2021年夏アニメ1話ほぼ全部観たので、ひとくち感想にしたよ

はじめに

 なんやかんやありつつも、来期のアニメが放送を開始するまであと1ヶ月くらい。丁度今頃になると「今期のアニメ、リアタイ勢はなんか最新話で盛り上がってるけど自分は全然追えてないし、レビューも『8話”が”めっちゃ面白い!』て。じゃあ7話まではそんなに面白くないのかよ、とか思っちゃうし。なんか今期のアニメはもういいやー」みたいな気分になってくるので、あえて1-3話程度までの視聴後感だけ目録にしてみた。備忘録も兼ねているので、後日改めて興味を持つきっかけになれば幸いだ。ちなみに3クール以上の長期シリーズは「1期1話を観てね」くらいしか書くことができないので基本的に端折っている。

配信情報まとめ

 私はTVでアニメを観ない(BS見れないし、TOKYOMXもAT-Xも受信できない)ので、配信情報はこれ以外の手段について書いている。
 なお、独占配信系タイトルは放送開始時点でのものであり、後に他の配信サイトでも配信が開始される場合がある。あくまで現時点での参考になれば。

独占タイトル一覧

アマプラ独占配信

平穏世代の韋駄天達

ネトフリ独占配信

終末のワルキューレ

FOD独占配信

平穏世代の韋駄天達
現実主義勇者の王国再建記
NIGHT HEAD 2041

感想

Sonny Boy

 この世界から、抜け出すんだ。『サクラダリセット』みたいな漂流教室
 制作はマッドハウス。監督・脚本・原作を『ワンパンマン』『ACCA13地区』『ブギーポップは笑わない』でおなじみ夏目真悟が一人で担当しており、かなり作家性の強い作品。
 キャラクター原案はあの江口寿史。同氏の漫画は監督の青春なんだって。

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©Sonny Boy committee

 また、『スペース☆ダンディ』『キャロル&チューズデイ』でおなじみ渡辺信一郎が本作の音楽アドバイザーとして参加している。劇中曲がめっちゃ尖っているのは多分この人のせいだと思う。
 主人公を中心にした描き方はあまりせず、それぞれのキャラクターたちの物語をそれぞれの視点で少しずつ描いていく青春群像劇。TVドラマみたい。監督が「あえてモノローグとか比喩表現とかあんまり使ってないです」て言ってたのが印象的で、とにかく会話劇によって本編の殆どが構成されている異色の作品。
 しかも、声優陣に対してかなり演技の引き算をお願いしていたらしく、ほとんどデフォルメされていない、ほぼむき出しの感情が台詞の端々から溢れている。「物語上のロールを演じているキャラクター」ではなく「ナマモノとしての学生」を描こうとしているので、このキャラのこの言動はどういう意味なんだろう、みたいな考察が高校の現国並に難しい。
 1話はまさかの背景(空)無し。もちろん作中の意味は別にあるんだけど「キャラクターの表情と、声のお芝居しか見るものが無くなるまで引き算をする」という極端な演出になっているのが非常に強烈。見ていてふと、『映像研には手を出すな!』の中で浅草氏とツバメの「そもそもなんでアニメは、全カットの背景を細かく描くのか。漫画は白黒ではないか。色をつける必要があるのか!」「でも綺麗じゃん」みたいなやり取りがあったのを思い出した。

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©Sonny Boy committee

 その背景を担当するのは『少女歌劇 レヴュースタァライト』でおなじみスタジオパブロ。本作もまた、背景の塗り方が独特の味があって好き。どのカットも、もはや1枚のイラストみたい。

 2話以降の展開として、毎話異なる法則を持つ異世界にどんどん漂流していきながら出口を目指していく・・・という縦軸なのだけれど、全く異なる秩序を持つ世界の中で都度皆で集まって、話し合って、結論を導いていく様がすごくリアル。倫理的な人物が中心となって正しいルールを作っていく、わけではないのがポイント。例えば1話なら
・アイツらは超能力が使えてずるい
→使えないやつを見下している
→じゃあ超能力を自由に使えないようにしようぜ
→守らないやつには罰を与えようぜ
みたいな。
 リアル世界の学校において、声の大きいグループによって勝手に決められたルールがさも世界の秩序であるかのようにそのコミュニティ内でまかり通っていて、なんなら私刑なんか始めちゃったりするやつがいたりして、みたいな光景を見たことある人も多いと思うけれど、毎話がその縮図。つっら。
 ヒロインの女の子を演じるのは、メジロマックイーンでおなじみ大西沙織。かっこよくて、自分に正直で、気が強い女性ほんと似合うよね。大きな目でこっちを見ているだけのカットが何度も差し込まれていて、彼女の「全部見透かしているような怖さ」みたいな部分をより鮮烈に描いていて好き。

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©Sonny Boy committee

 EDは銀杏BOYZ。ゴリゴリに監督の趣味だろうなぁって感じが好き。EDも収録されているサントラは、アナログ盤が限定発売されるという気合の入りよう。ちなみにナベシン監督の作品『キャロル&チューズデイ』のアルバムもアナログ盤が発売されており、強いこだわりを感じる。あっちもすごく良いアルバムだよね。

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マギアレコード 2nd SEASON

 2期。制作スタッフは概ね続投。強いて言えばシリーズ構成に高山カツヒコが新規参戦していたりする。
 本作はゲームアプリ原作のオリジナルストーリーなので、1期は「まどマギとは別の世界のお話」みたいな感じで進んでいったけれど、一方で「まどマギのifストーリー」という側面もちゃんとある。特に2期1話はその点にフォーカスしたお話のため、ゲームアプリや1期未履修の人はむしろ先に2期1話を見たほうがとっつきやすいかもしれない。1期と比べて(楽曲や演出含め)かなりまどマギを意識した内容で、「ここから救いのあるお話に分岐していくんだろうなあ!」っていう明るい希望を抱けるような、凄くエモい挿話だった。劇場版かな。
 1期(特に13話とか)もそうだったけれど、見せ場のアクションシーンがちょくちょく劇場版と見紛うレベルの作画クオリティで制作されており本当にわけがわからない。1話でさやかちゃんが空飛んでるシーンとか、あまりに凄すぎてテレビ画面が小さく感じる。作画フェチの人はぜひコマ送りで見てみてね。

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©Magica Quartet/Aniplex・Magia Record Anime Partners

 
youtu.be

小林さんちのメイドラゴンS

 2期。平和な異種族文化交流。
 監督は故・武本康弘に代わり、『日常』『響け!ユーフォニアム』等でおなじみ石原立也が担当。前監督は2期のストーリー構成や一部絵コンテなど途中まで参加していたため、「シリーズ監督」として本作ではクレジットされている。その他スタッフは続投。
 トールかわいい。1期はどんどん新しいドラゴンが登場する話が続いていたので、2期はトールの可愛さを掘り下げるお話が多くなる予感。しらんけど。
 今期はクール教信者の作品が複数放送されているけれど、その中でも本作は心情描写がほんと圧倒的だよね。デフォルメが強いキャラデザでありつつ、表情の描き方(目の動き、尺感とか)が「あ!ヴァイオレット・エヴァーガーデンでみたやつだ!」ってなる。

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©ドラゴン生活向上委員会

 ちなみに本作はメインに男性キャラの少ない作品なんだけど、その割に男性のモブキャラは結構でてくるんだよね。モブ役として1期から参加している高橋伸也曰く「モブの声はだいたい俺」とのこと。例えば商店街の店主、小林さんの職場の社員、マンションの住人等はほぼこの人が演じている。あの人の演じ分けやっぱ凄いよね、っていうアニメになっている。
 あと、OPの多幸感がヤバい。「トールが可愛い」みたいな感じの歌でありつつ、本作が「救いのある物語」であることを予感させる歌詞や映像が物語として綺麗にまとまっていて、とても明るい曲なのにほんとエモい。

