Hypergryphがスマートフォン向けにリリースしているゲームが原作。Yostarはあくまで日本の現地法人なのね、知らんかった。
 制作はYostarが自ら設立したスタジオことYostar Pictures。自社ゲームのPVは全部同スタジオが制作しているみたい。TVアニメの制作は『アズールレーン びそくぜんしんっ!』以来で、フル尺のアニメを制作するのは本作が初。
 監督の渡邉祐記、副監督の西川将貴は共にアークナイツのPV絵コンテ・演出を担当していた人。脚本は「Yostar Pictures」表記になっている。シャフトの東 富耶子みたいな?
 キャラクターデザインは、Yostarのゲーム『アークナイツ』『ブルーアーカイブ』のアニメPVでキャラデザを担当している高藤彩。実質PVのスタッフがそのままアニメを制作しているみたい。


夫婦以上、恋人未満。

 高校生のリアルおままごと。というか不倫ごっこ
 ひょんなことから、オタク主人公と、オタクに優しいギャルが同棲生活を始めることになったお話。エロ漫画かな。1話はラブコメ要素が多く、「夫婦実習」という舞台装置もまた二人にラブコメ展開を強制する機会として機能しているので、よりエロ漫画感の強い雰囲気になっている。夫婦実習っていうけど、中身は「読者が喜びそうなイチャイチャカップルを演じてください」っていう直球の内容だよね。
 ところが、2話以降はいうほど主人公はオタクでもなければ、ギャルもオタクに優しいギャル感は無い。二人にはそれぞれ想い人がいて、「かりそめの夫婦生活が順風満帆だったら、相方チェンジしていいよ」という謎ルールに則り、お互いの協力関係を築いていくお話にシフトしていく。ここがすごく『とらドラ』っぽくて好き。
 と同時に、単純接触効果によってブレていく関係性を、それぞれの視点で描くラブストーリーに。特に3話の、主人公が幼馴染ヒロイン(負けそう)にギャルとの同棲生活がうまくいかないことを相談をするシーンがすごく良くて、彼女の「妬けちゃうな」っていうセリフが『化物語』の羽川翼や『やがて君になる』の佐伯沙弥香よろしく「本音を決して口にすることができない、聡く、心の弱い、嫉妬深い人間味」みたいなものを描いていて感動した。思ったよりも三角関係に突入するまで早かった。
 あと、3話ラストの演出がすごく良かった。会話の内容こそ「二人がちょっとだけ本音を吐露して、仲直りするまでの話」なのだけれど、あの狭い個室の中で、使える小物を駆使して「この作品のメインヒロインはこの子ですよ」ということを暗示(明示?)する演出に感動した。お前・・・結婚式・・・お前・・・!!
 全体的にポップで鮮やかな色彩が印象的。その割に内容は(特に3話以降は)しっとりしていて、不思議な雰囲気。その割に陰影表現による心情描写も多くて、ラブコメっていうより青春群像劇の色が強いかも。
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 『ヤングエース』にて2018年から連載中の、金丸祐基による漫画が原作。
 制作はstudioMOTHER。2019年に設立された若いスタジオで、劇場版作品『宇宙戦艦ヤマト』シリーズを制作するために設立されたんだって。MOTHERってそういう。TVアニメシリーズは『ありふれた職業で世界最強 2nd season』に制作協力として参加(元請け:asread.)した以来で、TVアニメの元請けは本作が初。


うちの師匠はしっぽがない

 上方落語版『昭和元禄落語心中』 
 ひょんなことから上方落語噺家を目指すことになった狸のお話
 落語には「江戸の落語」と「大阪(京都)の落語」があって、昭和元禄落語心中じょしらくは前者。本作は後者なので、舞台は大阪。師匠の高座に一目惚れした主人公が弟子入りするところから始まる物語なので、上方落語をゼロから説明している。ありがてえ。
 また、『じょしらく』より毎話ちゃんと実際の演目を扱っていて、落語初心者向けの内容が充実している。このパートが純粋に面白いので、もっと尺を増やしてほしいまである。落語を披露するのは師匠に限らずいろんな噺家が登場するけれど、みんなすげー上手いの。声優ってすげえ。
 落語に関して、ちゃんと上方落語協会が「協力」としてクレジットされている。また、落語家の笑福亭生喬、林家染雀、露の紫が「落語アドバイザー」として参加しており、ガチの上方落語が描かれている。寄席の囃子演奏も、笑福亭生喬、林家染雀を含む現役の方が演奏してるんだって。すげー。
 動きの少ないアニメということもなく、特に落語シーンの所作(お芝居)が非常に丁寧に絵が書かれていて面白い。壇上で繰り広げるお芝居と声のお芝居の緩急のタイミングが完璧なんだけど、どうやって作ってるんだろ。先のアニメ『オッドタクシー』では実際の芸人さんに漫才をしてもらった上で映像を後から付けていくプレスコ形式にしていたらしいけど、本作もプレスコなのかな。それとも声優さんの技術が完璧なだけ?
 その他のシーンでいうと、師匠の所作が完璧すぎる。座るときの作画も立つときの作画も、歩くときの作画もめっちゃ丁寧ですき。わんぱく、というか野生児な主人公との対比が、日常のお芝居からもうありありと描かれていてすごいよね。
 主人公を演じるのはM・A・Oで、お師匠を演じるのは山村響。この二人に限らない話だけど、それにしても中の人の滑舌が凄まじい。本来の上方落語はもっと早口だと思うけれど、本作は聞き取りやすさ重視の話速になっているみたい。それにしても聞き取りやすい。もちろん師匠の高座もスゴイんだけど、最後に差し込まれる「その回に披露された演目の説明をする主人公のパート」もすごい。コッチはかなり早口で説明していて、それでも非常に聞き取りやすい。声優ってすげー。
 総じて作風はかなりコミカル。落語と聞いててっきりお硬い内容なのかと思ったが、舞台が大正時代なので「落語家=当時の一流コメディアン」として位置づけられており、今で言う「漫才士の成長物語」といった趣向の作品に。たのしい。
 特に本作は主人公が獣なので、物理的に飛んだり跳ねたりする様が可愛いくてすき。
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 『good!アフタヌーン』にて2019年より連載中の、TNSKによる漫画が原作。
 制作は『リーマンズクラブ』『ビルディバイド』『よふかしのうた』『咲う アルスノトリア すんっ!』のライデンフィルム
 監督は『魔法少女特殊戦あすか』『スタンドマイヒーローズ PIECE OF TRUTH』『はたらく細胞BLACK』の山本秀世。シリーズ構成はいつもの待田堂子。キャラクターデザインの山内遼は本作が初キャラデザかな。

BLEACH 千年血戦篇

  大人のBLEACH。分割4クールなんだって。
 これまでのあらすじ。
・ひょんなことから死神になった主人公が、自身もその業務を引き受けることに(死神代行編)
・主人公の仲間であるルキアが死神の総本山に連行されてしまい、救出のために仲間と一緒に殴り込みに行くことに(尸魂界編)
ルキア連行の黒幕が登場、新しい驚異である破面に主人公の仲間である井上が破面たちの総本山に連れ去られてしまい、殴り込みに行くことに(破面編)←旧アニメはここまで
・黒幕との戦いが終わり、代償として死神の能力を失った主人公は普通の高校生として日常を送っていたが、ひょんなことから再び戦いに巻きこまれてしまう(死神代行消失編)
・なんやかんやあって死神になった主人公のもとに謎の人物が訪ねてくる←今ここ
 シリアスな話が多い本作だが、1話では主人公チームのわちゃわちゃした感じの会話劇がまた見れて感動した。特に最序盤である死神代行編が好きなので、この雰囲気こそBLEACHだなぁ、って。千年血戦篇は終始血で血を洗う戦いなので今後こういう描写は見れないかもしれないけれど。
 新シリーズの演出で特に印象的なのは、夜の暗さ。先のアニメ『呪術廻戦』でも描かれていた夜への畏怖がちゃんと描かれている。あっちが本作から影響を受けているように、本作もまたあのアニメから影響を受けて原点回帰してるんかな、って。
 あと意外だったのは、アニメでも原作のポエットを使ってるところ。特にわかりやすいのが、各話のサブタイの変化。旧作では夕方のアニメということもあり、非常にわかりやすい「バトルモノとしての」BLEACHになっていた。
 一方の新作は、サブタイがちゃーんと英語表記に。原作サブタイそのままなので、当時原作を読みながら「なんやこのサブタイ、全然意味わからん」ってなっていたことを思い出した。
 当然原作は漫画なので白黒なのだけれど、それ以上に本作の原作は「白と黒」のイメージが非常に強い。千年血戦篇はこのビジュアルイメージが強い陰影表現によってしっかり描かれていてすごく良い。
 BLEACHといえばOP、というくらいOPの印象が強いアニメだよね。未だに「ROLLING STAR」とか「アフターダーク」とか普段聴いてるけど、あれもう15年も前の曲なんだね。やば。新シリーズの第1期OPを飾るのはキタニタツヤの「スカー」。OPほんとテンション上がるわ。
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タニタツヤ「スカー」
作詞・作曲・編曲:キタニタツヤ
絵コンテ・演出:田口智久
総作画監督:長谷川亨雄
作画監督とみながまり、川﨑玲奈


