リアタイ勢じゃないけど2022年夏アニメ1話全部観たので後追いする人に向けて感想書くよ

はじめに

 世間ではすっかり秋アニメの話題で持ち切りの中、私は生命活動が忙しかったため夏アニメをほぼ見られなかった。というわけで今更夏アニメを見進めている。これからリコリコ4話を見る予定。
 リアタイ勢からすれば放送の終わったアニメ作品の1話感想はあまり価値のないもののように見えるかもしれないけれど、案外、非リアタイ勢からするとそうでもないかも?とアニメを見ていてふと思った。
 というのも、アニメってなんせ1クールで12〜13話もあるため、特に過去作を見始めるときはつい「このアニメは最終話まで見る価値があるだろうか」という値踏みをする心理が働いてしまうことが多い。アニメ感想を漁っているときも、ネタバレありの感想かどうかという点を気にする人は多い一方で、上記の点を感想の焦点に置くこと自体は割りと当たり前のものとして、書き手も読み手も受け入れているように感じた。
 というわけで、非リアタイ勢の中にも「1話だけ観てみたよ。先の方の展開は知らないけど結構面白かったよ。」という感想が読みたい人も中にはいるのかなと思い、それぞれ1-3話程度の視聴後感をまとめてみた。最後まで視聴した人からすれば「いやいや・・・いやいやいやwww」みたいな感想になっている可能性はあるが、非リアタイ勢だった人が少しでも興味を持つきっかけになれば幸いだ。ちなみに2クール以上の長期シリーズや続編等は「1期1話を観てね」くらいしか書くことができないので端折っている。

配信情報まとめ

 私はTVでアニメを観ない(BS見れないし、TOKYOMXもAT-Xも受信できない)ので、配信情報はこれ以外の手段について書いている。
 なお、独占配信系タイトルは放送開始時点でのものであり、後に他の配信サイトでも配信が開始される場合がある。あくまで現時点での参考になれば。

独占タイトル一覧

※《》内は月額プランの料金(税込み)

アマプラ独占《500円/月》

それでも歩は寄せてくる(独占見放題)
ブッチギレ!(アマプラ、ネトフリ独占配信)
メイドインアビス 烈日の黄金郷(独占見放題)

ネトフリ独占《990円/月※上位プランあり》

Vampire in the Garden
SPRIGGAN
賭ケグルイ
BASTARD!!―暗黒の破壊神―

FOD独占《976円/月》

特になし

Disney+独占《990円/月》<NEW!>

はたらく魔王さま!

U-NEXT独占《2.189円/月》<NEW!>

風都探偵

Abema独占《有料プランあり:960円/月》

継母の連れ子が元カノだった (独占見放題)

その他

Youtube限定配信)
夜は猫といっしょ

 いよいよ毎月の請求額が非現実的な金額になってきたので、配信で全てを追いかけるのは本っ当におすすめしない。みんなBSと地上波を録画するんだ。

感想

リコリス・リコイル

 首輪がゆるいガンスリンガー・ガール
 東京都墨田区は押上を守る、秘密警察の日常アニメ。希少な女性バディモノ。
 JKの制服を着た少女たちが、街の平和を守るために日々戦うお話。JKxスパイアクションといえば「昼は女学生、しかしそれは仮の姿!夜になると云々」という作品が多い中、本作の諜報員(秘密警察)たちは「JKの制服を着て身分を偽っているだけの、ただの戦闘員」という設定になっているため、日中に任務をこなしている点がかなり珍しいよね。当然、学校に通っているという描写もないため、常に何かと戦っている。
 夜に戦う女の子って、よく「私たちは日陰者だから、明るいところを歩くことの出来る一般人が羨ましい」みたいな心情描写があるけれど、本作のリコリスたちは「私は、私なりの生き方を見つけて歩いていくんだ」というポジティブなメッセージが描かれているのも印象的。ちゃんと光の当たる道を歩いているんやな、って。学校に通っていないのも、そういう対比をあえて描かないためにそうしてるのかもね。
 主人公コンビを演じるのは、安済知佳と若山詩音。先のアニメ『SSSS.DYNAZENNON』でメインチームを演じていた二人について、ダイナゼノンで主人公を演じていた榎木淳弥がラジオで「安済知佳ナチュラル系の芝居の権化みたいな人」と話していたのが非常に印象的だったけれど、本作もまた例に漏れず凄まじくナチュラルなお芝居をかましている。それは若山詩音も例外ではなく、日常パートも非日常パートも「ブレずにいつものテンションで」というキャラクターの特徴を強く感じるお芝居に。この二人のお芝居があまりにナチュラルなので、本作は「日常」と「非日常」の境界を全く意識できないという、ちょっと凄いことになっている。特に主人公の千束がヤバい。友達と一緒に遊んでるようなテンションの喋り方でテロリストを制圧する描写があまりに強烈。あと日常パートのナチュラルにまくし立てるような喋り方のお芝居もすごすぎて笑っちゃう。あと、その表情豊かな声にちゃんとアニメーションの表情も丁寧に描かれているのがめちゃ凄いんだが(アフレコのあとに表情の作画を都度修正してるらしい)。

©Spider Lily/アニプレックスABCアニメーションBS11

 「日常はワントーン低い声で、戦闘になるとワントーン高い声で」とか「普段はおっとり、戦闘になると急にシャキシャキ」とかでもなく、常に一定の(快活で明るい女の子の)トーンで敵をぶちのめす様は、なんというか「アドレナリンを出さない」「心拍数が上がらない」「息を切らさない」という超人的な能力の片鱗、みたいなものを感じる。あいつ絶対ヤバいって。
 あと、主人公の冒頭のオフゼリフもすき。彼女は忠実な警察犬として日々任務をこなしているけれど、その割に冒頭のセリフでは「日本人としてのプライド」とか「リコリスの理念」といったものを俯瞰的な視点で語っていて、わざわざ「らしいよ、しらんけど」と付け加えるところに彼女の同質性の低さが垣間見える。忠誠心が低いわけではないけれど、本音のところはどうなんだろうね、っていうところが非常に魅力的で、そういう部分を相棒の視点で描いていく感じなのかな。彼女たちの拠点が、リコリス全体の拠点と隔離された喫茶店になっているところも対比として印象的だよね。
 そんな主人公を演じる安済知佳と、たきなを演じる若山詩音両名によるラジオが面白い。過去作からの縁もあり、最初から非常にハイテンションな二人のやり取りも面白いし、リスナーから寄せられる熱量の高いメールも好き。毎週感想メールが数百通届いているらしく、回を増すごとに「いかに最新話の魅力を表現しつつ、パーソナリティを爆笑させるメールを書けるか」という熾烈な争いに拍車がかかっていて、非常に面白い。
 あと作品の裏話として「どこがアドリブで、どこが台本なのか」という答え合わせをちょくちょくやっているのが印象的。本作はかなり自由演技の多い作品らしく、毎話必ず誰かがアドリブを入れてくるのを監督が面白がって採用しまくるため、あんな感じのギャグパートになっているんだって。特に自由なお芝居をされていた小清水亜美(中原ミズキ役)のゲスト回(#12)が非常に面白かったのでぜひ。
youtu.be
 それにしても戦闘シーンやべえ。作中で主人公たちは拳銃による格闘戦を主体に戦うのだけれど、もう銃の構え方がヤバい。production I.G.のアニメかよ。弾切れになった拳銃の描写、丁寧にリロードする拳銃の描写、主人公の拳銃は非殺傷弾を装填しているけれど、それが6発ごとにちゃんと弾切れになる描写、その度リロードを入れる描写。気合い入れすぎやろ。
 制服かわいい。制服のデザインを担当したのは尾内貴美香(ALCATROCK)。なんというか「ダブルのスーツ」と「ジャンパースカートとボレロ」を足して2で割ったようなニュアンスのデザインになっていて、本作における「硬さ」と「柔らかさ」をどっちもすくい上げたようなデザインに。前から見るとかっこいい、後ろから見るとかわいい。要はかわいい。
 実用的な話、銃のホルスターをぶら下げつつすぐ取り出せるよう、丈の短いジャケットがあると便利だよね。胸のボタン外して取り出したり、スカートの下から取り出すの手間かかるし。そういう戦闘行為を考慮した意匠も取り込んでてすき。


 あと、特に印象的だったのが、本作のビジュアルを象徴するアイキャッチ。どれも彼岸花が印象的で、本作のダークな印象をより強調しているよね。てかヒガンバナの学名って「リコリス」なのね。もはやアイキャッチが観たくてアニメを観ているまである。

©Spider Lily/アニプレックスABCアニメーションBS11

 ところで、放送当時話題になったのが「彼岸花をタバコのように咥えた二人」というアイキャッチ彼岸花は有毒植物であり、当然口に咥えるのはご法度。放送後に公式から注意喚起がなされたが、後に当該アイキャッチが差し替えられることとなった。みんなも真似しないよう注意しよう。
lycoris-recoil.com
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 『ベン・トー』の原作者でおなじみアサウラ氏が原案を務めるオリジナルアニメ。
 制作はA-1 Pictures。監督は「足立さんはいつ監督やるんですか」でおなじみ、『WORKING!!』『ソードアート・オンライン』キャラクターデザインの足立慎吾。同氏は本作で各話絵コンテの他に一部脚本も担当しており、「THE 足立慎吾」なアニメになっている。
 キャラクターデザインは『この美術部には問題がある!』原作者の、いみぎむる氏。この美は別途アニメ化されているので、ついでにオススメ。
 サブキャラクターデザインは『ソードアート・オンライン アリシゼーション』でキャラクターデザインを務めた山本由美子。銃器・アクション監修は、『エロマンガ先生』(メインアニメーター、プロップデザイン)、『ソードアート・オンライン アリシゼーション』(アクション作監)、『可愛いだけじゃない式守さん』(メインアニメーター)の沢田犬二。こう見るとA-1 Picturesのすごい人はだいたい参加してる気がする。

よふかしのうた

 少年少女の夜間非行
 ひょんなことから夜更かしを始めた少年が、吸血鬼と出会うお話。監督の関わった作品としてはシャフトの「物語」シリーズに似たダークな雰囲気こそあるが、吸血鬼と一緒に怪異を退治したり、吸血鬼を狙う聖職者と戦ったりはせず、あえて言うなら『となりの吸血鬼さん』に近いカテゴリのアニメだったりする。ほんと、ただ毎日夜更かししてるだけっていう。
 ここが俺の居場所なんだ、なんつって。特に深い理由もなく夜の街を散歩したくなるときってあるよね。主人公が夜更かしを始めたきっかけは学校生活での人間関係だけれど、それに限らずとも、ひょんなことからつい「何もかもがどうでも良くなる瞬間」みたいなのが訪れるっていうか。で、結局次の日寝不足で後悔するっていうあれ。
 「学校に馴染めなかった主人公が夜に繰り出す物語」としては、先のアニメ『ワンダーエッグプライオリティ』も好き。ああいう、学校に行くことが出来ない子供に焦点を当てた作品がどんどん増えていくのは結構嬉しいなーって。もっと増えてよね。
 あと、主人公が夜の街をうろついていて、背徳感や孤独感を感じながらも最初に気づいたことが「なんか、大人たちめっちゃ楽しそうだな!?」なのが良いよね。2話以降も、なんやかんや楽しそうな主人公。
 そんな非行少年を演じるのは佐藤元。てか声優アワードで新人男優賞受賞してたんだ。
 「どっどど、童貞ちゃうわ!」みたいな、ゴリゴリに思春期の男子キャラといえば下野紘、と即答できるくらい、同氏は強烈なお芝居をする声優さんなのだけれど、そんな彼とは違うベクトルで凄いお芝居だよね。特に勢いが凄くて、かつ若さ、幼さのニュアンスが強いので、下野紘系男子が「見た目は大人っぽいけど中身はまだまだ」なのに対し「声変わり中の元気な子供」みたいな。かわいい。
 青い光と赤い光。常に夜中のアニメということもあり、全体的なライティングの演出が綺麗。吸血シーンの演出が特に好きで、1話の吸血シーンでは青→赤だったのに、2話ではずっと青のまま。静かに主人公の心情が変化してることをそうやって表現するのか。おまけに、吸血シーンの後に映る信号機は赤→青だったりするのも好き。
 あと、マンションやアパートなどの住宅街が印象的。群と個の対比だよね。群は寝ていて、主人公(個)は群れからはぐれている。市街街を散歩するシーンではほぼ必ず後ろの方にアパート(しかも、どの部屋もライトが付いている)が映っていて、より主人公の孤立っぷりが際立っている。
 それにしても、ほんと静か。夜だから静かなのは当然なんだけど、実際に夜の街(あんまり都会じゃない地域限定ね)を歩いたときに感じる「多少明るいけど人の気配がない」みたいな空気をすごく再現してて、学生当時よく夜更かしして散歩しながらラジオ聞いてたことを思い出した。この空気ホント好き。
 ここからは余談。「オードリーのオールナイトニッポン」と本作の関係について。本作の表題はCreepy Nutsが2018年にリリースした楽曲(EDの曲)が元ネタ。また、この曲はニッポン放送のラジオ番組「オードリーのオールナイトニッポン」の番組イベントがきっかけで制作された楽曲なので、私みたいなリトルトゥースからすると「よふかしのうた」=「ラジオの曲」みたいな感覚になっちゃうんだよね。ちなみに私はCreepy Nutsを同ラジオで知った人間だったので、つい最近までヒップ・ホップミュージックが作れるお笑いコンビだと思ってた。
 そんなわけで、昼の世界にうまく馴染めなくて、ふと深夜に散歩しながら深夜ラジオを再生したら、いい年したパーソナリティが生放送で毎週バカみたいな話でゲラゲラ笑っているのを聞いちゃって、それを聴いているうちにどんどん夜が好きになっていって、そのうち「そうか、自分は夜の住人だったんだ!」とか思っちゃったりして。っていう経験を深夜ラジオを通じて味わった身としては、本作の主人公に共感せずにはいられない。
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 『週刊少年サンデー』にて2019年から連載中の、コトヤマによる日本の漫画が原作。同氏の漫画がアニメ化されるのは『だがしかし』以来。
 制作は『東京リべンジャーズ』『ビルディバイド』『トライブナイン』『リーマンズクラブ』のライデンフィルム。監督は、物語シリーズや『ヴァニタスの手記』で監督を務めた板村智幸。何気に全ての作品が吸血鬼モノなんだよね。吸血鬼シリーズ第三段。
 チーフディレクターは『ヴァニタスの手記』にてOP演出を担当した宮西哲也。ちなみに同氏は本作でもOP演出を担当している。
 シリーズ構成は横手美智子。『だがしかし』では一部脚本を担当していたので、その縁だったりするのかな。キャラクターデザインは同スタジオ作品『どうにかなる日々』『神無月のこども』の佐川 遥。