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RE-MAIN

 「以前の自分」という名の呪いと戦うスポ根モノ。倉敷市のご当地オリジナルアニメ。
 制作はみんな大好きMAPPA。総監督・シリーズ構成・脚本・音響監督を全部やってる変人は、『TIGER & BUNNY』でおなじみ西田征史。TVアニメシリーズの総監督は実は初めて。監督は『くまみこ』『うちタマ?! うちのタマ知りませんか?』の松田清。キャラデザは『BANANA FISH』の田中志穂が担当している。
 ひょんなことからハンディキャップを背負うことになった、とある少年のお話。1話では家族と社会復帰のプランを練るうち、はじめは気楽だった主人公が徐々にその重大さに気づいていく様子が描かれている。
 特に、主人公の両親の描写がすごくリアル。本人の前ではいつも笑顔で、何も要求せず、本人の意志を尊重し、優しく振る舞う姿がずっと描かれているけれど、実は当事者以上に「以前の息子に戻って欲しい」ってめちゃくちゃ思ってて、かつそれが当事者への重圧になることを理解しているので決して表には出さないんだけれど、ほんの僅かなシグナル(一瞬の目の動き)で主人公にバレちゃうっていう夕飯のシーンで泣いた。またこのシーン、モノローグや余計なセリフ等足し算の演出が全く無くて、一瞬差し込まれる両親の目元とそれを受けた主人公の間だけで心情を描いていてすごく好き。
 また主人公も、記憶がないという現実を見て最初に出てくる言葉が「(覚えて無くて)ごめんなさい」という反応だったのがすごくリアルだった。
 2話以降も、過去の主人公を知る(元)知人が今の主人公とのギャップに戸惑いつつ「過去の主人公への期待と裏切り」「今の主人公の受容」が描かれていく。だからこそ「今の主人公しか知らない部活仲間」って、今の主人公にとって大事な居場所になったりするのかもね。
 そんな記憶喪失の主人公を演じるのは、上村祐翔。冒頭の演技すごいよね。「記憶の中ではまだ小6なんだけど、体だけは高校生になったことに違和感を覚えている少年の声でモノローグ」という稀有なディレクションの演技が、深刻な現実を樹分に理解していないゆえに明るく振る舞っている主人公の心情をよく表現してて好き。単に元気な高校生男子とも違う、より幼く無邪気な子供っぽさ。あと小学生の書いた絵日記と内容のギャップも印象的だった。
 また、競技シーンでは水中の動きがすごい。立ったままの姿勢で水面に浮き続けるコツは常に手を水中で動かし続けることなんだけど、よく見るとそれをずっとやっている。パット見よくわからないけど、水上=作画 水中=3DCGみたいな感じなのだろうか。
 競技の性質上、競技中は全裸なので作画であまり嘘がつけない(服でシルエット隠したりとか)という問題があるけど、あの複雑な体の動きを水中カメラで撮ってる風に描いてる作画ほんとすごいよね。

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NIGHT HEAD 2041

FOD独占配信

 武闘派のPSYCHO-PASS。SFポリスアクション。
 あのナイトヘッド。1992年にフジテレビで放送されていたTVドラマが原作。当時の脚本を担当した飯田譲治が本作でも構成・脚本を担当している。ちなみに当時のリメイクではなく、新しいストーリーという位置づけらしい。
 制作は白組。同じくフジテレビの+Ultra作品『revisions』ぶりのTVシリーズかな。というわけで本作はほぼ全編3DCG。
 監督は『revisions』『えとたま 〜猫客万来〜』の平川孝充。キャラクター原案は『天上天下』『エア・ギア』でおなじみ大暮維人が担当している。同氏のキャラクターってすっっっごく書き込みが繊細でアニメ化に向いていないイメージだったけれど、3DCGだとアクションシーンでもディティールが損なわれないからずっと綺麗だね。
 思想犯罪を取り締まる特殊警察のお話。焚書する側として動く兄弟と、思想警察に追われる兄弟それぞれの顛末が描かれている。面白いのは、思想犯罪に混じって本物の超能力者が出てくるところ。TVドラマでいうと『TRICK』ではなく『SPEC』っぽいかも。また結構な割合で登場人物の頭のネジが飛んでいるので、事件のたびにかなり壮絶な修羅場を迎えている。かなりハード目なポリスアクション、ということになるのかな。
 SPECと同様、超能力者の存在を織り込んだ上でなお「超能力者?そんな人いませんよ」というスタンスで特殊警察が活動しているというシナリオなので、なんでそこまでして超能力者が排除されなアカンねん、という部分を解き明かしていくストーリーみたい。
 画作りでいうと、特にキャラの目がすき。普通に会話しているシーンでも細かく眼球が動いていて、キラキラしている。すごく有機的で自然な表現だよね。
 あと背景めっちゃ良いよね。近未来SF世界だけどかなり生活感が出ていて好き。廃墟のコンクリート打ちっぱなしの壁がいい感じに汚れているんだけど、「経年劣化によるヒビ割れ」「ストリートアートの痕跡」「ナイフかなにかで削って書かれた相合い傘の絵」とか妙にリアル。ロケハンしたところを完全再現してたりするのかな。
 また、この「近場の住宅街で撮影しました」感と不釣り合いなくらい警察の装備が近未来的なデザインになっていて、周りから浮いてる感じがすごく特撮っぽくて好き。
 OPは『呪術廻戦』の後期OPでおなじみWho-ya Extended。やっぱカッコイイ。

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白い砂のアクアトープ

 きれいなのうりん(水産Ver)
 制作はP.A.WORKS。監督は『凪の明日から』『色づく世界の明日から』の篠原俊哉。キャラクター原案は『Lapis Re:LiGHTs』のキャラクター原案とかでおなじみU35(「うみこ」って読むんだって)。シリーズ構成の柿原優子、キャラクターデザイン・総作監の秋山有希、美術監督の鈴木くるみなど『色づく世界の明日から』のスタッフがほぼ続投している。 
 お話としては、ひょんなことから沖縄の小さな水族館で働くことになった女の子のお話。本土から来た子と館長代理のダブル主人公みたいな感じなのかな。
 高校生くらいの男女が同じ空間を共有していくうち、皆にとってかけがえのない場所になっていくというシナリオだけ考えると前作の『色づく世界の明日から』みたいな青春部活モノと大きく違いはないのだけれど、決定的に違うのは「命」がテーマになっているところ。水族館の描かれ方としては「テーマパーク」より「生き物のお世話をする施設」というニュアンスが強いかも。また、あっちはラブストーリーの色が強かったのに対し、本作はそこまでラブラブしてないのも印象的。百合作品でもなさそう。
 あと色づくを思い出す演出でいうと、前作では物語のきっかけとして「魔法の絵」が1話で登場していたけように、本作では「魔法の水槽」が登場する。リアリティの高い世界観から急にファンタジーが溢れ出す演出ほんとすき。同スタジオの作品は写実的な画作りなので、なおさら映えるよね。
 2話では「命を扱うってどういう事?」の部分を掘り下げながらお仕事アニメとしての側面が描かれていて、かつ皆で館長代理の大切な場所を守っていくうち、主人公にとっても大切な場所になっていく予感を感じさせるという優しいお話。色づく3話に少し似たお話でありつつ、3話の中で出てきた色んな演出(プール、シャワー、虹)が再登場していて、ちょっとうれしい。本作の主人公は瞳美ちゃんに似ている部分もあるけど、でも全然違う感じがはっきり出てる回だった。やさいせいかつ。
 一方の館長代理は3話で「勇み足で働き始めたものの、この先どうなるか分からないまま毎日不安と戦いながら孤独に頑張ってる女の子」として描かれているのだけれど、そんな館長代理の姿に共感する主人公の心情を「ファーストペンギンキーホルダー」を用いて描いたシナリオがすげー良かった。「館長代理が作ったやつ」「あんまり売れてない」というやり取りの中で館長代理の抱えている孤独や不安を暗喩しながら、「ファーストペンギンの意味」をググった主人公が今の(無謀なことをしている)自分と重ね合わせつつ「すごく気に入っちゃって」バッグに付けることでこっそり共感する心情を描くところも好きだし、そのキーホルダーを見た館長代理が「嬉しい!」って。二人がちょっとだけ歩み寄っていく姿に╭( ・ㅂ・)و ̑̑ ぐッ!と来た。