 『週刊少年ジャンプ』にて2001年から2016年まで連載された、久保帯人による漫画が原作。2010年に公開された『劇場版BLEACH 地獄篇』以来12年ぶりのアニメ化となる。
 制作は引き続きStudioぴえろが続投。監督は旧シリーズの阿部記之から、『双星の陰陽師』『キノの旅 -the Beautiful World- the Animated Series』『アクダマドライブ』の田口智久にバトンタッチしている(本作のシリーズ構成も兼任)。同氏の担当するアニメはやたら雰囲気が良いアニメばかりなので、同じく雰囲気のクセが強いBLEACHと凄まじいシナジーを発揮している。
 キャラクターデザインの工藤昌史、音楽の鷺巣詩郎、また各キャストも続投しているため、最高にBLEACHしている。


後宮の烏

 中華風宮廷ファンタジー。こうきゅうのと・・・烏。
 とある王国の離宮に住む后のお話。不思議な力をもつ后(主人公)が、色んな人間関係に首を突っ込んでいく、ジャンルとしてはミステリー作品だろうか。王宮の中で数奇な運命を辿った人たちの人間模様を、1話完結で描いていく。
 舞台のベースは中国の王朝だが、歴史モノではないらしい。最近は中世~近世ヨーロッパがベースになっているファンタジー作品を多く視聴していたので、珍しく東の国のファンタジーということで色々と新鮮。最近だと『東離劍遊紀』とかが記憶に新しいけれど、本作はもっぱら王宮の中のお話。
 とはいえ、東西によらず王国内のドロドロした覇権争いや人間関係を描いていくという点ではあまり違いがないような気がする。最近の作品であれば『薔薇王の葬列』のような、非常に硬派な作品になっている。
 なんせ中国の王朝がベースになっているので、内容が非常にエグい。先輩に靴を隠されたとかそんな生易しい話はなく「帝の暗殺容疑を着せられて処刑された」「口封じのために舌を切り落とされた」みたいな話ばかり扱っていて、ファンタジーとはいえかなりリアリティ高めのドラマが繰り広げられている。
 でも、意外と後味の良い話が多い。死者と会話が出来る主人公がいるからこそ、こういうエグめのドラマでも明るい話として占めることが出来るのね。
 あと、主人公は風貌こそ『xxxHOLiC』の某魔女っぽいけれど、中身がめっちゃ年相応の女の子でとてもかわいい。帝から捜査のお礼としてお菓子をもらった時の「子供の駄賃かよ」と文句を言いながらもぐもぐ食べてるのめっちゃ可愛かった。
 それにしても世界観がすげー良い。キャラクターのネーミングもそうだし、衣装や食べ物など幅広く中国の文化を丁寧に描いているので、あんまり「異世界のファンタジー」っていう雰囲気じゃないよね。歴史モノを見ている気分。それにしても主人公の愛称が「にゃんにゃん」て。ニャンニャンて。どういう字なんだろ。
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 集英社オレンジ文庫集英社)より2018年~2022年に刊行された、白川紺子による小説が原作(イラスト:香魚子)。
 制作はBN Pictures。監督は『銀魂』『美男高校地球防衛部LOVE!』でおなじみ宮脇千鶴。シリーズ構成はフジテレビのTVドラマ脚本を中心に執筆している大島里美。アニメだと『働きマン』シリーズ構成や『漁港の肉子ちゃん』脚本を担当。働きマンはフジテレビ案件か。キャラクターデザインは『銀魂』『FAIRY TAIL』『かなしきデブ猫ちゃん』の竹内進二


虫かぶり姫

 本好きの「悪役」令嬢
 冒頭で主人公が視聴者に向けて説明するセリフってもう絶滅していると思ってたけど、まだ存在してた。「私、〇〇中学に通う中学2年生!」みたいなやつね。
 とある世俗に疎い令嬢が、ひょんなことから第一王子の婚約者になるお話。冒頭でいきなりフラれてやんの。三度の飯より活字が好きな主人公が、徐々に王子に惹かれていくラブ・ストーリーが描かれていくみたい。
 主人公を演じるのは上田麗奈。本人こそ「風が吹けば消えてしまいそうなくらい存在感が薄い人」といった御仁であれ、そういうキャラクターを演じているのって実はあんまり見ない気がするけれど、本作の主人公はまさにそんな感じ。生命力が弱そう。色素がうすそう。そして、そのうち消えそう。
 強い女性、というかライバルに居場所を奪われる主人公。主人公がそれに対して抵抗せず、さっさと身を引こうとする感じ。冒頭のセリフに「諦念」を感じさせるお芝居ほんと好き。1~2話で4年経過しているのだけれど、この間に起きた主人公の心情の変化を観ると、冒頭のセリフに現れている諦念が「何に対して」なのかちょっとだけ分かるようになっているのが好き。身を引こうと決めたときに初めて自身の心情の変化に気づく主人公の演出がエモい。
 で、2話ラストのオチよ。本作における重要な要素として「主人公は信頼できない語り部である」ということ。原作が小説家になろう連載ということもあり、「俺、またなんかやっちゃいました?」に通じるものがある。特に1~2話では、主人公は「本が好きなだけの、冴えない弱小貴族の娘でしかない」という語り方になっているけれど、それは本作が主人公の語りで描かれているために「主人公にとって些細なこと」が自動的に省かれていて、描写されないからなんだよね。叙述トリックかよ。
 「本好きの下剋上」でもそうだったけれど、そもそも本が好きな人に限って「世間知らず、物知らず」なはずがないよね、という要素が本作の肝になっているところが好き。あっちの作品もまた「本が好き」→「この世界には本がない」→「無いなら作ればいいじゃない!」という、ある種の異世界チート物語であるように、本作の主人公もまた「本好き」という特性を生かした物語になっていて面白かった。
 主人公が花を背負っている・・・だと・・・。全体的に柔和な印象のアニメーションと、THE・少女漫画を目指したのであろう華やかな絵。明るいトーンの絵と、かなり王道のシンデレラ・ストーリー。また、ドロドロした近世貴族の愛憎劇要素もちゃんと盛り込んであって、すごく少女漫画。小説原作だけど。
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 由唯による小説が原作。2015年から2022年まで『小説家になろう』にて連載され、書籍版が2016年からアイリスNEO(一迅社)より刊行中(イラスト:椎名咲月)。
 制作はマッドハウス。監督は『ミカグラ学園組曲』『甘々と稲妻』の岩崎太郎。シリーズ構成は『彼女、お借りします』『EDENS ZERO』『シュート!Goal to the Future』『新テニスの王子様 U-17 WORLD CUP』の広田光毅。キャラクターデザインは『ミカグラ学園組曲』『ゾイドワイルド』総作画監督、『きみの声をとどけたい』『オーバーロードⅢ』サブキャラクターデザインの高橋瑞香。初キャラデザかな。