風都探偵

U-NEXT独占配信

 仮面ライダー生誕50周年企画第1弾。アニメ版仮面ライダー
 最初のエピソードは3話で一旦終わるため、とりあえず観るなら3話まで推奨。とある風都で探偵を営んでいる青年たちの日常アニメ。冒頭にちらっと前日譚的なシーンこそあれ、本作の過去のお話に相当する特撮作品『仮面ライダーW』の説明は特に無いまま話は進んでいく感じだった。ちなみにWは未視聴です。
 ストーリーとしては、特殊な能力を持った主人公たちが、様々な怪事件に巻き込まれながらも次々解決していくというバディモノ。
 「ハードボイルドに憧れているけど、まだまだ半人前の若造」っていう主人公のキャラクターが魅力的。人情モノに出てきそうなキャラっぽさもある「愛すべきバカ」みたいな。ちょっと古臭いヒーロー像、っていう意味ではタイバニのタイガーを思い出す。両作ともに(アニメでは貴重な)硬派なバディモノなので、どっちか好きな人はとりあえず両方観てみたらいいと思う。両方観るにはネトフリとU-NEXTを契約する必要があるけどな!
 あと、本作の主人公みたいなスパダリみのある2枚目キャラってなぜか死亡率が高い印象があるので、主人公補正で死ににくくなっている所がちょっと嬉しい。誰かをかばって死なないでよね。
 各エピソードの犯人(怪人)の人物像も、「それまで普通の人生を歩んできたのに、ちょっとしたキッカケによって人生が狂ってしまった被害者」という側面をしっかり描写していて、より刑事モノっぽい仕上がりに。険しい顔の刑事や追い詰められた犯人の表情も良き。
 ただ、ニチアサの作品と異なり高めの対象年齢を想定しているらしく、全面的にエロ描写、グロ描写が解禁されている。あんまり「子供と一緒に見ようぜ」って感じではないかも。
 本作のメインヒロインを演じるのは関根明良。同氏がメインを担当するのは『プリンセス・プリンシパル』のプリンセス以来だろうか。
 それにしてもめちゃ良い声。特に5話の、敵に啖呵を切るシーンのセリフ。少し儚げで、かつ艶やかなニュアンスを持っていて、でも強い意志を感じるお芝居すげえ。
 変身後のアクションシーン、作画でやるのすげえな。バトルシーンがめっちゃ特撮作品。強いて言えば、実写と比べカメラワークの自由度が高い点は一番違うけど、そこもあえて「特撮作品っぽい画角」をちゃんと混ぜてくるのが好き。
 犯人が判明→怪人化→こっちも変身→ベルトが喋る(ちなみにCVは引き続き立木文彦)→お前の罪を数えろ!から始まる戦いの流れもバチクソかっこよくて好き。ちょっと原作の漫画も気になってきた。
 「機界戦隊ゼンカイジャー」ゼンカイマジーヌの声を担当している宮本侑芽さんが「スーツアクターさんはいろんな自由演技(アドリブ)を加えることで怪人やヒーローを表現しているので、映像を見ながら沢山のアドリブに応えるのが大変だった」なんて話を方方で話されているのを聴いていたけれど、一方のアニメは「細かいところまで自由自在に動くスーツを、アニメーターの自由演技によって表現している」という点が魅力なのかな、なんて。例えば3話では「唾液を垂らしながら舌なめずりする怪人」という描写があるけれど、これってアニメの強さを生かした演出だったりするよね。
 あと、戦闘シーンはイヤホン推奨。声の位相をいじっており、左右から別々に二人の声を聴くことができるので結構面白い。
 てかED作ってるの仮面ライダースカルの中の人やんけ!そう思うと、EDのダンスがなんとなく吉川晃司が踊っているように見えてくる。
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 原作・石ノ森章太郎。2009年に放送された特撮作品『仮面ライダーW』が原作。世界線を共有しており、本作はTVドラマの正当な続編にあたる。表題から「仮面ライダー」を廃した理由として、幅広い層に見てほしいからなんだって。
 『風都探偵』としての原作は、2017年から『ビッグコミックスピリッツ』にて連載中の原作:石ノ森章太郎 / 脚本:三条陸 / 作画:佐藤まさきによる漫画。
 制作は『骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中』『新テニスの王子様 U-17 WORLD CUP』『シャインポスト』のスタジオKAI。監督は『魔弾の王と戦姫」「D.Gray-man HALLOW』『ウマ娘 プリティーダービー』でキャラクターデザインを担当していた椛島洋介。アニメーターさんなのね。ちなみに同氏は仮面ライダーおよび怪人のアニメーターも兼任している。副監督は『ブラッククローバー』で監督を務めた種村綾隆。シリーズ構成は『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』『真夜中のオカルト公務員』の樋口達人。また、原作で脚本を担当している三条 陸が脚本監修として参加している。
 キャラクターデザインは『かぐや様は告らせたい』2期5話の特訓パートで一人原画を担当していた蛯名秀和。主にA-1 Pictures作品に参加しているアニメーターさんなんだって。

ユーレイデコ

 攻殻機動少年探偵団。オリジナルアニメ。
 高度に情報化された社会の中で暮らしていた少女が、ひょんなことから社会の裏側を冒険するお話。「高度に情報化された社会」と「ディストピア社会」はたいていセットになって語られることの多い要素だけれど、もれなく本作もまたそういう世界観がポップな絵で描かれている。
 特に本作はその「社会の闇の部分」がテーマになっているため、かわいい絵に反して『PSYCHO-PASS2』や『デカダンス』のような作品に近い。特に「高度に情報化された社会と、その社会からこぼれてしまって、社会上のアイデンティティーを持たない人たちのお話」という意味ではまんまPSYCHO-PASS2だよね。特に4話辺りから描かれる「記憶と記録」の話が好き。作中に登場する「ラブ」は、モチーフとしては「SNSの『いいね!』」を指す作中の造語だけれど、「記録から消えても記憶からは消えないモノ」という意味で「愛」の暗喩だったり、「消されてしまった記録=データ量が0の記憶」という意味での「ラブ」を掛けてるのね。アイラブアイ。
 あと冒険パートのアニメーションすっごくいいよね。拡張現実と仮想現実の両方を冒険する描写の、境界線の曖昧さが非常に曖昧。「高度に情報化されているSF世界描写」という面と「市民には現実が見えていない、ということにみんな気づいていない」という面がちゃんと内包されてて好き。
 SF描写も、全体的にリアリティライン低めでコミカルな表現になっているので、更に境界が曖昧になっている。そういう意味では「拡張現実と仮想現実、どっちも現実でしょ?という肌感覚を持っているデジタルネイティブの視点」を追体験してるみたい。
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 ストーリー原案は、サイエンスSARUの湯浅政明と『交響詩篇エウレカセブン』『LISTENERS リスナーズ』『スーパー・クルックス』シリーズ構成の佐藤大
 制作は『日本沈没2020』『映像研には手を出すな!』『平家物語』『犬王』のサイエンスSARU。監督は湯浅政明ではなく、同スタジオ作品『SUPER SHIRO』にてチーフディレクターを担当していた霜山朋久。
 シリーズ構成は、原案の佐藤大と『うちタマ?! 〜うちのタマ知りませんか?〜』『ちみも』の、うえのきみこ氏が参加している。
 また、特徴的なキャラクターデザインを担当したのは「日本アニメ(ーター)見本市 」の作品『carnage』監督の本間 晃。carnageいいよね。


異世界おじさん

 おじさんの英雄譚
 ひょんなことから「自称・20年前に異世界転移を経験したおじさん」と一緒に生活することとなった青年のお話。お話の縦軸としては、主人公とおじさんとの日常会話を通じて、彼の異世界における生涯をちょっとずつ紐解いていくストーリーになっている。
 また、おじさんが異世界から逆輸入してきた力を使い、こっちで成り上がろうとするお話でもあるのだけれど、「静かに暮らしたい主人公が、あれよあれよと英雄になっちゃうストーリー」みたいなレールが用意されていない現実世界における下剋上が「Youtuberの登録者数がどんどん増えていくお話」になっちゃうのホント草。
 あともう一個の縦軸として、主人公と幼なじみのラブストーリーも面白い。最初からめっちゃグイグイ行くヒロイン。アニメでははっきり描かれていないけれど、何もアクションを起こさないまま疎遠になってしまったことを内心後悔していて、大学生になったタイミングで再会したことで「よし、今度こそは」と意気込んでるのかな。でも二人のやり取りを通じて主人公のヤバさがどんどん明らかになってくの草。まともなやつおらんのか。
 「異世界転生ないし異世界転移」という舞台装置について。生前の後悔を抱えた主人公が、それを取り戻すきっかけとして描かれることが多いモチーフだけれど、本作における異世界転移はむしろ逆で、「異世界に飛ばされてしまった学生が、めっちゃ遊んでたセガのゲームを遊べなくなってしまった」という後悔を抱えながら異世界を生き抜くお話でありつつ、再転移をきっかけに青春を取り戻していくお話になってるんだよね。そういう意味では、実は幼なじみちゃんに境遇が重なっているのも面白い。
 ラブコメといえば、異世界でおじさんがモテまくる話が描かれるのかと思いきや、おじさん自ら強い意志でヒロインとのフラグをバキバキにへし折っていく無双プレイしてて毎回笑う。最近の異世界転生モノの主人公は、事前にちゃんとラブコメを履修してるからうまく行ってたのか。
 それにしてもキャスティングがすごく強い。おじさん役が 子安武人て。飄々とした掴みどころがない声でありつつ、少し憂いを帯びたニュアンスを持つ明るいお芝居すき。『かぐや様は告らせたい』ではちょくちょく自虐を挟むヤバいおじさんを演じていたが、本作のおじさんはそういった後ろ向きな発言を全くしないポジティブな人柄なのに、どこか切ない気持ちにさせるお芝居ほんま。 
 本作の特徴として、こういう題材でありながら実は漫画原作なのよね。メディアの違いを強く感じさせるのが「ビジュアルの強い演出」の多さ。そう、顔芸である。フリ→ボケ→ツッコミの流れのテンポが良く、映像的な演出も使ってるから観ていて飽きないし。ツッコミをセリフではなく顔芸で締める演出がすごく新鮮に感じる。よく考えると、確かに小説で顔芸するのめっちゃ難しいよね。漫画読もうかな。

©殆ど死んでいる・KADOKAWA刊/異世界おじさん製作委員会


 『ComicWalker』にて2018年から連載されている、殆ど死んでいる氏の漫画が原作(2021年より『WebComicアパンダ』に移籍)。生きて。
 制作はAtelier Pontdarc(読み:アトリエ・ポンダルク)。先のショートアニメ『がんばれ同期ちゃん』で初元請けを担当した若いスタジオで、公式サイトによると現在の従業員は4人。4人のスタジオでもアニメって作れるんやな、って。
 監督は『NARUTO -ナルト- 疾風伝』演出、また『青の祓魔師 京都不浄王篇』にて副監督を務めた河合滋樹。監督を務めるのは初かな。
 シリーズ構成は猪原健太。直近の作品だけでも『俺だけ入れる隠しダンジョン』『究極進化したフルダイブRPGが現実よりもクソゲーだったら』『月が導く異世界道中』『乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です』等、ものっそい数の異世界転生モノにシリーズ構成として参加している御仁で、みんなが見てきた異世界転生アニメのうち10作品中1作品はこの人が脚本を書いているんじゃないかな。幼女戦記の新作アニメ待ってまーす。
 同スタジオを立ち上げた𠮷川綱樹は元WHITE FOXのプロデューサーということもあり、キャラデザ・総作監大田和寛(『Re:ゼロから始める異世界生活』にてアクション作監を担当)をはじめWHITE FOX作品に縁のあるスタッフさんがかなり参加しているみたい。スタッフィングだけ見てると、もはやWHITE FOXの新作。


組長娘と世話係

 きれいなヒナまつり
 ひょんなことから一緒に暮らすことになった、暴力団の若頭&組長のご令嬢のホームドラマ。あまり人に心を開かない内向的なお嬢が、スパダリみのある若頭とのふれあいを経て成長していくお話。1話でもう最終回みたいな雰囲気に。霧島も、お嬢とのふれあいを通じてちょっとずつ変わっていくやつー!映画の『LEON』でみたやつー!ちゃーんと2話で「来年も一緒に夏祭り行こうね」とか約束しちゃって!どうせ死ぬんでしょ!