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©projectティンガーラ

 水族館にまつわるお話が描かれた作品『海獣の子供』では巨大な水槽や海の魚が山程出てきたけど、本作の水族館は地方のちっちゃいやつなので、水槽もそこまで壮観ではないし、スタッフルームも小さな事務所くらいの大きさで、雑然と物が積まれている感じがリアルで好き。また、各水槽についているスタッフの手書きPOPとか手作りのウェルカムボードとか、大きい水族館とは違う味があるよね。ちゃんと読めるように書かれているのが芸コマ。実在の水族館をしっかりロケハンして再現してる感じなのかな。

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©projectティンガーラ

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前作『色づく世界の明日から』OPも好き。
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死神坊ちゃんと黒メイド

 歌劇。(めっちゃグイグイ来る)美女と(純朴な)野獣
 サンデーうぇぶりにて連載中の、イノウエによる漫画が原作。
 制作はJ.C.STAFF。また、同スタジオの作品『ハイスコアガール』で3DCGを担当したSMDEが本作でも参加しており、作風はだいたいハイスコアガールみたいな感じ。
 監督は『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』『ハイスコアガール』の山川吉樹。シリーズ構成もハイスコアガールに参加していた白根秀樹が続投している。
 おおまかなカテゴリとしてはラブコメなのかな。触れたいけど触れられない距離感が物理的に存在する、主人公カップルの日常アニメ。
 「他者と一定の距離を取り続けないといけない呪い」は、他者に心を開くことができない主人公の、心の有り様と表裏一体として描かれているのがすごく印象的。呪い=コンプレックス。そう考えると、当事者としては「早く治してね」みたいな言葉も辛かったりするし、それ以上に同情されるのが一番堪えるよね、っていうのが1話のエピソード。その主人公にとって黒メイドちゃんは「呪いを怖がらない人=コンプレックスを否定しない人」なので、1話にして既に特別な存在なのね。てか既に付き合ってるじゃん。
 2話では、ひょんなことから出会った野良猫に、家族との距離感や自らの境遇を投影してセンチになってる主人公の心情描写がめっちゃ良かった。その2話といい、本作ではちょくちょくキャラソンが流れるのだけれど、曲の使い方や演出が非常に叙情的で、もはやキャラソンというより歌劇のアリアみたい。曲調も概ねクラシックで統一されていて、2話のキャラソン→二人だけの時間→EDのしっとりした雰囲気がマジで最高すぎる。やっぱり佐山聖子の絵コンテは最高やな!

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©死神坊ちゃんと黒メイド製作委員会

 OPはデュエットソング。ラブコメ作品に限らず、キャラソンのデュエット曲がOPEDってホント珍しいよね。恋物語の『木枯らしセンティメント』くらいしか思い出せない。

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チート薬師のスローライフ

 異世界で定職についた、このすばのカズマさん
 「小説家になろう」にて2016から連載された、ケンノジによる小説が原作。書籍版は2017年にレッドライジングブックス(イラスト:庄司二号)、2018年からブレイブ文庫(イラスト:松うに)より刊行。
 制作は『百錬の覇王と聖約の戦乙女』『アサシンズプライド』『くまクマ熊ベアー』等でおなじみEMTスクエアード。監督は『百錬の覇王と聖約の戦乙女』『RobiHachi』演出とかで参加していた佐藤まさふみ。監督として参加するのは『デンキ街の本屋さん』以来かな。
 シリーズ構成は『ミュークルドリーミー』『RobiHachi』のシリーズ構成でおなじみ金杉弘子。ゴリゴリのギャグアニメでおなじみの脚本家ということで、本作はギャグアニメ。
 『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』よろしく、ファンタジー世界で万事屋を営む錬金術師のお話。1話あたり3本立て。優しい世界の日常アニメなので、安心して楽しめる系の作品。
 でも脚本は金杉弘子なので、本作も例に漏れずギャグの狂気度がかなり高い。また登場人物全員キャラが濃く、2話に登場する3人組の話とか怒涛のボケ合戦になってて好き。ギャグのテンポ感にどこかミュークルみを感じるような、とても賑やかなアニメ。
 あと、キャラかわいい。デフォルメの強いキャラデザが印象的で、幼女からおじいちゃんまで皆かわいい。『ベルゼブブ嬢のお気に召すまま。』ぽい雰囲気だなって思っていたら、キャラデザが同じ人なのね。かわいい。

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©チート薬師製作委員会

 背景もすき。背景を担当しているのはムクオスタジオ。淡い色彩の風景と柔らかい印象のキャラデザにより、ちょっと絵本みたいな雰囲気に。

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©チート薬師製作委員会

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月が導く異世界道中

 異世界世直し珍道中。まさかの水戸黄門パロ。
 2012年から「小説家になろう」で連載された、あずみ圭による小説が原作。書籍版が2013年からアルファポリスより刊行中。イラストはマツモトミツアキ。
 制作は『ひとりぼっちの〇〇生活』『社長、バトルの時間です!』『魔女の旅々』でおなじみC2C。監督は『FAIRY TAIL』『ログ・ホライズン』『EDENS ZERO』の石平信司。シリーズ構成は『幼女戦記』『慎重勇者 ~この勇者が俺TUEEEくせに慎重すぎる~』『俺だけ入れる隠しダンジョン』等、なろう原作のアニメですっかりおなじみ猪原健太。ちなみに同氏は『社長、バトルの時間です!』のシリーズ構成もやっていたりする。
 ひょんなことから異世界に飛ばされた男の子が、道すがら出会った仲間と旅をする異世界冒険譚。何らかの目的があって異世界に飛ばされるわけではないため「アレをやれ、ここにいけ」的な指示がなく、最初から主人公のペースでお話が進んでいく。旅の目的にしても、テメーの手の届く範囲以上の幸せを望まない謙虚な姿勢が結構好き。
 魔族や亜人、人間なんかが暮らしている世界というテンプレでありながら「主人公(人間)が亜人側」という点が独特で面白い。今放送されている転スラのように、主人公自身が亜人あるいは魔族として生まれ変わったタイプの作品は色々あるけれど、本作はさらに「人間なのに容姿が亜人のように醜い」という、ルッキズムにフォーカスしているんだよね。「異世界ファンタジー作品はモブまで皆美男美女」という、メタ的な要素を逆手に取っているのも面白い。
 人間と亜人の対立を描く視点として「亜人を容姿で差別している人間を、同じく人間の立場(第三者)から描く」というより「人間から容姿で差別されている亜人を、同じく亜人のように差別される人間として描く」という作品みたい。かなり亜人の描写にこだわっているよね。

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©あずみ圭・アルファポリス/月が導く異世界道中製作委員会

 でも演出がかなりコメディ寄り。てっきり石平監督の作品『ログ・ホライズン』くらい真面目なテイストだと思っていたけど(こっちはNPCとPCの対立を描く作品)、もっと少年漫画っぽいノリになっている。初期のフェアリーテイルみたいな感じ?
 そして、戦闘シーンの描写が結構すごい。演出としては同スタジオのアニメ『魔女の旅々』より『ログ・ホライズン』に近い。アクションディレクターとしてログホラの監督が参加しているからかな。
 あと雅楽ベースの音楽すき。音楽に限らず、総じて和テイスト音楽で統一されている異世界ファンタジー作品は珍しいよね。絵面だけなら『つぐもも』っぽい。ちなみに音楽はつぐももと同じく高梨康治なので、実質つぐもも

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平穏世代の韋駄天達

FOD、アマプラ独占配信

 平穏世代の封神演義
 天原による漫画が原作。ウェブサイト「新都社」にて連載ののち、作画・クール教信者として「ヤングアニマル」にて2018年から連載中。
amahara.bob.buttobi.net
 制作はMAPPA。監督は『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の助監督、『はいからさんが通る 後編 -花の東京大ロマン-』で監督を務めた城所聖明。シリーズ構成は『ヴィンランド・サガ』『ドロヘドロ』『デカダンス』『呪術廻戦』等、割とハードな作品でおなじみ瀬古浩司が担当している。その割にかわいいキャラクターのデザインは『ビースターズ』キャラデザの大津直が担当。
 神様と魔族と人間がはびこる、とある世界のお話。クール教信者が関わっている作品は今期3作品が同時に放送されているというすごい偶然が重なっているので、それをベースに噛み砕くと
・似てるとこ
 いろんな種族が存在する
 それぞれを恐れていたり、貶んでいたりする
 長い戦いの歴史の中で、すっかり関係性が冷え切っている
 登場人物の血の気が多い
・違い
 桃太郎→ちょうど血みどろの殺し合いをしている最中。良い感じの落とし所を模索中
 これ→神様が魔族を滅ぼして幾星霜。すっかり平和ボケした神様達
 メイドラゴン→ちょろい
 