令和のデ・ジ・キャラット

 ブロッコリーの宣伝アニメ。タイトル回収 ショートアニメ
 ノリがもう凄く桜井監督。ショートアニメなので、そういう成分しか無い。先のアニメ『まちカドまぞく』で言うところの「シャミ子があまりに美味しい牛肉を食べたため、一瞬だけトリップして宇宙のめくれた部分が見えていたときのやつ」みたいなアニメが最初から最後まで続いている。ギャグアニメなので何でもあり過ぎて草。特にここ20年で秋葉原を中心とした文化は大きく変化しているので、そのあたりをいじりまくっているのが本作の良いところ。古い時代も知っている人たちだからこそ自虐ネタに出来る部分も結構あるよね。
 あとアニメを一時停止したときに気づいたのだけれど、黙っているとめっちゃかわいい。邪神ちゃんかよ。
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 元はブロッコリーの運営するショップであるゲーマーズのマスコットキャラクター(キャラクターデザイン:こげどんぼ*)と、その漫画が原作なのね。知らんかった。初出は1998年らしく、もう4半世紀も前なのね。
 制作はライデンフィルム。同スタジオの代表取締役である里見哲朗は元々ブロッコリーの社員で、メディアミックス作品『ギャラクシーエンジェル』のプロデューサーとか担当してたんだって。へー。
 監督・シリーズ構成は旧シリーズに引き続き、『斉木楠雄のΨ難』『ミュークルドリーミー』『まちカドまぞく』の桜井弘明が続投している。
 キャラクターデザインは、桜井監督が携わった作品『GA 芸術科アートデザインクラス』にてキャラクターデザインを担当していた渡辺敦子。また、『デ・ジ・キャラットにょ』にてキャラクターデザインを担当していた山川吉樹は「演出協力」として参加している。主要スタッフがJ.C.STAFFの人ばかりなので、J.C.STAFFのアニメを観ている気分。


名探偵コナン 犯人の犯沢さん

Netflix独占配信

 日本屈指の犯罪都市、日本は米花町の日常を描くショートアニメ。
 ショートギャグアニメ。死神の住む街・米花町を舞台に、殺人に憧れて上京したとある青年の成長を描く。てかお前犯人じゃないんかい!
 大地丙太郎監督作品らしく、凄まじい勢いのハイテンションギャグアニメ。名探偵コナンといえば「主人公こそ死神」とか散々他方でネタにされているけれど、そういったネタを片っ端から拾い上げている。そこから転じて「この街に住む死神を殺し、世界平和を勝ち取るまでのお話」なのかこれ。
 特に、過去に放送された事件を「主人公に事故物件を紹介する」「むしろ事故物件じゃないほうが稀」というシナリオでネタにしてて笑った。てか風呂場で起きた姉妹の殺人は未遂だったやんけ。なんせ20年分のストックがあるため、ほんと無限にネタが出てくるの草。ちゃんと劇場版あるあるネタまで取り込んでいて隙がない。
 OPがもう傑作すぎて。今の10代はもうコナン君がOPで踊っていたの知らんでしょうに・・・と、思っていたら令和でもダンスOPはあったのね。じゃあいっかー!

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新浜レオン「捕まえて、今夜。」
作詞:EARSY
作曲:馬飼野康二鎌田俊哉
編曲:船山基紀
絵コンテ・演出:新井陽次郎
作画監督:斉藤千恵


 青山剛昌による漫画『名探偵コナン』のスピンオフ作品で、『週刊少年サンデーS』にて2017年から連載中の、原作・青山剛昌、作画・かんばまゆこによる漫画が原作。
 制作は当然トムス・エンタテインメント。監督はみんな大好き大地丙太郎。脚本もたぶん同氏が兼任している。キャラクターデザインは千坂ふう。誰?
 ナレーション:大地丙太郎。なんでこんな形で監督の声初めて聞かなアカンねん。意外とハリのある良い声だった。


ロマンティック・キラー

Netflix独占配信

 干物女恋愛シミュレーション
 ひょんなことから恋愛シミュレーションゲームの主人公になった女子高生のお話。「少女漫画ってほぼファンタジーだよね」ということで、3次元に興味を失いつつあった主人公が、魔法の力によって無理やり少女漫画の世界線に飛ばされてしまう広義の異世界転移モノ。望まぬ異世界転移から元の世界に戻るため、元凶である鬼畜マスコットキャラクターとの戦いが描かれる。
 主人公の最終目的が「イケメンになびかず、恋愛ゲームでいうバッドエンドを迎えること」なので、あらゆるフラグを回避しようと独り相撲する様が面白いという意味では『ハメフラ』と似た魅力があるよね。ただ、他人に好意をなすりつけることができない分より独り相撲感が強くてすき。いつも主人公の表情が非常に豊かでやたらヌルヌル動くの草。何と戦ってるんだ。
 ただ、なんせ現役の高校生かつ『ホリミヤ』の堀さん並に雑な性格ゆえ、フラグの折り方がすっげー雑で毎回笑う。とんでもない勢いで乱立するフラグを、片っ端から雑にへし折っていく主人公の暴れっぷりがハイテンションなコメディとして面白い。
 破天荒な展開のようで、最終的にはちゃんと少女漫画の王道展開に収束していくのが結構凄い。少女漫画はブラックホールなのか?少年漫画だったわ。
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 『少年ジャンプ+』にて2019年から2020年まで連載されていた、百世渡による漫画が原作。
 制作は『すばらしきこのせかい The Animation』『セブンナイツ レボリューション -英雄の継承者-』のドメリカ。監督は同スタジオの一番偉い人こと市川量也で、同スタジオの作品はすべて監督を務めている。シリーズ構成は『プリパラ』『まちカドまぞく』『厨病激発ボーイ』『ミュークルドリーミー』『キラッとプリ☆チャン』で一部脚本を担当していた大場小ゆり。旧アニメ版のデ・ジ・キャラットで脚本を担当していた人で、新作の方は参加してない感じ?
 キャラクターデザインは『厨病激発ボーイ』『SEVEN KNIGHTS REVOLUTION 英雄の継承者』『すばらしきこのせかい The Animation』の松浦有紗


ブルーロック

 攻撃的なアオアシ
 日本サッカー代表の強化選手として招集された主人公が、フォワードの選手候補生たちと一緒に強化合宿に参加するお話。
 他の学校との試合を描く作品やプロの世界を描く作品と違い、本作の主人公たちは基本的に寮生たちとのトレーニングしかしないので、厳密には「サッカーを描く作品」とは言えないのかもしれない。サッカーとはサッカーのルールに則って試合をするからサッカーなのであって、試合をしなければそれはただの玉遊びなのでは。サッカーとは一体(哲学)
 特に目を引くのが「登場する選手はみんなフォワードで、かつ他のポジションを強要されず、むしろフォワードとして優れたパフォーマンスを発揮しなければいけないという命題を与えられている」という特殊な設定。
 通常、サッカーはチーム連携の話とか攻撃と守備のとか、戦術的な要素の多い複雑なスポーツなのだけれど、本作はそれを一旦忘れて「小学生の時にやってたお団子サッカー」から順番に「どうやったら1点を取ることができるか」を順序立てて描いている。サッカー詳しくない人こそとっつきやすい内容に。
 特にサッカーをテーマにした作品は主人公=フォワードのイメージが強くて、いかに格好良いシュートを決めるか、が題材になりがち(分かりやすいもんね)。先のアニメ『アオアシ』は主人公を前衛から後衛にするという革新的な作品だった一方で、本作は「登場人物が全員フォワード」という、別のベクトルで革新的な作品に。でも本作のほうが既存作品に対するメタ的な作品かもね。
 面白いのは、両作とも主人公の素質が割と似ているところ。環境が違うことで、方や「人は考える葦である」に、方や「鼻の効く獣」になっていくので、作家性の違いが如実に現れていて楽しい。
 序盤は荒唐無稽な展開に翻弄される主人公たちが描かれているが、3話で氷帝学園跡部様みたいな選手にボロ負けした後から徐々に作品の方向性が見えてくるため、とりあえずそこまで観てほしい。
 荒唐無稽な設定について。一応作中では大まかな説明こそあるけれど、要は「国が行っている非人道的なデスゲームで、国内では反対運動が起こっていたが、国の弾圧によって沈静化されてしまい、事実上黙認されている」みたいなデスゲームモノのサッカー版となっている。お話としても、最後の1人しか生き残れない「蠱毒」を戦い抜く主人公を描く作品になっているので、サッカー漫画というよりデスゲーム漫画なのかもしれない。ただ、デスゲームモノによくある「騙し、騙され」とか「男女間の痴情のもつれ」みたいな要素が無い分とっつきやすい内容ではあるよね。
 サッカーの描写を除けばリアリティラインはそれなりなので「(そんなのないよ)ありえない」とは言わず「それがありえるかも」くらいのテンションで楽しもう。
 それにしても作画すごい。全選手がゴール前のパフォーマンスに特化したポジションのため、ドリブルだけでも観てて面白い。超能力サッカーとは言わないまでも、よりアクション要素の強いスポーツ作品といった趣向に。サッカーのアニメ観てるとつい忘れちゃうけど、人間が走ってる作画ってめっちゃ大変なのにほんとよくやるよね。
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 『週刊少年マガジン』にて2018年より連載中の、原作:金城宗幸、作画:ノ村優介による漫画が原作。
 制作は『推しが武道館いってくれたら死ぬ』『転生したらスライムだった件』『魔法科高校の劣等生 追憶編』のエイトビット。監督は『魔法陣グルグル』副監督で、『ハイキュー!!』で一部演出を担当していた渡邉徹明。シリーズ構成の岸本卓もまた『ハイキュー!!』のシリーズ構成を担当していた人だったりする。副監督は『ソードアート・オンライン -アリシゼーション-』『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』『球詠』の一部絵コンテ・演出を担当していた石川俊介。キャラクターデザインは『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』『マクロスΔ』『フルーツバスケット』の進藤優。