©つきや・マイクロマガジン社/組長娘と世話係製作委員会

 そのジャパニーズレオンこと暴力団の若頭を演じるのは細谷佳正。いや声すげー良いな。人殺してそう。あのトーンのままで、お嬢に優しい言葉をかけるセリフとチンピラ拷問するセリフ両方出せるのほんとすごい。ちゃんと優しさのニュアンスと冷酷さのニュアンス出てるんだよなぁ。
 夏祭りといえば、「日本の風物詩であるテキ屋を回るイベント」という描写をやたらアニメに入れたがる風潮があるけれど、本作はちゃんと暴力団とのつながりを匂わせるシナリオになってるの珍しいよね。だからどうしたって話じゃないんだけどさ。
 それにしても劇伴めっちゃいいな。音楽を担当しているのは伊賀拓郎。同氏が劇伴を担当した先のアニメ『スローループ』は、まんがタイムきらら作品でありながら濃い目のヒューマンドラマで、きらら作品らしさのある日常描写からシリアスな話、泣ける話等の幅広い劇伴を楽しめる魅力的な作品なのだけれど、本作もまた音楽の緩急がすごく良い。特に「子を見守る親の目線」を感じさせる優しい劇伴の良さ。
 そこから授業参観の流れを経て、ほくほくしているお嬢の心情を描いた劇伴に変わっていくところがめっちゃ好き。お嬢が内向的なキャラクターなので、その分キャラクターの台詞や表情以外の方法で心情描写をするだけの余白がアニメにはあるんやな、って。

©つきや・マイクロマガジン社/組長娘と世話係製作委員会


 つきや氏による漫画が原作。pixivに公開後、2018年から『コミックライドピクシブ』にて連載中(現在は『コミックELMO』に移籍)。
 制作は『ヒナまつり』『おちこぼれフルーツタルト』『ぼくたちのリメイク』のfeel.と、『ピアノの森』『キャップ革命 ボトルマンDX』のGAINA。監督は『魔法少女 俺』『カードファイト!! ヴァンガード』『新・中華一番!』『キャップ革命 ボトルマンDX』の川崎逸朗。シリーズ構成は『ヒナまつり』『まちカドまぞく』『五等分の花嫁』『ピーチボーイリバーサイド』の大知慶一郎が担当している。その割に、コメディよりハートウォーミングなシナリオのウェイトが大きいよね。キャラデザは『ぶらどらぶ』『ホリミヤ』『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』の緒方 浩美。

異世界薬局

 異世界ファンタジー版「仁」
 本作は医療ドラマかつ、『Dr.STONE』ばりに「化学」がテーマの作品。正確には有機化合物かな?薬だし。ストーリーとしては、黄金樹の恩寵により得た力を駆使して「身近な人の病気に遭遇」「こっそり診察」「こっそり診断」「こっそり調剤」「こっそり投薬」という流れで話が進んでいくのだけれど、ほんとに主人公はただの薬学博士なんだろうか。もはや一人総合病院と化しているんだけど。
 「異物としての主人公」っていう描写が丁寧な1話。割りとフルスペックな異世界転生で、スキルの獲得も将来の保証も充実している順風満帆な展開、って思うじゃん。ざっくり言えば「俺、また何かやっちゃいました?」的な展開は周りからすると「うわ、家族の中に化け物がいるぞ」なので、まあこういうリアクションになるよねっていう。他作品であれば軽いノリで流されがちな展開ではあるけれど、本作はここの心情描写が丁寧で好き。自分だけど、もう自分じゃない。家族だけど家族じゃない。教え子だけど、もう教え子じゃない。みたいなそれぞれの視点を描きながら、これまでとは違う新しい関係を築き直す展開がとても良かった。
 関係性の変化としては、特にお父様とのエピソードが印象的。お父様はこの世界における医学博士なので、主人公からすると「間違った医学知識を広めている、主人公にとっての障害を象徴する存在」となりうる相手ではあるけれど、そんなお父様との衝突を通じて、逆に主人公が「この世界における人々が様々な困難と闘いながら、いかに医学知識を獲得してきた歴史と、それに対する矜持」を見せつけられる展開がすごく好き。世界に対して敬意を払う主人公かっこよかった。

©2022 高山理図/MFブックス/「異世界薬局」製作委員会

 医療従事者から見た世界は意外と病人で溢れているかもしれない、という視点を視覚化した2話。加えて、医療が未発達な世界における「医療を受けられるという特権、あるいは格差」のお話がメイン。みんなが平等に医療を受けられる世界のほうがいいに決まっている!という主人公の考え方はある意味日本人らしいよね。国民皆保険制度バンザイ。個人的に幼い頃から長らく病院のお世話になっている方の人間なので、主人公の理念には同意しかない。
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 『小説家になろう』にて2015年より連載されていた、高山理図による小説が原作。書籍版がMFブックスより2016年から刊行中。
 制作は『あひるの空』『聖女の魔力は万能です』『フットサルボーイズ!!!!!』のディオメディア。監督は『アホガール』『ハッピーシュガーライフ』『あひるの空』の草川啓造。シリーズ構成は『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』の原作者でおなじみ渡航ディオメディア作品にシリーズ構成として参加するのは『ガーリッシュナンバー』『聖女の魔力は万能です』に引き続き3作目となり、最近は「ディオメディアが手掛けている、なろう小説原作のアニメでシリーズ構成を担当している面白いおじさん」になりつつある気がする。


RWBY 氷雪帝国

 悪魔と戦うモンスターハンター
 ひょんなことからモンスターハンターになった少年少女のお話。序盤は、後のチーメンである「R・W・B・Y」の出会いが描かれている。表題の「氷雪帝国」編は4話から。
 氷雪帝国編をざっくり説明すると「パーティの一人が悪魔の手によって闇落ちしてしまったので、みんなで助けに行ったのだが・・・」というお話のため、話数的にも虚淵的にも「おいおいおい 死ぬわアイツ」の心で鑑賞していたけれど、本作はマミらない方の作品みたい。やったね!
 それぞれのキャラクターが戦いの中で成長していく群像劇。という言い方をすると、先のアニメ『マギアレコード 魔法少女まどか マギカ外伝』に近い雰囲気のストーリーだけれど、あっちが「幼さゆえの」というニュアンスが強い造形のキャラクターが多いのに対して、本作のキャラクターは(主人公こそ幼いけど)みんな大人っぽい造形だよね。精神的に自立してるキャラ多いし。あっちと比べてかなり湿度が低い気がする。
 とはいえ、メインのストーリーは「あの子が抱えている闇を、内へ内へと掘り下げていくお話」なので、「あの子とあの子の繋がり」を掘り下げていくマギレコとは本質的には似てるのかも。
 シャフト、風邪引いたときに見る夢を映像化するの得意すぎ問題。シャフト特有の、無機的な構造物が連続するパターン演出も「閉塞感」「浮遊感」があってなんか夢っぽい。あと、夢の主の主観的な印象から作られた夢の中の住人と、その言動がすげー夢っぽくて好き。
 あと小物のデザインが良いよね。特に、夢の中と外で会話するための通信機が好き。以心伝心て。

©2022 Rooster Teeth Productions, LLC/Team RWBY Project

 本編のほとんどが戦闘シーン、とまでは言わないけれど、明確に「Aパートは会話劇、Bパートはアクションシーン」みたいな構成になっておらず、なんか常に敵と戦っている気がする。大手スタジオじゃない限りこういう構成はまずやらないよね。
 戦闘シーンの作画に濃淡があるところが結構すき。半分以上戦闘シーンじゃないかってくらいずーっと戦っている1話も、それぞれの戦闘シーンでちょっとずつ作画の雰囲気が違う。「あんまり激しくない戦闘」「結構激しい戦闘」「凄まじい戦闘」のグラデーションになってて面白い。「作画を節約するパート(非戦闘)」「作画を消費するパート(戦闘)」の2部構成とか、「序盤の話数はゴリゴリ動く」「終盤は紙芝居」みたいなやつじゃない、ちょっと新しいパターンだ。
 EDは主人公役・早見沙織の個人名義による楽曲。提供は、凛として時雨のTK。もはやPSYCHO-PASSなのよ。楽曲自体も非常にダイナミックな展開をするすんごい楽曲なので、ぜひフルで聴いてほしい。TVサイズ版は美味しいところだけ繋げた純米大吟醸の磨き二割三分みたいな状態なので。
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 配信サイト「Rooster Teeth」にて2013年から配信されている海外のWEBアニメ『RWBY』が原作。てか、このシリーズ全部で100話以上あるんか・・・(現在8シーズン目らしい)。
 リメイク版のストーリー原案はみんな大好き虚淵玄が担当しており、オリジナルストーリーになってるんだって。へー。
 制作は、オリジナル版のRooster Teeth Productionsに代わりシャフトが担当。監督は『蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH』『輪廻のラグランジェ』『エガオノダイカ』の鈴木利正。シリーズ構成は冲方 丁。監督とタッグを組むのは『ヒロイック・エイジ』以来かな。キャラクターデザインは『荒川アンダーザブリッジ』『ニセコイ』の杉山延寛
 またビジュアルディレクターとして武内宣之、チーフディレクターとして岡田堅二朗が参加しており、スタッフィングだけでも力の入りようがすごい。

咲う アルスノトリア すんっ!

 さ・・・咲う。ニトロプラス風味のファンタジー系日常アニメ
 とある魔法学校に暮らしている魔法少女たちのお話。毎日の勉学と、ちょっとしたお仕事(掃除とか見張りとか、防御結界の見回りとか)をこなしながら、かしましい日常を送る様が描かれている。
 1話はほぼ「みんなでお茶会をする話」のみ。「こんな世界観です!」「こんなすごい魔法が使えます!」「こんな凄い魔法使いを目指してます!」「こんな脅威と私たちは戦っています!」といった世界観の開示がなされない構成が逆に不穏だけれど、そういった要素抜きでも、かしましい日常の描写がメインの面白さを担っているのね。
 一応「城の中(日常アニメ)」「城の外(非日常アニメ)」という2軸体勢で物語が進行しており、どこかでクロスして第2部が始まる感じだろうか。あんまり不穏にしないでよね。まあでもニトロプラスだし。
 あと、何故かアホ毛のアニメーションにやたら心血を注いでいる。もちろん主人公たちの動きも可愛くて好きなんだけど、何故か主人公よりもアホ毛のほうが表情豊かで、圧倒的な存在感を放っている。風になびくアホ毛。ピーンってなるアホ毛、ふにゃふにゃになるアホ毛。毎回めっちゃ丁寧にアニメーションさせてて草。
 あと、キャラの衣装がめっちゃかわいい。魔法使いといえばローブだけれど、本作の魔法少女たちは「白いシャツ」「プリーツスカート」「ローブ」という、女子高生の制服+魔法使いみたいな出で立ちになっている。特にローブの構造が特殊で
 ・正面から見ると長い丈のローブに見える
 ・中央にスリットがあり、膝を曲げると正面から膝が見える
 ・長い一枚布を前後に纏ったような形のため、横からシャツとスカートが見える
 ・首元、肩、背中などにリボンがあしらわれている
 ・ウエストを絞っているので、シルエットがスッキリしている
→かわいい。
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 ニトロプラス原作のスマホゲームを中心とした、メディアミックス作品。キャラクター原案は『Re:ゼロから始める異世界生活』でお馴染み大塚 真一郎。ニトロプラスは本作リリースのタイミングでちょうど20周年なんだって。へー。
 制作はライデンフィルム。監督はシャフト出身の演出家で『ニセコイ』『幸腹グラフィティ』『抱かれたい男1位に脅されています。』の龍輪直征。同氏は今期『異世界迷宮でハーレムを』の監督も担当している。てか今期のライデンフィルム作品、どっちも元シャフト作品の監督じゃん。
 シリーズ構成は『鬼灯の冷徹』『厨病激発ボーイ』『すばらしきこのせかい』の後藤みどり。キャラクターデザインは『魔法少女まどか☆マギカ』『ハイキュー!!』『かげきしょうじょ!!』『東京24区』『オリエント』の岸田隆宏が担当している。