 特に本作は人間界が戦争状態なので、可愛いキャラデザの割にかなりハードな描写が多い。あと暴力描写がえげつない。というかむしろ暴力シーン(アクションシーン)がメインの作品。MAPPAによるアクション作画がほんと凄まじいので、それ目当てで観ているまである。軽いノリのテイストでテンポよく進むのも楽しみやすいポイント。内容クッソ重いのにね。
 また、キャスト(主に韋駄天組)がなんか外画の吹き替えみたいになっている。朴璐美緒方恵美岡村明美石田彰堀江由衣て。最年少が堀江由衣(17)という、ちょっとした声優アヴェンジャーズに。暴力シーンのお芝居がほんと凄いので1話をぜひ聴いてみて。
 あとOP好き。映像の制作は株式会社コエが担当。同会社の代表・関和亮はPafumeのMVを作っている映像ディレクターで、アニメ作品を手掛けるのは初めてかな。『モブサイコ100』くらい中毒性のある映像で、「『平穏世代の韋駄天達』のテクノポップ系MV」としか言いようのないクオリティに。
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 余談。本作はFOD、アマプラのみ配信になっている。じゃあどっちで再生すればいいの?と聞かれると、圧倒的にアマプラがおすすめ。FODのUIがクッソ使いにくい、というのもあるけれど、それ以上に再生品質の差が大きい。
 本作のOPのように再生負荷の高い作品をストリーミング再生するとき、再生画質が自動調整されるサービスではビットレートが自動的に下がってしまい、まともに再生できなくなる問題があるけれど、再生品質を指定できるアマプラと違いFODではそれを回避する方法が無いため、OPを正常に再生することができない可能性が高い(インターネット環境による)。両方のサービスを契約しているひとはぜひアマプラで再生することを強くお勧めする。

ヴァニタスの手記

 
 『パンドラハーツ』でおなじみ望月淳による漫画が原作。「月刊ガンガンJOKER」にて2016年より連載中。
 制作はみんな大好きボンズ。監督は物語シリーズ等のシャフト作品でおなじみ板村智幸。本作はEDクレジットの表記方法がシャフト式なんだよね。最後に絵コンテ・演出をクレジットするやつ。
 シリーズ構成は赤尾でこボンズ作品にシリーズ構成として参加するのは『赤髪の白雪姫』以来かな。キャラクターデザイン・総作監は『スペースダンディ』『ひそねとまそたん』でキャラデザを務めた伊藤嘉之
 そして音楽に梶浦由記が参加している。近代の欧州が舞台のダークファンタジーということもあり、雰囲気が凄く梶浦由記していて好き。最近だと『ロード・エルメロイII世の事件簿』『プリンセス・プリンシパル』みたいな感じ。
 とある欧州で吸血鬼を助けるお医者さんと助手のお話。ちょっとボーイミーツボーイっぽい趣のダークファンタジー。序盤のストーリーは「このヴァニタスとかいう青年、マジでこいつ何なん?」みたいな感じのお話。大きく話が動くのは結構先みたいなので、のんびり観ようと思う。
 ヴァニタスを演じるのは、長男声優こと花江夏樹。同氏が高飛車なキャラを演じるときはコメディ作品が多いイメージなんだけど、本作はかなり硬派なので逆に良いアクセントになっている感じ。本作の中でも特にヴァニタスは感情表現が多様で魅力的な振る舞いをするキャラで、その表情を描くためにかなりの尺が割かれている。これはヴァニタスの可愛さを描く作品だった?

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©望月淳SQUARE ENIX・「ヴァニタスの手記」製作委員会

 その後も次から次へと魅力的なキャラが登場するのだけれど、男女問わず総じてすごくクセが強い。またその癖の強さをあえて強調して描く演出がシャフトっぽくて好き。キメ絵を多用したテンポの早い演出がハマりすぎていて、毎話一瞬で終わる。

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スポットライトを浴びながら登場する特徴的な演出 ©望月淳SQUARE ENIX・「ヴァニタスの手記」製作委員会

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乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…X

 2期。主人公がいなくても成立している群像劇に、主人公が片っ端から首を突っ込んでフラグを掻っ攫っていくお話。
 貴族階級の恋愛事情ということで概ねサツバツとしている話のはずなのに、主人公のせいで全部ギャグにひっくり返ってしまうのがいっそ清々しい。登場人物を片っ端から懐柔してしまう主人公の天真爛漫さは、異世界転生作品で登場するあらゆるチート能力の中でも最も美しいチート能力なんじゃないだろうか。(本来シリアスなはずの)3話とか、話の転がり方がほんと凄いよね。

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いっぱい食べる君が好き ©2021 山口悟・一迅社/はめふらX製作委員会・MBS

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かげきしょうじょ!!

 スポーツ青春作品とアイドル作品の間に広がる世界の一つ
 斉木久美子による漫画が原作。「ジャンプ改」にて2012年から2014年まで連載され、「メロディ」にて『かげきしょうじょ!!』として2015年より連載中。「!」マークが2個あるけど2期ではない。
 制作は『魔法少女なんてもういいですから。』『ゲーマーズ!』『グレイプニル』のPINE JAM。監督は『魔法少女なんてもういいですから。』『鬼灯の冷徹(第弐期)』『グレイプニル』の米田和弘。シリーズ構成の森下直はTVドラマの脚本家として活動している人なのだけれど、以前に『暁のヨナ』(これも白泉社のコミック作品)で米田監督と一緒に仕事をしており、その縁で本作を担当していたりするのかな。
 また、音楽は本家・宝塚歌劇団の音楽制作に携わっている斉藤恒芳が参加しているため、ガチの音楽を聴くとができる。
 宝塚歌劇団に入学した少女たちの成長を描くお話。感触としては、だいたいスポ根とアイドル作品の間くらい。原作が元々ジャンプで連載された後にメロディで連載されていることが作風に影響があるかどうかは知らないけれど、王道のスポーツ漫画のようで、でも少女漫画のようで、ちょっと不思議な感じ。何にせよ舞台で重要なのはやっぱりフィジカルなんやな、って。
realsound.jp

 同じく「歌劇」をテーマに扱った作品『少女歌劇 レヴュースタァライト』では、学生たちの初公演が無事終了し、晴れやかな気持ちで2年次を迎えるところから1話は始まっていたけれど、本作はちゃんと「今年はスーパールーキーが入学してきたらしい。ちょっと見に行こうぜ」から。似たテーマを扱う作品でありながら、この時点で既に描きたいものが微妙に違ってるのも面白い。導入部分だけ見れば、完全にスポ根だよね。
 主人公の学校生活を通じて「へー、宝塚音楽学校ってこういう感じなんだ~」ってなる。特に、2話なんかでは舞台道具や衣装の制作、照明スタッフの様子なんかもちょっと出てきて、「あの舞台はどうやって創られていくのか」の部分がすごく丁寧に描写されている作品。
 てか音楽やば。舞台の裏のお話を見ているはずなのに、音楽のせいでそれすらも舞台の上で繰り広げられているんじゃないかと感じてしまう魔力みたいなものがあるよね。
 物語上、本作は主人公たちが舞台の上で活躍するのが随分先になるため、歌って踊る彼女たちはしばらくお預けになるのだけれど、そこを良い感じに裏切ってくるのが2話で流れるED。楽曲制作は斉藤恒芳。中の人である千本木彩花、花守ゆみりはレコーディングの際に「ここは正面を向きながら」「ここはお互いに向かい合いながら」といった、舞台の上で歌っている主人公達をイメージしたディレクションで歌ったらしく、聴いているだけで舞台が視えるという凄い曲に。アニメ作品の楽曲としてはまず聴けないタイプの貴重な曲に仕上がっているので、珍しいものが好きな人はぜひ聴いてほしい。