聖剣伝説 Legend of Mana -The Teardrop Crystal-

 かつての王道冒険ファンタジー
 ハイファンタジー冒険活劇。本作とは関係ない話だけれど、最近のなろう作品って世界観を売りにして他作品と差別化を「していない」ところがある種の強みになっていて、冒頭で「この世界はこういうところで、こういう人達が住んでいて、こういう国があって、こういう国と関係があって・・・」と説明しているのは「面白いのはここじゃないんですよ、ここからが見どころですよ」という意味もあるのかな、と思いながら観ているのだけれど、翻って本作はむしろ間逆なのが印象的。
 主人公の旅を通じて、世界観を小出しにしながら描いていくのが本作の特徴。特に主人公にとっては「世界=自分の住んでいるコミュニティ」という認識から始まり、旅を重ねることでどんどん世界が広がっていく面白さが描かれている。この面白さはゲームの冒険ファンタジーの醍醐味みたいなもので、それこそ今年発売のゲーム『エルデンリング』で全く同じワクワク感を味わっていた身としては、本作はまさに「見る冒険ファンタジー」としてすごく面白い。ちなみにエルデンリングの進捗ですが、発売直後からプレイし始めてようやく「ミケラの聖樹」に到達し、今はローレッタ(本体)と2週間位殺り合ってるところ。まだモーグウィン王朝とラスボスも未攻略なので、先日発表されたアーマード・コアの新作が発売される前には1周目クリアしたいなぁ。
 閑話休題。本作は1話からよくわからん造形の亜人も説明なしにどんどん出てくるし、背景美術もすごく凝っているし、よくわからん動植物やよくわからん度し難い食べ物を食べさせられている主人公を観ていると『メイドインアビス』を思い出す。あまりに多種多様な登場する作品なので、多分キャラクターデザインした人は死ぬほど大変だったと思う。あと小物デザインの人も。


 1999年に発売されたスクウェアスクエニになる前)のゲームが原作(ハード:PlayStation)。
 プロデュースとしてワーナー ブラザース ジャパンが関わってるのね。スクエニすげー。アニメ制作は、『マブラヴ オルタネイティヴ』『CUE!』『東京ミュウミュウ にゅ~♡』のグラフィニカ、『Lapis Re:LiGHTs』『禍つヴァールハイト -ZUERST-』『天才王子の赤字国家再生術』の横浜アニメーションラボ。
 監督は『ド級編隊エグゼロス』『アズールレーン びそくぜんしんっ!』『異世界食堂2』の神保昌登で、シリーズ構成も兼任している。キャラクターデザインは『Lapis Re:LiGHTs』の池上たろう。
 

アキバ冥途戦争

 メイドの仁義なき戦い
 メイド喫茶に従事するメイドさんの日常アニメ。作中では1999年が舞台になっているが、現実でのメイド喫茶は2000年中頃から流行り始めているらしいので、本作は「架空のメイド喫茶史」ということになる。
 当時、メイド喫茶暴力団シノギとして重用されており、縄張り争いの激しい秋葉原では毎日のように抗争が勃発していた。メイド喫茶に従事するメイド自身もまた、自ら武器を手に取り血で血を洗う戦いに身を投じていた。かれこれ20年以上前の秋葉原を舞台にしたお話なので、当時を知らない人からするとかなり衝撃的な内容かもしれない。
 私が最初に秋葉原を訪れたのは2000年代中頃だったが、あの雑居ビルの汚れた雰囲気や、細い路地のあちこちにチラシを配っているメイドさんが立っている感じやオタクの着ている服装等、すごくリアルに描かれていて、PAWorksのお仕事アニメらしさを感じるクオリティに。
 ところで、こないだ秋葉原UDXで開催されていた『かぐや様は告らせたい』のイベントを見に行くため、久しぶりに秋葉原を訪れたのだけれど、駅前めっちゃきれいになってるのね。電気街口を出てすぐの大通り沿いにたくさんあった電子機器の販売店等は無くなり、普通のビル街になっていた。もはや「電気街口」のアイデンティティー失ってるやん。もうあの「秋葉原」はみんなの記憶の中にしか無いのでは?と思うと、本作のように「当時を思い出すためのキッカケ」ってすごく貴重な存在なのかもしれない。
 「秋葉原オタク文化」を扱った作品としては、先のアニメ『逆転世界ノ電池少女』もまた非常に濃い内容のオタクアニメ。あちらは「オタク文化が失われてしまったディストピア世界で、もう一度オタク文化を取り戻そうと革命を起こすロボットアニメ」というアプローチだったので、「当時の秋葉原の雰囲気をリアルに描こう」というコンセプトの本作とは随分異なる内容になっている。CV杉田智和のキャラが非常に良い味を出しているアニメなのでついでにおすすめ。
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 ベースはメイドの皮を被った任侠モノだが、各話ごとにいろんな昭和後期〜平成初期ネタにまみれていて、毎話おっさんホイホイすぎる。EDとか、ガッツリ金曜ロードショーの初代OPだし。それ何年前だよ!『あしたのジョー』のパロディ回も、クライマックスの作画熱量が本家並みに熱く、ちゃんと最後までやりきってて好き。
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OP「メイド大回転」
歌:とんとことんスタッフ一同
作詞:SHIBU、ケダモノランド経営戦略室
作曲:SHIBU
編曲:SHIBU
画コンテ:松木大祐(10GAUGE) 
演出:本間修
総作画監督:仁井学


 オリジナルアニメ。制作は、お仕事アニメでおなじみP.A.WORKS。これはお仕事アニメだった?監督は『サクラクエスト』『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』『天地創造デザイン部』の増井壮一。シリーズ構成は、Youtubeアニメ『混血のカレコレ』原作・脚本の比企能博。TVアニメで脚本を担当するのは初かな。キャラクターデザインは『神様になった日』の仁井学。


陰の実力者になりたくて!

 大人のオーバーロードごっこ
 ダークヒーローになりたい主人公が異世界に転生するお話。1話は前日譚で、原作のかなり先のエピソードをアニメ化しているため「アニメ1話であえて変化球投げて初見も原作既読税もまとめて心を鷲掴みしちゃおう大作戦」みたいなのが苦手な人は2話からでも大丈夫。
 中二病の主人公が夜な夜な考えていた「ぼくのかんがえたさいきょうの陰の実力者」がどんどん現実になっていくお話。あれよあれよと祭り上げられていくさまはちょっとオバロっぽい。
 本作の特徴は、主人公にとっての目標が「陰の実力者になる」こと。主人公は本気でごっこ遊びを楽しみたい年頃の男の子なので、まず手段が目的になっている。成り行きで陰の実力者や勇者になっていく他作品とはこの点が決定的に違う。
 基本的に「陰の実力者っぽい行動するのたのしー!」とか「表向きは冴えない青年を演じるの、たのしー!」と言った具合に異世界ライフを満喫する主人公のお話がメインになっていて、実際に作中で起きる事件や陰謀は、ごっこ遊びのオマケみたいな扱いに。
 そんな主人公のノリの軽さに反して、内容はかなりダークでシリアス。主人公もシリアスな顔してノリノリで飛び入り参戦するため、ツッコミ役が不在なのが痛い。ある意味視聴者がツッコミ役。
黒幕「ククク、お前には魔王復活の生贄になってもらおう・・・」
ヒロイン「くっ、私にもっと力があれば・・・!」
主人公「たーのしー!」
視聴者「おい」
 この手の作品にしては珍しく、主人公が転生前も転生後も同じことをしている。転生によって環境が変わっただけで、主人公の性格や行動原理、目的が変わってないんだよね。そういう意味では「異世界の人たちが主人公を面白い方向に導いていくお話」という感じか。