シャインポスト

 シャインポストに、俺はなる!!!!! \どん!!/
 とある崖っぷちアイドルが、新しい敏腕マネージャーを迎えて心機一転アイドルの王(シャインポスト)を目指すお話。最初からシャインポストを目指しているというわけではなく、ちょっとずつ「シャインポストを目指すアイドル」としての自覚が芽生えていく過程もちゃんと描かれててすき。ちょっとずつプロになっていくんやな、って。
 特に1話の流れがすごく綺麗。主人公の「パッとしないようで、実はこんなアイドル向きの魅力を持っているすごい子なんですよ」という多面性を出すのではなく、あえて一本気な部分を描き、視点の違いによって「ああ、この子はそういう魅力があるのか」っていう気付きを得る、という演出に╭( ・ㅂ・)و ̑̑ ぐッ!と来た。あと、ぴょんぴょん飛び跳ねてる主人公がだんだんトウカイテイオーに見えてくる件。足の怪我には気をつけてね。
 それはそれとして、ギャグのクセが強いアニメを作る及川監督と、ギャグのクセが強い脚本を書く駱駝(小説家)が組んだせいで、ギャグのクセが強いアニメになってて草。序盤の展開はアイドル作品の王道を踏襲しているはずなのに、会話のテンポ感とリアクション芸で完全にギャグアニメになっちゃってるのよ。
 駱駝氏の著作である『俺を好きなのはお前だけかよ』は、ラブコメ作品・青春群像劇でありつつ叙述トリック要素の強い作品だったので、本作もまたそういう要素を盛り込んでたりするのかな、なんて月並みな想像をしていたのだけれど、同氏曰く「今回はそういう感じは入れない」だって。ほんまか?
「売れないプレイヤーが、ひょんなことから敏腕プロデューサー(マネージャー)と組むことになって始まるサクセスストーリー」という意味では『パリピ孔明』みがある。
 ただ、本作はパリピ孔明と比べてリアリティラインが相対的に高いので、なんだか「実際にアイドルが出演している実写ドラマ」を観ているような気分になる。特にライブシーンは空気感も含めてリアルな客の描写が多く、観ていて「友だちに連れられて、知らないアイドルのライブに参加してしまったときの妙な気まずさ」すら感じるクオリティに。
 それにしても1話の動画の枚数凄まじいな。同スタジオの作品であるウマ娘のときもそうだったけれど、とにかく装飾の多くて可愛い衣装を着ているキャラを全員丁寧に作画で描いていてビビる。コミカルな表情や仕草のアニメーションも多く、ただぼーっと見ていても楽しいアニメ。
 CVについて。本作は中の人に現役のアイドルが多数参加している。所属も様々で、蟹沢萌子(≠ME)、芹澤 優(i☆Ris)、久保田未夢i☆Ris)、高瀬くるみ(ハロー!プロジェクト)、野口衣織=LOVE)、齋藤樹愛羅=LOVE)、みたいな。2~3次元で展開するメディアミックス作品の中でも、特にリアル稼働に重点を置いた感じなのかな。すでに何度かリアルライブも実施していて、ライブに出演者した(声優の)高柳知葉が、自身のラジオ内で「自作のデコレーションしたうちわやパネルを持ってきたファンがたくさんいた」「自分の通ってこなかったファンの応援の文化を見ることができた」「アイドルの方を応援している女性ファンがすごく多かった」と語っていて、ちょっとしたアイドル文化の坩堝みたいになっているらしい。すごいね。
 ここからただの余談。「アイドルと声優とアイドル声優の違いってなんなの問題」について。本作に参加している声優の鈴代紗弓高柳知葉が自身のラジオにて「光栄なことに、アイドルの真似事をさせていただいております」的なニュアンスのお話をされているのを、いちリスナーとしてよく聴いている。それ自体は彼らのアイドルに対する敬意の現れだとしても「アイドルと一緒に、同じコンテンツで、同じ衣装を着て、同じ歌を歌って、同じダンスを踊って、同じファンと交流している声優」は、傍から見てアイドルそのものでは?と思わずにはいられない。ぶっちゃけファン的にはどうなんだろう。そこに境界線ってあるんかな。
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 コナミとストレートエッジによるメディアミックス作品。ストレートエッジが関わったアイドル作品といえばゲームアプリでおなじみ『IODOLY PRIDE』以来だけれど、翻って本作のゲームアプリは現時点で未リリース。また、アニメ放送に先駆けて2021年から小説版が連載されていたりする。小説版の執筆は、本作の原案を務めている駱駝が担当。ちなみに主人公のヘアスタイルが三つ編みなのは同氏の趣味なんだって。そういえば同氏の著作『俺を好きなのはお前だけかよ』のメインヒロインもずっと三つ編みだったっけ。
 制作は『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』『スーパーカブ』『骸骨騎士様』『只今異世界へお出掛け中』のスタジオKAI。監督は『ヒナまつり』『ウマ娘 プリティーダービー』シリーズ、『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』シリーズでおなじみ及川啓。脚本は、原案の駱駝と『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』の樋口達人が共同で担当している。駱駝は同氏の作品『俺を好きなのはお前だけかよ』でも脚本を担当していたのだけれど、当時公式ラジオで(地上波で放送された12話に収まりきらず)13話構成になっちゃったことをプロデューサーに謝ってて面白かった。

神クズ☆アイドル

 不純な推し武道
 ひょんなことからアイドルの頂点を目指す事になったアイドル崩れ一歩手前の男子のお話。なんとなく「アイドル=聖人であれ」っていう幻影、ていうか「アイドルやってる人はきっといい人」みたいな幻想を自らぶち壊していく稀有な作品。その上で、「アイドルしか知らないアイドル」と「アイドルを知らないアイドル」の二人が一緒になって「理想のアイドル・仁淀 ユウヤ」を育てていく成長物語、っていう縦軸になっているのが面白かった。
 そもそも「私人としての仁淀 ユウヤ」と「アイドルとしての仁淀 ユウヤ」を分けて考えているのが面白い。アイドルって基本的に「自分を切り売りする仕事」だと思うのだけれど、本作の主人公はアイドルである自分のことをもはや他人事として捉えているので、悪い意味で当事者意識が無いよね。「自分のパーソナルな部分を切り売りするくらいならアイドル辞めます」という頑ななスタンスで草。幽霊ちゃんに「アイドルとしての仁淀 ユウヤ」を押し付けようとする当人と、少しは自分で頑張ってほしい幽霊ちゃんとの駆け引きっていうか綱引きがコメディとして面白かった。やる気だせや!
 そんな主人公のクズを演じるのは今井文也。微塵もやる気のない普段の演技と、神アイドルが憑依しているときの演技の差がすごくて毎回びっくりする。「100点のアイドルを全力で演じているというお芝居」ではなく「100点のアイドルが憑依しているというお芝居」なので、文字通り声が別人になってて凄い。神アイドルを演じている東山奈央の、あの眩しい感じの再現度すげえ。
 また、先のアニメ『パリピ孔明』は栄子(プレーヤー)と孔明(プロデューサー)のお話だったので、孔明の策略と栄子のパフォーマンスがそれぞれ輝いていたのに対し、本作はプレーヤーとプレーヤーのタッグ。そのため最初からプロデュースの軸がブレまくっている。やっぱりアイドルのプロデューサーって大変なんやな、って。
 例えば、元AKBでおなじみ指原莉乃さんは現在アイドルグループのプロデューサーを務めているけれど、アイドルわかんない勢としては「やっぱりアイドルの経験がある人だからプロデューサーにもなれるんやなー」くらいにしか思ってなかったんだよね。でも実際はそうじゃなくて「アイドルとしての才能も持ってるし、さらにプロデューサーとしての才能も持ってるすごい人」ってことなのね。
 あと、その「仁淀 ユウヤ」の育成方針を巡る綱引きによって振り回される、ファン達の信仰心が凄い。ファン達の決して折れない心が妙にリアリティを帯びている。『推しが武道館行ってくれたら死ぬ』よろしくドルオタ側の解像度がやたら高い作品、という印象に。毎話の最後は必ずファンたちの2次会の様子で締めくくる構成になっていて、どんなライブの内容であっても必ず「いやー今日のライブ最高だったわー」で終わっていくのが好き。やっぱ主人公はこっちなのでは。
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 『コミックZERO-SUM』にて2018年から連載中の、いそふらぼん肘樹による漫画が原作。
 制作はゆゆゆシリーズ、『群れなせ!シートン学園』『まえせつ!』『終末のハーレム』のStudio五組。監督はダンガンロンパシリーズ、ゆゆゆシリーズ、『ラディアン』の福岡大生。シリーズ構成の蒼樹靖子はラディアンで脚本を書いていた人で、シリーズ構成は本作が初めてかな。音楽制作はエイベックスが担当している。

それでも歩は寄せてくる

アマプラ見放題

 からかわれ上手の歩さん。山本崇一朗劇場 第三段。
 とある将棋部の日常アニメ。山本崇一朗作品って「君たち、もう付き合ってるよね?」から始まるカップルのバリエーションが豊富だよね。
 「西片はリアクションが面白いからついからかっちゃうんだよねー」「高木さんめー!今に見てろ・・・!」という建前で一緒にいる二人と、「俺は先輩のことが好きなので、一緒にいてもいいですか」「ったく、しゃーねーなー!」という建前で一緒にいる二人。どちらにしろ、とても微笑ましい。
 ラブコメ作品にしては非常に珍しく、表題に彼女ではなく彼氏の名前を冠している。「高木さんにからかわれて照れてる主人公の西片がかわいい作品」よろしく「歩くんにからかわれて照れている主人公のうるしちゃんがかわいい作品」という構図を示していると思われるので、つまりヒロインは歩くんの方・・・?言われてみれば、うるしちゃんと西片って結構似てるよね。特にリアクション。
 また、主人公カップルとは別のカップルの日常も描かれている。賑やかし要員として主人公たちの邪魔をする藤原書記みたいな邪悪なポジションかと思いきや、主人公たちを陰ながら見守ってくれてるのね。で、見守りつつ徐々に親密になっていく二人のことを視聴者が更に見守っていく。まさに二重ストーカー。
 アニメの演出的には、高木さんのキラキラ感や椿ちゃんのぬるぬる感は薄く、より日常感のあるアニメに。『宇崎ちゃんは遊びたい!』みたいな。特に本作は、マガジン作品にしては珍しく下ネタやエロ要素が殆ど含まれないので、そういう意味でもライトに楽しめる、ような気がする。
 でも相変わらずラブコメのここぞというシーンの破壊力は凄まじいので、職場で休憩中に見るのが難しい。マスク越しに気持ち悪いニヤケ顔がバレてしまう。


 週刊少年マガジンにて2019年から連載中の、『からかい上手の高木さん』でおなじみ山本崇一朗による漫画が原作。てかサンデーじゃないんだ。
 制作は、最近は特に異世界転生モノでおなじみSILVER LINK.。監督は『キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦』『迷宮ブラックカンパニー』『史上最強の大魔王、村人Aに転生する』の湊 未來。シリーズ構成はいつもの赤尾でこ。監督とのタッグは『迷宮ブラックカンパニー』以来かな。キャラクターデザインは『すのはら荘の管理人さん』『痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。』の平田和也。