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うらみちお兄さん

 声優の遊び場
 渋のコミック配信サービス「comic POOL」にて連載中の、久世岳による漫画が原作。
 制作は『ロウきゅーぶ!』のスタジオプラン。監督の長山延好、シリーズ構成の待田堂子は同スタジオが制作協力として参加していた『僕の彼女がマジメ過ぎるしょびっちな件』『ハッピーシュガーライフ』の座組。
 独身男性たちと幼児たちが織りなす会話のドッジボールを描くコメディ作品。そしてなぜか彼らを放置する番組制作スタッフ。お兄さん嫌われてんの?
 ショートショート系のコメディ作品。各エピソードの「お、おう・・・」力が強いため、1話の視聴カロリーが凄く高い。「30超えてから、どうも体がね・・・」みたいな世間話を30分くらいした後みたいな気分になる。
 おまけに主人公がディスコミュニケーションの塊なので、ひたすら虚空に向かって呪詛みたいなモノローグを垂れ流しているシーンが続く。神谷さん、どの作品でもくっそ長いモノローグさせられてるのな。
 そしてキャスティングがもはや大河ドラマ杉田智和中村悠一を中心にかなり自由演技をするキャストばかりなので、先のアニメ『ポプテピピック』よろしく「声優を楽しむアニメ」という趣の作品みたい(てか両方ともキングレコード案件なのね)。2話の水樹奈々が凄すぎて笑った。
表田裏道 神谷浩史
兎原跳吉 杉田智和
熊谷みつ夫 中村悠一
蛇賀池照 宮野真守
多田野詩乃 水樹奈々
木角半兵衛 木村良平
上武裁人 鈴村健一
猫田又彦 小野大輔
風呂出油佐男 三木眞⼀郎
出木田適人 堀内賢雄
枝泥エディ 花江夏樹
縁ノ下カヨ 髙橋ミナミ
辺雨育子 佐藤利奈
カッペリーニ降漬 中井和哉
アモン 津田健次郎
蛇賀眩衣 日笠陽子
小百合 定岡小百合
神の声 大塚芳忠

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ジャヒー様はくじけない!

 はたらく次期魔王様。社会人になった『ガヴリールドロップアウト』サターニャの受難。何気に2クール放送予定だったりする。
 昆布わかめによる漫画が原作。スクウェア・エニックスの「月刊ガンガンJOKER」で2017年より連載中。
 制作はSILVER LINK.。監督は『政宗くんのリベンジ』『すのはら荘の管理人さん』『キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦』等、ラブコメ作品でおなじみ湊未來。コメディ作品ではおなじみシリーズ構成・横手美智子とのタッグは政宗くんのリベンジ以来かな。
 ひょんなことから、すごいまぞくのジャヒー様が人間界でエッセンシャルワーカーとして日銭を稼ぎながら生き延びるお話。四苦八苦しながら頑張ってるジャヒー様可愛い。
 最初は人間を警戒しているんだけど、交流を重ねるうちに打ち解けていく展開は『邪神ちゃんドロップキック』っぽい。登場人物がそこまで多くないため、序盤はひたすらジャヒー様を愛でるアニメに。2話からは『ガヴリールドロップアウト』で共演した花澤香菜が元手下役として登場するけど、やはり良い感じに転がされるジャヒー様かわいい。
 OPEDはアイドルアニソン(今回はキングレコード案件)。OPはキングレコードの顔こと小倉唯で、EDはVtuberユニット、NEGI☆Uのメジャーデビュー曲。こういうところにすごくSILVER LINK.らしさを感じるよね。

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探偵はもう、死んでいる。

 探偵は未亡人
 MF文庫Jより2019年から刊行されている、二語十による小説が原作。イラストはうみぼうず。
 制作は『旗揚!けものみち』『宇崎ちゃんは遊びたい!』『究極進化したフルダイブRPGが現実よりもクソゲーだったら』のENGI。監督は宇崎ちゃんのキャラデザ・総作監を担当していた栗原学。本作が初監督かな。シリーズ構成は赤尾でこ。キャラクターデザインは『可愛ければ変態でも好きになってくれますか?』の伊藤陽祐が担当している。
 今までENGIの作品はすべて三浦和也が監督を務めていたが、本作では「アニメーションスーパーバイザー」としてクレジットされている。世代交代かな?
 1話は1時間SP。主人公と元カノの馴れ初めが描かれている前日譚。二人ともかわいい。で、シンデレラ(主人公)の魔法が解け、今は普通の高校生になっていました。までがあらすじ。
 本題は3話から。「探偵はもう死んでいる。けど・・・」の部分が明かされるのは2話ラストで、そこから主人公の未亡人ムーブが始まる。憂いを帯びた探偵(主人公)と、感情のままに事件に首を突っ込んでいく助手(メインヒロイン)の関係性でいうと『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』みたいなお話。今関わっている事件を描きつつ、回想のなかで元カノとの旅の顛末が描かれる2軸体制みたい。
 こう見えて荒唐無稽な世界観なので、ミステリーと言っても『魔人探偵脳噛ネウロ』の仲間くらいに思っていればいいと思う。ドーピングコンソメスープをキメた殺人鬼が出てきたりしそう。また、カテゴリとしてはミステリーよりラブコメの色が強く、謎解き要素はフレーバーみたい。むしろ主人公とヒロイン同士の軽口の叩き合いに尺が多く割かれている。3話リハーサル見学中の会話は特にツッコミがキレッキレで、全体的に新人を中心に構成されたキャストさんたちの中で、あえて竹達彩奈なのねってなった。好き。
 制作のENGIといえば、初元請け作品『旗揚げ!けものみち』では主人公とゴブリンキングが死闘を繰り広げるシーンの作画がやたら凄まじくて印象に残っていたのだけれど、本作1話の戦闘シーンで久々にアレが見れる。やっぱ凄まじいね。

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ぼくたちのリメイク

 強くてNEW GAME。
 MF文庫Jより2017年から刊行されている、木緒なちによる小説が原作。イラストはえれっと。
 制作は『ISLAND』のfeel.。プロデュースは同じくISLANDやグリザイアシリーズのフロントウィング。原作の木緒なち氏はグリザイアシリーズにシナリオライターとして参加していた人なので、そのうち本作もフロントウィングからゲーム出すんかな。そのせいか、「こういう恋愛シュミレーションゲームありそうだなぁ」みたいな感じのアニメになっている。
 監督は『うたわれるもの』『セイレン』『インフィニット・デンドログラム』の小林智樹。シリーズ構成は木緒なちが担当。キャラクターデザインの川村幸祐、色彩設計の田川沙里は『ISLAND』を担当した人なので、パッと見すごくISLANDっぽい。
 ラブコメっぽいシナリオなので、同じく創作をテーマに扱った作品『冴えない彼女の育て方』に近いかもしれない。主人公は元々クリエイターとして努力をしていた側の人間であり、かつ既に敗北済みという経験者。なので、よりクリエイターに対する慕情の念が強すぎるがゆえの「やっぱ俺、クリエイターになるの無理かも」感が強いお話。今の記憶のままタイムリープして再挑戦したら、もう一回挫折を味わう羽目になりました。という結構残酷な話だった。で、その「やっぱ俺、クリエイターになるの無理かも」という呪いを解いてくれた先生の言葉すごく好き。
 既に後悔を経験している主人公がいることで、より正しい未来を選択しながら成長していく主人公パーティ。かといって主人公が(大人として)皆を導いていくというわけでもなく、むしろ影響を受け合って一緒に成長するっていうのがすごく青春している。プロデューサー向いてそう。こういうところは恋愛シュミレーションゲームっぽいよね。ところで、2話では脚本家の彼と衝突していたけれど、OPに二人のイベントスチルがあったということは、もしかして彼も攻略対象なのだろうか。
 その2話からは(課題で)映像作品作りが始まるけれど、早速「尺がない」「脚本修正しようとするとめっちゃキレられる」「期限まで時間がない」といういつものアレにぶち当たっている。あるある。主人公は元々ゲームクリエイターだったけれど、本作で扱う分野はもっと映像畑寄りなのかな。
 ところで、ずっと頑張ってきた直近の10年がタイムリープで巻き戻されてしまって「もう一回遊べるドン!」って言われたとき、特に苦い経験をした人なら普通「やったー!これで違う人生選べるぜ!」ってなると思うんだよね。なのに、酸いも甘いも経験した主人公がもう一回そこに飛び込むって相当だよね。