 「小説家になろう」にて2018年から連載されている、逢沢大介による小説が原作。書籍版はエンターブレインKADOKAWA)より2018年11月から刊行中(イラスト:東西)。漫画版も2018年の12月から連載を開始していて、作品の発表から1年以内にメディアミックス企画が稼働しているのすごいよね。アニメ化もこのときにもう決まってた感じなのかな。
 制作は『こみっくがーるず』『グランベルム』『ダーウィンズゲーム』のNexus。監督は『こみっくがーるず』助監督で、『グランベルム プリンセプスのふたり』キーアニメーター、『ダーウィンズゲーム』キャラクターデザインの中西和也。シリーズ構成は『ブラッククローバー』『ましろのおと』シリーズ構成の加藤還一。キャラクターデザインは『Vivid Strike!』アクション監修を、『たとえばラストダンジョン前の村の少年が序盤の街で暮らすような物語』でキャラクターデザインを務めた飯野まこと。


転生したら剣でした

Abema独占見放題

 勇者の剣の成り上がり
 ひょんなことから剣に転生しちゃった主人公が、たまたま拾ってくれた猫耳少女の保護者になる話。この場合、拾われたのはむしろ猫耳少女なのでは。
 他作品と比べてかなり血の気の多い世界になっており、主人公たちはあらゆる困難を物理的に突破していくアクション要素強めのストーリーになっている。
 ちょっと面白かったのが、剣と少女の関係。客観的に見ると、序盤の展開は「力を欲している少女がある日『力が・・・欲しいか・・・』囁く魔剣に出会い、その余りある力に溺れて破滅していく」みたいなストーリーに見えるのだけれど、その後の展開はむしろ逆。「あらゆる問題を物理で解決しようとする不退転のイノシシみたいな少女」と「ステイ!一旦退こうよ、ヤバいって!と諭す魔剣」という関係性が描かれていて、魔剣がめっちゃ保護者。
 師匠と弟子、あるいは親と子の関係なのね。子が成長しきったら親である魔剣は子離れしちゃうんだろうか。主人公はあくまで道具だけれど、その超高性能っぷりを存分に発揮して子育てに奮闘するスーパーパパのお話だった。それでCVがミキシンさんだったのか。彼が少女に優しく「おやすみ」と声をかけるシーンのパパみがあまりに凄くて、ちょっと泣いた。
 あと、主人公は戦いのサポート以上に彼女の栄養状態を考慮した美味しい料理を作ることに心血を注いでいるため、だんだん「喋る包丁」に見えてくる。本作は異世界クッキングパパだった?
 平常時のミキシンさんも声の表情があまりにも豊かなので、もうキャラの表情いらねえなこれ。実際、魔剣には表情筋がほぼ無いため、あのキャラクターの表情の豊かさはミキシンさんの手腕に依るところが大きいと思う。 
 あと戦闘シーンのメリハリが好き。全体的にアクション多めの作品ではあるけれど、映像の緩急が巧みでずーっと作画開放してるように見える不思議。爆発したときに舞い上がる瓦礫ちゃんと描いているし、かと思えば剣戟はうまく止め絵と瞬間移動のモーション使ってコスト抑えてるし、でもぶった切られたゴブリンは肉体が四散してるし。ドラゴンボールかな。特に血しぶきの作画が丁寧で好き。


 「小説家になろう」にて2015年から連載されている、棚架ユウによる小説が原作。2016年からGCノベルズ(マイクロマガジン社)より書籍版が刊行されている(イラスト:るろお)。
 制作は『社長、バトルの時間です!』『魔女の旅々』『月が導く異世界道中』『プラオレ! PRIDE OF ORANGE』のC2C。監督は『無能なナナ』『月が導く異世界道中』『佐々木と宮野』の石平信司。手掛けた作品の続編が作られる率がやたら高い監督なので、ぜひ無能なナナの続編を何卒。シリーズ構成は、『爆釣バーハンター』『けだまのゴンじろー』『ドラえもん』『ハクション大魔王2020』『妖怪ウォッチ』等、子供向けアニメを中心に脚本を担当している事が多い永野たかひろ。キャラクターデザインは『社長、バトルの時間です!』『魔女の旅々』の齋藤温子。


恋愛フロップス

 レガシーな新作ラブコメ
 オリジナルアニメでありながら、ゴリゴリの少年漫画系ラブコメ。ひょんなことから、主人公と同棲することとなった女の子5人の日常を描いていく。
 最近のラブコメはヒロインの数によらず2クール以上放送される場合が多く、それこそ『彼女、お借りします』で登場の遅かった墨ちゃんみたいな子にもちゃんと出番が回ってくるようになっているけれど、本作は尺足りるんだろうか。
 というわけで、主人公との出会いから同棲までの過程、さらには全員が主人公になびくまでの過程までもが爆速で笑った。親の都合で見ず知らずの女の子5人と同棲することは割りとよくあるけど、5人全員チョロインは流石に珍しくない?
 実はちゃんと過去のつながりがあって、それぞれの担当回で主人公との過去の接点が掘り下げられていく感じなのかな。
 少年漫画っぽいラブコメとはいえ、アニメオリジナルならではの強みが「漫画で描けないくらいのド下ネタ」で草。たしかに「屈強な野良犬に掘られる主人公」とか「官能小説を音読する女子高生」くらいキツいネタははあんまり少年漫画で見ないわ。1話からやりたい放題ですき。
 また、「今までにない、新しいラブコメを見せてやるぜ!」っていうより「今はほとんど見なくなったあのラブコメをもう一度見せてやるぜ!」だよね。全体的に古典をなぞるように作られている感じがあって、そうとは知らずに観ると「何だこれ?」ってなるかも。個人的には、主人公は一瞬でいいから男の子を好きになってほしかった。そこもまた、テンプレを踏襲した女性キャラだったのね。


 オリジナルアニメ。制作は『ひぐらしのなく頃に』『見える子ちゃん』『異世界迷宮でハーレムを』のパッショーネ。監督は『ハッピーシュガーライフ』『ソウナンですか?』『ランウェイで笑って』『うらみちお兄さん』の長山延好。シリーズ構成は『STEINS;GATE 0』で脚本を担当していた安本了。キャラクターデザインは『きんいろモザイク』『ひなこのーと』『BanG Dream!』の植田和幸


4人はそれぞれ嘘をつく

 腹を割って話すことができないあそびあそばせ
 ひょんなことから仲良くなった4人のクラスメイトたちの日常を描く作品。がっつりギャグ作品。
 4人共やんごとなき事情を抱えていて、「なんとかして身バレだけは回避しつつ、無事に卒業するため日々奮闘している様」を面白おかしく描いている。普通の会話→Aが身バレしそうになり、話を軌道修正→Bが身バレしそうになり、話を軌道修正→以下無限ループ。いつも話がめちゃくちゃになってて草。
 友人にも明かすことの出来ない隠し事は程度の差こそあれ、誰しも抱えているものだけれど、本作はギャグ時空ゆえ、各キャラの設定がてんこ盛りで笑った。『Ψ木楠雄の災難』とか『キルミーベイベー』みたいなノリやん。本人にとっては深刻な問題なのだが、ここまで振り切ってるとギャグとして成立する不思議。
 あくまで、高校生活を乗り切る>友達と仲良くするという優先度なので、事あるごとに「もう嘘は突き通せそうにないか・・・殺そう」ってなるの草。スパイファミリーですらもうちょい仲良かったのに、すぐ見限ろうとするじゃん。主人公たちが思春期だからこその殺伐とした感じがとてもすき。


 2020年より連載中の、橿原まどかによる漫画が原作。原作は4コマ(5コマ?)漫画。
 制作は『ダメプリ ANIME CARAVAN』『真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました』のスタジオフラッド。監督は、同スタジオの2作品に引き続き星野真が続投している。シリーズ構成は『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』『KING's RAID 意志を継ぐものたち』『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…X』『真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました』の清水恵。タイトル長いわ!!キャラデザの渡辺るりこもまた前作からキャラデザを続投しており、スタッフ的にはずっとワンチーム体制なのかな。