プリマドール

 ドールズフロントラインから退役した自動人形の日常
 ひょんなことから現役を退いた、元軍用アンドロイドたちのセカンドライフを描くお話。
 序盤は、彼女たちが営む喫茶店の日常と、それぞれの過去と、「人として」成長していく姿を描いていく。「歌うことが好き」という共通の設定が設けられており、ジャンルは音楽劇になるのかな。
 各話に登場する自動人形たちが、それぞれの心情を歌で表現していくヒューマンドラマ。キャストが全員クッソ歌がうまいので、毎話キャラソンで締めくくられる演出も相まって毎回最終回のような読後感に。
 歌といえば。2021年放送のアニメ『Vivy -Fluorite Eye's Song-』では、歌唱専門のAIとして造られた主人公の、心の葛藤を描くヒューマンドラマが描かれていた。主人公を含む歌唱AIたちが作中で披露する歌が、彼女たちの心情とシンクロして非常に素晴らしい作品だったので、今でも曲を聴いたりするのだけれど、本作もまた「心情描写を表現する手段としての歌」という位置づけになっているという意味で、非常に親しい作品だなぁって。なお、あっちは「人類とAIの未来」がテーマになっている分、非常に壮大な物語なのに対し、本作は「戦争に行ってしまったあの人の帰りを、今も待ち続けている少女のお話」くらいのスケールのお話が多い。絵の雰囲気も全体的に柔和なデザインで、かつ残虐描写も抑えられている分とっつきやすい、気がする。
 Key作品のお約束として、序盤は横軸のお話。泣けて笑える1話完結のストーリーが描かれていき、中盤から後半にかけて序盤の伏線を回収しながら物語の本質に迫っていく、という(おおまかな)2部構成になっていることが多い。本作も、最初は日常アニメから始まるよ!辛いお話はしばらく無いから大丈夫!
 また、日常と非日常のバランスはKey作品らしく、すごく塩梅に気を使っていることを伺わせるバランスになってて好き。先のKey原作アニメ『神様になった日』では前半のギャグ展開、後半のシリアス展開とくっきり別れていたけれど、本作はどうなるんだろうね。
 作中で何度も自動人形が発する「壊れている」というセリフが面白い。「人間のような情動を発露出来ないことを、人の似姿として作られたはずの自身に欠けているものとして感じ、自ら「不具合」と呼称してしまう」みたいな描写はこの手の作品の醍醐味だなーって思うけれど、それ以上に「自分は人間と同じ心を持っている」という前提で話が描かれているのがすごく不思議。時代設定と裏腹に、そこだけ自動人形たちの思想が現代的っていうか。
 古典→「自分には笑う機能はついてませんよ、そういう機能は不要なので。」
 本作→「自分が人のようにうまく笑えないのは、きっと壊れているからだ。」みたいな。
本作における自動人形って、いわば「自分のことを器械だと思っている人間の女の子」みたいな描かれ方をしていて、見た目も仕草も基本は人間なんだよね。しかも、周りの人間はみんな受け入れていて、「一人の人格」として扱ってるし。「まるで機械のようだけど、れっきとした人間として描かれている」という意味では『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』のヴァイオレットちゃんみたいな感じがする。
 1話に登場する自動人形は、とある少女との繋がりを中心に描かれている。少女が自動人形との思い出を語る回想シーンで登場したお屋敷は恐らく、東京都目黒区駒場に今も現存している「旧前田家本邸庭園」という建物が元ネタ。
 印象的な正面玄関のデザインは近代的でありながら、建物全体のクラシカルで格式高い雰囲気を持ち、照明などの装飾品からはレトロな印象も一度に味わうことが出来る外観になっていて、個人的にとても好きな建築の一つ。京王井の頭線駒場東大前」駅を降りて徒歩10分程度で行くことが出来るので、興味のある人はぜひ。ちなみに見学料は無料。
www.syougai.metro.tokyo.lg.jp
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 みんな大好きKeyによるメディアミックス作品。
 制作は『アズールレーン』『五等分の花嫁∬』『ブラック★★ロックシューター DAWN FALL』のバイブリーアニメーションスタジオ。監督は『きんいろモザイク』『アズールレーン』『ブラック★★ロックシューター DAWN FALL』の天衝。シリーズ構成・脚本は、Key作品の脚本家である丘野塔也、魁の二人体制。
 メインキャラクターのキャラクター原案は、それぞれ異なるデザイナーが担当している。Na-Ga、藤ちょこ、原悠衣、森倉円、lack。特に原悠衣きんいろモザイクの原作者ということで、監督とは旧知の仲だったりする。ちなみにKey作品のキャラクターデザインでおなじみNa-Gaは主人公(ピンクの子)のデザインを担当しており、言われてみれば確かに主人公だけすごくKeyっぽい。アニメーションキャラクターデザインは、『りゅうおうのおしごと!』『超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです!』『弱キャラ友崎くん』の矢野茜が担当している。
 割りと柔らかい印象の作風に不釣り合いな、ごついロボットたち。メカニック原案は『PSYCHO-PASS』にてドミネーターのデザインを担当した石渡マコトが担当。主人公ら自動人形と、それ以外のメカデザインの温度差よ。

黒の召喚士

 異世界転生して悠々自適なモンハンライフ実況プレイ
 スローライフ系と違ってモンスターと戦うのが好きな主人公なので、MMOまったりプレイみがある。女神がナビゲーションとして同行しているため、闇雲なプレイをしなくて良い点も、攻略サイト見ながら適切にプレイヤーを育成しているときの感じに似ている。
 特に主人公の思考がものすごく戦闘民族。戦った後も「あのときもっとこうしたほうがよかったなー」とか反芻しちゃうところや「〇〇にめっちゃ強いモンスター出るらしいから見に行こうぜ!」みたいな思考が思いっきりゲーマーのそれだよね。
 話が進むごとに仲間が増えていくのだけれど、それぞれのキャラクターごとのバックグラウンドと、手を差し伸べる主人公とのヒューマンドラマが描かれている。と言う割には全体的に描写があっさりしていて、「お前ひとりぼっちなのか、じゃあ一緒に旅しようぜ!」くらいのノリでどんどん仲間に引き入れていく主人公。ワンピースのルフィかな。
 そんな戦闘民族を演じるのは山下大輝(→訂正。主人公を演じるのは内山昂輝。ご指摘感謝です)。本作の主人公もまた、厨ニのシンボルである「黒」を冠しており、決め台詞がいちいちかっこよくて好き。先のアニメ『ありふれた職業で世界最強』では1期ラストでようやく主人公の厨ニいじりをしてくれる仲間に恵まれていたけれど、本作はどうなのか。
そしてメインヒロインの女神役は上田麗奈。いっつも女神やってんな。女神は序盤は主人公に同行するナビとして声だけ出演なのだが、何より上田麗奈のナビを受けながらゲームプレイする主人公がくっそ羨ましすぎる件。
 序盤の見せ場である2話の戦闘シーンは3DCGアニメーション。サテライトのアニメって『ガーリー・エアフォース』『サクガン』みたいにメカアクションのシーンでCG使うイメージだったけれど、ヒトアクションでも使うのね(クレジット確認したけどちゃんとサテライトの制作)。カメラアングルのこだわり方とか全体的な疾走感とか、色々出てくるエフェクトとか、見てて結構楽しい。というかすげー格ゲーっぽい。こういう格ゲー出ないかな。


 2014年より「小説家になろう」で連載されていた、迷井豆腐による小説が原作。2016年からオーバーラップ文庫より文庫版が刊行中(イラスト:黒銀 (DIGS)、ダイエクスト)。
 制作は、『新規絶笑シンフォギア』シリーズや『ソマリと森の神様』『サクガン』のサテライト。監督は『にゃんこデイズ』『ヲタクに恋は難しい』の平池芳正。同氏は先の2作品に引き続き、本作でもシリーズ構成を兼任している。キャラクターデザインは『にゃんこデイズ』『世話焼きキツネの仙孤さん』『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』の大島美和

夜は猫といっしょ

Youtube限定配信

 愛猫観察日記。ショートアニメ。
 1話ごとに、非っっっ常ににゆるい1エピソードが描かれる。なんせ主人公が猫なので、毎回不思議な終わり方してて草。飼ったことがないのでわからないけれど、猫ってこんな感じなんか。
 それにしても、キュルガの声がめっちゃ猫で草。本作の声優オーディションは、監督曰く「猫(キュルガ)役に大量の応募があってびっくりした」とのこと。猫役以外のキャストも全員、猫役に応募してきた人のみでキャスティングされてるんだって。
 で、熾烈なオーディションを勝ち抜いた高垣彩陽による猫の声が、もう信じられないくらい猫。「リアルな鳴き声(アニメ的な「にゃー」とかじゃにゃいやつ)でお願いします」という監督からのディレクションがあったらしいことを踏まえても、1話の0:43の「にゃー」がすごすぎる。
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 Twitterにて2019年から投稿されている、キュルZによる漫画が原作。書籍版がKADOKAWAより刊行中。
 制作はスタジオぷYUKAI。主にKADOKAWA作品のアニメ放送に付随する形でWEBショートアニメを制作しているスタジオで、最近だと『劇場版 異世界かるてっと ~あなざーわーるど~』の公開が記憶に新しい。
 同スタジオの作品は全て芦名みのるが監督を務めている。ちなみに同氏はアニメーション監督でありつつ現役の獣医師という「兼業アニメ作家」だったりするので、本作はある意味最も得意分野の作品ということに。ほんとすげー肩書きだよね。

惑星のさみだれ

 惑星級ボーイミーツガール
 ひょんなことから異邦人との戦いに参加することになった少年少女のお話。原作が20年近く前の作品ということもあって、かなり懐かしい雰囲気の「ラブコメ要素もある少年漫画」
 『プラネット・ウィズ』でもそうだったけれど、物語の圧縮具合が半端ない。プラネット・ウィズは怒涛の展開すぎて、リアタイ勢とよく「1クールなのに2クール+劇場版のボリュームだよね」みたいなことを話していたのだけれど、本作もまた怒涛の展開にちょっと驚いている 
 主人公が「世界を救うため」ではない、わりと邪な動機から戦いに身を投じることになるのだけれど、その理由が明かされるのが、まさかの最序盤。おまけに「主人公にとって因縁の相手と和解ないし決別する」という展開もまさかの最序盤で描かれており、「正義のために戦う主人公」ではなく「復讐する相手を失ってしまい、振り上げた拳をしまうことが出来ずに闇へと落ちていくヴィラン」みたいな状態に。もはや、ヒーローモノに出てくる「闇落ちする主人公の親友」ポジだよね。
 また公式サイトで明かされているように、ものっそい数の刺客たちが登場するストーリーになっているため、後半になるほど展開の速度が加速するんやろなぁって。
 作画的には先のプラネット・ウィズほど戦闘シーンにエネルギーを割いている作品ではなく、総じて「超能力バトルモノのヒューマンドラマ」みが強い。特に主人公を演じる榎木淳弥の、苦しそうなお芝居な。『呪術廻戦』の虎杖悠仁もすげー良かったけれど、やっぱ好き。もっと苦しんでほしい。
 全体的にバストアップのセリフシーンがメインになっているアニメなので、原作とはドラマとバトルの割合がかなり違うんやろなぁ。というわけで原作を読んでみた。(2巻まで。だいたいアニメ6話までに相当)
 全体的に尺はかなり詰められているのね。あと原作は思ってたよりずっとバトル漫画だった。特にさみだれちゃんの戦い方は描写が凄まじくて、カタルシス的な感動すら覚えるような戦闘描写を見るたび、主人公はきっとさみだれちゃんに何度も惚れ直してるんやろな、って。主人公にとって、彼女が自身の困難を打破(物理)してくれそうな予感を抱いた理由が直感的にわかりやすい。
 あと、アニメ版ではさみだれちゃんの下着シーンが片っ端から削られていて、全体的に主人公が彼女を異性として意識するシーンが減っている。なので、てっきり「主人公は彼女に異性としての魅力(下着シーン=女性的な魅力っていうのもアレだけど)を感じているわけではなく、尊敬する相手として好きなのかな」くらいに思っていたけれど、普通に異性として意識しまくってるのね。そこがちょっと意外だった。
 また、カットされた序盤の大きな要素として「ひょんなことから主人公に惚れた女の子」というキャラクターが登場する。
 エピソードとしては、ある日いきなり告られた主人公が対応に苦慮していたところ、仲間から「お前友達いないからもっと人と関わる努力しろ」という助言を受けて映画デートに行くのだが・・・というお話。
 非常に印象的だったのは、実は彼女が「主人公が超能力者であることを知っている」ということを打ち明けたあとの主人公の反応。仲間からは超能力者であることを必死に秘匿しなくてもいいよ、と言われているのに「よし、めんどくさいから彼女を殺そう」と言い出す主人公は、端的に言ってヤバいやつだった。
 このエピソードで描かれているのは、主人公にとっての優先順位が「さみだれちゃんの悲願成就>それ以外」という極端なものになっている点で、かつ「精神的に彼女に依存しすぎている」「自らをないがしろにしすぎている」という点を自ら自覚した上でそうしている、という主人公の精神構造の極端さ。いわゆる「信頼できない語り部」みたいな描かれ方であり、実は全ての登場人物の中で一番危険なキャラは主人公かもしれない、という。実は本作って『Fate/Zero』とか『ジョーカー』みたいな作品なのか。
 あと、アニメではさらっと退場してしまった東雲半月について、原作ではもうちょっと色々描かれている。
 特に印象的なのは、彼が「主人公の事情を知っている、最初の大人である」ということ。「地球を救う」という子供じみた活動に従事する大人の半月。一見メサイアを抱いた子供おじさんのようで、実は全然そうじゃない。彼とのやり取りの中で主人公が感じた色々な情動と、「自分が今はまだ子供である(大学生だけど)」という認識と、成長の機会。半月が登場したことで初めて「大人になる」というとこを考えさせられる主人公とさみだれの二人、という意味を持つキャラクターだった。考えてみると確かに、二人は地球と無理心中するつもりなので、半月さんがいなかったら一生子供のままだったのかも。
 そして、改めて声優のお芝居すげえ、って思ったのが6話冒頭。原作を読むと、大学構内で主人公に話しかけてきたさみだれの姉・氷雨(CV.田所あずさ)が「いやーめちゃ泣いたわ~」と明るいノリで話しかけてくる姿が描かれている(ここはアニメ版と一緒)。でもその前の描写から考えても、内心はかなり傷心してるんだろうなぁ、と推古するだけの余白がそこにはあって、原作でも辛いシーンではあったのだけれど、これがアニメで声のお芝居がついたことで、一気に心情描写の解像度が上がっている。ニュースを知って、なんやかんやあって、の「なんやかんや」を丁寧に描いたようなお芝居マジで凄い。あの、ややかすれた声を思い出すだけで泣いちゃう。
 一方で、そんな彼女を様子を見てもまだ涙が出てこない主人公自身の心情も、お芝居の対比によって更に鮮明に描かれているよね。声優さんってすげえ。