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カノジョも彼女

 勇者ヨシヒコと三角の関係。
 「週刊少年マガジン」にて2020年から連載中の、ヒロユキによる漫画が原作。てか連載開始から1年ちょっとじゃん。
 監督は『五等分の花嫁』『安達としまむら』『異世界魔王と奴隷少女の召喚魔術Ω』の桑原智によるいつものチーム。ラブコメ作品を作り続けている監督の作風的に、エロいラブコメが得意分野なのかな。でも異世界魔王Ωと比べると本作はまだ健全だと思う。しらんけど。
 一周回って誠実な主人公が非常に清々しい。「〇〇って思ってしまったから!この気持ちにはもう嘘はつけないから!」を起点に、最後までブレずに周りを巻き込んで行く姿勢がまさかの1話時点で仕上がっている。普通のラブコメだったら最終回一歩手前くらいの展開だった。ノリと勢いがもはや『アホガール』のそれ。
 「俺の誘いを断るなんて・・・おもしれー女。」から徐々に惹かれていくっていう王道ラブコメに対し、本作は「私に堂々と二股宣言するなんて・・・こいつ正気か?」という邪道から始まり、徐々に判断を狂わされていく幼馴染こそ影の主人公なのではないだろうか。
 その影の主人公こと幼馴染(絶対に負けそう)を演じるのは佐倉綾音。カラっとした強気キャラいいよね。「つまんねー事聞くなよ!」みたいな感じのツッコミ声ほんと好き。
 また演出(特に音楽)も「主人公ムーブであらゆる問題を解決しちゃうイケメンヒーロームーブ」みたいな盛り上げ方で草。目元のアップが沢山盛り込まれてて、主人公の意志の硬さがより顕著に。勇者ヨシヒコを超えるメンタリティかお前は。

ゲッターロボ アーク

 フルHD画質と3DCG技術を手に入れた真のゲッターロボ
 永井豪石川賢による漫画を中心としたメディアミックスシリーズのうち、2001年から連載されていた漫画作品が原作。初代アニメが放送されていたのはもう46年くらい前なんだって。やば。
 制作はBee・Media×studio A-CAT。studio A-CATは『フレームアームズ・ガール』『珠詠』『装甲戦機娘』でおなじみ可愛い系3DCGアニメーション制作の会社で、Bee・Mediaは『新・ゲッターロボ』に制作協力として参加していた会社。同じく『新ゲッターロボ』で監督を務めた川越淳をはじめ、「ロボットアニメに携わってきた関係者」が集まっており、スタッフィングの時点で既にスーパーロボット大戦みたいになっている。
 公式サイトでは珍しく各スタッフごとの過去に携わった作品一覧がまとめられているので、ちょっと目を通しておくと面白いかも。 
getterrobot-arc.com
 多分みんなが想像している「ゲッターロボの新作アニメ」より遥かにゲッターロボ。セル画っぽい絵作りもあえて意識して残しているし、劇画調に描かれている主人公たちの顔面の圧よ。フルHD画質により画面が広くなった分、顔をアップにしたときの圧が更に増している。集中線を多用する演出も今のアニメではほぼ見られないため、かなり独自色を放っている。
 個人的に一番ポイントが高いのはSE。「今どきこんなSEスパロボでしか使わんやろ」みたいなSEがふんだんに使われていて逆に新しい。徹頭徹尾「ゲッターロボらしさ」を追求した上で、かつ魅力的な作品だよね。

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©永井豪石川賢/ダイナミック企画・真早乙女研究所

 そして、ちゃんとOPにSEがついている。強い!絶対に強い!
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ピーチボーイリバーサイド

 解釈違いから内輪揉めをしている血みどろ群像劇。 ☓ビーチボーイ(渚太郎) ◯ピーチボーイ(桃太郎)
 新都社の配信サイト「週刊ヤングVIP」にて連載中の、クール教信者による漫画が原作。制作は『なむあみだ仏っ!-蓮台 UTENA-』『天地創造デザイン部』の旭プロダクション。監督は『メルヘン・メドヘン』『ゲキドル』等、フッズエンタテインメントの作品でおなじみ上田繁。シリーズ構成は『ゲキドル』の大知慶一郎が担当している。
 キャラクターデザインは『プリンセスコネクト!Re:Dive』の栗田聡美と、『なむあみだ仏っ!-蓮台 UTENA-』の加藤真人。それぞれ男女キャラで担当を分けてるんかな。どことなく雰囲気に差があるよね。
 配信形態には2種類あり、オンエア版と時系列版がある。原作準拠は時系列版。監督いわく「時系列版で放送していくとキリの悪いところで終わっちゃうので、いい感じの終わり方ができるように順番を入れ替えて放送することにしました」とのこと。ちなみにオンエア版1話=時系列版4話。制作スケジュールどうなってるんや。
www.animatetimes.com
 「ももたろう」の解釈違いから始まるお話。ももたろうの登場人物は「人間」「桃太郎」「桃太郎の従者」「鬼」くらいしかいないけど、本作では「桃太郎は人間と鬼の間を取り持つ穏健派だった説」とか「桃太郎は鬼を殺すのが大好きなサイコ野郎だった説」等の説をうまく利用した、結構壮大な二次創作になっている。
 ちゃんと鬼サイドの掘り下げもされていて、「桃太郎とかいうヤベーやつをどうしよう」「やっぱ人間みんなぶっ殺そう」「じつは人間と鬼って仲良くできるんじゃね?」みたいな群像劇が鬼の中でも繰り広げられている。桃太郎はバトル漫画だったんや。
 特に鬼、桃太郎双方の過激派が非常にのびのびと屠殺している表情が素敵。あと戦闘シーンの音楽いいよね。

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主人公その1。目がハートになっててかわいい ©クール教信者ヨハネ講談社/「ピーチボーイリバーサイド」製作委員会

魔法科高校の優等生

 魔法科高校の劣等生 ガールズサイド。
 元は「小説家になろう」にて2008年から連載されていた小説を原作とするシリーズで、本作は「月刊コミック電撃大王」にて2012年から連載されていた、森夕によるスピンオフ漫画が原作。
 制作はSILVER LINK.の子会社ことコネクト。監督は『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅡ』や、SILVER LINK.の作品『CIRCLET PRINCESS』で監督を務めている橘秀樹。シリーズ構成は『叛逆性ミリオンアーサー』『ぱすてるメモリーズ』『WIXOSS DIVA(A)LIVE』の玉井☆豪スタッフィングから漂う「可愛い女の子が出てくるアニメ」感。
 『魔法科高校の劣等生』では2期でスタジオが変わった後も原作イラストの石田可奈がキャラクターデザインを続投しているが、本作のキャラクターデザインは『ド級編隊エグゼロス』の山本亮友と『異世界食堂』の佐野隆雄にバトンタッチ。そのため絵の雰囲気がかなり違う。戦闘シーンも減っており、転スラと転スラ日記くらい別の作品。
 ほのか可愛い。内容としては、劣等生1期のお話を妹視点で描くスピンオフ。司波深雪の中の人いわく「劣等生よりガールズトーク多めの平和なアニメ」とのこと。こう見てると、意外と深雪ちゃんってクラスメイトと仲良くしてるんだね、って思った。実は本当に孤独なのってお兄様だけ?
 1期と概ね同じお話ではあるけれど、ただでさえ説明の少なかった1期より更に説明が少ない(主人公の司波深雪は、お兄様ほど裏の事情を知らない)ので、まず1期を見てからのほうがいいかもしれない。
 なお、1期では「深雪って頭の中では結構ヤバいこと考えてそう」くらいのフレーバーとして描かれていた兄弟愛(意味深)だけれど、本作ではそれに映像と音がついてしまった。あいつマジやばくね。