ヒューマンバグ大学 -不死学部不幸学科-

アマプラ独占見放題

 佐竹博文の世にも奇妙な物語
 1話はとある死刑囚のお話。原作が実話ベースのルポっぽい内容のため、本作は全体的にリアリティのある描写が多い。1話見ただけでめっちゃ日本の死刑制度(実務的な面)に詳しくなった気がする。
 2話以降は、死刑の執行を経験した主人公が経験した臨死体験を、回想というかたちで紹介していくお話になるみたい。扱われるエピソードは基本的に実話がベースで、似たような事例、特に有名かつレアケースな事案を作中でちょくちょく紹介していく形式のため、雑学番組として面白い。アニメっていうよりも「世界まる見えテレビ」の海外の再現VTRを観てる気分になる。雑学として私生活に活用できそうな気もするけれど、なんせ扱う事案がレアケース過ぎて。
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 Youtubeチャンネル(@humanbug_univ.)にて公開されている漫画動画が原作。各話タイトルのYoutubeサムネっぽさはそういうことか。公開されているシリーズのうち、アニメでは「佐竹博文の数奇な人生」の主人公である佐竹博文がメインのお話になっているみたい。
 制作は『秘密結社 鷹の爪』シリーズでおなじみDLE。監督は『秘密結社鷹の爪 ゴールデンスペル』総作画監督、「週刊ヴァンガ情報局 overDress」の番組内番組『みにヴぁん ら~じ』監督の西山司。シリーズ構成は『みにヴぁん ら~じ』シリーズ構成の中島直俊。実質みにヴぁん ら~じ。
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忍の一時

FOD独占配信

 忍者の仁義なき戦い
 ひょんなことから忍の里の跡取りを襲名することになった少年のお話。「ひょん」の部分が1話では描かれている。
 現代に息づく「忍者の里」と「里同士の抗争」が本作のテーマ。忍者といっても中身はほぼ「武闘派の指定暴力団」や「経済ヤクザ」なので、言い換えると「主人公がある日突然ヤクザの跡取りに指名されて、陽の当たる場所を歩けなくなってしまった話」みたいな内容になっている。
 特徴的なのは、敵対組織から鉄砲玉をよこされた主人公の逃げ込んだ先が「国指定の忍者学校」という設定。言ってみればヤクザ養成学校みたいなところで、ちょっとだけ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』に似てるかも。ただ、あっちは「気に入らないなら表出ろや!決闘でぶっ殺してやる」という公正なルールがある分平和なのに、本作は「気に入らないならバレないように殺せ、忍なんだから」というルールのため、結局主人公は毎話殺されかかっている。味方も普通に裏切るし、先生もあまり助けてくれないし。学校とは。
 というわけで、楽しい学園生活と同時にバトルアクションの描写が多い作品に。1話でも同い年くらいの女の子が死んでいるし、ジャンルとしてはバトル・ロワイアルになるのだろうか。同級生どんどん死にそう。


 オリジナルアニメ。制作は『アイドリッシュセブン』『やがて君になる』『ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 』のTROYCA。監督は同スタジオ作品で絵コンテ・演出を務めていた渡部周。初監督かな。
 シリーズ構成は高野水登。実写畑の脚本家で、『 映画&ドラマ 映像研には手を出すな!』『映画&ドラマ 賭ケグルイ』『仮面ライダーゼロワン』『あなたの番です 扉の向こう&特別編』等に参加している。


勇者パーティーを追放されたビーストテイマー、最強種の猫耳少女と出会う

 一度ゲームオーバーになった主人公の、強くてニューゲーム。
 ひょんなことから勇者パーティーを追放されたビーストテイマーが、最強種の猫耳少女と出会うお話。小説家になろう界隈で人気を博す「主人公が勇者パーティから追放される」というテンプレを踏襲した作品で、先にアニメ化された『真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました』と同じジャンル。2期おめでとー。
 お話の構成としては、追放された主人公が心機一転、新しいパーティを作り楽しい日々を過ごす一方で、主人公を失った勇者パーティの凋落っぷりを対比的に描いていく。勇者パーティが露悪的に、一方の主人公が聖人として描かれている。ひと目で「こいつは悪いヤツ」「こいつはいいヤツ」と分かるように描かれているため、勧善懲悪としての方向性がはっきりしているよね。「真の仲間〜」では、勇者パーティのリーダー格の死亡によって一旦の幕引きとなったが、本作はどんな感じに終わるんだろう。
 そして猫耳少女ちゃんがめちゃくちゃいい子。序盤は主人公が隷属化した猫耳少女とのふたり旅。非常にほのぼのした旅の様子が描かれている。結構コミカルな表現が多く、猫耳少女ちゃんの喜怒哀楽をただ眺めているだけでも楽しい。細かい仕草の描き方も丁寧で「猫耳少女ちゃんの魅力をもっと見てほしい」という制作者の思いがガンガン伝わってくるアニメに。「最強」ってそういう意味だったんか。

©深山鈴・茂村モト/「ビーストテイマー」製作委員会

 本作は、とにかく全部説明してくれる。「ぶっちゃけ主人公のことどう思ってんの?」「テイムされるの嫌じゃないの?」「主人子は後方支援で、少女を肉壁にして戦うの?」「主人公の能力ってどれくらいすごいの?」等、思いつきそうな疑問はだいたい作中のセリフで全部説明されているため、見ていて非常に楽。


 「小説家になろう」にて2018年から連載されている、深山鈴による小説が原作。Kラノベブックス(講談社)より2019年5月から刊行中(イラスト:ホトソウカ)。
 制作は『くまクマ熊ベアー』『ぼくのとなりに暗黒破壊神がいます。』『チート薬師のスローライフ 異世界に作ろうドラッグストア』『勇者、辞めます』『シュート! Goal to the Future』のEMTスクエアード。監督は『ソラとウミのアイダ』『ぼくのとなりに暗黒破壊神がいます。』『ハクション大魔王2020』の濁川敦。シリーズ構成は『かくしごと』『宇崎ちゃんは遊びたい!』『くまクマ熊ベアー』『おにぱん!』の、あおしまたかし。同氏の脚本って、コメディのノリに独特なクセがあるよね。総じてハイテンションでコミカルでかわいいから好き。キャラデザは『ソラとウミのアイダ』『かくしごと』の山本周平。TVアニメじゃないけど「hololive宝鐘マリン original animation MV マリン出航!!」でキャラデザ・総作監を担当しているのもこの人。


万聖街

 中国版カートゥーン
 とある悪魔の少年がホームステイ先の中国で繰り広げるホームコメディ。中国人が主人公じゃないところがポイント。旅行気分で中国での生活を満喫していて楽しそう。
 主人公含め、主要な登場人物は亜人ないし神話生物。相互理解と多様性を描く鉄板モチーフやんけ。ノリは『魔入りました!入間くん』みたいな感じ。
 本土ではショートアニメとして放送されていたものを再編し、1話あたり4-5エピソードづつ配信しているみたい。そのため非常にテンポが良いアニメになっている。
 先の中国発アニメ『時光代理人』と違い、本作はかなりアメリカのカートゥーン調。コミカルな動き、わかりやすいオーバーリアクション、ちょっとブラックなジョーク。日本でいうところの『ちいかわ』みたいな枠で放送されてるのかな。
 登場するキャラの人種がなにげに多様なのもアメリカっぽさがある。あと中国ネタが少ないのがちょっと意外。てか外人4コマのネタ中国でも通じるのか(笑)


 零子还有钞による漫画「1031万圣街」が原作。制作は中国のアニメスタジオで、『羅小黒戦記』の寒木春華動画技術有限公司
 監督:呆尾/小榕/栗子/阿根、総監督:MTJJ/顧傑、シリーズ構成:徐碧君、脚本:徐碧君/黄麗瑛/卡兹比、制作プロデューサー:黄麗瑛/姜皓なんだって。全然わからん。


悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました

 アイリーン様は惚れさせたい。
 悪役令嬢である主人公が、ゲームシナリオ通りに死なずに済むルートを探した結果、魔王を攻略することになった話。
 主人公と出会って光堕ちしていく魔王と、逆に主人公を手放したせいで闇落ちしていく王子様キャラが対比的に描かれていく。要は主人公を虐げた奴にギャフンと言わせる話なので、そういう意味では追放系っぽいかも。
 冒頭の主人公追放シーンから4話のタイトル回収に向け、爆速で話が進む。異世界転生ファンタジー作品のテンプレを踏襲している展開ではあるけれど、それにしても序盤の説明や主人公の生い立ちに至るまでほぼ全カットなのはいっそ清々しい。説明無くてもなんとなく分かるでしょ、的な。実際なんとなく分かるけどさ。
 男たちと肩を並べて立っている主人公の令嬢が「ザ・強い女性」って感じがして好き。生前はバリキャリだったのだろうか。はめフラと違い、割とはっきり王子様ポジの攻略対象と決別していて、「私は私の幸せを見つけるので、あなたはあなたの幸せを見つけてください。では、ごきげんよう」とかっこいい振り方してて面白かった。全体的に少女漫画っていうより社会人の恋愛ドラマを観てるみたい。
 てか魔王様のヒロイン力高すぎない?隙の少ない主人公より、隙だらけの魔王様のほうが一番かわいいまである。


 「小説家になろう」にて2017年より連載中の、永瀬さらさによる小説が原作。書籍版が2017年より『角川ビーンズ文庫』から刊行中。
 制作は『神達に拾われた男』『100万の命の上に俺は立っている』『リアデイルの大地にて』のMAHO FILM。監督は『アンゴルモア元寇合戦記』副監督、また同スタジオ作品『100万の命の上に俺は立っている』にて監督を務めた羽原久美子。シリーズ構成は「まーた
この人なろう小説原作のアニメでシリーズ構成してるやん」でおなじみ猪原健太。キャラクターデザインは牧内ももこ(『魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸』キャラクターデザイン)、小島えり(『100万の命の上に俺は立っている』『リアデイルの地にて』キャラクターデザイン)、大場優子(『100万の命の上に俺は立っている』サブキャラクターデザイン)の共同。


新米錬金術師の店舗経営

 サラサのアトリエ。アニメで見るアトリエシリーズ
 とある新米錬金術師が店舗経営をするお話。1話は主人公が錬金術師になってから店舗経営をするまでの顛末が描かれている。
 2話以降は、ど田舎に引っ越してきた主人公と村の人達との交流、というか日常が描かれていて、人情コメディ感があるストーリーに。『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』に近いかも。特に主人公は15歳にしていきなり一人暮らしなので、周りの大人たちに優しくしてもらいながら成長していく様子があったけえ。
 それにしてもすんごいテンポ感。まるでギャグアニメのノリで話が進んでいくけれど、原作は多分そこまでギャグ作品じゃないと思う。しらんけど。アニメの監督が監督なので、演出は相当コミカルに寄せてるよね。
 そんな主人公を演じるのは『放課後ていぼう日誌』主人公役でおなじみ高尾奏音。キャラのハマりっぷりが半端ない。個人的に「ふえぇ~!?」の声が特に好きで、全体的にオーバーリアクションの多い本作の主人公が声のお芝居も相まって更に輝いている。


 2018年から「小説家になろう」にて連載されている、いつきみずほ氏による小説が原作。2019年から富士見ファンタジア文庫KADOKAWA)より書籍版が刊行されている(イラスト:ふーみ)。
 制作は『宇崎ちゃんは遊びたい!』『究極進化したフルダイブRPGが現実よりもクソゲーだったら』『探偵はもう、死んでいる。』『乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です』のENGI。監督は『宇宙戦艦ティラミス』『キラッとプリ☆チャン』『群れなせ!シートン学園』『トニカクカワイイ』の博史池畠。シリーズ構成は『群れなせ!シートン学園』『体操ザムライ』『ゾンビランドサガ リベンジ』『勇者、辞めます』の村越繁。キャラクターデザインは『可愛ければ変態でも好きになってくれますか?』『探偵はもう、死んでいる。』の伊藤陽祐。


農民関連のスキルばっか上げてたら何故か強くなった。

 農民上がりの勇者の英雄譚
 ひょんなことから王宮務めになってしまった農民のお話。1話では事の顛末が描かれている。説明セリフ多めなので見てて楽。
 主人公は土いじりが好きで農民やってる変人なので、行動が非常に保守的。「俺、また何かやっちゃいました?」みたいな作品はまだ自分から首を突っ込んでる感があるけれど、本作は逆に「僕は何もやってません!本当にただの農民なんです!」という言い訳のみでどこまで逃げ切れるのか?という趣旨の巻き込まれ主人公を描くコメディかと思ったら、1話で捕獲されてて草。主人公の野望を生かさず殺さず、勇者業との兼業農家という新しい職業を開拓していく。
 2話からは王国の存亡をかけて邪竜と戦うお話が始まるため、キービジュやタイトルの雰囲気に反してかなりシリアスな内容に。タイトルの割に結構王道路線の英雄譚なのね。でも、あらゆる定番イベント(シリアスなやつ)を、無理くり農業に絡めて攻略していくのほんと草。真面目に戦っている敵が「そんなのアリかよ!!」みたいな断末魔を上げながら負けていくのが少し切ない。さてはコメディ作品だな?
 あと、同スタジオの以前の作品よりちょっと3DCGの質感が良くなってて草。冒頭のシーンとか表面の凸凹感やライティングがよりリアルになってるけど、いつも以上にアニメ作画と乖離してない?


 「小説家になろう」にて2016年から連載されていた、しょぼんぬ氏による小説が原作。
2017年から書籍版がモンスター文庫双葉社)より刊行された(イラスト:姐川)。
 制作は「たくさんのモンスターが画面に出てくるアニメを作るのが好きなスタジオ」ことSTUDIO A-Cat。監督は同スタジオ作品『超可動ガール1/6』で副監督を務めた、ながはまのりひこ。シリーズ構成はいつもの待田堂子


永久少年 Eternal Boys

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 永遠の17歳。おじさん版リステ
 ひょんなことからアイドルになったおじさんたちのお話。主人公は40歳のおじさんで、結成したアイドルグループのメンバーも全員おじさん。「かつてアイドルだった男性が、40歳にして一念発起、もう一度アイドルの頂点を目指すお話」というわけではなく、本当に普通のおじさんがアイドルになる話。
 1〜4話は、主人公がアイドルになることを決意するまでのお話。「アイドルになれと言われてアイドルやることになったおじさんの描写」が結構リアルで好き。40になって転職となると、きっと希望した職種じゃないだろうし、上司(しかも年下)に「やる気あるのか?」と詰められても内心は「やる気なんてあるわけねーだろ」とか毒づいてたりして。仕事に前向きな同僚を見ては「あの人に比べて、俺はやっぱりこの仕事に向いてないんだなぁ」と思ったりして。お酒飲みながら「やっぱり若い人には勝てねえよなぁ〜俺たちには無理だわww」とか言っちゃう主人公のわかりみが深い。他の作品と比べて、よりアイドル業を「仕事」として描いてる作品だよね。
 「アイドルやめようかな・・・」という悩みも、高校生くらいの子が言うのと40歳のおじさんが言うのとでは随分意味が違うものに聞こえてくる。「人生のどこかで腹くくらないといけない瞬間が訪れるとしたら、それはいつなのか」というお話だった。
 主人公の正式加入後はわりと王道なアイドルやってるので、おじさん向けなのか女性向けなのか不思議な作品。


 オリジナルアニメ。制作はライデンフィルム。監督は『レイトン ミステリー探偵社 カトリーのナゾトキファイル』副監督、『たとえばラストダンジョン前の村の少年が序盤の街で暮らすような物語』監督のmigmi。シリーズ構成は『うちタマ?! 〜うちのタマ知りませんか?〜』『ちみも』の、うえのきみこ。キャラクターデザインは『うたの☆プリンスさまっ♪』等で作監を務めている朝井聖子


VAZZROCK THE ANIMATION

 ツキプロの新作アニメ
 メンバーのお披露目会。OPが特に印象的で「この!キャラたちの!顔を!みんな!見てくれ!」という趣向のアニメになっている。そのため、やたらキャラと目が合う。
 1話に相当するエピソードは2話構成になっている。特に1話Aパートは「本作の主人公となるグループを紹介するテレビ番組のインタビュー」という形式で描かれており、内容がまさかのメンバー同士の会話のみ。ここまではっきり「キャラ同士の関係性と、それぞれの活動と、顔を覚えてくれ」という構成だといっそ清々しいまである。ちゃんと2話ラストで「この12人をしっかり覚えて帰ってください」みたいなコメント入れてる徹底ぶりにちょっと笑った。
 アニメ放送きかっけで新たにドラマが始まるというより、これまで彼らの築いてきた関係性を再確認するお話が多い感じだろうか。過去の彼らのドラマ等もっと詳しく知りたい人はメディアミックス沼に沈んでください!という運営からの差し金か!