 『ヤングキングアワーズ』にて2005年から2010年にかけて連載された、水上悟志による漫画が原作。全10巻。アニメで全部やるんだって。同氏の作品がアニメ化されるのは『プラネット・ウィズ』以来。
 制作は『<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム-』『ID:INVADED イド:インヴェイデッド』『テルマエ・ロマエ ノヴァエ』のNAZ。また、テルマエ・ロマエに引き続き寿門堂が制作協力としてクレジットされている。
 監督は恋姫†無双シリーズ、『まんがーる!』『このヒーラー、めんどくさい』の中西伸彰。シリーズ構成は、NAZの作品『はじめてのギャル』『俺が好きなのは妹だけど妹じゃない』『アフリカのサラリーマン』『<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム-』でシリーズ構成を担当している百瀬 祐一郎。また、原作者の水上悟志が共同でクレジットされている。
 水上悟志の特徴的なキャラデザは、先のアニメ『プラネット・ウィズ』では制作会議の段階で「今風にアレンジするか、あえてそのままにするか」という議題になっていたらしいけれど(ちなみにアレンジはしなかったらしい)、本作もまた原作絵のままアニメにしてるのね。


意外とご本人は気にされているらしい。

Engage Kiss

 主人公がどれくらいクズでも許せるか?というラブコメハードボイルドアクション。
 ひょんなことから悪魔専門のバウンティハンターとして独立した主人公が、競争入札でのダンピングにより不当に利益を得ながら、彼女とヒモ生活を謳歌するお話。しかも二股。
 世界観だけ見ると「カウボーイビバップ」とか「ノー・ガンズ・ライフ」とか、ハードボイルドアクション系作品の系譜になりそうなくらい硬派な作品のはずだけれど、戦闘シーンで痴情のもつれから修羅場に発展していくさまは紛うことなきラノべ主人公のそれ。シリアスとラブコメの比率は『探偵はもう、死んでいる』くらいかな。どっちもかなり軟派な作品だった。
 話が進むごとに「なんで主人公はクズなのか」「なんで彼女は主人公を諦めないのか」「なんで主人公は彼女を諦めているのか」みたいな部分に説得力が備わっていくので、ままならない関係がどんどんヒューマンドラマになっていく感じなのね。
 あと、ラブコメのノリもちょっと懐かしい。ヒロインの属性も「ヤンデレ」と「ツンデレ」で、あんまり奇をてらってないラブコメに。主人公がろくでなしだけどな!
 そんなろくでなしを演じるのは斉藤壮馬。ご自身もラジオで言及されていたけれど「ガワはちゃんとしてるが中身がクズ、みたいなキャラ」との相性が良すぎる。王子様キャラがハマっていることの裏返しなのだろうか。
 1話は特に「いかに主人公がクソか」という点に絞った内容になっているのだけれど、そんな主人公の描写の中でも特に喫煙シーンが好き。
 喫茶店で喫煙してるおじさんに混じっていつもスパスパするでもなく、煙をヒロインの顔に吐いて露悪的な態度をする、みたいなキャラ付けでもなく。「自分の部屋(しかも賃貸)で、ベランダでも換気扇の前でもなく居間のテーブルの前で、しかもヒロインと会話しながら、おまけにそのヒロインが未成年」という描写を、サラッと入れてくるところ。会話に気を取られていると見逃しちゃうくらいナチュラルに描写していて、彼の性格に根ざした(彼女に対する)配慮の無さがすごく良く描かれているし、二人の会話の中にタバコの話が一切出てこないところも「ああ、彼はずっとそんな感じで、彼女も織り込み済みなのね」っていう、二人の関係性を感じさせる演出に。

©BCE/Project Engage

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 A-1 Picturesによるメディアミックス作品。スマホゲームをリリース予定。ストーリー原案を『冴えない彼女の育て方』の丸戸史明が担当し、キャラクター原案を『デート・ア・ライブ』のつなこ氏が担当している。
 制作はA-1 Pictures。監督は『七つの大罪 戒めの復活』副監督、『VISUAL PRISON』監督の田中智也。こってり系のアニメ作りそう。シリーズ構成は丸戸史明で、世界観設定をTRPGデザイナーの矢野俊策が担当している。両者は『Phantom in the Twilight』にてシリーズ構成・世界設定を担当していて、タッグを組むのは2回目になるのかな。
 キャラクターデザイン・総作監は『這いよれ!ニャル子さん』『東京ESP』『Fate/EXTRA Last Encore』の滝山真哲。


継母の連れ子が元カノだった

Abema見放題

 ついに妹が勝つラブコメ
 「再婚相手に、同い年の連れ子(しかも異性)がいた」という非常にセンシティブなテーマを扱っているが、内容はかなりストレートなラブコメ作品。1話にしてタイトル回収。ひょんなことから義妹(義姉)になった元カノともう一回恋するお話。
・義妹なので血縁関係なし
・同じ学年、同じクラス
・もちろん同居
・なんなら一度付き合ったことがある
 ここまでしないと妹キャラは勝利できないのか。
 付かず離れずの距離を維持したまま描かれるラブコメ作品。別れたからといって、相手のことが決して「嫌い」というわけじゃないのがポイント高い。
 それまで他人だった二人が、ひょんなことから徐々に惹かれ合っていくラブストーリー・・・ではなく「憎からず思う気持ち」という引力と「お前そういうとこやぞ」という斥力が釣り合って公転している二連星のお話。だからオチが「そういうところがスキ」のパターンと「そういうとこホンマ嫌いやわ」のパターンがあって面白い。ラブコメというより、なんだかんだ仲のいい兄妹の痴話喧嘩を見てる気分になる。


 2017年から『カクヨム』にて連載中の、紙城境介による小説が原作。2018年から角川スニーカー文庫により書籍版が刊行中(イラスト:たかやKi)。
 制作は『超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです!』『ド級編隊エグゼロス』『弱キャラ友崎くん、ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』『恋は世界征服のあとで』『社畜さんは幼女幽霊に癒されたい。』のproject No.9。圧倒的なラブコメ作品の多さが印象的なスタジオだよね。project No.9の新作≒ヒロインの女の子がかわいいアニメといって差し支えないと思う。
 監督は『りゅうおうのおしごと!』『超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです!』『弱キャラ友崎くん』等、同スタジオのラブコメ作品でおなじみ柳伸亮。シリーズ構成はいつもの赤尾でこ。キャラクターデザインは『ISLAND』『ドメスティックな彼女』『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』等で作監を担当していた佐藤勝行。唇の作画がエロい。


東京ミュウミュウ にゅ~♡

 なかよし65周年記念アニメ
 まさかの環境問題がテーマの少女漫画。ひょんなことから不思議な力に目覚めた魔法少女たちのお話。大筋はプリキュアみがあるけど、本作はかなり恋愛ストーリー要素が強いよね。王子様ポジのキャラと、ちょいガサツなライバルポジ両方いるやん!恋愛描写が少し子供っぽい雰囲気なのは、原作で主人公が中学生の設定だったためだろうか。高校生にしては随分ピュアな恋愛するやん。
 総じて、なんでニチアサで放送されていないのか不思議なくらい王道なストーリーでびっくりした。深夜アニメなのかこれ。
 メインキャストの5人は、今回のために行われた一般公募のオーディション(公式発表で3000人くらい応募があったらしい)で勝ち残ったスーパールーキー。オーディションの名前が”『東京ミュウミュウ にゅ~♡』声優アイドルオーディション”の通り、本作のメインキャストは「歌って踊って、お芝居もできちゃうアイドルユニット」としてプロデュースされているエリートたちなのだ。すごいね!
tokyo-mew-mew.com
 キャラデザすごい。躍動感のあるモブの髪型とかも凄いし、服のドレッシーさがパない。スカートのふんわり感はやっぱり00年代っぽさがあるよね。てか顔周りのハイライト凄いことになってんな。常にライト浴びてるやん。男の子もまつ毛ちゃんと描いてるし。
 「変身:必殺技アニメーション」というクレジットがある通り、気合の入った作画のポイントが非常に明確(ここの演出を担当しているのは助監督の東田夏実)。めちゃくちゃぬるぬる動くやん。全体的にやや頭身が高めのキャラデザなので、変身バンクの、特に髪の毛のつややかな感じがちょっとエロい。原作は中学生のお話だったが、リメイク版は高校生の設定になっているため、よりエロいデザインになってる気がする。

EDめっちゃかわいい
youtu.be


 「なかよし」にて2000年から2003年に連載されていた、原作・原案:吉田玲子、作画:征海未亜による漫画が原作。てか吉田玲子ってあの吉田玲子さんなのか。旧アニメが放送されたのは2002年なので、約20年ぶりの再アニメ化。既に第2クールの放送が発表されている。
 「なかよし」は、2020年で刊行開始65周年を迎えるらしく、本作はその記念で制作された作品なんだって。なかよし原作のアニメ作品って、もしかしてCCさくらクリアカード編以来かな。
 制作は『Re:ステージ! ドリームデイズ♪』『マブラヴ オルタネイティヴ』『CUE!』の、ゆめ太カンパニーグラフィニカ。監督は『ARIA The AVVENIRE』『ARIA The CREPUSCOLO』助監督、『金色のコルダ Blue♪Sky』監督の名取孝浩。シリーズ構成は『小林さんちのメイドラゴン』『あっくんとカノジョ』『恋する小惑星』『スローループ』の山田由香。
 キャラクターデザインは『デート・ア・ライブ』『Classroom☆Crysis』『RELEASE THE SPYCE』『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』の石野聡


ちみも

 きれいな邪神ちゃんドロップキック
 ひょんなことから魑魅魍魎と一緒に暮らすこととなった家族のお話。サムネの雰囲気だけなら「リラックマとカオル」みがあるけど、あっちが独身女性のお話なのに対し本作は実家住まいの家族のお話なので、本作は圧倒的に平和なエピソードが多い。「しばらく放置してた食べ物が、腐ってないかどうか気にしつつ食べてみる」みたいなことしなくてもええんやな、って。
 また、居候の鬼も非常に意識が高く、2話にしてバイトに応募している。あの邪神ちゃんでさえ3期になってもまだニートなのに。すごい。「いつまで経っても無職、という謎の安心感」とは別の安心感があるよね。
 EDは小松未可子。同氏はかねてより倉木麻衣の大ファンを公言しているのだけれど、久しぶりに小松さんの歌を聴いたら、めっちゃ倉木麻衣みがすごかった。そのうち倉木麻衣になっちゃうんじゃないだろうか。


 キャラクター原案・カナヘイによるオリジナルアニメ。
 制作はシンエイ動画だが、実質的な制作は「アニメーション協力」としてクレジットされているM2 ANIMATION・DeeDee Animation Studioが担当しているみたい。海外のアニメーションスタジオなので、絵の雰囲気は「アニメ」というよりも「カートゥーン」て感じに。
 監督は、ぴのあると氏。誰!!シリーズ構成は、クレヨンしんちゃんシリーズや『うちタマ?! うちのタマ知りませんか?』の、うえのきみこ氏が担当している。


ハナビちゃんは遅れがち

 パチスロの擬人化ショートアニメ。ワンチャンウマ娘みたいなヒットくる?
 ひょんなことからパチスロ台と一緒にパチ屋の営業をすることになった店長のお話。話数が進むとどんどんボケ要員ばかりが増えていく。同じくショートアニメ『八十亀ちゃんかんさつにっき』みたいなノリを感じつつ、あっちはむしろツッコミ要員が豊富だったことに気づいた。ボケとツッコミのノリが『生徒会役員共』っぽくて好き。本作は下ネタがないから子供にも見せられるね!
 登場するパチスロ機はすべて、ユニバーサルエンターテイメントの販売する機種。表題にもなっている機種「ハナビ」は1998年リリースなんだって。へー。そら埃も被るわ。このアニメを機に、またリアルで稼働させるんだろうか。てか作中で来店したお客さんが「懐かしいなー」って言ってるけどお前何歳だよ。


 2019年よりウェブコミック配信サイト『コミプレ』にて連載中の、原作:白金らんぷ・作画:まみむによる漫画が原作。原案はパチスロ機のメーカーことユニバーサルエンターテイメント。
 制作は『ピアノの森』『キャップ革命 ボトルマン』のGAINA。監督は『生徒会役員共』『K』『ハンドシェイカー』等のGoHands作品でおなじみ金澤洪充で、本作のシリーズ構成・脚本も兼任している。キャラクターデザインは『大図書館の羊飼い』の袖山麻美。


異世界迷宮でハーレムを

 大切なお金でヒロインを買う英雄譚
 ひょんなことから異世界転移した主人公が、とある女の子に一目惚れして冒険者になるお話。作品によって主人公が冒険者になる決意を抱くモチベーションは様々だけれど、本作の主人公は「どうしてもあの子(奴隷)がほしい…!よし、稼ごう!」から始まる。「元の世界でも異世界でも孤独な思いをしていた主人公が、共感の相手として奴隷の子を娶る」という展開はよく見るけれど、本作の主人公の動機は「しゅきぃ・・・」なので、ある意味ピュア。そういえば、自分の奴隷とセックスする主人公ってあんまりアニメで見ないよね。
 圧倒的な行動力を見せながら、万難を排して購入資金を集めていく主人公の執念がすさまじい。3話にして「お金欲しさに賞金首(と、その取り巻き)を殺害する」という偉業まで成し遂げちゃって、もう後には戻れない状態に。ここまで「恋は盲目」を体現するようなアニメってちょっと珍しいかもしれない。
 戦闘シーンの作画が結構すごい。主人公は開幕時点でチート剣1本しか持ってないレベル1の村人。いきなり大量のモンスターを使役したり強力な魔法を放ったり森を焼き払ったりするわけではないのだけれど、殺陣の体捌きであったり、恐怖を感じて自然と手に力が入ったときのグローブのシワだったり、顔に浮かぶ汗だったり、リアリティラインの高いファンタジー作品って感じがすき。命の取り合いをしている主人公の緊張感がよく描かれてるよね。
 あと、作画でいうとエロいシーンは「あー異種族レビュアーズ作ってるスタジオだわー」といった感じのねっとり作画なので、あのクセが苦手でなければ。
 EDのクセが強い件について。作詞・作曲は『ダンベル何キロ持てる?』『異種族レビュアーズ』OPED等でおなじみ篠崎あやと。特に本作は本編がシリアスな分、EDの温度差で風邪ひきそう。