100万の命の上に俺は立っている 第2シーズン

 2期。アニメで学ぶトロッコ問題
 1期のあらすじ:ひょんなことからゲーム世界に連れ込まれた主人公たちが、お題をクリアしながらゲームマスターの謎を暴こうとするのだが…的なやつ。
 主人公パーティの人選が面白い。「主人公たちが降り立ったファンタジー世界を描く冒険活劇」というよりも「ファンタジー世界で冒険させられている主人公たちの群像劇」みたいな色が強い作品なのね。
 主人公:この手のゲームが得意な効率厨なので、ゲームクリアのために最適な行動をしようとする
 ヒロイン1:メンタルが強くてあんまりビビらない。ゲームはミリしらなのに強い
 ヒロイン2:は?お題クリアに関係ないNPCだからスルーしろ?人は人だろ関係ねえよ
 ヒロイン3:恋愛ゲーム大好きなので「このモブはどういうフラグを回収すれば関係性が発展するんだ?」みたいなアプローチをしがち
 お題に挑戦するたび必ず出てくる「どの命を選ぶか」という問題がむしろ本作の本質で、例えば主人公は「この中で強いのはヒロイン1だから、まずこの子を助けよう。その他は弱いからまあいいや」というわかりやすい選択をして、それが後々問題になっていく、とか。一方のヒロイン2は「ここでこの人を助けないなんてありえない」という、自身の経験上最も正しい選択をして、それによって後悔したり、後悔しなかったりという感じの展開が多い。毎回がトロッコ問題みたいなアニメ。
 このあたりを強く印象づけるのが1期ラストの展開。「主人公なりの合理的判断の基準」がどういう思想に依っていて、それがどう変わっていくのか、というのが2期のお話。
 2期1話は早速「命」のお話から始まっていて、かなり複雑な心境になっている主人公。強さとはいったい。

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D_CIDE TRAUMEREI THE ANIMATION

 新しいペルソナ
 サムザップ・ドリコムブシロードによるメディアミックス作品で、2021年夏にスマホゲーがリリース(されているはず)。
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 制作は『BanG Dream!』シリーズ、『新サクラ大戦 the Animation』のサンジゲン。監督の今義和は新サクラ大戦の副監督を担当していた人。というわけで全編3DCG作品。
 ストーリー原案は里見 直。ペルソナシリーズ、『 ブレイブ ストーリー 新たなる旅人』、『Caligula -カリギュラ-』等のゲームシナリオでおなじみ。そういえばカリギュラのアニメはオチが結構好きで印象に残っている。
 シリーズ構成は『ゲゲゲの鬼太郎(2018~)』『重神機パンドーラ』『ファンタシースターオンライン2 エピソード・オラクル』の大野木 寛。特にゲーム原作のPSO2アニメはストーリーの再構成がすごく良い感じだった。
 本作は、ひょんなことから宇宙の秩序を守る戦士になった主人公の話。東京(現代)が舞台。現代に生きる若い人たちが心に抱えている闇をテーマに扱った作品という意味では、ペルソナやカリギュラと同じ系譜の作品といえるかも。
 自らの意思を具現化した装具で戦う、という設定は特にペルソナっぽい。ストリート系ファッションがベースになった武装デザイン含め、凄く厨二っぽくてすき。
 物語としてはカリギュラみたいな「アクションもある青春群像劇」といった雰囲気だけど、ほぼ3DCGなのでアクションシーンが特に印象的。あとカリギュラより後味が良くて明るい余韻なので気軽に楽しめそう。
 特に、田中公平の音楽によるドラマチックな演出が強い。1話は変身バンクに至るまでの戦闘シーンも含めすごく田中公平している。

 そしてOPは東京事変。つよい。
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現実主義勇者の王国再建記

FOD独占配信

 もしも異世界転移した勇者が、マキャヴェッリの『君主論』を読んでいたら。もしマキャ
 2014年より「小説家になろう」にて、2016年以降はpixivにて連載中の、どぜう丸による小説が原作。書籍版が2016年からオーバーラップ文庫より刊行中。イラストは冬ゆき。
 シリーズ構成は雑破業と大野木寛。雑破業は柔らかめの作品、大野木寛は硬めの作品っていうイメージだったけど、本作は登場人物が若い男女がメインなので、ちょっとラブコメっぽい雰囲気があるよね。キャラデザはみんな大好き大塚舞なので、ヒロインめっちゃかわいいし。内政パートは硬い内容なので、そこら辺棲み分けしながら脚本書いてたりするのかな。
 ざっくりいうと、ひょんなことから異世界に召喚された主人公が、成り行きで国の再建を任されるお話。政治がらみの色が強い異世界ファンタジー作品としては『八男って、それはないでしょう』なんかが最近放送されていたけれど、あっちは「ひょんなことから強い権力を手に入れた(地方の貧乏貴族出身の)主人公が、兄弟間の権力争いに巻き込まれそうになるのをなんとか回避しようと奮闘する」という昼ドラみたいな内容で、特に後半の実家に帰省する話とか面白かった。翻って本作は、そんな権力闘争はさておき速攻で経済政策の話になるのが印象的。あくまで描きたいのは政治より経済なのね。
 異世界ファンタジー作品では「突如現れた魔族により、国は大きく疲弊している」みたいな冒頭のナレーションで済まされてしまいそうな部分を「なぜそうなったのか、原因はなにか、どうすれば状況が良くなるのか」を丁寧に掘り下げていく部分は、ちょっとした社会学の授業みたいな気分で楽しめる。
 再建の手法も、史実を紹介しながらそれを模倣していくというストーリー。マキャヴェッリに限らずいろいろな政治論が出てくるので、なんか「アニメで学ぶ世界史」みたいな感じ。略称は現国なのに。
 主人公を演じるのは、異世界転生のプロこと小林裕介。強いリーダーシップを発揮してみんなを導いていく姿は『Dr Stone』っぽいかも。
 最初は「食い物が無いんだけどどうしよう」という問題から取り組むことになったので必然的に田畑がよく出てくるんだけど、BGMがゆるキャンでおなじみ立山秋航なのですごくのどか。異世界モノとしてはかなり血の気が少ない作品だよね。

迷宮ブラックカンパニー

 異世界こち亀みたいな労働賛歌
 マッグガーデンの配信サイト「MAGCOMI」にて2016年より連載中の、安村洋平による漫画が原作。
 制作はSILVER LINK.。監督は『痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。』『キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦』の湊未來。最近、同スタジオの作品で大沼心監督がクレジットされない作品が徐々に増えていて「シルリンもコツコツ世代交代が進んでるんやなぁ」なんてことを思っているのだけれど、実際どうなんだろ。
 ひょんなことから、上級国民の主人公が異世界に労働階級として転移するお話。やってることは割と異世界転移→下剋上系のノリなんだけど、テイストとしてかなりコメディ寄り。
 「ブラック企業で働いていた主人公が過労死して異世界転生」と違い、過酷な労働の人生経験が無い本作の主人公。その割に鋼メンタルだよね。あらゆるピンチをチャンスに変えて出し抜こうとするたび会社のブラック体質によって阻まれるが、「俺は上級国民だぞ!」の精神で全くめげない。この共感のできなさが逆にすき。
 「こんな社会間違ってる!」ではなく「俺は人を見下す方が好き!」っていうモチベなので、目的地が最初からおかしい。世直し珍道中というより、ブラック企業の社長がよそのブラック企業を潰すという感じのお話に。ブラックな部署を潰す→さらにブラックな部署に異動→以下略。主人公も割とギルティな人なので、ブラックユーモアとして楽しもう。つぶしあえー
 元上級国民こと主人公を演じるのは小西克幸デカダンスみたいなイケオジも好きだけど、こういう浅はかでどうしようもない人間臭いキャラも好き。ほんと高笑いが似合いすぎる。

SCARLET NEXUS

 未知の敵と戦っていると思っていたら実は身内が敵だったパターンの炎炎ノ消防隊
 バンナムから2021年に発売されたアクションRPGが原作で、制作はみんな大好きサンライズ。監督の西村博之は多分みんなが知らない方の西村博之。シリーズ構成は加藤陽一根元歳三の連名。加藤陽一アイカツとかムシブギョーとか妖怪ウォッチとかデュエマの人で、根元歳三はログホラとかパンドーラとかスーパーカブとかバクテン!の人。またデュエマ、おしりたんてい、妖怪ウォッチ等で脚本を書いている井上亜樹子が脚本として参加している。子供向けアニメかな?
www.youtube.com
 未知の脅威にさらされている人類を守るために結成された超能力軍と、そこに志願兵として入隊した主人公のお話。1話は最初のお仕事をこなす話で、ざっくり「へー、こんな感じの世界観なのね」くらいの内容。本格的にお話が動き出すのは2話ラストから。なんせスタッフがホビアニ作ってる人たちだし、サンライズだし、そんなにハードな話じゃねえだろ、って思ってた自分がいました。
 「未知の敵から人類を守るために作られた要塞都市と、最前線で戦うヒーローたちの物語」みたいな導入でありながら、話が進むごとに「多くの犠牲の上に作られている、高度に管理されたディストピア世界」という側面が顕になっていくという、実はかなり硬派な王道SF作品なのね。
 元がゲームということもあり、序盤はキャラのカッコよさとかアクションシーンが前面に出ている展開。こういうアクションシーンをあえて作画で描くところがサンライズのすごいところだよね。
 で、敵の造形(こっちは3DCG)がくっそキモい。非生物的な造形と生物的な造形を混ぜているので、非常に混沌としている。『ジビエート』のモンスターよりキモかった。あの造形について今の所作中で一切触れられていないんだけど、そのうち掘り下げられるんだろうか。
 OPはゲーム版と同じくTHE ORAL CIGARETTES。TVアニメタイアップは『サクラダリセット』『revisions』から3作目かな。イントロがちょっとACっぽくて好き。
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精霊幻想記