 オリジナルアニメ。ムービックの展開するメディアミックス作品『ツキウタ。 THE ANIMATION』に登場するグループと同じ事務所の別グループを描く作品、という位置づけのため、新作というより続編なのだろうか。
 制作は『TSUKIPRO THE ANIMATION』『number24』のピー・アール・エー。監督は『パズドラ』副監督の高本宣弘。シリーズ構成は『TSUKIPRO THE ANIMATION 2』で脚本を担当していた松田恵里子


不徳のギルド

 異世界ブコメ
 冒険がてら嫁探しをしている出会い厨みたいな主人公の日常を描くコメディ作品。一人コツコツ狩りに勤しむ主人公を「一人趣味に没頭している一人ぼっちの高校生」に見立てて、女の子にモテたい一心で新人の冒険者女子の家庭教師を務めていく。世界観も、いわゆる中世~近世ファンタジー現代日本を足して2で割ったような世界になっており『俺だけ入れる隠しダンジョン』よろしくファンタジー要素も学園ハーレムラブコメ要素も取り入れた欲深い作品になっている。
 演出が非常にコミカルで、ドラクエパロディの4コマ漫画を観ているみたい。特にティー・エヌ・ケーが制作したアニメは成人男性向けのエロアニメなので、エロいシーンや冒涜的なシーンの割合が多いのだけれど、本作は特にコメディパートの割合が多くて意外だった。内容もかなりマイルドなので、子供と一緒に見られるね!それにしても主人公のツッコミがキレッキレで草。


 『月刊少年ガンガン』にて2017年から連載されている、河添太一による漫画が原作。
 制作はエロアニメ専門スタジオでおなじみティー・エヌ・ケー。TVアニメシリーズを制作するのは2021年の『回復術士のやり直し』以来なのね。監督の朝岡卓矢、シリーズ構成の筆安一幸は『回復術士のやり直し』から続投している。実質回復術士のやり直し。キャラクターデザインは『聖痕のクェイサー』『魔乳秘剣帖』『マケン姫っ!通』『なんでここに先生が!?』『神田川JET GIRLS』の金子ひらく。ちょっと絵の雰囲気が懐かしい。


クールドジ男子

 街ゆくイケメンの観察日記。ショートアニメ
 「あ、やべ。今のミスめっちゃ恥ずかしい」みたいな、些細なつまづきって基本的に自分以外誰も気にしていないものだけれど、本作は「もし、街ゆく男子がそういう些細なミスをしているところを目撃したら」というシチュエーションコメディ作品。「そういうミスをしているイケメンを微笑ましく見守る女子」という構図に限らないやりとりが描かれているので、つい見ていて「わかるー」って言っちゃう。特にOPが「わかるー」の嵐。
 細かい仕草の作り込みがすごい。冒頭の、自宅で玄関まで走るシーンとか、講堂でだべってるときの仕草とか。3DCGにしても仕草が細かいし、モーションキャプチャーした映像を作画に起こしてるのかな。さすがStudioぴえろ


 那多ここねによる漫画が原作。Twitterにて2018年から投稿され、2019年から「ガンガンpixiv」にて連載されている。元がTwitter漫画だから、内容はショートクリップ形式なのね。
 制作はStudioぴえろ。監督は『NARUTO -ナルト- 疾風伝』『Back Street Girls -ゴクドルズ-』『極主夫道』の今千秋。シリーズ構成は『ラディアン』『空挺ドラゴンズ』『結城友奈は勇者である』『逆転世界ノ電池少女』の上江洲誠。キャラクターデザインは『BORUTO -ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』作監や『ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン』でメインアニメーターを務めている田口愛梨。


ある朝ダミーヘッドマイクになっていた俺クンの人生

 もうあと何回か転生して、百合に挟まれることとなった無職転生の俺クン
 ショートアニメ。表題の通り、ダミヘを使用した特殊な音声を楽しむための作品。ただ、表題のダミヘに限らずあらゆる小物に転生を繰り返しまくっているので、正確にいうと「そのシチュエーションを間近で観察できる物体に、ダミーヘッドマイクとしての役割を与えられて転生した俺クンの人生」という意味みたい。それにしても「あぁ・・・俺の体が小気味良いリズムで食べれられている・・・」は流石に草。お前それでいいんか。
 「女子高生の乗る自転車のサドルに転生した俺クン」というシチュエーションは完全に広告で流れてくるエロ漫画だけれど、本作の主人公は「百合に挟まるということの意味」を踏まえた上で、丁寧に視聴者の地雷を踏まないよう徹底しているので、ちっともエロい展開にならない作品だった。ほんとにただのマイクなのね。
 ASMRの内容はあんまり特定のジャンルへのこだわりはないようで、耳かき、ささやき、咀嚼音等幅広く扱っているみたい。「ASMR興味あるけどまだ聴いたこと無い」かつ「百合は白米」みたいなひとは気軽に楽しめるかも。個人的に耳かきはアリよりのアリだけど咀嚼音はあんまり得意じゃなかった。
youtu.be


 オリジナルアニメ。表題は元々『百合の間にはさまれる。ある朝ダミーヘッドになっていた俺クンの人生』だったが、いつの間にか冒頭部分が消えていた。
 制作は『魔王様、リトライ!』『180秒で君の耳を幸せにできるか?』のエカチエピルカ。2作連続でASMRを題材にしたアニメ作ってるのね。監督は『魔王様、リトライ!』にてアニメーションプロデューサーを務めていた葛西良信。シリーズ構成・脚本は、R-18ゲームの脚本を中心に活動している逢縁奇演。

最後に

 新作全部1話視聴はおすすめしない。
 最近は特に、とにかく作品が多いという点が理由として大きい。例えば、今年の作品数の増加トレンドを牽引しているのは「小説家になろう」原作とするアニメ作品郡。版元であるKADOKAWAの第2四半期決算を確認すると
www.kadokawa.co.jp
 子会社であるフロムソフトウェアのゲーム「エルデンリング」の売上が凄まじいことになっているのはさておき。映像セグメントで「少額出資アニメの本数を増やしたら利益も増えました」とある(意訳)。今後もこの方針で展開していくようなので、角川に限らず「これ以上利益が出なくなるまでアニメの本数を増やし続けてみようぜ」が今のトレンドなのかもしれない。
 現時点で既に数え切れないくらい沢山の新作が放送、配信されている中で更に作品が増えていけば、一部のファンにおける「新作アニメは、観ないまでもせめて一通り把握しているのが当たり前」みたいな価値観は要アップデート対象になっていくのだろうな、と感じている。インターネット配信の利用者の増加と、独占配信作品の増加もこれに拍車をかけているよね。
 「その作品が話題に上がるコミュニティ」が作品ごとにどんどん細分化されていって、更に「そのコミュニティが話題にしそうなアニメづくり」がその流れを加速していって。そういった商習慣の中で、それぞれのコミュニティに疎い人間が横断的にアニメ「だけ」を観ても、その後ろにある文脈を拾うのは結構難しい。その感想を読まされる側にしても、選択と集中がなされていない感想は参考にしにくいと思うし。「特定のコミュニティの中で愛され、それ以外の人は作品を知ることもないまま放送が終わっていく」が今のアニメのデフォなのかも。
 もし周りに「SNS上でいいねが欲しいあまり、生活を犠牲にしてまで新作を片っ端から観たアピールをしている人」を見かけたら、その人はもう自然淘汰を待つだけの絶滅危惧種かもしれないので、そっといいねしてあげよう。そういう意味でも、新作全部1話視聴はおすすめしない。
 そして、製作者様へ感謝をば。今期もまたとても面白い作品を作っていただきありがとうございます。寒い日が続きますが、お体に気をつけつつ制作頑張ってください。陰ながら応援しています。ではでは。