 「小説家になろう」にて2011年より投稿されている、蘇我捨恥による小説が原作。籍版がヒーロー文庫より2012年から刊行されている(イラスト:四季童子)。
元の原題は『異世界迷宮で奴隷ハーレムを』だったが、途中から今のタイトルに変更したらしく、誰が何のハーレムを作るのかよくわからない表題になっている。
 制作は『ひぐらしのなく頃に 業』『異種族レビュアーズ』『見える子ちゃん』のパッショーネ。最近やたらエロいアニメ作るじゃん。監督は『ニセコイ』『幸福グラフィティ』『抱かれたい男1位に脅されています。』の龍輪直征。シリーズ構成は『弱虫ペダル』の砂山蔵澄。キャラクターデザインは『見える子ちゃん』であの化け物デザインを担当していた、うのまこと氏が担当している。


Extreme Hearts

 スポーツ少女アイドル版リリカルなのは
 ひょんなことからエクストリームスポーツ部に入部した女子高生達が、全国アイドル甲子園に出場するお話。
 「エンターテイメントを重視したスポーツ」というモチーフを扱ったアニメ作品はちょくちょく放送されていて、最近だと『トライブナイン』が個人的に印象に残っている。あっちはエクストリームギアを装備した選手たちが野球で殺し合いをするスポーツ青春モノ作品。世界観こそ違うけれど、本作もまたあんな感じの激しい戦いが繰り広げられている。
 とはいえ、ストーリー的には健全なスポーツ青春モノなので、『はるかなレシーブ』『球詠』とか『プラオレ!〜PRIDE OF ORANGE〜』みたいなノリで楽しめる。そういえば主人公チームの前原純華は、はるかなレシーブで大空遥を演じていた優木かなが演じているのね。
 ただ、競技がカオス。簡単に言うと「球技限定の十種競技で総合力を競う」みたいなルールになっており、スポーツの数だけ試合がある。バトルアスリーテスかな。おまけに「身体能力超強化してるので、みんなプロ以上のスペック」「超火力でプレイヤーをノックアウトしたら勝ち」という追加要素のせいで、もはや格闘技である。
 青春部活モノって「お互いの想いをぶつけ合うためのシチュエーションが作りたいけど、「物理的に殴り合うケンカ描写」は視聴者が付いてこれないから、スポーツを通じて間接的に物理的なコミュニケーションをさせよう!」という流れから、競技シーンが関節描写として機能しているという側面があるけど、本作は「スポーツを通じて主人公たちを(ルールの範囲内で)ボコボコにしようとする相手選手に、屈せず立ち向かう主人公チーム」という構図を描きつつ、かつ相手選手の印象を毀損しすぎないためのモチーフとして機能してるのね。相手チームを物理的にノックアウトするアイドル・・・ってどうなんだ。
 話の半分はアイドル作品ということで、ちゃんと試合後にウィニングライブがある。加えて「普段はスポーツばかりしていた少女たちが、イチから歌やダンスを覚えていくアイドルたちの青春物語」という描写も盛り込んであるため、ほんと「アイドル作品=スポーツ青春モノ」を体現したような作品に。
 Q「もうそれスポーツじゃなくね?」A「最先端のスポーツだから大丈夫」要はガルパンくらいのリアリティラインで激しいアクションと健全なスポーツ精神を両立しているので、軽いノリで楽しもう。腹でボール受けて場外にふっ飛ばされたりしても、最先端技術なので大丈夫なのだ。
 作品の幕間を描く外伝として『Extreme Hearts S×S×S』が同時に配信されている。いわゆる「本編とは関係ない内容の、ゆるいショートアニメ」と違い、本編で描かれていないストーリーを補完することが目的になっており、体感としてはスピンオフ小説に近い。
 なんで「小説」かというと、本作は配信形式こそアニメだが、プレイヤーの操作が不要なノベルゲーム、といった趣向の映像として作られているという特徴がある。アニメを観ているというより、映像付きボイスドラマ。キネティックノベル的な?
 これはボイスドラマ全般に言えることだけれど、声優のお芝居についてアニメと違い明確な尺の制限が無いため、話速や間の作り方を自由に出来る分、お芝居の自由度が高いんだって。特に同じ作品の中でアニメとボイスドラマのお芝居をお手軽に聴き比べできる機会は貴重なので、ついでにおすすめ。#00の咲希ちゃんめっちゃかわいいな。
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 オリジナルアニメ。原作・脚本は『魔法少女リリカルなのは』『DOG DAYS』原作でおなじみ都築真紀(つづき まさき)。
 制作は『アルテ』『トニカクカワイイ』『ブルーピリオド』のSeven Arcs。監督は『バミューダトライアングル 〜カラフル・パストラーレ〜』『ぶらどらぶ』の西村純二都築真紀の作品はだいたいこのメンツで作られているので、本作もまたいつものメンツということに。キャラクターデザインはViVid Strike!のサブキャラデザ・総作監魔法少女リリカルなのはREFLECTIONでは総作監を担当していた新垣一成。


てっぺん!!!!!!!!!!!!!!!

 「!」マークは全部で15個。女の子がいっぱい出てくるコント番組
 とあるお笑い甲子園に出場することとなった女子高生漫才トリオたちの日常を描くお話。
 トリオ漫才がテーマだけど、内容はほぼ日常系コント。てか、オネエのおじさんめっちゃ出てくるな。高松信司監督は自身の作品にオネエのおじさんを出さないと気が済まないのだろうか。
 「目立つとTVに出られる!やったー!」というお登りさんが多い。また、三度TV番組の話題が登場することから、本作における「お笑い」は板の上で披露する方ではなく「TVのバラエティ番組」のことを指しているみたい。特に3話とか「あ、こういう深夜のコント番組見たことある!」っていう懐かしい気持ちになった。今ってこういうコント番組はTVで放送してるんかな。「○と☓のパネルに向かって飛び込むやつ(☓は泥水)」「叩いて被ってジャンケンポン」とか、たしかに今のコンプラだとNGかも。
 というのも、よくTVドラマ界隈で「コンプラ厳しすぎてTVドラマで放送できない内容も、アニメなら放送できる」みたいな話を聞くことがあるけれど、実はバラエティ番組もまた同じ試行錯誤をしているのかもしれないな~って。それこそ「笑ってはいけない~」みたいな番組が、吉本興業の力でアニメ化されちゃったりしてね。
 なお、ちゃんとプロにネタ監修をしてもらっている『昭和元禄落語心中』や『まえせつ!』と違い、本作はほとんどネタ見せのシーンが無いのも印象的。あくまで「彼女たちの日常を描くアニメ」なので、ネタ見せでお客さん(視聴者)を笑かそう、という感じでもないのね。『じょしらく』のノリを思い出す。
 タカコ荘の管理人こと谷誠司の元ネタは、『結城友奈は勇者である』等で知られるアニメーション演出家の岸誠二。私の知る限り最もビジュアルのインパクトが強いアニメ監督さんで、アニメのキャラよりキャラが濃いまである。


 ちなみに、毎年10月に埼玉県川越市で開催されている川越まつりに同氏は毎年参加しているらしいので、会おうと思えば会いに行ける監督ですって本人が言っていた。最近はコロナの影響もあってお祭り自体が中止されていたが、今年は無事開催されたようでなによりです。
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 『月刊ブシロード』にて2021年から連載されている、ストーリー原案:いぬじゅん、漫画:なまむぎ、原案協力:チームYによる漫画が原作。過去に中の人たちが同作のイベントで漫才を披露していることから、「原案協力」としてクレジットされているらしい。声優って大変ね。
 制作は『ACTORS -Songs Connection-』『ぶらどらぶ』のドライブ。アニメーション制作と音楽制作の2軸体勢という特殊なアニメスタジオで、他にも『悪偶 -天才人形-』『軒轅剣 蒼き曜』『 テルマエ・ロマエ ノヴァエ』で音楽制作を担当していたりする。
 総監督は、『銀魂』シリーズ、『美男高校地球防衛部LOVE!』シリーズ、『ぐらんぶる』『RobiHachi』監督でおなじみ高松信司。同氏は本作の音響監督も兼任しており、かなり気合い入れてボケとツッコミの演技指導をしてたんだろうか。監督は『東京喰種:re』『MIX』『文豪とアルケミスト 審判ノ歯車』の渡部穏寛。キャラクターデザインは『戦姫絶唱シンフォギア』シリーズ、『ぶらどらぶ』にてメインアニメーターとして参加していた大久保義之。キャラデザは初かな。


ブッチギレ!

アマプラ、ひかりTV独占配信

 新選組のシャーマンによる新・新選組
 ひょんなことから新選組の代理として京都の街を守りつつ、悪い鬼を退治することになった死刑囚たちのお話。カテゴリとしては時代劇・復讐劇かな。というか時代劇と復讐劇ってだいたいセットになってるよね。最近だと『無限の住人』とか『擾乱』とか『どろろ』とか。ちなみに、上記の時代劇のうち擾乱以外は全て放送当時アマプラ独占配信。アマプラはそうとう時代劇が好きらしい。
 閑話休題。主人公は、鬼に家族を殺されたことがキッカケで鬼への復讐を誓った少年で、お話のメインは彼の成長物語。また、各話で他の囚人たちの過去もちょっとずつ描かれていく。重い話でありつつ、意外と明るいノリなのが印象的。
 主人公の見た目が特にわかりやすいけど、実は本作は少年漫画、とりわけヤンキー漫画ライクな作品だったりする。ちょうど放送中の『オリエント』が近いかも。あっちも戦国ヤンキーモノだし。
 戦闘シーンも「声のでかいほうが勝つ」「最後までツッパリ続けたやつが一番強い」というメソッドを導入しているので、「いやあいつ絶対斬られただろ、なんで生きてるんだよ」みたいなシーン多めだったりする。リアリティラインが低めの作品やねんな。
 新・新選組のモチーフについて。囚人(そこら辺のゴロツキとか混ざってるし)を宛がう発想がちょっと好き。新選組といえば、主に2次元での創作界隈において「正義を執行する人」「イケメン集団」みたいな解釈が多いイメージだけれど、あえてヒーローポジに悪人を采配するのがロック。ちょっと金カム意識してるんかな。あくまで「新選組を演じてもらっている」という前置きを入れることで既存のイメージから距離を置きつつ、バラエティ豊かなキャラを描こうという発想いいよね。
 一方の、鬼のモチーフについて。作中では謎のお面をかぶった人斬り集団として登場している。加えて、攘夷志士(尊王攘夷運動)とセットで描かれていたりするのがちょっと面白い(でも攘夷志士=鬼というわけではないみたい)。
 もともと新選組自体が尊王攘夷運動への弾圧をしていた組織なので、蓋然性の高いストーリーではあるのだけれど、ちゃんとそれぞれの思想に触れているので、ちょっとした歴史モノとしても面白かった。
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 制作は『刻々』『ゴールデンカムイ』『pet』のジェノスタジオ。何気にすべての作品が独占配信形態を取っているという特徴がある(ゴールデンカムイのみ解禁済)。そういえばゴールデンカムイのIPを手放したんだっけ。
 監督は『ゼロから始める魔法の書』『けだまのゴンじろー』『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』の平川哲生。本作ではシリーズ構成も担当していて、一部脚本も書いている。
 キャラクター原案は、みんな大好き『シャーマンキング』原作者の武井宏之。同氏が和月伸宏の漫画作品『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』にアシスタントとして参加していた経緯もあり、るろうに剣心みを感じる雰囲気に。そういえばるろ剣もリメイクされるんだっけ。


最近雇ったメイドが怪しい

 (からかうのがあまり得意じゃない)おね×(無自覚系たらし)ショタラブコメ
 ショタに雇われたメイド:高橋李依、メイドを雇ったショタ:早見沙織というミステリーみたいな配役がずっと気になっていたのだけれど、本編見てすごく良い配役だったことがわかった。お姉さんにからかわれて顔を真赤にするショタが可愛いアニメ、ではなく逆向きのベクトルになってるのね。早見沙織の芯が強い声を持つ坊っちゃんに、1話あたり10回くらい(無自覚に)プロポーズされるメイドさん高橋李依の(普段は)凛とした声が、不意打ちプロポーズで毎回ふにゃふにゃになる演技めっちゃ好き。
 基本的に徹頭徹尾イチャイチャしてる非常に甘い作品なので『トニカクカワイイ』『死神坊ちゃんと黒メイド』あたりが刺さる人向けだろうか。平和だ。
 本作もそうだけれど、pixivやツイッター発祥の漫画原作アニメって「既存のキャラ属性同士の新しい掛け算」みたいなのが多いよね。気軽に発信できる分、雑誌の連載より好き放題できる+既存のモチーフを扱っているので、見る側も検索しやすい、みたいな?