 社会的信用や文化的資本のない賢者の孫
 「小説家になろう」にて2014年から連載されている、北山結莉による小説が原作。書籍版は2015年よりHJ文庫から刊行されている。イラストはRiv。
 制作はトムス・エンタテインメント。監督・シリーズ構成は『地球へ…』『薄桜鬼』『ACTORS -Songs Connection-』のヤマサキオサムが務めており、その他に脚本として広田光毅、笹野 恵、中村能子がクレジットされている。結構すごいメンツ。
 ひょんなことから異世界転生した男の子のお話。元奴隷の身分から、貴族社会の中で下剋上を果たそうとする、というメジャーな展開から始まる。3話までが主人公の王都での暮らしを描くお話で、展開的には『盾の勇者の成り上がり』に近いかも。
 特徴として、主人公は前世の記憶と、肉体の持ち主が元々生まれ持っていた記憶が両方あるっていうパティーン。異世界転生した主人公が転生先の世界でどういうモチベーションを持って生きていくか、という部分は作品によって様々だけど、本作では前世の自分ではなく「この世界で生まれ育ったリオとしての自分」の意思によって下剋上に執念を燃やし、その後も前世の記憶と一定の距離を置きながら話が進んでいくため、かなり異世界転生要素の薄いテイストに。
 あと、今後主人公のアイデンティティがどうなっていくのか気になる。前世の自分ではないし、転生者になる前のリオでもない。本好きの下剋上はこのあたりの描き方(ルッツとの衝突を通じてアイデンティティを獲得するお話)がすごく良かったよね。
 ところで『無職転生』は「主人公とロキシー師匠の遠距離恋愛」と解釈することができるのか、みたいな。アニメ版無職転生ではそこら辺を恋愛とは別の絆として描いていたけれど、本作はもっと演出が恋愛寄り。幼女先生のヒロインみがめっちゃ強い。「前世から結ばれている運命の二人の物語」的なラブストーリーがテーマなのかな。

出会って5秒でバトル

 狂人たちのダーウィンズゲーム。
 はらわたさいぞうによるウェブコミックが原作。2015年より作画・みやこかしわによるリメイク版が「裏サンデー」「マンガワン」にて連載中。
 制作はシナジーSP、ベガエンタテイメント。シナジーSPはシンエイ動画の子会社で、最近だと『八男って、それはないでしょう!』をシンエイ動画と共同制作している。ベガエンタテイメントもまたシンエイ動画の下請けがメインの会社で、元請けはすっげー久しぶり。
 総監督は『ガンダムビルドダイバーズ』『ゾイドワイルド ZERO』等で絵コンテ職人をしている内藤明吾。シリーズ構成はいつもの待田堂子
 ひょんなことからデスゲームに参加した人たちのお話。デスゲーム系主人公の多くは「人殺しなんてとんでもない!なんでこんなことせにゃぁならんのだ!」みたいな気の弱い男の子が多いけれど(最近だと『ダーウィンズゲーム』とか『グレイプニル』とか)、本作の主人公は『ノーゲーム・ノーライフ』くらいノリノリ。
 メインは超能力バトル。その都度運営がマッチメイクを決めるタイプのやつ。サシもしくはチームで、お互い知略を尽くして戦うバトルが描かれる。主人公の能力も、変幻自在という意味では『ダーウィンズゲーム』と似ているけれど、より心理戦のウェイトが大きいのが印象的。単に相手の意表を突く刹那的な戦いではなく、話術とかも駆使して相手の思考を誘導する過程を楽しむ高度なデスゲームに。
 そして、そこはかとなく漂うちょい昔のOVA感。絵の雰囲気がそうさせているのだろうか。キャラデザもなんか懐かしい気がするし、2話のもろちんおじさんvsJKとか特に。実はエログロ系なのだろうか。そういえばネグリジェが正装のお姉さんとかいるし。

女神寮の寮母くん。

 エロいおねショタハーレムコスプレ荘。
「月刊少年エース」にて2018年から連載中の、日野行望による漫画が原作。
 制作は『勇者になれなかった俺はしぶしぶ就職を決意しました。』『ロード オブ ヴァーミリオン 紅蓮の王』『ありふれた職業で世界最強』のアスリード。最近はあんまりエロいアニメ作ってなかった気がする。ありふれもエロアニメではないし。監督は『ソードアート・オンライン -アリシゼーション- War of Underworld』とか『うらみちお兄さん』とか『RE-MAIN』のOP演出を担当している中重俊祐。本作が初監督かな。シリーズ構成は『勇者になれなかった俺はしぶしぶ就職を決意しました。』『ロード オブ ヴァーミリオン 紅蓮の王』『プランダラ』の鈴木雅詞。メインスタッフ的には『勇者になれなかった俺はしぶしぶ就職を決意しました。』のスタッフが結構多い。
 深夜のエロアニメ。最近でいうと『すのはら荘の管理人さん』とか『ゆらぎ荘の幽奈さん』とか僧侶枠のアニメと同じ類のエロハプニングショートコメディではあるけれど、表現が直接的なので規制シーンが多すぎて草。僧侶枠みたいにSEXシーンは無いので、そのシーンまるごとバッサリとかはないのだけれど、なぜかひたすらTKBを隠しまくるアニメに。そういえばこういうアニメって(メイン?)ヒロインが「同居人のTKBを隠す人」みたいになってて笑う。
 ヒロインの一人を演じるのは、先のアニメ『スーパーカブ』でおなじみ夜道雪。プライベートでもバイク移動の同氏は、自身のチャンネルで「今関わっているアニメお仕事について雑談を垂れ流すバイクの車載動画」という特殊な動画をアップしているので、今関わっているアニメお仕事について雑談を垂れ流すバイクの車載動画ファンの人はぜひ。
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最後に

 新作全部1話視聴はおすすめしない。アニメを最後まで見続けるためには「良くわからないけどとりあえず次も観るか」という心の余裕を持つことが大事だな、と日々感じている。膨大な新作を全部観るという行為に自身の余暇を限界まで投資してしまうと、好きな作品ほど「今は余裕がないからアニメ自体観ない」「今は余裕があるから別の(あまり観進めていない)アニメ観る」というジレンマにハマって、結局好き嫌いに関係なく完走できなくなってしまうことが凄く増えてしまった。
 「自分はこのアニメを最後までリアタイできたということは、きっとこのアニメが大好きに違いない!」といった具合に、自身の過去の行動を基準に自身の趣味・趣向を解釈する傾向が人間にはあるらしいので、「好きになれそうな作品を観ることを優先し、他は2の次」というスタンスのほうが、そのアニメが「好きなアニメ」に昇華する確率は高いように思う。
 そういう意味でも、漠然と「なんか面白いアニメ」を探している人ほど、逆に新作全部1話視聴はおすすめしない。

 そして、製作者様へ感謝をば。今期もまたとても面白い作品を作っていただきありがとうございます。特に都市部にスタジオを構えている制作会社であるほど「アニメ作ってる場合じゃねえ!」ってなっていてもおかしくない状況なのに、こうして当たり前のように放送を楽しんでいられること自体とても畏れ多いというか、ただただ敬服するばかりです。何卒お体に気をつけつつ制作頑張ってください。陰ながら応援しています。ではでは。