 2020年から『月刊ガンガンJOKER』で連載中の、昆布わかめによる漫画が原作。2019年からpixivに投稿していた漫画が元になっている。
 同氏の漫画がアニメ化されるのは『ジャヒー様はくじけない!』以来。ということで、ついこの前アニメ化されたジャヒー様に引き続き、制作はSILVER LINK.(と、BLADE)。総監督・シリーズ構成の湊 未來、助監督の伊部勇志もジャヒー様から続投。監督の星野美鈴はジャヒー様の8話、19話で演出を担当していた人なので、実質ジャヒー様。音楽制作はいつものキングレコード


シュート!Goal to the Future

 今風にリブートしてないスクールウォーズ
 とある弱小高校サッカー部の下剋上。『シュート!』の正式な続編だけど、次の世代のお話なので実質新作。同じ世界線で、旧作の舞台になった高校の今の部活動を描くパターンいいよね。最近だとあだち充の『MIX』とか記憶に新しい。
 1話は、過去に色々あってサッカーから離れていた元天才の主人公が、ひょんなことから再びサッカーに触れるのだが・・・という導入。
 スポーツ青春モノって、「楽しくワイワイ」から「世界一を目指そうぜ」までいろんなバリエーションがあるけれど、本作は高校の部活でありながら「日本最強のサッカーチーム」らへんを目指すお話。なので、教える方も教わる方も「弱小部の活動日記」ではなく「元最強クラブチームの存続問題」みたいな迫真の展開に。この感じちょっと懐かしいかも。
 また、最初からパワーワードのオンパレード(主に顧問の先生)。「主人公たちの自尊心、プライドを傷つける言動をあえて行い、彼らから闘争心、反骨心を引き出す」みたいなメソッドは、少しずつ形を変えながら今もスポ根モノに受け継がれているが、急に先祖返りするじゃん。
 別に奇をてらった内容ではなく、むしろ王道のストーリーなのだけれど、その王道が「30年前は」というキャプション付きなので、描写がどれも強烈。「コンプライアンス」とか「ブラック部活問題」とかいうワードが存在する以前の王道ストーリーを新作で見れる貴重な機会なんやな、って。
 あと、他のサッカーアニメと比べて圧倒的にボディーランゲージ多いよね。大抵の問題はボディーランゲージでのコミュニケーションによって解決を図っていくので、なんか毎回ケンカしてる気がする。
 サッカー描写も表題の通り「魔球みたいなシュートを打つ天才のお話」を中心に組み立てているところが特徴。試合もドラマ仕立てになっててサッカーの技術的な話は少ないので、そういう意味ではサッカー知識なくてもとっつきやすい作品かもしれない。2話の練習試合とか、試合のメインが「元カノが、久しぶりにあった彼氏に幻滅して別れを告げる話」になってて草。サッカーとは。
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 週刊少年マガジンにて1990年~2003年に連載されていた、大島司による漫画が原作で、原作のその後を描くオリジナルアニメ。
 原作は1993年に一度アニメ化されているため、約30年ぶりくらいのアニメ化ということに。ここ最近のリメイク作品の中でも特に古いんじゃない?
 企画はクランチロールとボアソルマネジメント(原作者・大島司のエージェントをしている会社)。公式の謳い文句も、

「伝説の11人抜き」や「サッカー、好きか?」等、記憶に残る名シーンも多く、漫画ファンのみならず、プロ・アマの垣根を超えサッカー選手にもファンが多い。英語、中国語、韓国語、タイ語インドネシア語など様々な国・地域で現地語に翻訳・出版され、北米・ヨーロッパではアニメも放映された。(公式サイトより)

とわざわざ書いているあたり、海外の原作ファンを強く意識した作品みたい。てか原作5000万部も売れてるのね。すげー。
 制作は『くまクマ熊ベアー』『チート薬師のスローライフ異世界に作ろうドラッグストア〜』『勇者、辞めます』のEMTスクエアード。監督は『まもって!ロリポップ』『ズモモとヌペペ』の中村憲由。子供向けアニメ作品にずーっと携わり続けている監督なので、つまり本作は実質子供向けアニメ。
 シリーズ構成は『ゾイドワイルド』『彼女、お借りします』『EDENS ZERO』『新テニスの王子様』の広田光毅。キャラクターデザインは『夢色パティシエール』『パズドラクロス』の秋山由樹子。かなりシュッとしたデザインになっていて原作の丸い目や鼻のニュアンスあえて抑えてる感じ?回想の中に登場する過去のキャラクターはみんなザ・大島司って感じのデザインなので、あえて今風を意識してるのかもね。


金装のヴェルメイユ~崖っぷち魔術師は最強の厄災と魔法世界を突き進む~

 洋モノのつぐもも
 ひょんなことからお姉さん悪魔と契約した男子学生が同棲生活をエンジョイするお話。エッチなお姉さんの力を借りて、凄い魔法使いを目指していくストーリーになっている。
 原作は漫画だけれど、魔法学校かつ学園モノ、主人公とお姉さん悪魔、幼なじみのツンデレちゃん、金髪イケメンの金持ち同級生等、ラノベのコミカライズみたいな作風だよね。テンプレを踏襲するならば、夏休みからの水着回とか、体育祭とか文化祭とか生徒会との対決とかありそう。
 意外なのは、お姉さん悪魔というキャラクター。このポジションって最近は割りと「態度のでかい語尾が「のじゃ」なロリ幼女」みたいな見た目幼いキャラクターが割り当てられている作品が多かったため、身も心もおねショタという本作は意外に貴重。のじゃロリ自体がある種の逆張りみたいなキャラ造形なので、本作は逆張り逆張り、みたいな。でもCVが内田真礼なので、ワンチャン幼女化しそうな気がしないでもない。
 主人公は『戦x恋』にて主人公を演じた広瀬裕也。気弱なキャラほんと得意やな。戦x恋ではリードされつつ最後はリードする感じの気弱キャラだったけれど、本作は概ねリードされるチェリーボーイ的ポジションに。後半で逆転くるか?
 使い魔を使役する魔術師のお話ということで、てっきりポケモンバトル的な感じを予想していたけれど、普通に本人同士が戦うパターンだった。3~4話の、力と力のぶつかり合いによる戦闘描写はすごく少年漫画。みんな思春期やな。


 サブタイ的にラノベ原作と思いきや。『月刊少年ガンガン』にて2018年から連載中の、原作:天那光汰/作画:梅津葉子による漫画が原作。
 制作は、2020年に設立したスタジオのStaple Entertainment。元はフッズ・エンタテイメントでアニメーションプロデューサーを務めていた植田慎也が代表を務めている。
 監督は『3D彼女 リアルガール』『戦x恋』『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』の直谷たかし。副監督の浅見松雄もまた上記フッズエンタテイメント作品で副監督を務めていた人で、シリーズ構成の高橋龍也、キャラデザの立石聖も『戦x恋』に参加していたりする。実施戦x恋。

転生賢者の異世界ライフ 〜第二の職業を得て、世界最強になりました〜

 スローライフ系まったり異世界無双
 ひょんなことから異世界転生した主人公が、世界最強の冒険者になるお話。本編は2話から。何らかの使命を持って世界最強の能力を得たわけでもなく、ただ成り行きで最強になった主人公のお話なので、サブタイのとおり「皆もすなる異世界ライフといふものを、我もしてみむとてするなり。」みたいなノリでのんびり冒険をしていく。実質土佐日記
 主人公は世界最強ゆえに俗世への関心が薄く、常に「へー、冒険者ってそういうことしながら生活してるんだ。俺も真似してみようかなー」みたいな、一歩引いた視点で冒険者の真似をしている感じが印象的。そういう意味ではこれ随筆みたいな作品やな。
 主人公の職業はテイマーなので、最初から結構な大所帯。特に、自由気ままに振る舞うスライムたちとの日常描写が「たくさん猫を飼ってる人のエッセイ」っぽさを加速させている気がする。
 戦闘描写にしても、主人公は軍師タイプなので魅せ方が独特だよね。ちょっと『ログ・ホライズン』を思い出す。あの「背中で語る」感が好き。


 「小説家になろう」にて2017年から連載されていた、進行諸島による小説が原作。書籍版が2018年よりGAノベルから刊行中(イラスト:風花風花)。
 同氏の小説がアニメ化されるのは『失格紋の最強賢者 〜世界最強の賢者が更に強くなるために転生しました〜』以来。「この作者、似たような作風の小説2つも書いてんのかよ」と思った人がいるかもしれないけれど、同氏の著作は
異世界転移したのでチートを生かして魔法剣士やることにする』
異世界賢者の転生無双 〜ゲームの知識で異世界最強〜』
異世界転生で賢者になって冒険者生活 〜【魔法改良】で異世界最強〜』
『暗殺スキルで異世界最強 〜錬金術と暗殺術を極めた俺は、世界を陰から支配する〜』
『極めた錬金術に、不可能はない。 〜万能スキルで異世界無双〜』
といった具合なので、そういう作風なんです。
 制作は『バビロン』『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』のREVOROOT。監督は『バビロン』副監督の小嶋慶祐。また同氏は本作でキャラデザも兼任している。助監督は『PSYCHO-PASS サイコパス 2』『infini-T Force』『バビロン』で監督を務めた鈴木清崇。シリーズ構成は『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』にて一部脚本を担当していた福島直浩。


5億年ボタン

 ポップでキャッチーなニコ動の哲学アニメ
 コント「5億年ボタン」。作中でもネタにしていたけれど、実は原作がものすごく短いんだよね。それを「哲学」と「いつものやつ」で30分アニメに希釈したのが本作。
 本編はシュールギャグ。押すと5億年を孤独に暮らさないといけない謎のボタンのお話で、押すたびにクソ長い旅が始まる。
 5億年パートは概ね「人類の進化と衰退」がテーマになっているのだが、語り口や演出が神話っぽくて草。めっちゃ神話を創作するやん。内容もちょっとそれっぽいし。
 5億年パートが終わると(トータル・リコールよろしく)すべての記憶を失ってもとの世界に戻されるが、戻った途端に(ボタンを押す前の)会話劇がそのまま始まる緩急すき。そして調子に乗った主人公がボタンを押した途端、また神話が始まる感じもすき。
 メインキャストはいつもの三森すずこに加え、大空直美高野麻里佳。3人のうち特に大空直美がこの中で一番後輩?同氏がいじられる側に回ってる時の面白さはかねてより存じ上げていたので、4話の大喜利パートが非常に面白かった。あと三森さんの自由さが相変わらずで好き。
 ニコニコ動画ではすっかりおなじみの映像作家こと、ビームマンPが(菅原そうた作品の恒例として)本作の一部アニメーションを「自由に」担当している。同氏は今もニコニコ界隈で活躍していることもあり、ネタの多くがニコニコ界隈にしか通じないニッチなものばかりで草。なので、可能な限りニコニコでの視聴推奨。あっちは動画のタグ機能が非常に優れており、元ネタがわからない時すぐ調べることが出来る点が圧倒的に優秀なプラットフォームなのだ。
 追記。元々マンPさんは一部話数のEDを引き受ける形で参加していたらしいのだが、制作が進むほど菅原氏があまりに忙殺されているのを見かねて各話ED制作を引き受けたんだって(ニコニコ生放送内の発言より)。めっちゃいい人やん。


 菅原そうたによる短編漫画が原作。原作って20年くらい前なんだって。ちなみに、アニメ化に際し登場人物が一通り変更されている(作中で説明あり)。
 制作は、原作者である菅原そうたが代表を務めるSTUDIO SOTA。同氏が監督を務めるのは『gdメン』『でびどる!』以来だけれど、本スタジオがアニメを制作するのはこの作品が初めてだったりする。


最後に

 旧作の1話視聴は非常におすすめしたい。冒頭の通り、旧作は既に全部視聴した人からの「これは最後まで見る価値があるよ」もしくは1話で切った人からの「このアニメは最後まで見る価値がないよ」という感想のどちらかに収束してしまいがちなので、それを参考にしてしまうと「最後まで観ることができるかどうか」という点でアニメを選んでしまい、結局アニメを見るのが億劫になってしまうからだ。1クール長いねん。
 アニメを観る上で最も大切な要素の一つに「よくわからないけど面白い」というのがある、と私は思っていて、それがリアタイ時の楽しみの一つでもあるのだけれど、それを味わうのが難しい旧作こそ「最後まで観るかどうかはさておき、とりあえず1話だけ観てみるか」という姿勢は案外、同様の楽しみを味わう上で大切な姿勢なんじゃないだろうか、くらいに思っている。決して「冒頭のシーンだけ観て映画館を出る」という行為みたいな罪悪感とか徒労感を感じる必要はなくて、「2話以降観るかわからんけど、1話は面白かったなー」くらいのノリで楽しめれば、それで良いんじゃないだろうか。
 そして、製作者様へ感謝をば。今期もまたとても面白い作品を作っていただきありがとうございます。これからぼちぼち観進めてみます。